新体制後初となる、Survive Said The Prophetの通算6枚目のアルバム『Hateful Failures』が完成した。
サバプロ作品ではおなじみとなるクリス・クラメット(Kris Crummett)とともに、彼の所有するアメリカ・ポートランドにあるスタジオで約1ヵ月にわたってレコーディングを行なったという今作は、ロックバンドとしてよりタフにスケール感を増し、また一方ではより内省的にこぼれ落ちてくる歌やメッセージでリスナーに語りかける。アンセミックに感情を奮い立たせ、パーソナルにも寄り添う、大きく深い作品となった。
アーティスト、バンドマンとして向き合ったコロナ禍での経験や社会のムード、あるいは新体制になったなかで再構築されたバンド感や音への意識、そしてパーソナルな思いなど、アルバムを構成する成分は様々で、すべてが明確に解析できるものでもないだろう。
日常を人生を歩んでいくなかでは、問いも、答えもひとつではなく、様々な気持ちを味わい、誰かと感情を折り重ねながら、色とりどりのヒストリーを編み上げていく。その酸いも甘いもある豊かな時間を感じ、分かち合える、とてもエモーショナルなアルバムだ。前作『Inside Your Head』から2年半。バンドの歩みと、作品へと紡がれていった4人の思いを聞いた。
■最初から言いたいことを言って、クリアをしてからレコーディング
──久々にアメリカに渡って、メンバー4人とおなじみのプロデューサー/エンジニア、クリス・クラメットのみという状況で1ヵ月にわたるレコーディングだったそうですね。
Tatsuya:今回のレコーディングにはメンバーしか行ってないんです。メンバーだけでの渡航は初めてだったんですよね。
──その分、じっくりと制作に向き合うことができたと。
Yosh:向き合うことしかできないですね(笑)。
Ivan:逃げられないからね(笑)。あとはレコーディング中の、いろんな撮影とかに関してもスタッフを入れずに自分らでやったりとか。
──かなり濃密な1ヵ月間となったと思いますが、日本ではどれくらい準備をしてから向かったんですか。曲もしっかり作り上げたものを持っていった感じですか。
Tatsuya:制作は2年間になるのかな?
Show:2年だね。
Yosh:1年間はベースとなる曲作りみたいなものを僕が中心となってやらせてもらって。もう1年間はドラムやリードギター、リズムギター等々、それぞれで曲に向き合うという作業をやりましたね。
──ではそれぞれもそうですし、バンドとしてもやりたいことを明確にしていった時間ですね。
Yosh:作品に対してはあったんじゃないですかね。
Tatsuya:その一致感は今まで以上に強いと思うので。今までの作品よりもみんな同じ方向を向いているというか。
Show:そこに対してフォーカスしている感じは多分、強いと思う。
Tatsuya:それこそ自分のフレーズはもちろんですけど、今回ベースのフレーズを作るにあたっては、みんなでYoshの自宅スタジオで作業をしているんですけど。フレーズを作るときに、今まで以上にみんなで“アンサンブル”というものの理解を深めて、ここはなんのフレーズなのか、なんの時間なのかじゃないですけど、そういうのをより濃密に重ねていっているんです。今まで以上にみんなが、このときに誰が何をしているかを把握していると思うんです。という意味では、全体の準備をよくやったかなというイメージですかね。
Yosh:そうすることで、現場で急に何かが変わることがないんですよね。今まで、作曲家目線からのフラストレーションとしてはそこが多かったんです。もちろんクリエイターにはクリエイティブなことをしてもらいたいけど、でもクリエイティブの角度が変わると、そのアイディアをいつ共有するかのタイミングが命だったりするので。みんな最初から言いたいことを言って、クリアをしてからレコーディングに持っていったという意味では、準備万全にできてましたね。
Show:今までは当日になって結構すれ違いがわかるみたいなこともあったんですよね。
Tatsuya:録ってみたら…みたいなね。
