20代前半のニューカマーが次々と登場している現在のバンドシーン。2018年に結成されたスリーピースバンド、Conton Candyも急激に注目度を高めているバンドの一つだ。
紬衣(Vo/Gu)、楓華(Ba/Cho)、彩楓(Dr/Cho)によるConton Candyは2021年から本格的な活動をスタート。1st EP「PURE」の収録曲「ロングスカートは靡いて」はSpotify週間バイラルチャートに2週連続3位にランクイン。ライブも精力的に行い、出演するフェスやイベントは軒並み入場規制が掛かる等、ライブバンドとしての評価も大きく上がっている。
2月からは3ヵ月連続で配信シングルをリリース。いろいろな思いを抱えながらライブハウスに集まるオーディエンスに向けた「好きなものは手のひらの中」(2月1日リリース)、そして、出会いと別れが交差する春の情景を描いた「桜のころ」(3月1日リリース)からは、このバンドのカラフルな音楽性が伝わってくる。
『THE FIRST TIMES』では、メンバー3人にインタビュー。バンド結成から現在に至る過程、新曲「好きなものは手のひらの中」「桜のころ」の制作、3月に行われる全国ツアー「帰りたくない夜へ」の意気込みなどについて聞いた。
■1年生同士でバンドを組んで、課題曲を演奏して、パートごとにいちばん上手な人が選ばれて
──Conton Candyは高校の軽音部で結成されたそうですね。
紬衣(Vo/Gu):そうなんです。私たちが通っていた高校の軽音部に選抜バンドという仕組みがあったんですよ。1年生同士でバンドを組んで、課題曲を演奏して、パートごとにいちばん上手な人が選ばれて。
──そのときに選ばれたのがこの3人だった、と。
紬衣:はい。そのときは双子(楓華:Ba/Cho、彩楓:Dr/Cho)とあまり面識がなかったから「よろしくね」という感じでした。3人が共通して好きだったのが、KEYTALKで。めっちゃライブに行ってたし、めっちゃグッズも持っていて。
楓華(Ba/Cho):それが最初の頃の話題でした(笑)。
彩楓(Dr/Cho):そうだね(笑)。
──紬衣さんは銀杏BOYZにも影響を受けてるとか。
紬衣:高校生のときからずっと好きですね。これはリスペクトを込めたうえでの表現なんですけど、峯田さんの“最後は実らない”“一歩届かない”という感じにグッと来て。ライブもすごいんですよ。0から100まで全部見せる感じがあって。
──たしかに。楓華さん、彩楓さんがベース、ドラムをはじめたきっかけは?
楓華:小さい頃から低い音が好きだったんですよね。ピアノやフルートを習っていて、低い音のパートをやることが多くて。中学には吹奏楽部がなくて、運動系の部活をやってたんですけど、子どものときに好きだったORANGE RANGEをまた聴きだしたり、たまたまMステ(ミュージックステーション)で観たKEYTALKにハマって、彩楓と「バンドやりたいね!」って盛り上がって。だったらベースだなと思ってはじめました。
彩楓:私も楓華と同じで、ORANGE RANGEやKEYTALKを好きになったのがきっかけですね。ORANGE RANGEはもともとお母さんが好きで、MVやライブ映像を観てから幼稚園に行ってたんです(笑)。KATCHANさん(ex.ORANGE RANGE)、八木優樹さん(KEYTALK)が笑顔で演奏しているのを観て、「ドラムいいな」って憧れを抱きました。
■「完璧な演奏を目指すより、その日の思いを届けることが大事だな」というふうに考えがシフト
──2021年から本格的な活動がスタート。この1年半、バンドもかなり変化したのでは?
