the GazettEが結成20周年ベスト盤『the GazettE 20TH ANNIVERSARY BEST ALBUM HETERODOXY-DIVIDED 3 CONCEPTS-』を完成させた。本作は3枚組仕様となっており、「SINGLES」、「ABYSS」、「LUCY」と3つのコンセプトに振り分けられ、全47曲を収録した大ボリューム作だ。ライブを意識して選曲されたという楽曲群は、バンドが内包する3つの音楽要素を明確、かつ濃厚に伝えてくれる作品と言っていい。今回は20年間に及ぶバンドの歴史を踏まえつつ、本作の中身についてメンバー5人に語ってもらった。
■20年間止まらずに活動できたことは大きい
──今作は結成20周年を祝した3枚組仕様のベスト盤になります。改めて、この20年間の歩みを振り返ってどんな印象を持っていますか?
戒:まあ、自分たちの活動を振り返って、20年間止まらずに活動できたことは大きいのかなと。この5人だからできたことだと思うし、充実した20年でしたね。なんでも言い合える関係性というのはあるようでないし、それは活動や制作についても言えることですからね。
REITA:そうですね。20年やってきた感覚はあまりないんですけど、気付いたら20年経っていたんだなと。振り返ると、それなりに長い道のりだったなと。特にロングツアーを回ったときは…昔は71本ツアーをやっていた時期もあったので、残り何本だなという感覚もあり、いつまでも終わらない感じがありましたからね(笑)。ただ、終わると、あっという間に感じるんですけど。
麗:20年やってきて紆余曲折ありながら、いろんな学びもありつつ、経験を積んで成長できたバンドですからね。何よりツアーだったり、ライブで成長してきたバンドだと思うから。自分たちでは今でもライブバンドだと思ってます。
RUKI:なかなか活動していくうえで過去を振り返りながらという余裕も無かったんですが、最近はベストだったり20周年だったりとルーツを振り返ることや自分たちがやってきたことを見つめ直してまた新しいものに進化させるという場面は増えました。バンドで20年やってきて、体感になりますが、あまり長さを感じたことがなくて。20年という道のりはもちろん長いけど、本当に気付けばという感覚ですね。
■当時は今のようにチューニングを落として、ヘヴィな音を出すバンドはほぼいなかった
──初歩的な質問になりますけど、the GazettEが02年結成当時にやりたかった音楽性はどんなものだったんですか?
RUKI:歌謡曲っぽいメロディーのものと、激しめの盛り上げるような曲ですね。それはライブハウスで対バンするために意図的に作っていたものが多かったと思います。旬ももちろんありますが。それが初期の方向性というか、いろんな対バン相手に勝っていかないといけないから。そこで自分たちの武器を作っていくというか。見た目もですけど。当時ライブハウスで人気のあるバンドを必ず超えていく。対バンでそのフロアにいる全員に必ずインパクトを残し、次に繋げるのがモットーでしたね。
麗:周りは演奏のうまいバンドが多かったので、そこに負けないようにという。自分たちは演奏のクオリティが高くなかったから、勢いや演出を考えてやっていた気がします。
REITA:当時は今のようにチューニングを落として、ヘヴィな音を出すバンドはほぼいなかったですね。
──結成初期は誰にも負けたくないという気持ちが何より強かったと?
RUKI:そうですね。結構、闘いという感覚でしたね。本来の意味としては当然なんですけど。
REITA:勢いだけだったから(笑)。
RUKI:みんなで仲良くやろうというより、もう少し言い方が変になってしまいますけど殺伐としてるというか。必死だっただけなんですが、セットリストも当日対バン相手の方のリハを見てその場で事前に組んでたものを変更したりしてましたね。
──音楽的な影響に関してはいかがですか?
RUKI:もともとは兄の影響で90 年代のヴィジュアル系の影響は大きいですね。それまでは知らないジャンルでしたから。そこからは、好きなバンドのメンバーさんが聴いてる洋楽だったり、おすすめしている音楽も聴いたりとかして自分の音楽の幅を広げていってました。
麗:その辺の影響は受けてますからね。
RUKI:皆さん通るところだと思うんですけどね。それから一つのジャンルを深掘りしたり、いろんなジャンルを聴いたりしてました。
■自分たちも何かを取り入れて、融合させるみたいな。そういうことはやっていた
──歌謡曲的な影響というと?