Show:レコーディングの順番的にドラムを最初に録って、ベース、ギター、ボーカルと進んでいくんですけど。すれ違ってしまった後ろの人は、もう一回頭からレコーディングするわけにもいかないから、こっちに合わせなきゃというフラストレーションがあるというのも、結構あったんですよね。それが今までではいちばん少なかったというか、なかったかな。
Ivan:プリプロ段階で全員が立ち会ってやってたからもあるかもしれないね。
■自分たちがやりたい、作りたい音があって、それを全員で共有
──これまでの作品を経て、今はこういうやり方がベストだなと。レコーディングもスムーズに進みますし、1曲に対して緻密な作業を重ねたことで、1曲1曲がよりクリアで、それぞれの佇まいを持っている作品になっていますね。
Yosh:今まで以上に、作品に対して向き合う時間があったのは大きかったですよね。ツアーをしている中で、バンドの外から、「そろそろアルバムのレコーディングを設定しないと…」って聞こえてくるわけではなくて、自分たちが出したくて、自分たちがやりたい、作りたい音があって、それを全員で共有して。バンド外の人とか大人の意見とかは、全然なしでやったという。それがアーティストがあるべき姿だなっていうのは、今回を経てすげえ学んだことでしたね。
──それができるタイミングでもあったんですかね。
Yosh:やらざるを得なかったですね。メンバーがひとりいなくなったなかで全員で決断をしたのは、その分もっと俺ら頑張らないといけないよなっていう。そういう会話があっての、今のキャリアなので。
──作品を通して非常にエモーショナルなアルバムになりましたが、Yoshさんの曲作りは今回はどのようなスタートだったんですか。
Yosh:自分の人生じゃないですかね。いろいろとインスピレーションをもらって、たくさんの曲を書くので、正直言って「この曲のときどう思ってた?」って言われてすぐに、あのときはねって出てくるわけじゃないんですけど。正直に書いて…以前は、この曲よりももっと新しいのを書けるよねみたいな雰囲気があったこともあったんですけど。今回に関しては、いや、これだよっていう勢いはありましたね。ひとつ大きく変わったとしたら、自分のスタジオができたことが大きいですね。誰もいない、自分だけのスタジオで、自分の好きなセッティングで、好きなようにやらせてもらえるというのは大きかったですね。
──このアルバムには、いろんな困難や思い、出来事を乗り越えていくときの感情の揺れがダイレクトに詰まっていると思うんです。ドラマティックな流れはあるけれど、かといって何か丸く収めるような、無理やりなベクトルの向け方じゃないんですよね。その曲が持つ感情や温度感など、1曲1曲を掘り下げている作業だったんだなというのが伝わります。
Yosh:実際にそういう作業をしていますし、メンバー内での会話が深くなりましたね。べつに、「この歌詞の部分がさ──」という会話ではないんですけど。“人生とは”というなかで、人間に約束されたものって死しかないから。…というナイーブな時間だったんですよね。今回作っていたときには、人にも言えないくらいプライベートなことがあって。明るいこともダークなこともあったうえで、でも、ハッピーでいきたいじゃんっていうのはみんな絶対あると思うんですよ。それを、嘘の希望じゃなくて、正しい希望として与えられるものというか。特にこういうジャンルをやっている人間として、それができたなとは思っていますね。
──どの曲ができたときに、これが作品としてぐっと引き締まったものになるなというのがありましたか。
Yosh:これだっていうのは、「Beauty Queen」が結構大きかったですかね。これは「Right and Left」のときも同じ気持ちだったんですけど。そのときはメンバーに言ってましたね、「これがシングルです」って。
Tatsuya:言ってたね。できてすぐに言ってた。
Yosh:それくらい、強く降りてくるものに関してはそう言っちゃうんですよ。
Ivan:今回のアルバムは、シンプルなところはよりシンプルに、固まるところはより固まって、テクニカルな部分はよりテクニカルになっているんですけど。そういう意味では、「Beauty Queen」はいちばん伝わりやすい曲にはなっているのかな。
