遊助のニューアルバム『遊 are the one』が届いた。恒例の遊turingでは、Mummy-D、JAY’ED、lecca、KIRA、JILLEを迎えた「SHAKE」と、プライベートでも親交がある大黒摩季を迎えた「トコナツ」を収録。さらにBEGINの上地等が提供した「ただいままでおかえりまで」など、聴き手の日常に寄り添う物語を様々なサウンドスケープの中で紡ぎ上げた全13曲が収められている。今回は遊助と大黒摩季の対談をセッティングし、「トコナツ」の話題を中心にアルバムの魅力を紐解いていく。
■声やサウンド以上に、自分の言葉の強さが何よりも大事になってくると思った
──まずはアルバム全体のお話を。約1年ぶりのニューアルバム『遊 are the one』はどんなモードで作り上げた作品になりますか?
遊助:世の中の状況がコロナ禍以前にだいぶ戻り始めたタイミングなので、“みんな、もういいよね?じゃ全力で行くぞ!”という気持ちを込めて作ったアルバムではあって。遊助らしくという部分はもちろん、聴いてくれる一人ひとりが自分らしく生きられるようにっていう思いを込めつつ。同時に人と会うことへの喜びや人との繋がりの強さを、音楽の持つエネルギーを通して全開に出していきたい気持ちもありましたね。
──そういった思いは遊助さんが手がけたリリックにしっかりと刻み込まれていますよね。
遊助:そうですね。これまで通り、あくまで自然体ではあるけれど、聴いてくれる人にとって、なくてはならないものをちゃんと作らなきゃいけないなっていう思いはより強かったんですよ。そのためには声やサウンド以上に、自分の言葉の強さが何よりも大事になってくると思ったので、みんなの心に寄り添えるような言葉を詰め込むことはいつも以上に意識したかもしれないですね。
──「ブランコ」や「カフェ・ラテ」「カレハ」など、日常に溶け込む曲が多いのも印象的ですよね。見過ごしてしまいそうな些細な光景の中から、大切な思いが浮かび上がってくるような。
遊助:昔は結構世界を俯瞰で見ているところがあったんですよ。前回のアルバムにしても、「そんなに後ろを振り返らなくても地球は丸いんだからまっすぐ行けば絶対一周するじゃん」みたいなことを言ってたし。もちろんそれも真実だし、それが遊助らしさではあったと思うんです。でも今回はもっと近いところの日常にピントを当てたかったんですよね。今、僕が飲んでる手元のカフェラテとか、街中で舞ってる枯葉とか、衛星ひまわりからじゃ絶対に見えないものを題材にした曲が今回は多くなったと思います。
──アルバムのラストに収録されている「ただいままでおかえりまで」はBEGINの上地等さんからの楽曲提供を受けたものですね。
遊助:僕には4分の1、沖縄の血が入っていますし、BEGINさんのことは昔から大好きでよく聴いていたんですよ。で、あとから聞いたところによると、上地さんも僕がTVに出るようになったタイミングからずっと気にしていてくれたみたいで。
──読みは違えど同じ“上地”姓ですもんね。
遊助:そうそう。なので今回、ご縁があって曲を書いていただけたのは本当に夢みたいなことでしたね。上地さんからいただいた素晴らしいメロディに三線ベースのアレンジを加え、歌詞では“ただいま”と言える場所、“おかえり”が言える人のありがたみを書かせてもらいました。この曲をライブで歌えることが今から楽しみですね。
──アルバム恒例の遊turing曲となる「SHAKE」には、Mummy-Dさん、JAY’EDさん、leccaさん、KIRAさん、JILLEさんというこれまでにもコラボしたことのあるメンツがずらっと並んでいます。とんでもなく豪華な曲になりましたね。
遊助:ジャンルも経歴も、生まれ育った場所も違うメンツではありますけど、音楽が好きっていうことは間違いない共通項なわけで。そもそもそれで繋がった人たちですからね。そんな人たちが集まれば絶対かっこいいものになると思ったし、そこで生まれるであろう化学反応がとにかく楽しみで。これはもう僕なりのアベンジャーズみたいなイメージで作った曲(笑)。仕上がりもとにかくかっこいいものになったと思いますね。もうすぐ遊助の活動は15周年を迎えるんですけど、そこに向けたカウントダウンの一発目となる大きな打ち上げ花火になったんじゃないかな。
──で、もうひとつの遊turing曲が「トコナツ」です。ここからはコラボ相手である大黒摩季さんにご登場いただきましょう。
大黒摩季(以下、大黒):よろしくお願いしま~す!
