2023年1月からTVアニメが放送中の多次元アイドルプロジェクト『UniteUp!(ユナイトアップ!)』に登場するアイドルグループの中から毎回、1組をピックアップし、2次元のアイドルと3次元の声優の魅力に迫る連載企画。
最終回となる第4回目には、怪我を理由にアイドルを引退し、次世代にバトンを渡すために芸能プロダクションを立ち上げた、伝説的なアイドルデュオ・Anela(アネラ)を演じた斉藤壮馬と中島ヨシキが登場。これまでに数多くのメディアミックス作品に参加してきたふたりに、『UniteUp!(ユナイトアップ!)』ならではの魅力を聞いた。
■自分たちが先輩たちからもらってきたものを今度は次に託せるような立場で関わらせてもらえるんだなと
──今回はおふたりに、多次元アイドルプロジェクト『UniteUp!(ユナイトアップ!)』のアニメ放送が始まってから感じたことをおうかがいしたいと思ってます。
中島ヨシキ(以下、中島):僕らはレコーディングから始まって、アフレコは放送前に終わってしまっていて。アニメのオンエアがスタートしたときは、“ようやくだな”っていうのはありつつも、僕たち以外のキャストの皆さんはレッスンがあったりしていたので、みんなが頑張ってるなっていう気持ちのほうが大きかったかな。
斉藤壮馬(以下、斉藤):そうだね。我々的には、プロジェクトの全容を知るよりも先に歌を録り始めていて。だから、それぞれのキャラクターたちがどんな声で、どんな芝居で掛け合いをしているんだっていうことが、出来上がりを見て、改めてしっくりきたという感覚でしたね。
──声優初挑戦という俳優さんやミュージシャンが多数参加していました。
斉藤:だからこそ、我々の発想では出てこない柔軟なアプローチがたくさんあったなと思います。ふたりでもよく話してたんですよ。世が世なら全員で掛け合いができたらよかったよねって。
中島:そう。お互いにいい影響を与え合えたんじゃないかなって思いますね。
斉藤:でも、コロナ禍だということもあって、特に僕らは他の方とは収録ができなくて。
中島:だいたいひとりかふたりだったね。
斉藤:そこも含めて、オンエアを見て、“このシーンでこういう表現を持ってくるんだ”っていう新鮮さはありましたね。
中島:アニメーションに声を当てる仕事ではない人たちがアフレコに参加するっていうことが今となっては珍しくもないし、だからこそのいろんな化学反応があって。今回に関しては、逆に、僕と壮馬の声のほうがちょっと浮いているようなバランスのほうが、新人3組とAnelaのいい対比にもなっていたのかなと思います。
──伝説のアイドルデュオ・Anelaとして、このプロジェクトに参加することになったときはどんな心境でしたか。
中島:メインの3ユニットの子たちが大変なんだろうなって。
斉藤:あははは。これも最初のときにふたりで話してたんですけど、我々よりもっと若い世代のキャストさんに対して、先輩的なポジションで作品に関わるようになったんだなって。キャリアっていうほど長くもないですけど、時代の流れみたいなものを感じて。自分たちが先輩たちからもらってきたものを今度は次に託せるような立場で関わらせてもらえるんだなというのは、とても感慨深かったですね。
中島:うん、そうだね。そういう立場になったんだなって思いました。
──アイドルとして後進にバトンを渡すというAnelaのポジションとも似ていますよね。
斉藤:そうですね。でも、自分たちが出せるものはもちろん収録で出していたつもりですけど、先ほども言ったように、収録でほとんど掛け合いができなかったので、直接、何かを伝えられる機会がなくて。もし同じ収録の時間帯であったら、もっと渡せるものがあったのかなという口惜しさというか、もどかしさはありましたね。
中島:このふたり以外では、あんまりコミュニケーションが取れてない状態でアフレコが終わってしまったんで。
──Anelaの登壇の振り返り上映会では楽屋にJAXX/JAXXのメンバーが挨拶に来たりしてましたね。
中島:なんか慣れないですけどね。
斉藤:たしかにね。ずっと自分たちが行く側だったから。
中島:まだ、そういうむずがゆさみたいなのはあるかな。ま、誰しもが、先輩になっていくんだなっていうのを実感するようにはなりましたね。
■まったく別のジャンルの曲が、ひとつの作品の中に集まってるっていうのは贅沢だし、面白い