Show:それぞれがアーティスト同士で、生まれた環境もバンドを組む以前の生き方も別だから。それぞれのエゴがぶつかることによって、いいケミストリーもあれば、それによってフラストレーションがたまるということがあるなかで、エゴを自重するということも、それぞれ覚えてきているのかなっていうね。
Yosh:うん、大人になりましたね(笑)。
Show:まったくエゴを出さないのもアーティストとしてどうかと思うから、それぞれの持ち味を殺さずにやるという意味では、「Beauty Queen」はいい着地をした曲のひとつでもあるかなって気がしていますね。
■デモ段階で、これは自信あるぞっていうのは、音でわかる
──何かサウンドテーマはあったんですか。
Yosh:生まれてきましたね、このまま。不思議ですよ。これはサバプロ内にいないとわからない感覚ですけど、「あ、できた」、「Yoshできたじゃん」っていうのがあるよね。
Tatsuya:ある。しかもそれに引っ張られるかのようにみんなのフレーズがどんどんできていくんですよね。
Yosh:そうそうそう。それが出てこないと、アルバムを出そうっていう、自信がつかないですね。
Show:デモ段階で、これは自信あるぞっていうのは、音でわかるんですよ。
Yosh:うん、こだわりがね。
Tatsuya:すごいから(笑)。
Show:これめっちゃ俺好きなんだよねとかじゃなくて、もう、音がこれだねっていうものになってる。
Yosh:だから、アレンジするので集まったときに、これ以上どうすればいいんだよって言われるケースもあります。「Drive Far」は、そのIvanバージョンといったらいいのかな。「Drive Far」はIvanが書いた曲で。正直にいうと、その頃はあまり俺ら話していなかったんですよね。Ivanがずっと作曲したい、作曲したいと言っていて、もちろん今までのアルバムにも入っているんですけど。結構、僕が作曲者としての経験が豊富な分、何も考えずに厳しい言葉を言っちゃうことも多いんですよ。曲できたよっていって、メロディラインが入ってないと──まあ、だったら俺が入れろよっていう話なんですけど。「曲ってメロディラインが入ってから曲なんだよ」みたいなことを言ってたり。「Drive Far」のときは、メロディも入っていて、Ivanが自分で歌っていたデモで。そこにインスパイアされて、1、2時間くらいでできたよね?
Ivan:そうだね。メロディも書いて、歌詞まで書いて、まず楽器隊それぞれに送って。それぞれが入れたいフレーズだったりができて、ほぼ完成状態で最後にYoshに渡したのかな。
Yosh:そう。で、さらに歌詞の部分を詰めていってという。
──「Drive Far」はアルバムの中でも新鮮さを感じた曲だったんです。歌のラインもですけど、特にギターのコード感や、間奏のフレーズの感じってあまりサバプロではなかったなっていうもので、すごく日本の曲っぽいなと思っていたんですよね。だからIvanさんの曲だっていうのはびっくりだったんです。
Yosh:そう! Ivanに関してはバンドに入ったときから、「このバンドをJ-POPにしたい」って言ってたんです。ふざけんな、何のバンドに入ったんだお前は!っていうんだけど、気がつけば時間はかかりましたけどこうやってJ-POPの曲を入れてるんですよ。俺からすると、めちゃくちゃJ-POPなんですよね。
Ivan:J-POPもそうだけど、広東ポップに近いと思うんですよね。
──そうなんですね。
Ivan:僕は出身が香港なんですけど、メロディの譜割りとかが、日本もそうなんだけど、たぶん広東だと思うんだよね。
Yosh:曲の構成がどうというよりも、あの感じがだよね。
Ivan:すごい難しいんですよ。歌詞を書くときも、英語なのか日本語なのか、広東語なのか中国語なのか、すごい迷うんですよ。たぶん、パートごとに全然ちがうみたいな、ぐちゃぐちゃなことが多くて。
Tatsuya:たしかにIvanの曲に関しては、パートをくっつける作業っていうのがあるよね。
Yosh:アイデアマンなんですよね。