RUKI:ちょうど自分たちがやっている界隈の旬というか、歌謡曲の要素があるものが多かったのもあるんですが、安全地帯とか聴いてましたね。
戒:さだまさしさんとか聴いてたよね(笑)。
麗:当時のヴィジュアル系はいろんなものを取り入れていたし、真新しいバンドが光っていたから。自分たちも何かを取り入れて、融合させるみたいな。そういうことはやっていたと思います。そこで歌謡曲的なものがヴィジュアル系とマッチしていたから。取り入れているバンドも多かったですからね。
RUKI:自分たちのようなジャンルが巷で流れていた時期は昔で言うミクスチャー系も流行っていましたよね。その辺の影響もありますね。もともとそのジャンルが好きだったのもありますが。自分たちは学生だったし、J-POPのような感覚でみんな聴いてましたね。その中の一つにヴィジュアル系もあったから。それでやり始めていくうちに“もっと激しいほうが良くない?”という感じで。聴いている音楽も似ているメンバーだったので、ああだこうだ試行錯誤して今に至ったんだと思います。
──ヘヴィな方向性を推し進めたきっかけのバンドは?
RUKI:いろいろ聴いていたのできっかけとかでは無いんですけど、当時で言うとSlipknotだったり。ベタになりますけど、わかりやすいとこで言うと。
麗:Slipknotの影響は大きいですね。映像を観て、チューニングを合わせたら、ドロップBチューニングだったんです。ここまで落としたら、こういう音になるんだ!って。ドロップBまで落とすという発想もなかったから。重くする術も知らなかったので、見よう見まねでしたからね(笑)。
■どうオリジナリティを出せばいいのかなと試行錯誤してた
──いろんな要素を取り入れつつ、自分たちのオリジナリティがあるものを作りたいという気持ちは強かったんでしょうか?
RUKI:最初のうちはそこまで考えてなかったですね。バンドをやることに必死でしたから。ただ明確なコンセプトや音楽の縛りは持たないようにはしてましたね。
麗:ただ、いろんな要素は取り入れつつも、気持ちの中ではどうオリジナリティを出せばいいのかなと試行錯誤してました。
──そして、04年でSHIBUYA-AXでワンマンを成功に収めた後、06年は日本武道館公演、10年に東京ドーム公演と会場の規模を広げて、バンド的には駆け上がっている時期だったと思いますが、この頃はどんなことを考えていましたか?
RUKI:一生懸命でしたね。ただ、登っている感覚に関してはどう思っていたのかなあ。ただ、バンドを始めた頃よりももっと音楽や演出にストイックになってはいきましたね。
戒:周りはだいぶ意識していたんじゃないかな。同じシーンの中で負けたくない気持ちはあったし、単純に会場の規模もそうだし、自分たち的にも前回の会場を上回るところの規模でツアーファイナルを迎えたい。それが当時のモチベーションになってましたからね。
REITA:初めての会場も多かったので、楽しさはありましたけど、それよりも必死に食らいついてるような気持ちでしたね。
──なるほど。海外ライブに関しては、07年にはヨーロッパツアーに行ったりと、これまでもワールド・ツアーも何度か経験されています。バンド的には日本以外の国でもライブをやりたい気持ちはあったんですか?
麗:それは全然なかったですね。
REITA:ヨーロッパでライブをやらないか?と言われて、そこでファンの存在を知った感じでしたからね。
■修行じゃないけど、どんな環境でも一貫したパフォーマンスが出せるようにしなきゃいけない
──日本と海外のオーディエンスで反応に違いは感じますか?