──これまでの経歴を振り返ると、壮馬さんは『アイナナ』『あんスタ』『ヒプマイ』『刀剣』、ヨシキさんは『アイマス』『JAZZ-ON』『Dreaming』と、おふたりはこれまでに様々なメディアミックスプロジェクトに参加してきてます。今回の『UniteUp!』に関して、どこに新しさや独自性を感じてますか。
中島:『UniteUp!』は各ユニットごとに音楽プロデューサーがついていて、レーベルも違っていて。そこが大きな差だなと思いますね。だから、キャラクターソングというよりは、アーティストとして面倒を見てもらっているような感じがしますよ。特にPROTOSTARたちは、より力が入ってると思うんですけど、音楽プロデューサーが違えば、ユニットの方向性ももちろん違うし、まったく別のジャンルの曲が、ひとつの作品の中に集まってるっていうのは贅沢だし、面白いしなと思いますね。あと、キャストが告知される前からYouTubeチャンネルでカバー曲やオリジナル曲がアップされ続けていたっていうのも現代的というか、『UniteUp!』ならではの違いを感じました。『UniteUp!』に出るよって発表する前から、もう曲は上がってたっていう。
──そうですね。おふたりだけは早速、バレてましたけど。
中島:あはははは。そうですね。YouTubeに上がっていたAnela「TARGET」のMVのコメント欄に、「ヨシキと壮馬じゃね?」って書かれて。バレないと思ったんだけどな。
斉藤:(笑)僕も、今、ヨシキが言ってくれたことと同じ気持ちを抱いてました。すごく現代的な試みをいろんな角度から行っているなと思いましたし、ひとつのユニットの中でも、様々な方向性の楽曲があって。概ね各ユニットのカラーや強みはありながらも、それで、自分たちを縛り付けていない。アイドル×音楽というプロジェクトだと思うんですけど、音楽的に自分たちで範囲を狭めていないという部分がすごく面白いなと思いました。それと、今回は錚々たるクリエイターの方たちが参加されていて。他のユニットの音楽も聴いているんですけど、僕はJAXX/JAXXになる前の“はる賀”が歌ってる「IN & OUT」が好きで。佐藤千亜妃さんが提供されてるんですけど、僕はきのこ帝国の頃から佐藤さんの音楽が好きだったんですね。そういう、いろんな化学反応というか、まだ何にも染まっていない歌声を持つ彼らとトップクリエイターの皆さんとの組み合わせがすごく素敵だなと思いましたね。
──今回、おふたりでユニットを組むことになったことに関してはどう感じましたか。
中島:ユニットは意外となかったんですよね。
斉藤:そうだね。
中島:共演はいちばんしてるくらいだけど。
斉藤:いっぱい共演はさせてもらってるんですけど、ふたりだけで歌を歌うっていうのはないかな?
中島:なかったと思う。
斉藤:だから、各々の歌声はよく聴いていたんですけど、合わさったときにどうなるのかというのがすごく新鮮でしたね。まさかあんなことになるとは…。
中島:あはははは。
■歌ってみるとふたりの声がすごく似る部分があって。それが逆に、Anelaのユニットとしての唯一無二な部分
──あんなことというのは?
中島:すごく似ちゃったんですよね。
斉藤:キャラクターもパーソナリティも歌声も違うかなと思っていたんですけど、歌ってみるとふたりの声がすごく似る部分があって。それが逆に、Anelaのユニットとしての唯一無二な部分になったのかなっていう気がしますかね。
中島:マネージャーですら聴き間違うくらいっていう。
斉藤:あははは。「ごっちゃになった」って言ってたね。俺もちょっとわからなかった。
中島:俺も最初聴いたときに“これ、似すぎてない?”って連絡しましたもんね。
斉藤:それも、やってみて初めてわかる面白い部分があるプロジェクトだなと思いましたね。
中島:あとは、何よりも、やりやすかったですね。声優さんは一期一会で、現場でお会いして、現場でさよならして、もう何年も会わないみたいなことがままあって。壮馬とは、『UniteUp!』をやってなくても月に何回か一緒にご飯食べに行ってるから。
──寿司部の印象があります。
中島:あははは。やってないな、寿司部。行きたいなー。
斉藤:そろそろね。
中島:それぐらいの関係性だったので、主にふたりでの稼働になるってなったときに何もプレッシャーがなかったのがありがたかったです。やっぱり一から人間関係を作るのは、特にデュオだと大変だと思うんですね。ただ、今回、この企画でみんな集まって、初めてユニットを組んだりしてると思うんですけど、みんなすごく仲良くなってるようなので、我々も含めて、その空気感が画面から伝わればいいなと思います。