Ivan:欲張りなんですよ。
■ギターをできるところまでやったらどうなるんだろう
──このメロディ感はIvanさんだからこその独自なものなんですね。
Ivan:そうですね。あとはギターをできるところまでやったらどうなるんだろうっていう、自分に対してのチャレンジもありましたね。
Show:Ivanの曲は、いじりがいはすごいある。1コーラスのデモの段階で、ここからどうはめていくのか、なんとでもできるような状態で一回渡されることが多いから。
Yosh:これでジャムろうよ系のね。
Show:それが面白いんですよね。彼なりの提示の仕方というか。バンドの中でも、YoshとIvanで曲ができてくるプロセスが全然ちがう感じがある。
Yosh:あと今回、「Drive Far」のブリッジのところは実はIvanが歌ってるんです。それぞれ、翼の広げ方が幅広くできてきたなと思ってますね。
──話を聞いていても、4人でいかにしてやるかが突き詰められているようですね。
Tatsuya:このアルバムに関しては完全にそれですね。
Ivan:Showも歌ってるしな。
Yosh:シャウトしてるね。
──Showさんのシャウトパートはライブで観ていても、だいぶハマってきているなと思いますよ。
Yosh:ハマってきましたね。今振り返ると、こんな宝物の声がずっと(バンドに)いたっていう。結構昔から、このパートの声出してみなよっていうのはあったんですけど、4人になった瞬間だよね、あの声になったのは。
Show:必要に迫られたらやるので。そもそも隙間産業だしね。
──各々のスキルがより活かせていますね。ちょっと曲が前後してしまうんですが、2曲目の「Mary」が個人的にすごくいいなと思っていて。シンプルで一見して直線的だしキャッチーな曲ですが、すごくドラマを孕んだ、緻密な構成の曲ですよね。
Yosh:これはドラマチックなときだったんでしょうね(笑)。自分がとてもドラマチックで言いたいことがすげえあったんだと思います、そのときに。これも結構、最初から完成した形だったんですよね。
Show:「Mary」はアルバムの中でも作曲のレベルがいちばん高いと思っていて。というのも最近まで、最初のAメロの後に、1オクターブ下で歌っているパートがあるんですけど、あれがサビだって気づかなくて。後半に出てくるサビと同じメロディなんですけど、前半部分はそう聞こえさせないというか。そこも、気づかせないスキルっていうのは、すげえなって思った曲だったんですよね。
Yosh:ありがとうございます。
Show:曲として面白いなっていうのを感じた曲だったんです。
──それもあって、キャッチーでいながら感情がうねりのままに聞こえてくる生々しい感覚がありますよね。ちなみに後半、歌詞の中に突然ポンとドイツ語(auf wiedersehen、さようならの意)が出てきますね?
Yosh:この歌詞の部分は、映画『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)の劇中歌「So Long,Farewell」(邦題「さようなら、ごきげんよう」)からのフレーズなんです。子どもの頃に映画を観ていたときは背景に第二次世界大戦があることに気づかなかったんですけど。最初のほうのシーンで、お父さんが子どもたちに会って、“So Long,Farewell”を歌うシーンと、最後に燃えている家を出て行きながら、“So Long,Farewell”をマイナー調で歌う、このふたつのシーンが印象に残っていて。そこのメロディラインからインスパイアされているんですよね、歌詞のフレーズも同じで。はじまりと終わりを表現している、そのさようならの言い方、表現の仕方ですね。“auf wiedersehen”も、ハローグッバイって言ったら伝わるのかもしれないけど、auf wiedersehenって言葉に引っかかって、なんだろうって調べてくれて、そこからいろんな歌詞と繋がったり、何か気づくポイントだったらいいなって思って。あとはドイツにも結構、サバプロのファンがいるという話も聞いてたので(笑)。
Ivan:あれ、急に(笑)?
