EXILE TAKAHIROによる、ソロアーティストとしてEXILE楽曲のカバーを行う“EXILE RESPECT”シリーズ最新作「道」。
現在では“卒業ソング”の新定番でもある「道」は、当時プロの道を歩み始めて間もないTAKAHIROにとっても印象深い曲であり、そして“チームEXILE”で過ごす日々のなかで出会いと旅立ちを経験し、ライブでファンと一緒に育んできた大事な一曲なのだと語る。
■「道」は自分にとって“入学ソング”のようなもの
──EXILEが23thシングル「道」をリリースしたのは2007年2月14日。つまり、TAKAHIROさんが『EXILE VOCAL BATTLE AUDITION 2006~ASIAN DREAM~』 を勝ち抜き、2006年9月に新ボーカリストとしてEXILEに加入してすぐのリリースだったことに、改めて驚きました。
▼EXILE「道」
TAKAHIRO:「道」は、自分がEXILEに加入したわずか半年後のリリースでした。レコーディングは加入して間もない1~2カ月後くらいに行ったので、まだ右も左もわからない状態で、必死にレコーディングした記憶があります。
しかも、加入後いちばん最初に歌う王道バラードだったこともあり、緊張しかなかったですね。当時は経験することすべてが初めてのことだったので、まだ地に足がついていないままで、「道」のMV撮影もかなり苦労しましたね。
──当時、MV撮影の現場にはどのような気持ちで挑んだのですか?
TAKAHIRO:あの頃はEXILEの大ファンだったからこそ、自分自身のミーハー心がまだ抜け切れていなかったと言いますか…やんちゃな雰囲気のあるカッコ良いEXILEが、大切な人を想って切々と歌うバラードって魅力のひとつなので、そこに参加できていることが不思議でした。なので、緊張しながらも浮足立っている自分もいました。
ただ、実際に撮影が始まると、自分がどのシーンを撮っているのか、リップシンク(歌詞に合わせた口や表情を撮影すること)もしたことがなかったので、どういう表情や目線で歌えばいいかわからず、とにかく必死で。年が明けて「道」がリリースされて、僕が参加した最初のEXILEのツアー(『EXILE LIVE TOUR 2007 EXILE EVOLUTION』)で歌い続けて、ようやくひとつやり遂げた感覚がありました。
▼EXILE – メドレー~Carry On~Together~EXIT~HERO~Choo Choo TRAIN~(EXILE LIVE TOUR 2007 EXILE EVOLUTION)
──自身にとっての初のライブツアーで、「道」をファンの前で歌い続けたことが自信にも繋がったということですか?
TAKAHIRO:EXILEへの加入が決まった日本武道館の会場では、喜びやうれしさはあったものの、正直言ってまだEXILEの苗字がついた実感は持てませんでした。そんな自分が初めてのツアーを無事に駆け抜けられた時に、少しだけ自分で自分を認めてあげられたような気がして。
各会場でファンの皆さんからの温かな拍手に込められた想いが胸に響いて、歌えなくなったこともありました。「道」は自分にとって“入学ソング”のようなもので、とても思い入れのある一曲です。
■大切な一曲だからこその葛藤。発売を決断できた景色
──そんな思い入れある「道」をリリースすることになった経緯を教えてください。
TAKAHIRO:経験を重ねた今のTAKAHIROとして「道」を届けたい、という気持ちは以前から強くあったんです。卒業・旅立ちをテーマにしたバラードソングなので、これまでも本当に多くの方たちの心に残る、大切な曲にもなってくれました。
でも、ここ数年はコロナ禍もあり、学生の皆さんは卒業式もできない、卒業式ができたとしても親御さんは参加できないなど、そんな様々な制約を強いられていた時期に卒業・旅立ちをテーマにして作った「道」を、これまでたくさんの方たちの思い出と重なり合ってきた「道」を、果たしてリリースしていいのだろうか…と思ったんですね。
僕だけでなく、ファンの皆さんにとっても大切な一曲になった曲だからこそ、このような状況下で届けるのは正解なのだろうか? と。この曲を聴いて悲しい気持ちにはなってほしくないですし、そこは慎重に、いちばん良いタイミングを探すことにしたんです。
──タイミング的にこの時期にリリースを決めた理由は?