遊助:今回のアルバムでは僕の中でのひとつのチャレンジとして、どこか懐かしいんだけど色あせない、キラキラとした“THEサマーチューン”をどうしても作りたかったんですよ。で、どうせやるんだったら、以前から仲良くしてもらってる摩季ちゃんとデュエットするのが面白いんじゃないかなと。ツアー真っ最中で忙しいってことも知ってたんだけど、絶対やりたい気持ちが強かったから直でLINEさせてもらったんですよね(笑)。
大黒:うん。直接、連絡が来た。やっと来たね~って思ったよ(笑)。近年の遊助くんはすごくいい顔になってきたし、音楽活動もしっかり頑張ってるのを私は知ってたからね。そろそろかな~と思ってたら、ついに来たね~っていう(笑)。
遊助:なんか魔女みたいになってんだけど(笑)。
大黒:私としても他のアーティストのところに参加できるのはすごく刺激的なんですよ。だから思いきり盛り上げちゃお!たしかにスケジュール的には厳しかったけど、こういうのは別腹だからね(笑)。
■歌詞で遊助が書いた女の子、超絶キューテーちゃんだよね。ほどよくピュアで、ほどよくズルさがあって
──遊助さんは多感な頃に大黒さんの楽曲をたくさん聴いてきたようですね。
遊助:高校生のときは特によく聴いてましたね。野球部時代に僕のことを支えてくれてたコーチが摩季ちゃんの大ファンで。いつも聴かせてくれてたんです。だから今回のコラボはめちゃめちゃ楽しみで。しかも、初めましての方とやるわけではなく、もう人間としてもいろいろ知った状態でのコラボですからね。絶対面白いものになるなっていう期待はありましたね。
大黒:コラボが決まった後、すぐにこの「トコナツ」のデモが送られてきたんですよ。で、歌詞はどうしようかって話になって。
遊助:そこで「遊ちゃん書いて」って言うから、「いやいや俺が書くんかーい!」みたいな(笑)。女子の気持ちを歌う曲にしようと思ってたから、僕としては摩季ちゃんに書いてもらうのがいいかなと思ってたところがあったんで。
大黒:もちろん私が書いてもよかったんだけど、夏の曲で私が歌詞を書くと、遊助名義の曲なのに私っぽくなりすぎちゃうよなって思ったんだよね。それよりは私が遊ちゃんの世界に飛び込むほうが絶対面白いものになるんじゃないかなって。
遊助:たしかにそうかもしれないけどさ、最初は結構慌てましたよ。女子の気持ち、書けるかな~?って。
大黒:でもこの歌詞で遊助が書いた女の子、超絶キューテーちゃんだよね。ほどよくピュアで、ほどよくズルさがあって。かわいいなぁと思った。言葉遣いが完全に私だけどね(笑)。
遊助:うん。そこはイメージした(笑)。
大黒:ちょっと上から目線気味なんだけど、実は従順。S気味なドMみたいな。まんまだよね(笑)。
遊助:しかも憎めないっていう。普段の交流の中で知ってる摩季ちゃんの人柄からインスパイアされて、こういう女の子の物語が出たんだと思う。
大黒:相手を突き離しておきながら、でもチョロチョロついていくんだよね、こいつは(笑)。
──大黒さんのパブリックイメージしか知らない人はもっと強い女性像を書くような気がしました。そこはプライベートも知っている遊助さんならではなのかなと。
遊助:たしかにそうかも。俺、摩季ちゃんが強いって思ったことないもん。
大黒:私の曲は前向きで強いって思われがちだけど、“夏が来る”って叫んでるのは夏が来てない人の歌だし、“熱くなれ”って歌ってるのは熱くなれてない人の歌だからね(笑)ステージに立てば別人のようにはなるけど、それはドラゴンボールと一緒。メイクしてヒール履いて、ギターを持ったりスーパーサイヤ人になるけど、普段はちっこい孫悟空ですから。
遊助:あはははは。
大黒:でもこの人(遊助)はあんまりプライベートも変わらないんですよ。普段からアッパーだし。そこがうらやましい。
■どこを歌ってもらっても摩季ちゃんっぽくなるんですよ。歌に人間味がちゃんと出るのが最大の魅力
──「トコナツ」の持つアッパーな雰囲気は遊助さんのイメージまんまですよね。
大黒:そうそう。太陽のまぶしさを感じさせてくれて、底抜けに明るいところが超絶わかりやすくて気持ちいいんですよ。夏に遊びに行こうってときにごちゃごちゃ言わないじゃないですか。時代的にもこのわかりやすさがちょうどいいっていうか。それがほんとに遊助らしいと思った。ふたりで歌い合うのもすごく楽しかったよね。
