miletからニューシングル「Always You」が届いた。
表題曲は映画『TANG タング』の主題歌として書き下ろされた一曲。起伏に満ちた華やかな曲調と爽やかなメロディに乗せて、友達や家族、パートナー同士の絆を歌い上げるナンバーだ。先日にはデビュー3周年を記念した一夜限りのスペシャルライブ『milet 3rd anniversary live “INTO THE MIRROR”』も開催。夏の大型フェスへの出演も決まっている。デビューから全力で走り続けるmiletに話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 柴那典
PHOTO BY 大橋祐希
■言葉にできない思いを落とし込もうと思った
──新曲「Always You」は映画『TANG タング』の話を受けて書きはじめた曲でしょうか?
そうです。脚本を読み、予告編の映像を見て「タングはこんなビジュアルでこんな動きをするんだ」とか「二宮和也さんが演じる主人公の健はこんな服装をしているんだ」とか、いろいろ思い浮かべて、脚本と関連付けながら曲を作っていきました。
──最初に脚本を読んで感じたことは?
ちょっと子供っぽく聞こえるかもしれないんですけど「タング、かわいい!」っていう。かわいさで頭がいっぱいになりましたね。あとは懐かしさみたいなものもすごく感じました。未来の世界の物語で、ポンコツのタングというロボットが健と冒険をしていくんですけど、そういう世界だからこそ、すごく心温まる懐かしい感じもあって。世界観は洗練されてるんですけど、健もポンコツで、そこの生々しい人間臭さにも共感できるところがありました。かわいいんですけれど、大人の私たちでも感情移入できる泥臭さみたいなものもありましたし、そこがちょうどいいバランスで入り混じってるのが、ものすごく魅力的な作品だなと思いました。
──曲には、友情や、お互いを思い合う関係性も描かれていますね。
仲間意識というか、友達同士の絆というか、他から見たら“あいつらって、ほんとに仲いいの?”みたいに思われるかもしれないけど、本当に心の底では繋がっているような、そんな見えないラインみたいなものを描きました。なので、目に見える友情というよりは、普段口では「ありがとう」とか「ごめんね」とかもうまく言えないけど、本当はこんなに思い合ってるんだよっていうような、言葉にできない思いを落とし込もうと思いました。
──「Always You」というタイトルの言葉はどういうところから出てきたんですか?
ずっと一緒にいるからこそ言えない言葉とか、伝えられない思いってありますよね。それが私の中でのこの曲のメッセージなんです。いつもそばで一緒にいてくれているあなたへの思いでもあり、逆に離れていてもいつもあなたが私の中にいるよっていうメッセージでもあります。
■幅広く限定しない言葉を歌詞に
──『TANG タング』という映画がきっかけで書かれた曲ではありますが、いろんな人が、友達や家族やパートナー同士のような、それぞれの関係性において自分の思いを重ねられるような感じがします。
私も実際、親友を思ったり、家族を思ったり、いろんな大切な人を思いながら作っていった曲なんです。『TANG タング』の映画の中でも、タングと健の関係にも、健と妻の絵美さんの関係もイメージして、どういうラインにも重なって溶け合うようなメッセージにしたいと思っていたので。聴いてくださる皆さんにとってもそうなるといいなと思いますし、ある意味、幅広く限定しない言葉を歌詞にして歌うように考えました。
──サウンドやメロディ、曲調に関してはどんなイメージから作っていった感じですか?
映画の主題歌って、予告編で流れて“あ、この映画の曲だ”みたいに思うものですよね。なので、キャッチーさは必要だと思っていましたし、サビから作るという作業ではありました。この曲はメロディよりも先に「Always You」というタイトルが頭の中に最初にあったんです。なのでサビの頭でもこの歌詞の言葉が先行して出てきたりしていたので、曲作り自体は難しくなかったですね。サウンド面ではよく一緒に曲作りしているTomoLowくんと作っていきました。冒険の物語ではあるけれど、歌うことは世界中の人々に向けてというより、私とあなたというミニマムな世界観の言葉なんですよね。大きな世界と小さくインナーな世界とのギャップみたいな対比のある曲になると思ったので、サウンド的にはリバーブを使って空気感を持たせて、芯はありつつ後ろに残っていくような音作りをして、一方で、だからこそ、プライベートというか、お互いにしかわからないような世界観の歌詞にしています。
──親密さにフォーカスをしようとしたら、もっとアコースティックで温かい手触りのある音にする選択肢もあったと思うんです。でも、すごく広がりがあるし、かつ、華やかな曲になっていると思います。
ダイナミックさも意識しました。物語もそうですけど、この曲にも起伏が欲しかったので、押し広げるところは広げて、小さくなるところは小さく、Aメロはすっと心の中に収まるような感じにして。で、サビや間奏で世界観を一気に広げるっていうのを意識して作った曲です。
──その華やかさの演出は、どのようにmiletさんの中で培っていった感じなんでしょうか。
もともとサウンドトラックとか映画の劇伴が好きだったり、クラシックでも交響曲が大好きだったので、壮大な曲はすごく好きなんです。あと、自分が作るにあたっても、いろんな作品の主題歌とかテーマソングを任せていただくにあたって壮大なキャッチーな曲とリクエストいただく事も多くて。そういう一つひとつのリクエストに応えられるような作業をデビュー以降たくさんさせていただいたというのもあります。やっぱり自分も大きな曲を作るのがすごく好きで、そっちのほうが得意なのかなって思います。
──ちなみに、作品によるとは思うんですが、テレビドラマの主題歌を書くときと映画の主題歌を作るときで、作り方の違いやイメージの違いってあったりしますか?
