SUPER BEAVERが今年2月に発表したニュー・アルバム『東京』に伴う全国20ヵ所21公演に及ぶ全国ホールツアー『SUPER BEAVER『東京』Release Tour 2022~東京ラクダストーリー~』を決行。そのツアーに密着したドキュメンタリー映像作品がBlu-ray & DVDとして発売される。今作はバンド初のドキュメント作となり、バンドとスタッフの関係、楽屋でのコミュニケーション、各地で待つファンの姿など、“人間”にフォーカスを当てることにより、SUPER BEAVERの音楽やスタンスが炙り出された興味深い仕上がりになっている。メンバー4人に話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 荒金良介
PHOTO BY 大橋祐希
■どこを切り取るかはチームに委ねた感じ
──今回はドキュメンタリー映像作品という形ですが、通常のライヴ作品と比べても遜色ない出来栄えで引き込まれました。そもそもドキュメンタリー映像を作ろうと思った動機は?
上杉研太(以下、上杉):最初はなんだっけ?
柳沢亮太(以下、柳沢):正直言うと、自分たちが絶対に撮りたいというよりも、常に一緒にツアーを回っているスタッフ・チームからドキュメンタリーに軸を置いた作品を作りたいと提案をもらったんです。自分たちはいつも通りなんだけど、初めての感覚でもあり…客観的に見てくれたスタッフから、こういうところを収めたいと言ってくれた発言がきっかけなんです。
上杉:以前にも1年間密着してもらって番組を作ったんですけど、同じクルーにやってもらったんです。その番組が素晴らしかったから、その温度感を保ちつつ、ホールツアーで一緒にやれたらいいなという思いもあったから。自分たちからこういうところを撮ってくれというより、その方たちのセンスにおまかせしようと。ツアーでのやり取りは余すところなくカメラを回していたので、どこを切り取るかはチームに委ねた感じですね。
──実際の映像を観た感想を聞かせてもらえますか?
藤原”34才”広明(以下、藤原):普段の自分たちが映っているだけだから、それが作品になるのかな?と個人的に思っていたけど…SUPER BEAVERとしていろんなことを話したり、動いている姿一つひとつがバンドマンっぽいなと感じました。SUPER BEAVERが旅をして、ツアーをする。そこにドラマというか、物語みたいなものが生まれて、面白いものになるんだなと改めて気付かされましたね。これを観てもらえれば、どういうバンドなのかわかってもらえるんじゃないかと。スタッフからの提案だったけど、映像ができて良かったですね。
──渋谷さんはいかがですか?
渋谷龍太(以下、渋谷):自分たちが表に出す作品は、観ていただくことが前提で作っているので、そこにこだわりも出てくるんですけど。今回はドキュメンタリーであり、素の部分を追っかけているから、自分で判断ができないんですよね。良いものか、悪いものなのかもわからなくて。どこを求められて、どこを観たいと思ってくれているのかもわからなくて。作品になる前に「どこを入れてほしい?」、「どこを切ってほしい?」という話に少しなったんですけど、「どこを切ってほしい?」と聞かれたら、おそらく「ほぼ切ってください!」と返事したと思うんです。
柳沢:ははははは。
渋谷:観ていただくべきところなのか、そうじゃないところなのかは自分ではわからなくて。素の部分や裏側を観たいと思ってくださる人がいてこそ、成り立つ作品ですからね。そういう人にとっては、自分たちの人となりはわかりやすく出ているんじゃないかと。(スタッフと)ずっと長くツアーに帯同して、人間として一対一の会話を何度もしてきた人たちですからね。ドキュメンタリーを観たいと思ってくださる方には、とってもいいものじゃないかと。
■これまでパッケージしてこなかったものだから、真新しいとは思う
──渋谷さんとしてはすべて曝け出してもいいと思えるタイミングが来たとか?
渋谷:今でも恥ずかしいですよ、そりゃ(笑)。完成形を魅せるからこその商売だと思っているし、まだ未熟な段階は誰にも見せたくないから。ただ、これまでパッケージしてこなかったものだから、真新しいとは思うんですけどね。
──柳沢さんはいかがですか?
柳沢:これまでライヴ作品の特典映像としてチラッと裏側をパッケージしたことはあるけど、今回は裏側が主体になっていますからね。自分たちに密着してもらいつつ、チーム全体の空気も伝わる作品になったのかなと。その意味では本当の裏側というか…ツアーはメンバー4人だけでは成り立たないし、それがしっかり伝わっているのかなと。人が集まって、何かを作っている。それをパッケージしてもらえたと思います。自分だけに限らず、ほかの方のドキュメンタリーを見るのは好きだし、お食事屋さんでもどんな仕入れで、どんな仕込みをするのかとか。裏側を見るだけで、こういう気持ちが積み重なっているんだなと思いますからね。
──では、上杉さんは?