メンバー一同:(笑)。
■サバプロの中にはこういう壮大さがあるんじゃないか
──これまでのアルバムでもイントロダクション的な曲や、インスト曲はありましたが、今回はイントロとして「Hateful Failures Pt.1」で始まって、アルバム後半で「Pt.1」よりからさらにシンフォニックとなった「Hateful Failures Pt.2」がきて、後半部分はより内省的にというか、ぐっと心の内側に入っていく感じがある。インストの2曲がアルバムの流れでいい役割を果たしていて、作品に入り込んでいく感じにもなっています。
Yosh:これは「FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Orchestra World Tour」(テーマソング「Hollow」を歌唱し、国内外で公演を行なった)が大きかったですね。初めて本物のオーケストラやクワイアを体感したときに、うわ、これサバプロじゃんっていうのがあったんですよね。その壮大さがすごく良かったし、サバプロの中にはこういう壮大さがあるんじゃないかって。今回の2曲も、意味はすごくありますね。「Pt.1」からの前半がライトで、「Pt.2」がきでからダークになるっていう流れはあるけど、その理由はリスナーが探せばいいなと思っていて。
──その「Hateful Failures Pt.2」から続くのが、「624」です。
Show:これがたぶんいちばんエモいなって思ってます、僕の中では。それがなんなのかは、置いておいて。歌詞を見ていちばん、おお!ってダイレクトに食らったしね。
──手放せるものと手放せないもの、痛みや悲しみを、葛藤を解決してくれるものは何かなど、いろんな感情が渦巻いていて、それが熱いままで音になってしまったような曲ですね。だからこそ感情を揺さぶられるものがあるし、エモーショナルでいて攻撃的に歌うボーカルのテンションも凄まじいなと。
Yosh:間違いなく攻撃的ですね。たぶんこの曲ができてなかったら、心が落ち着いてないと思いますね、僕に関しては。
──これを形にせねばという。
Yosh:うーん、なんていうんだろうな…とにかく複雑だったんですよね。だから自分が処理をしきれなかったし、だからといってメンバーにその内容をダイレクトに話したとしても解決することじゃなかった。だから、アートフォームにして出して、Yoshはこう思ってるんだっていうのをひとつの提起として出すことでみんなが理解してくれた、っていう話なんじゃないかなって思います。
■アルバムの並びでいうとこの「624」は毛並みが違う
──そういう曲に、さらにそれぞれの思いが掛け合わさったと。
Show:でも面白いのが、これは僕の個人的な話なんですけど、歌詞をちゃんと読み取る前にドラムを作っちゃった曲なんです。それがいちばん難しいフレーズになって。たまたま、超複雑になっちゃったんですよね。それが、ちゃんと合わさるというか、それは面白いなというのはありますね。本当に複雑な曲なんですよね、これは。それをたぶん、どこかで感じ取っていたのか。それが面白かったですね。
Yosh:セカンドヴァースのドラムとか、イカレてるもんね。
Show:そう。地味だけどね。超地味なんですよ、でもたぶんいちばん失敗する可能性の高い曲(笑)。
Tatsuya:じゃあライブではそこに注目してもらおうか(笑)。
Show:ギリギリ感というかね(笑)。鬼気迫るものがあるじゃないですか。僕も余裕ないから、そこでリアルが生まれる気がするというのがリンクしたんでしょうね。
Tatsuya:そういうのもあって、アルバムの並びでいうとこの「624」は毛並みが違う感じがあるよね。
Ivan:そこから最後に「Prayer」にいくという流れもね。俺ら的には物語的には完璧というか。この流れじゃないと置けない位置だったかな、曲順的には。
──「prayer」は「624」の歌とはまたちがった意味合いで、歌のパワーが突き動かすもの、心に問うものが大きい曲ですね。
Yosh:この曲では、愛とはなんだっていう深い質問をしているだけなので。愛があるなら見せてくれよ、愛があるところを教えてくれよっていうシンプルな訴えの話なので。サウンドよりも、そのメッセージのほうが僕は大事だなと思いましたね。最後の曲なのである程度の答えを人に言わないと、理不尽だと思うんですよね、特にアルバムでは。聴いてもらえないアルバムって、そういうオチがないなと僕は思ってしまうので。これが答えですよね。愛があるやつ出てこい、救いが必要よっていう。シンプルにそうだと思いますね。
Tatsuya:究極の質問の提示だと思う。
Ivan:生きるとは?じゃないけど、その一個の手前の愛とはっていうもので。
Yosh:だから、憎しみの過ちの答えが愛にあるんじゃないかっていうところにね──。
Ivan:もしかしたらね。
Yosh:俺らはバンドマンだから、正解はわからないけどね。もしそれがそうだったら、たぶん俺らのアルバムは人に気に入ってもらえると思うし。でもそうじゃないから気に入ってもらえないものではないとも思うし。今後、新しい答えが他のアーティストが出してくるかもしれないし。わからないですよね。
■今いちばん必要なのは、ラブ、愛だと思う
