6月28日、Tani Yuukiが新曲「械物」(※読み:かいぶつ)をリリースした。同曲は日本テレビ系アニメ『EDENS ZERO』7月クールの新OPテーマとして書き下ろされた疾走感溢れるロックナンバーで、タイトル、歌詞ともにアニメの世界観を意識した内容となっている。
ちなみにTani Yuukiにとって初のアニメ主題歌であり、かねてから熱望していた機会だったという。新曲「械物」について、そしてライブへの思いについて、語ってもらった。
■Tani Yuuki念願のアニメ主題歌
──アニメ主題歌の話が来ての第一印象はどんな感じでしたか?
Tani Yuuki:純粋にうれしかったです。元々アニメが好きで、ずっとアニメの主題歌がやりたくて。以前、個人的にアニメを観ていたらどうしても(楽曲を)書きたくなって作った曲もあるほどです。だから、実際に「こういう曲を書いてください」というお願いが来たのはうれしかったですね。しかも、『EDENS ZERO』は真島ヒロさんが原作漫画を描いている作品で。中学生の頃に真島さんの『FAIRY TAIL』を読んでいたので、初のアニメ主題歌で自分の好きな作品を描いている作家さんのアニメを担当できることもうれしかったですね。
▼TVアニメ『EDENS ZERO』第2期 葵宇宙編PV
──そもそもTaniさんがアニメやその主題歌を好きになった原体験はどういうところにあるのでしょう?
Tani:子供の頃、『ドラえもん のび太と緑の巨人伝』の映画を観に行った際に主題歌「手をつなごう」を絢香さんが歌っていて、そこから絢香さんのことが好きになりました。
▼絢香 × Tani Yuuki「手をつなごう」Re:tter(レター)
他にも学生の頃は『ドラゴンボール』『BLEACH』『SKET DANCE』をよく観てました。『SKET DANCE』ではThe Sketchbookというアニメ発のバンドが結成されて、その「クローバー」という曲も好きでした。
▼The Sketchbook「クローバー」
アニメと主題歌って “このアニメだからこそ(楽曲もより)カッコ良い”みたいな、すごく関係が濃いじゃないですか。それを自分もやってみたいなと思っていました。
──実際にアニメ主題歌を作りたいと思うようになったのは?
Tani:いろいろきっかけはありますが…『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の主題歌をマカロニえんぴつがやっていて、その「生きるをする」という曲が良くて。「うわ、良いなあ、自分もやってみたいな」と気持ちが高まりました。そこから自分だったらこのアニメに対してどんな曲を書くだろう? と、より具体的に考えるようになった気がします。
▼マカロニえんぴつ「生きるをする」
──アニメに感化されて作った曲もあったということですが。
Tani:「FREYA」は、元々『ヴァイオレットエヴァーガーデン』に感化されて書いた曲で、『僕のヒーローアカデミア』もすごく好きで「夢喰」という曲もそれに影響されてるところはあるんじゃないかと。ヒーローアニメが特に好きで、主人公に憧れを抱くことが多いです。
▼Tani Yuuki「FREYA」Official Lyric Video
■Tani Yuukiが『EDENS ZERO』から感じたこと
──では、今作「械物」はどのように作っていきましたか?
Tani:まず原作を読ませていただいて、アニメの物語をちゃんと落とし込めるように作りました。アニメのいろんな要素を曲中に散りばめたりもしています。
──『EDENS ZERO』という作品をTaniさんはどう捉えましたか?
Tani:『EDENS ZERO』は宇宙が舞台で、男の子が大好きなものが詰め込まれているような作品だと思うんですけれど、それだけじゃない背景もあるなと感じました。人間と機械が出てくる物語なのですが、主人公のシキ・グランベルが最初にいた国では人間と機械が友達や家族くらい手を取り合う良好な関係性を築いているものの、国外では敵対している地域もあって。人間が悪いとか、機械が悪いとか、一概に誰が悪いと言い切れない…リアルな世界にもある葛藤が描かれていて、それは自分の周りの現実と重なり合う瞬間もありました。そういう葛藤みたいなものを楽曲としてちゃんと落とし込みたいなと思いました。僕にとって初アニメタイアップでもありますし、アニメチームにとっても大事なものだと思うので、今回の作品はす特に力を入れて作っています。
■新曲のタイトル“械物(かいぶつ)”について
──“械物”というタイトルは?