上杉:オンステージのライヴではなく、パーソナルな部分や、バンドのスタンスや取り巻く環境だったり、スタッフ一人ひとりの動きだったり…SUPER BEAVERはこういうバンドだよ、という日常が切り取られていて。最初はどうなるんだろうと思ったけど、映像を観たら、自分ごとですけど、引き込まれるものがありましたからね。健全にバンドをしているなと思えたし、この映像を観て、ライヴを観ると、また見え方も変わってくるのかなと。素晴らしいステージをやるためには様々な日常やドラマがあり、それで18年やってこれた部分もありますからね。
──今作は『東京』という作品の内容にもリンクしている部分を感じました。「人間」の中に“丁寧に 真面目に 足宛くのが 人間”という歌詞がありましたが、ここにはもがくSUPER BEAVERの姿もリアルに入っていますよね?
柳沢:身も蓋もないことを言っちゃうと、自分たちから見せよう!と思ったところではない部分もあるんです。ただ、『東京』のツアー中に起きていることは、バンドのスタンスにも繋がる部分だと思うから。
──当たり前のことですが、SUPER BEAVERも同じ人間であり、それを赤裸々に伝えてくれる場面も入っています。今作を観て、オンステージのバンドを見る視線が変わる人が多いのでないかと。
柳沢:そうだったらいいなと思いますね。今回は客観的な視点がすべてだと思うから。
上杉:自分たち発信じゃないからこそ届くものもあると思うんですよ。こいつらのこういう動きを撮りたいと思ってくれる人がいたから、作品として世に出ることになったわけで。
■どんな会話があり、楽屋がどんな空気だったかがわかればいい
──東京国際フォーラム ホールA公演は現場でも観ましたが、ライヴ後の楽屋で険悪なムードが流れていたとは想像も及びませんでした。何があったのかまでは具体的にわかりませんでしたが。
柳沢:わからなかったらわからなかったで、それは全然いいんですよ。そこでどんな会話があり、楽屋がどんな空気だったかがわかればいいし、それこそどういう風に感じてもらえるかは観た人それぞれだと思うんですよ。1回1回のライヴ後にメンバーで言葉を交わすのは毎回あることだし、あれもそのひとコマというか。
──ライヴ後にすぐ話し合い、解決の糸口を見つけていくのはこれまでもあったこと?
柳沢:そうですね。人と人で会話をしていく。それを繰り返してきたバンドですからね。話す内容の程度はその都度違いますし、チームが増えてくると、会話できる人数が増えるし。その意味では昔と比べても会話は増えてますね。
上杉:思ったことを言えなくなったら、終わりですからね。これはどうなんだろう?とモヤモヤを抱えたまま走ると、なんの得にもならないことにみんな気づいているから。お互いに向き合って、話すようにしてます。
──渋谷さんは楽屋で落ち込む様子が映像にも収録されていました。
渋谷:なるべく完璧なものを作りたいと思っているけど、最後にひとつミスると、ああなるという(苦笑)。どうすることもできないものはどうすることもできないし、自分の未熟さも感じたし、それに直面すると落ち込みますからね。責任感と一緒に生きていかなきゃいけないし、それに関してはひとつもないがしろにしたくないし、もっといいものを作りたいからこそ、そういう気持ちになるのかなと。
──今作には各地方の映像も入っており、それぞれの地元にスポットを当てているのもポイントですね。
柳沢:『東京』という作品の内容を踏まえて、各土地でSUPER BEAVERのライヴを楽しみにしてくれる人にもカメラを向けたいとディレクションしてくれた方がおっしゃっていたんですよ。開演前の観に来てくれた方の表情とか、その空気感はいままでの作品以上に入っていると思います。それぞれの街もそうですけど、そこで生活している人にフォーカスを当てたいと言われていたので、なるほどなと。
──柳沢さんが地方は“挑戦しに行く場所”と発言をされてましたが、その気持ちは今も変わらず?
柳沢:そこはずっと変わらないですね。東京は上京してくる街として象徴的な場所ですけど、自分たちにとって東京は故郷ですからね。逆に言うと、地方に関しては初めて大阪に行くぞ、福岡まで10数時間車を走らせるぞ、という感じだから。地方は挑戦しに行く場所であり、そこで着実に会場を大きくできるかもしれない。その挑戦はずっと続けてますからね。
──愛媛ではSUPER BEAVERの歌詞をいろんなところに展示されていて、あれは道後温泉の街おこし的なものですかね?
渋谷:そうですね。クリープハイプもやっていたんですけど、街と音楽を結びつける形で、声をかけていただいたんですよ。自分たちの歌詞で伝えたい部分を切り取って下さって、街と混ぜるという。それは素敵なことだなと。
──実際に見ていかがでした?
