SNSで大人気のクリエイティブアーティスト・あさぎーにょがSunny Sunny 名義で、3月2日=サニーの日に音楽プロジェクトを始動させた。
上京から10年、ずっと胸にあった音楽への思いや、なぜあさぎーにょではなく“Sunny Sunny”として歌うのか、彼女の思いにひとつずつ丁寧に触れていく。
■Sunny Sunny音楽の原体験
──ソニーミュージックでのデビューは、Sunny Sunnyがずっと温めてきた音楽への思いが、ひとつの形になる瞬間です。その大事な日を祝して、今日はこれまでの歩み、そこにあった思いを、時系列で紐解いていきたいと思います。まず、音楽との出会いについて聞かせてください。
Sunny Sunny:物心ついた頃から歌うことが好きで、将来は歌手になると勝手に決めていたんですけど、音楽に触れた体験として強く印象に残っているのは、小学校3年生の時に家族で行った沖縄(竹富島、小浜島)なんです。島の素晴らしさに家族全員が感動して、私自身もなんか自分の細胞が盛り上がる感覚を覚えました。そこで出会った人たちに、「次、来る時は必ず三線マスターしてくるから」と宣言して、実際旅行から帰ってすぐ、寝屋川の三線教室にひとりで通い始めたんですよ。
──三線は歌いながら弾くんですよね?
Sunny Sunny:はい。その教室がやっている、沖縄料理を提供する居酒屋さんのステージで、発表会みたいな感じで立たせていただいたりもしました。
──時々歌い回しでエキゾチックな匂いがするのは、そんな背景があったからなのかも。
Sunny Sunny:たぶんそうだと思います。小学3年生から小学校卒業まで習っていたので。今はもうそのクセもだいぶ抜けましたけど。
──中学、高校はどのように過ごしたのですか?
Sunny Sunny:中高大一貫の女子校に進み、中学ではテニス部に入りました。音楽と言えるようなことはやってなかったんですけど、当時YUIさんに憧れていたので、YUIさんの曲を歌ってモバゲーにひっそり投稿したりとかはしてましたね。高校もそのままテニス部だったんですけど、歌への気持ちは募るいっぽうで、いろんなオーディションに応募してましたね。
──そうなんですか!
Sunny Sunny:なんとかして歌手になれないかなとばかり思ってました。高2になった頃には、自分の力で音楽活動をやろうと思って、地元でイベントを開催したんですよ。もちろん、私の歌だけじゃお客さんは集まらないから、ダブルダッチで日本一になったチームを呼んだり、同じように歌を志している子に声をかけたりして。
──それは逞しい。いざ開催するとなったら、会場のことなどいろんな人との交渉もありますよね?
Sunny Sunny:地元の大人の人たちともたくさん話して、随分協力していただきました。私の出番でギターを伴奏してくれる方を探すために、大学の文化祭のステージを観に行って、直接オファーをさせてもらっていたりしました。
■歌手を目指して上京。夢と現実を実感する日々
──大学へは?
Sunny Sunny:直前まで迷いつつ、大学進学はしたんですけど、3~4カ月後には、「何のために通ってるんだろう?」と思うようになりました。夢を追いかけるために東京に行こうと決めて、バイトをかけ持ちでお金を貯めて、ちょうど10年前に上京しました。
──その際、具体的に目指していたことや場所はあったのですか?
Sunny Sunny:それが本当になかったんですよ。“歌手になりたい”という漠然とした思いだけで、何のツテもなく。上京してもやってることは高2の頃と一緒でしたね。逆に地元ではあったネットワークがないぶん、ブッキングライブも難しくて。ただボイトレには通ってたので、そこで先生と課題として作った曲のトラックはあったんです。なので、アンプを担いで、フライヤーを作って、路上ライブを始めました。
──ちなみにどのあたりで?
Sunny Sunny:メインにしてたのは新宿西口です。敵は雨風でしたね。歌ってる最中に風でフライヤーが飛んで行ったりすると、「もうイヤ!」ってなることもありました(苦笑)。でも、CDの売り上げがバイトの実入りより良い日もありました(笑)。
──そういった活動がいつか何かに繋がる、という淡い期待もありつつ…?