Tani:これは最後に決まりました。歌詞の中に“人の形をした化け物はどっちだ?”というフレーズがあるのですが、ロボットも人の形をしていて、パッと見では違いがない。そういうところから、どっちも悪くない、お互いの正義があるから葛藤がある…と思ったんです。主人公のシキにとっての正義は、もしかしたら顔も知らない誰かにとっては悪なのかもしれない。化け物って、一体誰なんだろうと。でも、“化け物”“モンスター”という言葉はしっくりこなくて悩みました。アニメの世界観に機械が出てくるんで、“怪物”の“怪”を“機械“”の“械”に変えて、“械物”にしたらしっくりきたので、これに決めました。
──歌詞にしても、タイトルにしても、アニメからTaniさんが受け取ったもの、考えさせられたものが書かれているのですね。
Tani:そうですね。サビにも“明暗の境目のない調和”という歌詞があるんですけれど、アニメでも、結局平和を求めてるんですけど、その線引きは曖昧だったりする。そこにも自分を重ねる部分がありました。例えば、曲を作る自分とライブをやっている自分との境界線ってどこなのか、お客さんとアーティストとの境界線は…と、いろいろ考えることもあって。全体的にアニメに寄り添ってはいるんですけど、そうやって自分の活動と重なる部分も多い一曲となりました。
■真っ向からのロックナンバーで勝負
──曲調やサウンドについても聞かせてください。この曲は真っ向からのロックナンバーですね。
Tani:少年漫画のアニメ主題歌といったら、どストライクでこうだろうと思って(笑)。バラードやミドルテンポという発想はまったくなかったですね。アニメの主題歌をずっとやりたかったし、アクションのあるアニメソングと言ったら、もう真っ向からのロックしかないと。
──そうですよね。ど真ん中に直球を投げるしかない。
Tani:しかも最初にやらなくて、いつやるんだと。ど真ん中に投げ込みました。
──Taniさんの中で、こういうギターロックのスタイルは曲作りの幅の中でどんな位置づけにあると言えますか? 例えば、どんなアーティストからの影響があったりするのかなと。
Tani:「械物」でいうと、ONE OK ROCKのドラムを参考にしました。自分が好きで聴いてきたというのもありますし、曲もカッコ良いし、僕の中でのロックの引き出しはそこになるんですよね。あとは、ツーバスのドラムも自然と出てきたものです。今まで出してきた曲からすると僕っぽくないというか、荒々しい部分ではありつつも、例えば“なぁ、同胞よ”っていう言葉が入っていたり、言葉遣いの部分は僕っぽいところが出ていると思います。
──「械物」はライブ映えしそうですよね。
Tani:たしかに、こういうアップテンポな曲調の曲は僕の中で貴重なので、ライブでやるのも楽しみです。きっとライブでも大事なピースになると思います。
■ライブの楽しさを実感できたZeppから初のホールツアーへ
──4月~6月にかけて、全国ツアー『Tani Yuuki Zepp Tour 2023 “多面態”』を開催。ツアーを終えて、どんな手応えがありましたか?
Tani:このツアーでお客さんの声を初めて聞けたんですね。それまで最初のライブからずっと声が出せないライブが当たり前だったので、ライブって本来こういうものなんだ、こうやってお客さんと一緒に作っていくものなんだ、こんなに楽しいものなんだってようやく実感できました。新しいものが見えたツアーだったと思います。
──11月からは初のホールツアー『Tani Yuuki Hall Tour 2023 “kotodama”』の開催も決定。そこに向けてはどんな思いがありますか?