──お互いはどんな存在ですか。
中島:友達かな?事務所も同じだし、年もふたつしか変わらないし、キャリアもほとんど一緒だし。もちろん、役を争うことも時にはあるけど、役者以前に友達って感じですね。仕事の話もめちゃめちゃするけど、似てる部分もあるし、全然違う部分もあるし、面白いなと思う部分もあるし。気楽にいられますね。
斉藤:今、言ってくれたように、共通の趣味や好きなものもたくさんあれば、真逆な部分もたくさんあると思うんですけど、ひと言で言うなら、「リズムが合う人」っていう感覚ですかね。会話のリズムとか、芝居のリズムとか。技術的にどうかというところとはまた別の領域の話で、呼吸が合うんですよ。いろんな意味で息が合う人だなと思ってますね。
──凛と真音は「初めて自分のことをわかってくれる存在に出会えた」とか、「道しるべだ」ってことをおっしゃってますけど、重なる部分もありましたか。
中島:そこまで重たいものじゃないです(笑)。もっとライトだとは思いますけど、家でふたりで飲んでて、気づいたら朝8時になってるとか。壮馬のギターを借りて弾いてて、壮馬に「違う!ここはもっとこうやるんだ!」って言われたりとか。
斉藤:「手首を柔らかく!」とか、ね。
──劇中にもそんなシーンあった気がするくらいです。
中島:あはははは。高い次元で共鳴してるふたりと比べると、男子高校生みたいな感じですけど、ポップな感じでは似通う部分はあるかもしれない。
斉藤:自分はあんまり、僕個人が共感できる、できないみたいな部分をそんなに芝居に使わないタイプなんですけど、今までお話ししてきたように、我々の関係値が近いっていう会話のテンポ感や間の取り方という部分は自然と出てしまうものなのかなと思いますね。我々がもともと持っている要素が、凛と真音の親密さに繋がるようであれば、それはありがたいなとは思います。
──それぞれの役柄としては、どう捉えてましたか。
中島:すごい、嫌でした。真音のプロフィールに、「天才」って書かれて。
斉藤:天才キャラね。重圧がね。
中島:そう、力不足になってしまうなっていう。僕はそこまで音楽に造詣が深いわけでもないですし、音楽に対してめちゃめちゃのめり込んでた時期があるわけでもない。そういう意味では、似てる部分が少ないキャラクターで、しかも、歌も歌わなきゃいけないし、歌がうまくなければいけない。そういう、ほのかなプレッシャーみたいなのはありましたけど、普段の喋りが超然としてるというか、0.5歩ぐらい上の方に浮いてるみたいなイメージはありましたね。それにしても、天才はやっぱりちょっとプレッシャーありますよね。凛もだと思うけど。
──真音は16歳のときに天才作曲家と称されてますからね。
中島:そんな馬鹿な…と思いますけどね。宇多田ヒカルさんかって感じですよ(笑)。
斉藤:早熟だよね。凛くんは多面的な表情を持っている人だなと思っていて。いつなんどきでも、ルックス通りのキュートなだけではない魅力がある人かなと思ってました。ここは難しかった、大変だったっていうことでいうと、真音に比べて、めちゃくちゃセリフ量がある。
中島:あははははは。助かります~。
斉藤:(笑)真音が天才で、直感的に最初から答えにたどり着けるタイプだとしたら、そのプロセスを言葉で説明するのが凛くんなのかなと思っていて。そこもバランスがいいなと思いつつ、やっていて、いろいろな表情を見せてくれるので、楽しいなというか、ウキウキした気持ちで演じさせてくれる人だなと思いましたね。
■まとまったものを見ると感慨深いものはありますね。ジャケット、めちゃめちゃ綺麗だし
──歌の面で言うと、『希望の声 EP』が各ユニットに先かげてのリリースとなりました。
中島:1曲1曲は、小出しにYouTubeや配信でリリースされていたので、こうやってまとまったものを見ると感慨深いものはありますね。ジャケット、めちゃめちゃ綺麗だしね。
斉藤:音楽もちろんいいんですけど、絵がめちゃくちゃ綺麗だなっていうのは、この作品の強いポイントかもしれないですね。一瞬で目に留まってしまうというか、引き込まれる感じがある。
中島:アニメーションは間違いなく魅力のひとつだからね。
斉藤:ダンスも凄まじいよね。
中島:そこはキャラクターに頑張っていただきました。
斉藤:しかも、ヘッドセットで歌いながら踊ってるんだから。
──いつかおふたりも歌って踊ることになりますか?