──問いかけて終わるというか、探し続ける感じもありますね。今回思うのは、これまでの作品はずっと怒りみたいなものがフツフツとあって、それに突き動かされているところもあったと思うんです。その怒りが自分に向かっているもの、外に向かっているものもあったと思うんですが、今回はそういう衝動や刃の向け方ではなかった作品ですね。
Show:まさにそうだと思いますね。今までのアルバムには怒ったところを入れなきゃっていう、強迫観念みたいなところがあって。そこが必ず議題に出ていたんですよね。今回は、一回も出てないんですよ。それがたぶん、そう感じる理由かもしれないですね。わりと自然に、怒ってたら怒ってる歌が出るので。その怒り方も、大人になった部分もあれば、考え方も変わって、目線が広がってというのもあって。ということで、激しい曲もあるにはあるけれど、いつものテイストとはちがう激しさじゃないかなと思ってますね。
Yosh:あとは、今は怒りは必要じゃない。十分に(周りに)あるから、欲してないんですよね。怒らなきゃいけないことはあるけど、怒りは必要じゃない。
Tatsuya:それが最初に出てくる感情じゃなくていいよね。
Show:もう怒りははびこってますからね。逆に、怒りを出すこと自体が典型的なものになりつつあるかもしれない感じがするというか。
Yosh:怒りにたどり着くのは人それぞれでしょうがないかもしれないけど、今いちばん必要なのは、ラブ、愛だと思うから。
──バンドとして一体感を持ってアルバムを作っていったことが伝わります。初回限定版では、最初の方に話に出たレコーディング風景、制作背景等を自分たちで撮ったドキュメンタリー映像も収録されるようですね。
Yosh:今回の動画周りはTatsuyaが率先して全部回してくれて。動画の編集にも立ち会ってくれていますね。ただ誰かが撮って編集をしたっていうものではなくて、バンドに愛を持ってるメンバーや自分がビデオを回しているっていう。Tatsuyaはこれまでそこまで映像系の知識があったわけじゃないのに、バンドの団結感のために、新たなステージを引っ張ってくれていますね。自分たちで映像を観ていても、その感じは入ってるなと思います。
■4人の感じがアルバム含めてですけど、全部に入っている
──メンバーじゃないと撮れない瞬間や表情がありますよね。
Tatsuya:編集でチョイスしたのはそいうところが多いかなと思いますね、みんなのこういうところを見せたいなっていう。結構、各々が撮ってくれたものもあって、これは誰が撮ったやつだなってチョイスしていくのも面白かったですね。俺目線だけじゃなかったから。今回、こうやって撮影をやらせてもらえたのはすごい楽しかったし、勉強にもなったし。そういうバンドの感じ、4人の感じがアルバム含めてですけど、全部に入っているから。そういうところまで見てもらえたらうれしいですね。
TEXT BY 吉羽さおり
PHOTO BY 増田慶
楽曲リンク
リリース情報
2022.10.12 ON SALE
ALBUM『Hateful Failures』
ライブ情報
Hateful Failures Tour
10/21(金)Hateful Failures Tour Day1 石川県 金沢 EIGHT HALL
10/22(土)Hateful Failures Tour Day2 新潟県 新潟LOTS
11/4(金)Hateful Failures Tour Day3 愛知県 DIAMOND HALL
11/19(土)Hateful Failures Tour Day4 宮城県 仙台Rensa
11/25(金)Hateful Failures Tour Day5 大阪府 Zepp Osaka Bayside
11/27(日)Hateful Failures Tour Day6 福岡県 BEAT STATION
12/3(土)Hateful Failures Tour Day7 広島県 広島クラブクアトロ
12/4(日)Hateful Failures Tour Day8 香川県 高松オリーブホール
12/8(木)Hateful Failures Tour Day9 北海道 PENNY LANE24
12/10(土)Hateful Failures Tour Day10 北海道 苫小牧ELLCUBE
12/20(火)Hateful Failures Tour Day11 東京都 EX THEATER ROPPONGI
プロフィール
Survive Said The Prophet
サバイブ・セッド・ザ・プロフェット/通称「サバプロ」は2011年、東京にて結成。ネイティブな英語を操るバイリンガルのボーカリストYoshの圧倒的な歌唱力とカリスマ性を筆頭に、確かなスキル、ミュージシャンシップ、そして個性的なキャラクターを持ったメンバーからなる奇跡のインターナショナル・ロック・バンド。その異彩を放つ音楽性はロックに限らず、ポップ、エレクトロ、ヒップホップ、R&Bまで幅広いバックグラウンドをベースに、既存のシーンの枠に収まらないダイバーシティを武器に様々なフィールドを活動の場とし、日々進化し続けている。
Survive Said The Prophet OFFICIAL SITE
https://survivesaidtheprophet.com