紬衣:そうですね。3人でライブをやり始めた頃は、25分、30分の枠をきっちりやることに必死で、心から楽しむ余裕がなかったんですよ。場数を重ねるというか、いろんなライブに出させてもらったり、地方に遠征にも行くようになって、たくさんのお客さんと出会って。そのうちに「完璧な演奏を目指すより、その日の思いを届けることが大事だな」というほうに考えがシフトしたんですよね。そこからは楽しく、のびのびとやれるようになってきました。
──“伝える”ことが大切だと。
紬衣:KEYTALKの皆さんもすごく楽しそうにライブをやってたんですよ。たまにメンバー同士で顔を見合わせてニコッとかしてると、こっちまで楽しくなって。私たちもそういう感じを届けられたらいいなって思ってます。
楓華:最初は手探りだったんですけど、とにかく「楽しいことを詰め込む」ということを念頭に置いて。「(Conton Candyの)ライブを観てよかったな」と思ってほしいし、紬衣が言ったように伝えることが大事だなって。
彩楓:(スリーピースバンドなので)ドラムの位置からもお客さんがよく見えるので、なるべく目を合わせるような気持ちでやってます。ふたり(紬衣、楓華)よりも距離はあるけど、しっかり届けたいなと。
楓華:後ろのほうからね(笑)。
彩楓:ドラムに関しては、“大きく伝える”ことも意識していて。ビートを変化させることで、曲の展開を作りたいという気持ちもありますね。曲調が似たり寄ったりにならないように。
──なるほど。おふたりから見て、紬衣さんはどんなボーカリストですか?
楓華:どんどん成長してますね。
紬衣:ありがとうございます(笑)。
楓華:歌うだけじゃなくて…。
彩楓:ライブでは、気持ちがアツくなると叫んだりね。
楓華:紬衣の叫びはライブの見どころです!ライブの後で「あんなこと言ってたね」って言うと、「覚えてない」ってこともあって。
──ステージの上ではスイッチが入ってる?
紬衣:以前、喉の調子が良くないときがあったんですよ。でも、ステージに立ったら、自分でもびっくりするくらい声が出て、アンコールまでやれて。アドレナリンが出るというか、トラブルを跳ねのけるくらいのパワーが出てるのかもしれないですね。
──ライブバンドですよね。「ロングスカートは靡いて」も、ライブだとさらにエモーショナルになって。
紬衣:ありがとうございます。
楓華:たしかに音源とはちょっと違うかもしれないですね。
彩楓:うん。
──3人のコーラスワークもライブの聴きどころですよね。
楓華:ありがとうございます。それも最初は大変だったんですよ、なかなかマイクに声が乗らなくて。最近は「コーラスが効いてるね」って言ってもらえるんですけど、以前はライブの動画を見て「あぁ…」って落ち込んでました(笑)。
彩楓:今も「あぁ…」ってことあるけどね(笑)。
楓華:“つむ”(紬衣)がいいコーラスを考えてくれるから、それがモチベーションになってます。せっかく彩華と一緒に歌えるので、頑張ってます(笑)。
■3人とも中学生の頃からライブハウスに通っていて、ライブハウスで育ったも同然なんです
──2月からは3ヵ月連続で配信シングルをリリース。第1弾「好きなものは手のひらの中」は、いろいろな思いを抱えながらライブハウスに来る人たちを思い浮かべて制作された楽曲だとか。
紬衣:はい。さっきも言ったんですけど、バンドを始めた頃は右も左もわからない3人だったんですよ。とにかく必死だったんですけど、ライブを重ねるなかで見えてくるものがあって。お客さんに感謝を伝えたいと思ったし、その方法はやっぱり楽曲しかないなって。3人とも中学生の頃からライブハウスに通っていて、ライブハウスで育ったも同然なんです。私にとっては嫌なことを忘れられて、きれいさっぱり浄化できる場所。いろんな思いを抱えてライブハウスに来ているのは、きっと皆さんも同じだと思うし、痛いほどわかるんですよ。そういう思いを歌詞にできたらいいなと。
──楓華さん、彩楓さんにとっても当然、ライブハウスは大事な場所ですよね。
楓華:そうですね。ライブハウスは音楽のすごさを身体で感じる場所だし、ライブをやっていても、(オーディエンスとして)見ていてもすごく心が動くんです。演奏する立場、お客さん、両方の気持ちがわかるし、「好きなものは手のひらの中」をライブハウスにいる人、全員に届けたいと思ってます。
彩楓:いろんな思いを持った人たちが集まって、すごく楽しくて、音楽を生で感じられて。ふたりが言ってくれたことと一緒ですね、私も。現実を忘れられるという意味では、夢を見てるのと同じ感覚なのかも。
──そんなにライブハウスに愛着があると、コロナ渦のときはつまらなかったですよね…。
紬衣:私たちはコロナになってからライブ活動をはじめたんですよ。なのでお客さんが一緒に歌ってくれたり、ギュウギュウになって盛り上がってるところを経験したことがなくて。
楓華:お客さんとの間に大きいアクリル板を立ててライブやったり。
彩楓:感染対策でね。
紬衣:最近はだいぶ緩和されてきて。これからは未知の世界です(笑)。
──「好きなものは手のひらの中」も新たなライブアンセムになると思います。サウンドや演奏でこだわった部分は?