Sunny Sunny:もちろん、その一心でやってたんですけど、そう上手くはいかなくて、引き続きオーディションを探しては受ける日々でしたね。あ、それで思い出したんですけど、オーディションの募集要項には「歌手になりたい理由」を書くところが必ずあるんです。私はそこで毎回行き詰まってました。たぶん「人に感動を与えたいから」とかが常套句だと思うんですけど、私は、それでは自分を美化しているというか、嘘をついてる気がして書けなくて。そんなこと言ったら、路上ライブも「人生を賭けて私がいちばんやりたいことなのか?」と思うようになってしまったんですね。
──なるほど。
Sunny Sunny:歌うという行動自体はめちゃくちゃ好きだし、ボイトレに通うこともすごく楽しいんですけど、その根本的な自問自答が始まると埒が明かなくて、生活すべてがどんどんしんどくなっていったんです。「私、何をしてるんだろう?」って沈みがちな毎日を送ってました。暗黒期でしたね。
■一度は挫折しかけた夢が動き出す
──たしかに「なぜ歌いたいのか?」という問いかけを始めたら、哲学的な領域に入ってしまう気がします。そこから、どう自分と折り合いをつけていったのですか?
Sunny Sunny:一旦「もう音楽から離れよう」と思い、「とりあえずバイトしよう」と気持ちを切り替えたんです。ちょうどその頃、友達繋がりで動画キュレーションをするスタートアップの会社と出会い、インターンで入りました。今でいうTikTokみたいな感じのアプリを作っている会社で、ユーザーが好きなものをどんどん自動でキュレートしてくれるというのがウリ。私はそのプッシュ通知となる動画を選ぶ業務に携わっていたので、もう片っ端からいろんなYouTuberさんを観たんです。そのうち、「私もインスタとかTwitter感覚でYouTubeをやってみようかな」という気になりました。そうしたら、また歌も出せるし…と、頭の隅では思ってましたけど、当初はとにかくやってみよう! だけで始めました。
──最初にアップしたのは、どんな動画でしたか?
Sunny Sunny:買って間もない使い勝手の良いフライパンがあったので、それがいかに優れているかを紹介しましたね(笑)。そこから1年半、毎日投稿を続けたら、好きなことがどんどん増えるという連鎖が起こっていったんです。
──なぜそういう現象が起こったのでしょう?
Sunny Sunny:YouTubeで何かを発信するには、「自分は何が好きなのか?」「なぜそれが好きなのか?」と、つねに自問自答していないといけないし、発信したことに対してコメントが返ってくると、「あ、私ってやっぱりポップなものが好きなんだ」とか、そこから気づくことも多いんです。毎日それを繰り返すうちに、自分の世界観がどんどん見えてきて、まずYouTubeで自分の世界観を究めていくというフェーズに入りました。
──期せずして、自分を深掘りすることができたのですね。
Sunny Sunny:音楽もひとつの表現だけど、YouTubeの動画もまたひとつの表現方法だなと思って、撮影に関することから話すテンポに至るまで、一つひとつ突き詰めていきました。そういった実体験から、出口が何かに関わらず、やっぱり私は何かを表現することが好きなんだと気づいたんです。ファッションでの表現もそう。音楽からは離れていましたが、「夢を諦めた」とか「音楽が好きじゃなくなった」という感覚ではなく、ずっと胸の中で温めていました。
■行動のすべてに共通する「ワクワクを抱きしめよう」
──ちょっとへんてこで、レトロポップな色味が特徴的な“へんてこポップ”をテーマに活動する、クリエイティブアーティスト・あさぎーにょ は、瞬く間にフォロワー数を増やし、2018年には、新機軸音楽トレンド創出オーディション『Feat. ソニーミュージックオーディション』に挑戦することになります。
Sunny Sunny:音楽がやりたいというのはずっと胸の中で温めていたので、不意に見つけたこのコンテストに、あまり深く考えず「楽しそう」という気持ちだけでチャレンジしてみました。
──1000組から選ばれた23組で、ファイナルまで公開でバズを競い合うという3カ月間。結果、音楽とファッションを繋ぐという斬新なアイディアで、見事グランプリを獲得します。