中島:いや、凛さんはね、膝をケガしてしまってるので、残念ながら、全部トロッコに乗せてもらって。
斉藤:それはそれで、揺れるから難しいんだよね。でも、キャラクターの設定上、踊ることはないと思います。
──(笑)全4曲が収録されていますが、特に思い入れのある曲はありますか。
中島:「TARGET」は去年の2月にレコーディングしたんですよ。配信リリースが4月で、壮馬の誕生日に近いっていう話をして。
斉藤:ああ、したね、そう言えば。
中島:だから、もう1年ぐらい経ってるんですけど、いちばん最初の曲だったんで、すごく印象には残ってますね。Anelaという名前もまだあったかなかったかぐらいのタイミングで、真音というキャラクターが声を出して演じているわけではない時期だったので、最初にスタジオで、どういう人なのかなっていうのをディスカッションして。この見た目で、結果としてああいう喋り方をしているキャラクターだけど、歌ってるときは、結構激しいというか。「人が変わったようになってほしい」というリクエストがあったんで、あんまり普段の真音っぽいっていうのは意識せずに、楽曲に憑依するっていう方を意識したのは覚えてます。
斉藤:僕も「TARGET」が1曲目の収録だったので、すごく印象に残っていて。凛くんも、1回ボイステストしたぐらいで、本格的な収録は始まっていなかったので、どういう歌声にするかを話し合って。オンリーワンな歌唱のアプローチにするにはどうすればいいかというのを最初のレコーディングでディスカッションさせてもらった結果、これもさっきのキャラクター造形と近いんですけど、いわゆるザ・キュートみたいな感じではない作り方にしていて。真音と一緒で、曲によってもそうだし、1曲の中でも表情を変えられるというのが、たぶんAnelaのふたりのプロフェッショナルな部分なのかなというところに着地できて。その次が「君の手」だったんですけど、「TARGET」の挑戦的な感じからバラードに変わったときにも、「TARGET」のディレクションがあったから、特に迷うことなく、曲の世界に没入できて。個人的には「君の手」がすごく好きですね。メロウだし、ふたりっていうメンバー構成の良さがすごく生きてる曲だなと思いますね。
中島:めちゃめちゃ難しいですけどね。
──生のライブでおふたりでのハーモニーを聴きたいですね。
中島:ユニゾンがないので、ライブでやるとしたら、もうお互い違うところを見て。
斉藤:ひっぱられないように無視してね。
■ユニットの垣根を越えたような楽曲とか、全員曲とか、いろんな形で歌の幅ももっと広げられる
──『UniteUp!』の今後におふたりはどんなことを期待してますか。
中島:やっぱ長く続くものにしたいですね。せっかくみんな頑張ってるんだし、『UniteUp!』が決まったから上京してる子もいて。人生をかけてる子たちがいるんで、ここはひとつ、ソニーミュージックさんに頑張ってもらいたいですね。でも、アニメがすべてじゃないというか。アニメがゴールではないと思うので、それがリアル活動なのか、アニメの2期なのか、彼らが実写でドラマや舞台をやるのか…。それがなんなのかは全然わかんないですけど、多次元アイドルプロジェクトなんで、ご法度がないというか。何をやってもいいと思うんで、なんでもやっていただいて、たまにMCで呼んでいただいて。
斉藤:「うんうん」って頷いて。
中島:あははは。それでお賃金がいただけたら最高です。
斉藤:(笑)キャラクターボイスを今後も何かしらの媒体で表現できるチャンスがあるのであれば、今度こそみんなと掛け合いをしたいなという気持ちもあります。あと、曲でいうと本当にこの先どういうふうに展開をしていくのかまったく知らないんですけど、シャッフルとかね。
中島:たしかに。
斉藤:ユニットの垣根を越えたような楽曲とか、全員曲とか、いろんな形で歌の幅ももっと広げられるんじゃないかなと思うし。
中島:全員曲、俺たち歌ってないしね。
斉藤:そうなの。あとは、実際のアーティストさんとの歌唱コラボみたいなものもやれる気がする。
中島:ありそうだよね。対バンとかもできたらいいね。
斉藤:そうそう。面白そうだよね。
中島:観にいこう。
斉藤:最前で観よう(笑)。いろんな想像が思い浮かぶし、まだまだ可能性は無限に広がっているんじゃないかなと思いますね。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 大橋祐希
楽曲リンク
リリース情報
2023.2.22 ON SALE
EP『希望の声 EP』
プロフィール
Anela
アネラ/伝説的な人気を誇ったアイドルデュオ。怪我を理由にアイドルを引退し、次世代のアイドルを育てるため、芸能事務所“sMiLeaプロダクション”を設立した。子役出身の人気俳優・大月凛(おおつきりん)25歳=斉藤壮馬(さいとうそうま)、新進気鋭の若手作曲家・辻堂真音(つじどうまおと)27歳=中島ヨシキ(なかじまよしき)。2月22日にEP『希望の声 EP』をリリース。
『UniteUp!』OFFICIAL SITE
https://uniteup.info/