TAKAHIRO:発表するタイミングを慎重に考えていくなかで、人生において、あらたな出会いや旅立ちというのは、年度が変わる3月や4月、季節でいえば春だけではないんじゃないかなと思ったんです。
たしかに春は新生活の季節ではありますが、学生に限らず、例えば定年退職や子育てが落ち着いたり、結婚、就職や転職…など、それぞれの人生にいくつもの出会いと旅立ちがありますよね。
それに『EXILE LIVE TOUR 2022 “POWER OF WISH”』で「道」を歌った時、改めて「道」の素晴らしさを再確認できたのがいちばん大きいかもしれません。その時々で表情が変わる、この曲が持つ意味も変わるのだな、と。
今回のドームツアーで「道」を歌った時に心を通わせたファンの皆さんやメンバーのこと…啓司くん(黒木啓司/本ドームツアーをもってパフォーマーを卒業。2022年10月31日で芸能界を引退)に対する想いや歌っている瞬間の気持ち、ステージから見えた景色などが鮮明なうちに「道」をお届けしたいと思ったので、急遽リリースを決めました。
──啓司さんの引退と「道」の歌詞が重なり合ってしまって、グッときた方も多かったように感じます。
TAKAHIRO:それは僕も同じです。毎公演、「道」を歌うたびに涙腺が危なかったです。わざとじゃない? と思っちゃうくらい、歌っている目線の先にずっと啓司くんがいるんですよ(笑)。啓司くんを見ると本当に危なかったので、隣にいたメンディーくんを見ることで涙腺を止めていました。
▼【Special Movie】「Chance」/ Dear Keiji From EXILE TAKAHIRO
──(笑)。「道」という楽曲に対して、TAKAHIROさんご自身もまたひとつの大きな想いが重なりましたね。
TAKAHIRO:自分もそうですが、これまで「道」を聴いてくださった方々にとっても、またひとつ一緒に大切な思い出を重ねることができたんじゃないかと思っています。
先程も言いましたが、今回のドームツアーで「道」は卒業や入学シーズンといった春だけに合う歌じゃなくて、一年中どの季節に聴いても良い曲なんだなと再確認できたので、これまでライブなどでファンの皆さんが聴き続けた「道」が、そして今回の“EXILE RESPECT”シリーズのカバーが、またここから皆さんの中で育んでくださったらすごくうれしいです。
■生まれ変わらせるのではなく、アップデートする
──今回のレコーディングで感じたキャリアや年齢を重ねて変化した部分、またあえてオリジナルと変えてはいけないと意識したところは?
TAKAHIRO:アレンジも含めてオリジナルの良さ、素晴らしさを消したくなかったので、新しくしすぎないことを意識しました。生まれ変わらせるというよりも、アップデートさせるイメージです。
ただ、ATSUSHIさんとずっと一緒に歌ってきた曲で、ライブを通じてどんどん成長し進化させてきた曲でもあるので、今回のカバーではATSUSHIさんの歌い方も含めてフルオマージュさせていただきました。そこはとても大事にした点ですね。
──ATSUSHIさんからはどのような感想をいただきましたか?
TAKAHIRO:「最近の僕のオマージュも全部やってくれたんだね」と、とても喜んでくださいました。なので、本人お墨つきのオマージュです(笑)。
──オリジナルの「道」がリリースされてから15年が経ち、今回のカバーで初めて「道」を聴く若い世代もいると思います。
TAKAHIRO:「『道』ってやっぱりすごく良い曲ですね」とうれしい反響をいただいています。だからこそ、「道」がリリースされた頃に生まれた若い世代の方にもこの楽曲の素晴らしさを伝えたいですし、これを機に「道」が世代を超えて、親子の会話のひとつのきっかけになってくれたら、とも思います。
自分がEXILEに加入して16年が経ちましたが、これまで発表してきた楽曲たちを輝かすのは自分次第なのだな、と。EXILEのボーカルである自分だからこそできること…“EXILE RESPECT”シリーズもそのひとつなので、これからも続けていきたいですね。
それにここまでやってきた経験のある自分だからこそ歌えることがきっとある。ボーカリストとして少しは胸を張っても良いのかなと思えるようになってきました。僕がEXILEに憧れてこの道を目指したように、今度は僕が自分自身を誇れるボーカリストになることで、また誰かの夢へと繋がってほしいです。
■時を経た今、噛みしめる「道」の歌詞
──「道」の歌詞には“愛と優しさ”というワードが刻まれています。歌い続けてきたからこそ、また年齢を重ねたからこそ、この言葉が持つ意味や重さにも変化があったのではないでしょうか?