RUKI:特別違うから何かとは思わないのと聴いてきた音楽もカルチャーも違うので当然なんですが、わかりやすく言うと日本はノリ方がある程度決まっていて、こういう風に頭を振る、このタイミングでジャンプするみたいなものがありますよね。海外の方は僕たちだけの話だけすると決まりがなくて、様々なノリの印象がありますね。日本のアーティストがバラードをやると、しっかり聴く姿勢があるけど、海外の方は全力で歌って盛り上がる、そういう差くらいですかね。もちろんそれぞれの国によるんで一概に言えませんが。
麗:国内よりもうまくいかないこともあるので、気持ちの面で負けちゃいけないという。機材面の壁もあるし、想定内で収まらないこともあるので、それを含めて面白いですけどね。
葵:日本のように至れり尽くせりみたいな環境ではないし、その意味では修行じゃないけど、どんな環境でも一貫したパフォーマンスが出せるようにしなきゃいけないから。
──海外のオーディエンスはthe GazettEの音楽性をどう風に受け止めているんですか?
RUKI:どうなんでしょう?日本のヴィジュアル系というカルチャーとして受け取っているんじゃないですかね。ただ、海外でインタビューされたときに、海外にはあまりない音とは言われました。
──曲作りの面で海外ツアーの影響などはありますか?
葵:それはないですね。海外の影響を受けるなら、ヴィジュアル系じゃなくてもいいのかなと。ヴィジュアル系は独特なメロディやコード感がありますから。ジャンルに縛られるなら、ヴィジュアル系じゃなくてもいいから。
──あと、これまで『LOUD PARK 14』、『KNOTFEST JAPAN 2016』と出演してますよね。こうしたラウド/ヘヴィ系のイベントに出た手応えは?
葵:ジャンルを絞ったイベントだけど、意外とやれるなと思いましたね。
REITA:どのジャンルのファンにも知ってもらいたいから。まずはライブを観てもらいたい気持ちは強いですからね。
RUKI:様々なジャンルのバンドが出るイベントに呼んでもらうこともありがたいことでありますよね。フェスの色に寄って行くのでは無く、いかに自分たちを出せるかなといつも考えてます。自分たちが何故呼ばれたか、どういう要員であるかという認識だけはしっかりもって立つことが多いです。そこで見た目と音のギャップを楽しんでいただけたらという気持ちはありました。
■「ABYSS」(DISC 2)、「LUCY」(DISC 3)はライブを意識して選曲
──ここからベスト盤の話に移りたいんですが、内容的にはどんなものにしようと思っていました?
葵:僕たちのライブを想定できるようなわかりやすいものを入れたいなと。「ABYSS」(DISC 2)、「LUCY」(DISC 3)はライブのタイトルでもあったので、ライブを意識して選曲しました。みんなでWEB上で曲を共有したので、入れ替えも簡単なのでやりやすかったですね。
──まず「SINGLES」(DISC 1)を聴いただけでも、楽曲のバラエティぶりに驚かされました。
REITA:バンドの葛藤が出ている一枚かなと。シングルはアルバムと違い、その1曲だけでそのときのthe GazettEを表現しなきゃいけないから。でも1曲ではなかなか表現できない部分もありつつ、その曲を選んでいるところもありますからね。時代が表れているなと。
■「SINGLES」はなるべくthe GazettEを知らない人にも届くように
──「SINGLES」はどの曲も耳をとらえるフックやキャッチーさを備えた楽曲が並んでますね。
RUKI:the GazettEは大きく分けると、3分割できると思っていて、「SINGLES」はなるべくthe GazettEを知らない人にも届くように調理されている音楽だと思うんです。自分たちだけの世界観を押し出すよりも、まずできるだけバンドを知らないたくさんの人の耳に印象を残すこと、あとは示したい音楽性をそこに混ぜたうえで考えて作ってます。逆に言えば、「ABYSS」、「LUCY」のほうは本質というか、根本にあるマニアックな部分が出ているのかなと思います。シングルのカップリング曲ではその部分を表現することが多かったんです。シングル1曲だけでバンドのイメージを決めてほしくない気持ちも当時はあったので。どれも自分たちの曲ですけど、3分割すると、こういう配分になるという。
──「SINGLES」はthe GazettEの入り口となる楽曲が揃っていると。とはいえ、「Filth in the beauty」ではラテンとラウドを融合させたような攻めた曲調もあります。