渋谷:SUPER BEAVERの活動を知ったうえで見に行ってくれる人もいたし、何かよくわからないけど、読んで下さったご年配の方もいて…知らない方がSUPER BEAVERに触れていただける機会はそれほど多くないと思うから光栄なことだなと。1年近くやってくれますからね。
──ええ、期間もすごく長いですよね!
藤原:有難いですよね。しかも多くの場所で展示されてますからね。全部回ったらそれなりの時間もかかるだろうし、自分も温泉は大好きだから。たまたま訪れる人もいれば、それ目当てで行く人もいるだろうから、それが街おこしに繋がるのはいいことだなと。ぜひ見に行ってほしいですね。
──あと、足湯にすごく感動してませんでした?
柳沢:はははは。館長みたいな人が出迎えてくれたし、そんなことはないですからね。
渋谷:まずあり得ないよね(笑)。従業員の方で僕らのことを好きな方がいたんですよ。普通に音楽をやっていたら絡むことがない人たちだし、こういう形でしっかり交われたのはうれしかったですね。
■ライヴハウスよりも、ホールは地域を感じられるものかも
──あと、渋谷さんが「ホールは街の色が滲む」と発言されてましたが、あれはどんな気持ちから?
渋谷:ホールがいちばんわかりやすいですからね。ライヴハウスは極端なカルチャーだけど、ホールは全般的に間口が広いものだと思うし、街の景色に近いですからね。僕はそれぞれの土地を歩き回ることを習慣にしていて、なるべく地名を叫ぶときも薄情なものにならないようにしているから。ライヴハウスよりも、ホールは地域を感じられるものかもしれないですね。
──それで「よりホールを好きになった」と言ってたんですね。
渋谷:そうですね。より街のことが好きになりましたね。
柳沢:いろいろあった2020年を経て、今回のホールは各地で有難いことにソールドアウトして、テンションの高いツアーになったのかなと。お客さんの楽しもう!という気持ちが、2021年よりも純粋に高まっている気がしたんです。ようやくライヴに来ました!という人も多かったと思うし、ホールでもその熱気を感じましたからね。
上杉:今回、函館は初めてのワンマンなのにホールでやれて、それも凄いことだなと。世の中的にはいろんなことがあるけど…初めての土地で最大キャパでやれたことも…チャレンジし続けてきた結果だと思うんですよ。各地を回ることで、バンドや音楽に改めて自分も救われましたからね。
■メンバー、チームを含めて、経験値は今回のツアーで上がった
藤原:今回は濃かったというか、すごく勉強になることが多かったですね。バンドや個人のレベルも上がりました。次の扉を開けたら、また新たな課題も見えてきたり、毎日発見があったんですよ。ツアーファイナルでもまだまだ僕らはできるよな、と気づくこともありましたからね。メンバー、チームを含めて、経験値は今回のツアーで上がったと思います。
リリース情報
2022.09.28 ON SALE
Blu-ray Disc & DVD
『The Documentary of SUPER BEAVER 『東京』 Release Tour 2022 〜東京ラクダストーリー〜』
2022.10.02 ON SALE
DIGITAL SINGLE「ひたむき」
2022.11.30 ON SALE
SINGLE 「ひたむき」
ライブ情報
SUPER BEAVER 「都会のラクダSP 〜東京ラクダストーリービヨンド〜」
[2022年]
10/19(水) [神奈川] 横浜アリーナ
10/20(木) [神奈川] 横浜アリーナ
10/25(火) [大阪] 大阪城ホール
10/26(水) [大阪] 大阪城ホール
12/10(土) [東京] 有明アリーナ
12/11(日) [東京] 有明アリーナ
12/24(土) [愛知] ポートメッセなごや 新第1展示館
12/25(日) [愛知] ポートメッセなごや 新第1展示館
プロフィール
SUPER BEAVER
スーパービーバー/2005年に結成された東京出身4人組ロックバンド。2009年にメジャーデビューを果たす。2011年にインディーズへと活動の場を移し、年間100本以上のライブを実施。その後、日本武道館、国立代々木競技場第一体育館のワンマン公演を開催し、チケットは即完売。2020年には結成15周年を迎えメジャー再契約を果たす。その後、ドラマやCM、そして話題の映画『東京リベンジャーズ』主題歌を務める。2021年10月から11月にかけて、さいたまスーパーアリーナを含む3都市6公演のアリーナツアーを開催しチケットは完売。2022年2月にフルアルバム『東京』をリリース。10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも控えており、今最も注目のロックバンド。
SUPER BEAVER OFFICIAL SITE
https://super-beaver.com