あります。基本的にはそんなに大きく変わらないんですけど、ドラマだったら、シリアスな回があったり、ハッピーな回があったりしても、最後に流れるのは同じ曲で。だから、どの感情のときにもマッチするような曲でなくてはならない。喜びの中にも少し影が見えたり、1曲の中でいろんな顔が見えるような曲にしなきゃいけないという思いがあるんです。で、映画の時は2時間くらいの世界観をまとめてダイジェストにしたような曲を作らないといけない。どんな後味を残したらいいかなとか、この映画を後書きみたいにまとめるならどういう曲かなと想像して曲を作ることが多いです。なので、思い浮かべるシーンは意外と違ったりしますね。
■すごくたくさんのヒントをいただいた
──シングルのカップリング曲についても訊かせてください。「Clan」についてはどういうモチーフから作っていきましたか?
この曲は『Tower of Fantasy』というオープンワールドRPGのゲームのテーマソングとして作らせていただきました。作るにあたっては、ゲームの制作のスタッフの方たちから歌詞に「Tower」という言葉を入れたいとか、こういったテーマにしてほしいとか、ビートやサウンドはこんな感じにしてほしいとか、すごくたくさんのヒントをいただいたんです。全編英詞でもいいという珍しいリクエストもあったので、伸び伸び作る事ができました。
──たとえば曲調としてはどんなオーダーがあったんですか?
私の曲をたくさん聴いてくださってたみたいで、初期の「Waterfall」の冷たさみたいなものもほしいけど「Parachute」の上にあがっていく感じもほしい、「Walkin’ In My Lane」のポップさもほしいって。全部ベクトルが違う曲なので、どうしようと思いながら、頭の変換をしながら自分なりに頑張って作って。思ったよりアグレッシブな曲になったと思ったんですけど、結果としてはすごく気に入っていただけました。
──とても勇壮な曲ですね。
そうですね。ゲームは仲間と力を合わせて戦いながら塔の上を目指していく内容なので、そのイメージはできたけど、なかなか戦いをテーマにした曲はこれまで書いてこなかったので。強さだけじゃなく、周りとのつながりを意識しながら作りました。
──miletさんの中で、ここまで獰猛さやアグレッシブさを前面に打ち出した曲は珍しい気がします。
たとえば「Fire Arrow」とか「Dome」のように、氷の中に芯の炎があるみたいな曲は多かったんですけれど。この曲みたいに表面も熱くて芯も熱いみたいな曲はあまり作ってこなかったですね。
──「Clan」というタイトルに関しては?
この「Clan」という言葉が私はもともと好きだったんです。ハイエナの群れをクランって呼ぶんですよ。私はハイエナがいちばん好きな動物なんです。ハイエナはすごく仲間思いで、ずっと一緒に行動するし、狩りも一緒にするんですけれど、その群れのことをクランと言う。いつかその言葉を使って歌にしたいと思っていたら、ゲームの中で使われるチームを指す言葉もクランというので偶然重なって。“私、こういうとこ冴えてる!”って思いました。
■私に新しい視点を与えてくれた動物
──ちなみに、ハイエナが好きになった理由って?