TAKAHIRO:現在と比べると、歌うことに必死だった昔は“この歌詞はどういったことを伝えたいのか”という文脈や、そこに込められた思いを深く理解できていなかったような気がします。ただ、アーティストとして、ひとりの人間として、経験を重ねていくうちに歌詞に込められた思いを噛みしめ、自分の中で歌詞をさらにかみ砕けるようになってきた時、今度はあまりに歌詞が入りすぎて、感極まって歌えなくなってしまい…そういう経験をしたからこそ、あえて自分の中で、みんなの人生を歌っているんだという感覚を持って今は歌っています。特にライブでは、この会場にいる皆さんの思いを歌わせてもらっている感覚に近いかもしれません。
▼EXILE / 道 (from EXILE LIVE TOUR 2011 TOWER OF WISH ~願いの塔~)
──“ゆっくりと歩き出そう/この道 未来へ続く”というフレーズにかけた質問になりますが、TAKAHIROさんがたどり着きたい“未来”とは?
TAKAHIRO:EXILE加入時はいちばん年下だったのに、気づいたら後輩もたくさん増えて、それこそLDHでライブをやると、ある時は”長”のような立ち位置にいる自分がいたりするんです。人間は人の中で生きているので、そうやって立ち位置が自然と変わっていくんでしょうけど、自分の感覚としては末っ子だったあの頃とあまり変わっていないかな(笑)。
これは自分の性格なのですが、10年後こうなっていたいという未来像を明確に持つタイプではなくて。もし、思い描いていた未来像じゃなかったら慌てるじゃないですか。何が起こるかわからない時代だからこそ、未来は今の積み重ねだと思っているので、今という瞬間を大事にしながらも今の自分に甘んじず、何に対してもどうプラスに変えられるかが大事だなと思っています。
そのうえで“ゆっくりと歩きだそう”というフレーズを今の自分なりに解釈すると、明確な未来像をイメージして、そこにゴールを決めて急ぎ足で駆け上がるよりも、そうなるためには今、その瞬間をしっかりと生きなければいけない。ちゃんと一つひとつ積み重ねていけば、自分が思い描いていた未来よりは上に行けるかもしれない。
僕はボーカリストとしてまだまだ挑戦したいですし、ファンの皆さんにもっと喜んでいただきたいんです。その想いが軸にしっかりあれば揺らぐことはないと思っています。僕の中には“みんなのEXILE”という感覚があり、ファンの皆さんの期待に応えたいし、喜んでくれるからやりたいし、自分も楽しみたい。感謝の気持ちを忘れずに、自分なりの守り方で、自分らしくEXILEを背負っていきます。
INTERVIEW & TEXT BY 松浦靖恵
■楽曲リンク
2022.11.22 ON SALE
DIGITAL SNGLE「道」
プロフィール
エグザイル タカヒロ/1984年12月8日生まれ。EXILEのボーカル。EXILE は21 周年を迎え、2022年12月にはドーム公演『EXILE LIVE TOUR 2022 “POWER OF WISH”〜Christmas Special〜」を開催予定。グループとしての活動以外に、ソロとしてファンクラブツアー『TAKAHIRO 道の駅』で47 都道府県を回り、EXILE の楽曲をあらたなアレンジでセルフカバーしていく“EXILE RESPECT”シリーズをリリースしており、今回インタビューを行った最新シングル「道」が配信中。
EXILE OFFICIAL SITE
https://www.exile.jp/