紬衣:私たちにとっては新境地みたいな楽曲なので、音作りも最初は探り探りでした。エンジニアさんとコミュニケーションを取りながら制作したんですけど、歪んでグワーッと来る感じもありながら、ポップさも残したくて。試行錯誤のうえでちゃんと納得のいく音にできました。
楓華:ベースは“ど・シンプル”でいきました(笑)。真っ直ぐに伝えたいと思ったし、全体を支えながら、(フレーズが)動くところはグオッと動いて。特にサビ前のフレーズは「行くぞ!」という感じで弾いてます(笑)。
彩楓:ドラムもド直球ですね。思い浮かべていたのは、ザ・ブルーハーツ。ドラムの音作りも、テックの方と「懐かしい音にしよう」と話しながら進めました。
──そして3月には「桜のころ」をリリース。抒情性、エモさが両方ある楽曲だなと。
紬衣:「桜のころ」はドラムの彩楓が歌詞のベースを書いてくれたんです。物語性がある歌詞だったから、その雰囲気を活かしつつ、エモーショナルな楽曲にできたらな、と。
彩楓:この歌詞は…桜の木って、ずっと同じところに埋まってるじゃないですか、当たり前ですけど。桜の花が咲いている時期は新しい出会いもあるし、寂しい別れもあるけど、桜の木はずっと見守ってくれていて。「悲しいことあっても、また来年、笑顔で会えるように頑張ろう」みたいな気持ちを込めた歌詞にしたかったんですよね。聴いてくれた人のお守りみたいな曲になったらいいな、と。
楓華:ベースのアレンジはめっちゃ苦労したんですけど、歌詞が出来上がってからは、グッと曲の中に入っていけて。爽やかさと悲しさ、強さも感じたし、自分なりに感じたことを詰め込ました。
──卒業シーズンにも合いますね。皆さんが高校を卒業したのは2年前なので、わりと最近ですが。
紬衣:そうですね(笑)。出会ったのは高1なので、案外、長いんですけど。
彩楓:5年だね。
紬衣:濃すぎた5年でした(笑)。
■「このバンドの強みはレンジの広さ」と言えるように
──4月リリースの楽曲も楽しみです。音楽性の幅も広がってますよね。
紬衣:「このバンドの強みはレンジの広さ」と言えるようになるくらい、いろんな楽曲を作りたいと思ってます。今も制作しているんですけど、今までにない要素を取り入れた曲にもチャレンジしていて。
──リスナーとしてもいろんなジャンルの音楽を聴いてるんですか?
紬衣:自分で言うのもアレですけど、かなり広いです(笑)。
楓華:つむはめっちゃ広いですよ。どんな人とも音楽の話ができるので。
紬衣:友達とカラオケに行っても合わせられますね(笑)。ボカロも聴くし、K-POP、アニソンも好きです。
──楓華さん、彩楓さんは?
楓華:最近はスピッツとくるりばっかり聴いてます。去年、どっちも2万分くらい聴いてたんですよ(笑)。高校生の頃はブラックミュージックもよく聴いてました。ファンクとかも好きで、ベースの練習もして。
──ファンクの曲、Conton Candyにも似合いそう。
紬衣:楓華に作曲してもらおう。
楓華:頑張ります(笑)。
彩楓:楓華と同じ家に住んでいるので、聴いてる音楽、ハマる音楽も似ていて。私もスピッツ、くるりをずっと聴いてます(笑)。昔の海外の音楽も好きなんですよ、オアシスとかボンジョビとか。同世代のインディーズバンドの曲も聴いてますね。
──そして3月5日から全国ツアー「Conton Candy pre. Spring Tour 2023「帰りたくない夜に」がスタート。今回は仙台(GUEST/鉄風東京)、名古屋(GUEST/レイラ)、大阪(GUEST/anewhite)、東京(GUEST/osage)の4公演です。
楓華:ツアーは去年に続いて2回目なんですけど、めっちゃワクワクしてます。鉄風東京は同い年のバンドで、『RO JACK』(バンドオーディション)で同じときに入賞して。レイラ、anetwhite、osageも大好きなバンドばかりなので、気合い入ってます!