Tani:実は、『多面態』ツアーも次のホールツアーを見越した演出に挑戦しました。そういうところでスタッフの人たちと会話しながらトライもできたし、仲も深まって、すごく成長できたんですね。そこから引き継ぐ部分もありつつ、また新しいことができたらいいなと思っています。“kotodama”というタイトルの通りお客さんにちゃんと僕の言葉が届くライブになったら良いなと。楽しみにしてもらえたらなと思います。
INTERVIEW & TEXT BY 柴那典
LIVE PHOTO BY Nozomu Tomita/Kiyoaki Sasahara
■「械物」歌詞
日本テレビ系アニメ『EDENS ZERO』7月クールの新OPテーマ
「械物」作詞:Tani Yuuki
作曲:Tani Yuuki時間が止まってしまったようだった
固く錆びついた歯車が痛くてさ
次回作が気になってしまったんだ
こんな結末じゃ終われないよな
終われないよな未来が変わってしまったようだった
心に空いたネジ穴が辛くてさ
世界が壊れてしまったようだった
人の形をした化け物はどっちだ?叫んでも 嘆いても覚めない
もがいても 足掻いても飛べない
待ってろ 次こそ
なぁ、残響よ飛び込んだ宇宙(そら)
落ちたのは
明暗の境目のない調和
追い風か? 重い枷か?万象を飛び越えた外 遥か園
引力にこの重力(て)が届くまで
繰り返してゆけ 歪むは憧憬時代が変わってしまったようだった
まばらに抜け落ちたメモリ(おもいで)が切なくてさ
魔法にかかってしまったようだった
甘い果実に似た悪魔が居座ってたんだ溢れても 途絶えても枯れない
纏っても 払っても消えない
怒りだろ? 離すなよ
なぁ、同胞よ呑み込んだ宇宙(そら)
模したのは
善悪の境目のない調和
愛だとか 罪だとか海峡を乗り越えた頃 出した目の
ゼロの先に重力(て)が届くまで
受け継いでゆけ 挑むは憧憬落ち込んだ宇宙(そら)
泣いたのは
過去に奪われた自分だった
何回目だ? 代償なら最小を光芒の宇宙(そら)行こう
さぁ、いざ
君の笑顔に届く日まで飛び込んだ宇宙(そら)
落ちたのは
明確な答えなどない調和
追い風か? 重い枷か?万象を飛び越えた外 遥か園
引力にこの重力(て)が届くまで
落ち続けて 掴むは憧憬
■楽曲リンク
【配信】2023.06.28 ON SALE
【CD】2023.07.26 ON SALE
SINGLE「械物」
ライブ情報
『Tani Yuuki Hall Tour 2023 “kotodama”』
11/03(祝金)東京・東京国際フォーラムA
11/10(金)福岡・福岡サンパレス
11/23(祝・木)愛知・センチュリーホール
12/01(金)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
12/08(金)宮城・仙台サンプラザホール
12/13(水)北海道・札幌カナモトホール
12/22(金)大阪・フェニーチェ堺
詳細はこちら
https://taniyuuki.com/news/detail/12566
プロフィール
たにゆうき/1998年11月9日生まれ、神奈川県・茅ヶ崎出身。作詞作曲、編曲、サウンドメイクを自身で行ない、ギターのみならずピアノも弾く。デジタルネイティブ世代が注目するシンガーソングライター。TikTokやYouTubeを中心に2015年8月から活動をスタート。2020年5月、 TikTokやYouTubeへ投稿した「Myra」が10代から多くの支持を集め、自身初となった配信音源はストリーミング再生累計が1億を突破する大ヒット。「W/X/Y」はストリーミング総再生数4億回を突破し、「Billboard JAPAN Streaming Songs of the Year 2022」「オリコン年間ランキング 2022 ストリーミングランキング」でともに1位を記録。
Tani Yuuki OFFICIAL SITE
https://taniyuuki.com/