Sunny Sunny:それまでも自分のオリジナル曲をちょこちょこ発表してはいたんですけど、ファッションも好きだったので、CDの代わりに何か別のアイテムで音楽を届けることはできないか、とずっと考えていたんですね。で、思いついたのが、まず曲のMVを企画して、そこで着る衣装を作って、その衣装のタグにQRコードをつけて音楽を届けるという方法。そこに向けて最初に作った曲が「Kitai」という曲でした。MVの衣装となるパジャマを自分でデザインして、それを商品にして音楽用のQRコードをつけて売ったら、予想以上の人が喜んでくれた。じゃあ次の「Sereal」という曲ではエプロンを作ってみようかな、と、アイディアが広がっていったんです。“あさぎーにょ ”の世界観をファッションとして求めてくれる人がいるとわかって、ファッションに本腰を入れてみる気持ちにもなりました。
▼あさぎーにょ「Kitai」MV
▼あさぎーにょ「Sereal」MV
──生産ラインまで持っていくためには、多くの力を借りなきゃならないですよね。それこそ高2でやったイベントと同じで。
Sunny Sunny:そうなんです。最初のQRパジャマに向けて動いた時の出会いがすごく大きくて、おかげでパジャマ、エプロンとアイテムを順調に増やしていけました。ふと気づいたら相当なアイテム数になってたんで、ブランドを立ち上げようという発想にもなりましたね。本当に奇跡的な出会いでした。当初はファッションも“へんてこポップ”として出してたんですけど、途中で、「それは“あさぎーにょ ”の個性であって、私が作りたいファッションには求めてない」と気づき、“POPPY”(ポピー)というブランド名に変えました。
──“POPPY”のファンから返ってきているものはありますか?
Sunny Sunny:もちろんあります。私の今の活動のすべてを貫いているのは、「ワクワクを抱きしめよう」というフィロソフィー(理念)なんですね。“POPPY”にアクセスしてくれる人の中には、例えば、自分の容姿や年齢的なことで自信を失くしてたり、小さな町では目立ちすぎてかわいい服が着られないと悩んでいたりする人も多い。そういう人たちから、「“ワクワクを抱きしめよう”って思ってたら自分に自信を持てました」と言ってもらえたりすると、すごくうれしいんです。「ワクワクを抱きしめよう」をきっかけに、好きなものを好きと言えるコミュニティが生まれたらいいなと思ってましたから。
──表現、物作りの楽しさという意味では、小さい頃から好きだった音楽も、ひょんな出会いで始めたYouTubeも、ファッションも、根底で繋がっていると思うんですけど、YouTubeやファッションでの世界観がある意味先に完成に近づいたわけですよね。そのプロセスで、音楽に対してはどんなスタンスでいたのでしょうか?
Sunny Sunny:プロジェクトごとのコンセプトに合わせて音楽制作に取り組むというスタンスでした。つまり、「Kitai」にしても「Sereal」にしても、小さい頃の「歌手になりたい」という気持ちが叶えられた、という感覚ではまだなかったんです。
──もっと音楽そのものと向き合って、掘り下げていきたいと?
Sunny Sunny:はい。自分の表現したいメッセージを、お洋服と同じように音楽でもちゃんと届けたいという気持ちはずっとありました。いっぽうで、それがなかなかできないな…という感じもずっと続いていました。
──いろんな活動を通して、すでに自分の思いを表現できているように見えているけれど、ご本人としては、音楽じゃなきゃ表現できない譲れない何かが存在していて、それをアウトプットする方法論になかなかたどり着けなかったということですか?
Sunny Sunny:そうです。そこにたどり着くことができたのは『Feat.ソニーミュージック・オーディション』でグランプリを獲って、今の制作チームと出会えたからですね。音楽的な視点で私の伝えたいメッセージや世界観を深く考えてくれる仲間ができて、それまでやってきた企画的なスタンスではなく、自分の思いをもっとしっかりと音楽で表現していける気がしました。
■“Sunny Sunny”の意味、届けたい音楽
──では、Sunny Sunnyとして音楽で表現したいものとは?