RUKI:そうですね。バンドの転換期だったり、そういう時期もありましたからね。その曲はいろんな要素が含まれてますね。凄いことをやってやろうというより、自分たちのオリジナリティを出すために考えてやったことですね。
■日本人に流れる独特なメロディアスな部分であったり、そのうえで成立している楽曲ばかり
──多彩な楽曲が収められてますけど、どれもthe GazettEらしさに漲る一貫性も同時に感じました。
RUKI:日本人に流れる独特なメロディアスな部分であったり、そのうえで成立している楽曲ばかりだと思うんですよ。そこが昔と変わらないところなのかなと。
──そして、「ABYSS」は直訳すると“深淵”という意味で、たしかに収録曲はダークでメロウなサウンドが目立ちます。
RUKI:ライブで重要なパートを担っていて、中盤でやる曲たちなんですけど、これをなくしてthe GazettEを語れないというか。それを1枚に凝縮した感じですね。
──こうした聴かせる曲調が続くと、途中でダレることもありますが、1曲1曲豊かでアプローチも変えているので、最後まで興味深く聴かせてもらいました。
麗:20年かけて構築してきた楽曲なので、その意味でもいろんな表情が出ているのかなと。もともとこういう曲をやっていたバンドではなく、ライブを積み重ねる中で、こういう世界観が得意だし、メンバーにもハマッているし…滲み出てきたバンドの軸という気はしますね。
──3枚目の「LUCY」はもはや説明不要というか、イケイケのthe GazettEを封じ込めたエクストリームな曲調ばかりです。
RUKI:うん、それもライブでやる曲ばかりですね。
戒:並べたら疲れるのかなと思ったけど、曲の並びも話し合いましたからね。被らないように曲を並べたから飽きが来ないし、スッと聴けるかなと。
REITA:もう2曲ぐらい多かったんですけど、減らしたんですよ。「ABYSS」とのバランスも考えて、ちゃんと聴ける量にしました。サビで抜ける曲が多いから、疲れる前に聴き終わるかなと(笑)。
──衝動炸裂の曲が揃っていますけど、逆にthe GazettEが持つ歌やメロディの美しさが際立って響きました。
RUKI:ありがとうございます。ライブはほぼ激しい曲ばかりですからね。その中でも年々武器を増やして、変わったアプローチは考えています。
──「LUCY」は「TOMORROW NEVER DIES」という曲で締め括ります。楽曲自体は転調したり、明るく開けたメロディがありと、ユニークな仕上がりですよね。
戒:実際、ライブの最後にやる曲なので、このポジションに置くと、ファンにとっても締まりがいいのかなと。
RUKI:『TOXIC』(5thアルバム)の最後の曲なんですけど、フレーズはZepp NAGOYAでちょこちょこ考えていたんですよ。ライブ直前の楽屋での作業だったので、ファンの声が聞こえる中だったのは良く覚えてます。
──この曲はポジティヴなメッセージ性も入れてますよね。
RUKI:そうですね。ライブのエンディングに相応しいもの、メッセージ性があるものが無くてそんな曲をちゃんと作りたいと思っていたんです。だから、今も最後にやっている曲なんですよ。
■3枚はバランスよく配分して、1本のライブのように魅せている
──明るい気持ちでエンディングを迎えるという。では、このベスト盤を通して、もっとも伝えたいことは?
REITA:この3枚はバランスよく配分して、1本のライブのように魅せているから。この3面を聴いてもらって、是非ライブに来てほしいなと。ライブはこの3面がすべて味わえますからね。
INTERVIEW & TEXT BY 荒金良介
リリース情報
2022.12.21 ON SALE
ALBUM『the GazettE 20TH ANNIVERSARY BEST ALBUM HETERODOXY-DIVIDED 3 CONCEPTS-』
プロフィール
the GazettE
ガゼット/RUKI(Vo)、麗(Gu)、葵(Gu)、REITA(Ba)、戒(Dr)。2002年03月10日結成。都内を中心に精力的にライブ活動を続け、破竹の勢いで規模を拡大させていく。2006年に初の日本武道館公演、更にアリーナ公演を経て2010年には東京ドーム公演を敢行。2011年以降は多ジャンル参加の大型フェスにも積極的に参加し、2013年には自身初のワールドツアー行う。2016年、2019年と規模を拡大し、世界13ヶ国22都市で成功を収めている。その後も現在に至るまで活動のフィールドをさらに広げ、独自の世界観は国内外で高く評価されている。
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