昔から主役よりも脇役とか悪役にされてるほうに目が行くというか、そっちのアナザーストーリーのほうが気になるタイプなんです。『ライオンキング』だとハイエナってものすごく悪者扱いされていて。なんで彼らってこんなに悪者にされるんだろうと思って、図書館に通い詰めてハイエナのことを研究したんです。昔のドキュメンタリーとか映像資料も観たら、ハイエナってものすごく優秀で、狩りもサバンナではいちばん成功率が高くて。他の動物の餌を漁ってるみたいなことを言われますけども、実はそうでもなくて。身体も頑丈だし、仲間思いだし、いいとこしかないじゃん!って。ハイエナという動物の素晴らしさとか、生で見たら、実はものすごく愛らしい動物だっていうことも、みんなに知ってもらいたいし。何の話してんのかわかんないですけど(笑)。あまりフォーカスされないマイノリティに魅力があること、もう少しそこに目を向けてみるのもいいなって思わせてくれたのもハイエナだったりしたので、私に新しい視点を与えてくれた動物だと思います。
■音楽が私の身体をこじ開けてくれるという思い
──「Into the Mirror」はどうでしょう?これは3周年を記念したスペシャルライブ「milet 3rd anniversary live “INTO THE MIRROR”」のタイトルにもなっている言葉ですけれども。
この曲は「INTO THE MIRROR」というライブのテーマソングを作ろうということで、ライブのために書き下ろした曲です。「INTO THE MIRROR」というライブタイトル自体には、音楽という鏡を通してみんなが自分の映りたい姿になってくれたらいいなという、ものすごくポジティブなメッセージを込めています。そう思いながらライブのテーマを決めたんですけれど、それと並行してこの曲を作ってるうちに、曲のほうではもっと自分の内側に入っていけるような鏡を表現したいと思ったんです。誰に理解されなくてもいいけど、自分の内側の綺麗なところも汚いところをもっと見たいという願望があって。音楽が私の身体をこじ開けてくれるという思いで作っていた曲です。この曲もライブで初めてお披露目になるんですけど、ひとつの言葉から全くベクトルの違うテーマになった感じです。ちょっとトリッキーというか、不安にさせるような音作りではあるんですけど、自分のぶれない核みたいなところがすごくわかりやすく表現されている曲です。
■ライブの演出も同時に考えながら
──この曲は低音の迫力と、イントロから鳴ってる浮遊感のあるサウンドが印象的で、音風景の作り方がすごく巧みな感じがします。
うれしいです。イントロから入っているふわふわとした音がサビの終わりで一変するところがあって、そこで初めて人間の生々しさみたいなものが見えてくるようなイメージで作りました。あと、曲の最後に何かが割れる音がすると思うんですけど、そこはライブの演出も同時に考えながら作っていきました。いろんな意味で新しい試みですね。
──8月にはROCK IN JAPAN FESTIVAL、RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in EZO、SUMMER SONICと大きなフェスへの出演が決まっていますが、こちらへの意気込みは?
久々のオープンな場所での大きなライブになるんで、すごく楽しみですね。去年の夏から比べると、一皮剥けてツアーもして成長したので、その成長具合も凝縮したステージを見せられたらなと思います。お客さんも待ちに待った感じだと思いますし、みんなに会える機会が増えるのは本当にうれしいです。
リリース情報
2022.08.17 ON SALE
SINGLE「Always You」
ライブ情報
milet livehouse tour 2022 “UNZEPP”
10.14(金) KT Zepp Yokohama
10.22(土) Zepp Fukuoka
11.04(金) Zepp Sapporo
11.10(木) Zepp Nagoya
11.11(金) Zepp Nagoya
11.17(木) Zepp Osaka Bayside
11.18(金) Zepp Osaka Bayside
11.24(木) Zepp DiverCity
11.25(金) Zepp DiverCity
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022
8/6(土)・7(日)・11(木・祝)・12(金)・13(土) 千葉市蘇我スポーツ公園
*milet出演日:8月7日(日)14:15~@LOTUS STAGEに出演
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2022 in EZO
8/12(金)・13(土)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
*milet出演日:8月13日(土)16:40~@EARTH STAGE
SUMMER SONIC 2022
8/20(土)大阪 大阪・舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
*milet出演時間:15:00~@MOUNTAIN STAGE
8/21(日)東京 東京・ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
*milet出演時間:16:10~@MOUNTAIN STAGE
プロフィール
milet
ミレイ/2019年3月6日にメジャーデビュー。Toru(ONE OK ROCK)プロデュースによるデビュー曲「inside you」はiTunesなど人気音楽配信サイト11サイトで1位を記録。2019年末、人気音楽配信サイト”レコチョク”による「レコチョク年間ランキング2019」のダウンロード部門、ストリーミング部門の両方で新人アーティストランキング1位を記録。通算5枚のEPリリースを経て、2020年6月3日には全18曲を収録した1stフルアルバム『eyes』をリリース。2021年8月東京2020オリンピック閉会式に歌唱出演し、2021年末には2年連続となる「NHK紅白歌合戦」に出場。2022年2月に2nd fullアルバム「visions」をリリース。オリコン週間デジタルアルバムランキング4週連続TOP10入りする等ロングヒットを記録している。
milet OFFICIAL SITE
https://www.milet.jp