遊助:そうだね。歌録りは一緒の日にやったんですけど、ものすごく楽しかったし、不思議な感覚もあったかな。「あの大黒摩季が目の前で歌ってる!」みたいな(笑)。どこを歌ってもらっても摩季ちゃんっぽくなるんですよ。歌に人間味がちゃんと出るのが最大の魅力。大先輩のそういった部分を間近で見られたことが、本当に幸せで楽しかったですね。
大黒:レコーディングは遊ちゃんが最初に歌って、そこに私がかぶせていく流れでしたね。私の場合、語尾ひとつとってもいろんなパターンをやって聴いてもらう感じなんですよ。
遊助:そうそう。「こういうキャラはどう?」みたいな感じでいっぱい提案してくれるから。
大黒:そういった作業は、遊ちゃんが書いてくれた線画の女性像に色を塗ってるみたいな感覚で。言わばこの曲プロデューサーは遊ちゃんなわけだから、彼好みの女の子になっていくようにどんどんカラフルにしていくっていう。その作業は私もすごく楽しかったですね。自分で言うのも何ですけど、私みたいなハスキーな声はいろんな表情が出せて便利なんですよ。「こんなエロい声もあるよ」とか言いながら、いろんな女子になりながらレコーディングはキャッキャしてました(笑)。
遊助:めちゃくちゃ刺激的なレコーディングでした。ただ、この曲はキーがとにかく高いんですよ。ライブで歌うことになったらかなり大変そう。
大黒:レコーディングは頑張ってたよね~。
遊助:俺も結構高いとこまで出るタイプなんだけど、ブリッジのところなんかは歌いながら“高っ!”って思った。この曲はマジでキツイですよ。でも摩季ちゃんはもっと上まで出るっていうから、「もう勘弁してくれ!」っていう(笑)。
大黒:でも遊ちゃんの声は高くてもキンキンしてないからいいよね。耳が痛くならないっていう。しかも前よりは高音がより出るようにもなったよね。
遊助:え、本当?
大黒:うん。スコーンと抜けてるもん。ソウルマンみたいな感じだから聴いてて気持ちがいい。この曲のキーはね、私の中域から高域のいいところと、遊ちゃんの華のある高音域が使われてますから。最強の曲ですよ、ほんとに。
遊助:マジか!摩季ちゃんにそう言ってもらえただけで、このコラボをやって良かったなって思いますね。
■「トコナツ」で一緒に青春時代にトリップできて楽しかった
──大黒さんは昨年30周年を迎えました。来年15周年を迎える遊助さんからすると、倍以上のキャリアを持つ大黒さんが今も現役でバリバリ活動されていることは大きな希望にもなるんじゃないですか?
遊助:30年以上のキャリアってね、純粋にすごいことだなって思いますよ!ほんとに尊敬しますよね。ただ自分のことに置き換えるとね、ここから倍も続けることが果たしてできるのかっていう気持ちにはなりますよね。いろんなことを考えながら、大変なことも山ほどあった15年を振り返ると、“もうムリ!”みたいな(笑)。
大黒:いやいや大丈夫。あと15年経ったらね、私のように仙人みたいな境地になるから(笑)。30年もやってると、自分では作るつもりもなかった“大黒摩季像”みたいなものが勝手に確立されるんだよね。で、それはある意味、自分にとっての実家、返る場所みたいにもなるから、もうなんだってできるようになるんですよ。そうなってくるとまた楽しくなるよ~。今回のコラボだってそうでしょ。大黒摩季ではできないことを人ん家でやるのが本当に楽しいし、そこで出会える新しい自分に刺激をもらえることもあるしね。「トコナツ」で一緒に青春時代にトリップできて楽しかったじゃん。
遊助:たしかにそうだね、うん。でも30周年って、まだ自分には想像できないなぁ。摩季ちゃんみたいなスーパーな精神力、人間としてパワーがないとできないことだと思うから。ほんとリスペクトの気持ちしかない。
大黒:物事への考え方もどんどんシンプルになっていくから大丈夫よ。好きなことだけやっていけるようにもどんどんなっていくし。私から見れば、今の遊助が音楽を通して戦っている姿もすごく素敵に思えるしね、年齢を重ねて行くと、どれだけ「頑張れ!」って歌ってた人でも、「頑張んなくてもいいよ」っていうメッセージに変わっていくもの。そんなときに遊ちゃんの青春っぽさのある強いメッセージを聴くと、また昔の気持ちを取り戻せるところがあるの。最高のアンチエイジングになるっていうか(笑)。だから遊助はこれからもいろんなことにもがきながら、戦いながら前に進んでいけば、気づいたら20周年、30周年になっているんだと思う。で、年齢とキャリアを重ねた人には目の前にいろんなご褒美が落ちてくるから、それを楽しめばいいとも思うしね。