Sunny Sunny:人生という物語の一瞬一瞬を照らす音楽を届けたいんです。Sunny Sunnyは「おひさま」をキーワードにしています。おひさまが照らす先には日向と日陰のどちらもが存在する。ならば、ハッピーでポジティブな日向の部分にも、悲しんだり怒ったりネガティブな影の部分にも、私は目を向けたい。日常の中のどんな一瞬も、人生という物語にとって宝物のようなワンシーンなんだ、と、思ってもらえるような音楽であれたらと。
──「ワクワクを抱きしめよう」に通じますね。
Sunny Sunny:そうなんです! 振り返ると、「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージが見つかるまでは、「私、これ、何のためにやってるんだろう?」「何がゴールなんだろう?」と、ずっと自問自答の日々でした。ものすごい勢いで、自分が好きなこと、嫌いなことをノートに書き出したりして、それを延々と眺めながら自己分析を繰り返し、ある日「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージにたどり着いた。その瞬間、しんどさがすべて消えたんです。
──経験を積み重ねて、自分のコアに到達したのですね。
Sunny Sunny:暗黒期を経て、YouTubeをやってみようとか、服にQRコードをつけて音楽を出してみようとか、本当に小さな好奇心を大事にすることで、自分の未来はどんどん彩られていくと信じることができたので、過去の経験には全部感謝したいです。
──改めてうかがいますが、“Sunny Sunny”というプロジェクト名にしたのは?
Sunny Sunny:おひさまのほわほわ感に通じる包み込むような世界を作りたい、という思いを込めました。
──“Sunny”を2回繰り返したのはどうしてですか?
Sunny Sunny:言葉としての響きの良さもあるんですけど、先ほどもお話ししたように、おひさまの二面性を表現しています。いろんな経験を積んで、ようやく深く音楽と向き合えるようになったと思うので、光があって影がある、影があって光があるということを、私なりに歌っていけたらなと。もちろん、影を織り込んでも、最終的なカタチは誰かを優しく包み込むものでありたい。音楽ってそういうポジティブな変換ができるアートだと思うんです。そこにもようやく気づけました。
──まさにそれが音楽の素晴らしさだと思います。
Sunny Sunny:そもそも私が惹かれたのは、音楽が持つそういうパワーだったのかなと。そう、ワクワクを抱きしめてたら、いつの間にか一周回って、またギュッと音楽を抱きしめてた。そんな感覚を味わってます。ここからはじっくりと、Sunny Sunnyの音楽を育てていきたいと思います。
──メジャーデビュー第一弾の「One Sunny Day」は、そんな心境に相応しい曲ですね。
Sunny Sunny:なんでもない今日の一瞬が、もしかしたら素敵な物語に繋がっているかもって思えるワクワク感いっぱいの曲です。イメージを話したり、ワードを書き連ねたものを渡したりして、シンガーソングライターのましのみちゃんと一緒に作りました。実は私、声質にずっと悩みがあったんです。それをましのみちゃんに打ち明けたことで、自分の声とフィットする曲に初めて出会えました。なんと、ここから5カ月連続でリリースしていきますので、ぜひ、楽しみにしていてください。
INTERVIEW & TEXT BY 藤井美保
▼Sunny Sunny「One Sunny Day」MV
■楽曲リンク
2023.03.02 ON SALE
DIGITAL SINGLE「One Sunny Day」
プロフィール
サニーサニー/SNSで人気を誇る、クリエイティブアーティスト・あさぎーにょによる別名義音楽プロジェクト。“おひさま感”を大切にしたいという思いから名づけられた。“人生という物語の一瞬一瞬を照らす音楽を届けたい”をテーマに、2023年3月2日配信楽曲「One Sunny Day」でデビュー。
Sunny Sunny OFFICIAL SITE
https://www.sunnysunny.jp/