彩華:“帰りたくない”と思ってもらえるようなライブをやりたいですね。「好きなものは手のひらの中」もしっかり届けたいし、グッズや新曲もあるので、お楽しみの多いツアーになると思います。
紬衣:去年のツアーは私たちが高校生の頃に聴いていたバンドをお誘いして、たくさんエネルギーをいただいて。今回は同世代の仲がいいバンドばかりなので、来てくれる皆さんはもちろん、私たちも“帰りたくない”と思えるツアーにしたいです。前回のツアーにも来てくれた方には“パワーアップしてるな”と思ってほしいし、初めましてのお客さんをグッと引き寄せたいという気持ちも強くて。1本1本、大事にやりたいですね。
■“伝える1年”にしたい
──2023年はConton Candyにとってさらなる飛躍の年になると思います。皆さんはこの1年をどんな年にしたいと思っていますか?
紬衣:彩楓からいきますか。
彩楓:年明け早々から音源を出せて、ツアーもあって。去年とは濃さが違うなという実感がすでにありますね。制作も続けたいし、地方にもたくさん行って、いろんな人に出会いたいなと。頑張ります。
楓華:“伝える1年”にしたいですね。お客さんを大切にしたいという気持ちも強くなってるし、Conton Candyを好きでいてくれる人をもっともっと増やしたくて。1本1本のライブを大事にして、しっかり自分たちの音楽を伝えていきたいです。
紬衣:去年の終わりくらいから活動の環境がガラッと変わって。またゼロからのスタートじゃないけど、今年はさらにガンガンいけたらなと思ってます。楽曲のレンジも広げたいし、ライブも増やして、たくさんの人と出会いたい。音楽漬けの1年にしたいです!
──めちゃくちゃ期待してます!皆さんは音楽以外のことで盛り上がることってあるんですか?
紬衣:3人ともワンちゃんを飼ってるんですよ。あとは好きなアニメの話とか。
彩楓:ファッションのこととか。
紬衣:どうでもいいことが多いですけど(笑)、“隠し事ゼロ”ってくらい、いろんな話をしてますね。
楓華:たしかになんでも話しちゃうね(笑)。
INTERVIEW & TEXT BY 森朋之
LIVE PHOTO BY Ryohei Nakayama
楽曲リンク
リリース情報
2023.2.1 ON SALE
DIGITAL SINGLE「好きなものは手のひらの中」
2023.3.1 ON SALE
DIGITAL SINGLE「桜のころ」
ライブ情報
Conton Candy pre. Spring Tour「帰りたくない夜に」
3/5(日) LIVE HOUSE enn 2nd(宮城県)
GUEST:鉄風東京
3/11(土) CLUB UPSET(愛知県)
GUEST:レイラ
3/18(土) LIVE HOUSE Pangea(大阪府)
GUEST:anewhite
3/21(火・祝) Spotify O-Crest(東京都)
GUEST:osage
プロフィール
Conton Candy
コントンキャンディー/紬衣(つむぎ:Vo/Gu)、楓華(ふうか:Ba/Cho)、彩楓(さやか:Dr/Cho)からなる、3人組ロックバンド。同じ高校の軽音楽部で、2018年に結成。音楽配信サイト「Eggs」の年間ランキング2021ではアーティスト別、楽曲別ともに1位の二冠に輝く。1st EP「PURE」より「ロングスカートは靡いて」はSpotify週間バイラルチャートに2週連続3位にランクイン。MVは現在80万再生を突破。精力的にライブを行いつつ、音楽フェスやイベントでは軒並み入場規制がかかるなど、・ライブバンドとしても着実に成長を続ける。紬衣の胸をえぐるような歌声と、ノイジーでポップなギターサウンド、ふとしたときに身体を貫く切なさ、痛み、苦みや甘さを丁寧に綴った歌詞、双子のリズム隊だからこその唯一無二のグルーヴ感で、観る者を混沌の世界に惹き込む。
Conton Candy OFFICIAL SITE
https://lit.link/contoncandy