遊助:摩季ちゃんに言われると説得力あるよね(笑)。
大黒:まぁとにかく今の遊ちゃんと私から生まれた「トコナツ」をたくさんの人たちに楽しんでほしいよね。今のふたりを掛け合わせたら、思いきりスパークルしちゃったっていう(笑)。今時ないよ~、こんなにNo憂いな曲は。一瞬たりとも、しみったれたところがないんだから。
遊助:ガツンとレーザービームで撃ち抜くような気持ち良さがあるもんね。今年の夏はこの曲で楽しんでもらたらめちぇめちゃうれしい。
大黒:海辺とかでもギャンギャン流してもらってさ。あと、これは絶対に男女でデュエットしてもらいたい。
遊助:あ、そうだね。絶対楽しいと思う。
大黒:みんなでコロナ5類になるし、久々濃厚接触すればいいよね(笑)。
遊助:あははは、間違いない(笑)。あと、僕のライブに摩季ちゃんもいつか遊びに来てくれるらしいんで。それも楽しみですね。
大黒:私のライブにも出てもらいたいしね。(※インタビュー後、神奈川公演に出演)曲でのコラボもまたやりたいなって思うんですよ。何部作にしようって言ってたっけ?
遊助:季節をまたいで夏、冬、春の3部作とかにしてもいいんじゃないかなって。
大黒:そうね。次は私が曲書いたりしてもいいしね。楽しみ~。
■笑って歌って踊って元気になって、本来あるべきものを4年ぶりに取り戻して
──では最後に遊助さん。アルバム『遊 are the one』を引っ提げ、7月からスタートするツアーについて一言お願いします。
遊助:もちろん僕が最高のパフォーマンスを届けるっていうのが大前提ですけど、今回のツアーはね、完全にみんなの声を聞きに行きます!みんなの声が発するエネルギーにはものすごいものがあるので、それを浴びられるのが本当に楽しみですね。この3年間で溜め込んだイヤなことを全部持ってきてください。それを消化する自信が僕にはあるので。とにかく笑って歌って踊って元気になって、本来あるべきものを4年ぶりに取り戻して、最高の思い出を作りましょう!
INTERVIEW & TEXT BY もりひでゆき
PHOTO BY 大橋祐希
楽曲リンク
リリース情報
2023.3.22 ON SALE
ALBUM『遊 are the one』
ライブ情報
遊助ライブ情報
「遊助 LIVE TOUR 2023」
https://www.yuusuke.jp/live/
大黒摩季ライブ情報
MAKI OHGURO 30th Anniversary Best Live Tour 2022-23
https://maki-ohguro.com/live/
プロフィール
遊助
ユウスケ(上地雄輔)/1979年4月18日生まれ。神奈川県横須賀市出身。ドラマ、映画、バラエティ、CMと多岐にわたり活躍。幼稚園時代から野球を始め、野球の名門・横浜高等学校を卒業。2009年3月に“遊助”としてシングル「ひまわり」でメジャー・デビューし、現在シングル33枚目オリジナル・アルバム11枚をリリース。そして2022年では新たな取り組みとして「浪漫飛行」「さすらい」のサンプリングカバーに挑戦し、新しい表現を発信し続けている。
プロフィール
大黒摩季
オオグロマキ/1992年「 STOP MOTION」でデビュー。2作目のシングル「DA・KA・RA」を始め「チョット」「あなただけ見つめてる」「夏が来る」「ら・ら・ら」などのミリオンヒットを立て続けに放ち、1995年にリリースしたベストアルバム『BACK BEATs #1』は300万枚を超えるセールスを記録する。1997年の初ライブでは有明のレインボースクエアに47,000人を動員し、その存在を確固たるものにする。その後も毎年全国ツアーを継続し、精力的に活動するも2010年病気治療のためアーティスト活動を休業する。2016年8月、ライジングサン・ロックフェスティバルでの出演を皮切りに、故郷である北海道からアーティスト活動を再開。
遊助 OFFICIAL SITE
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大黒摩季 OFFICIAL SITE
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