バンド結成10周年を記念したリテイクプロジェクト「再青」を進行中のDISH//が今年初の新曲となるデジタルシングル「しわくちゃな雲を抱いて」をリリースした。永野芽郁主演のTBS系 火曜ドラマ『ユニコーンに乗って』の主題歌のために書き下ろしたミディアムテンポのポップロックナンバーは、メンバーの北村匠海(Vo、Gu)が作詞、泉大智(Dr)が作曲を担当。シンプルな構成ながらもフックの効いたワードが散りばめられた大人の青春ソングに込めたメッセージとは──。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 関信行
■今回はどれもがその日にしかできないライブ
──『LIVE TOUR -DISH//-2022「今」』を終えたばかりの心境から聞かせてください。
橘柊生(以下、橘):いろいろな問題が起こったりしたんですけど、どんな状況でも乗り越える力がすごくついてるんだなっていうのを実感したツアーでしたね。(矢部)昌暉がいない日も、みんなでカバーしあえたし、すごく落ち着いて、冷静にライブができて。少しセッションのような感覚もあったんですけど、みんなのテンションで弾き方を変えたりもした。単純に今までよりも、周りのメンバーの音を聴き合う時間が増えたなっていうのがみんなのプレイからもわかる感じでした。
泉大智(以下、泉):“今”っていうテーマをすごく意識してましたね。ほんとに1回1回のライブがベストだと思ってやっていたし、自分たちの音楽が、今、目の前で聴いてくれているお客さんにちゃんと届いているんだなっていう実感もあったので、すごく楽しかったです。
北村匠海(以下、北村):1公演1公演、その瞬間を大事にするライブができたし、ほんとに“今”というタイトルの通りのツアーでしたね。本来はツアーは繋がっていくものというイメージがありますけど、今回はどれもがその日にしかできないライブになってて。このツアーは今の僕たちに必要なものが詰まっていたなと思いました。
──昌暉くんは体調不良で神奈川の2公演が欠席となってしまいました。
矢部昌暉(以下、矢部):そうですね。ほんとにいいツアーだったからこそ、パシフィコ横浜のライブに出れなかったのは、ただただ悔しかったんです。でも、2日目の配信を家で観ることができて。DISH//のライブを後から映像で観ることはあったけど、DISH//のライブをリアルタイムで観れたことは、悔しさと共に得るものがあって。次のライブで自分がやるべきことを見い出せた。大阪をやって、横浜で休んでしまって、名古屋をやるという1ヵ月の中で、ライブに対する考え方も変わりましたね。
──どう変わりましたか。
矢部:ひとつのライブ、一曲に対する見せ方とか、思いのぶつけ方とか。ほんとに感覚的なものなんですけど、大阪と名古屋ではそもそものライブのやり方が変わったなって思いました。
■DISH//として届けるべき言葉や音楽が見えた
──ツアーを終えて、“今”のDISH//はどんなバンドになってますか。
北村:サウンド面ではどんどん磨いていってる最中ではあると思うんですけど、やっぱり僕らって、メッセージを伝えられるバンドなんだなって感じましたね。それがこのツアーで見えました。今、僕らがやるべきことというか、DISH//として届けるべき言葉や音楽が見えたなって思います。あとは、昌暉がいない状況で、僕ら3人は気持ちの面でちゃんと助け合えたし、人間的な中身がライブでもすごく見えた感じがしたんですね。これは、忘れちゃいかんなって思いました。ポーズじゃなく、生き様に近いものを見せること。カッコいいポーズは誰でも取れるけど、僕らはそこではなくて。バンドとして、人として、湧き出てくるものを見せていけたらいいなって思ってますね。
──新曲「しわくちゃな雲を抱いて」はまさに社会で働く人々の心に響くメッセージソングになってます。ドラマ主題歌としての書き下ろしで、作詞と作曲をメンバーが手掛けてますね。
北村:これはまず、コンペがあって。
──コンペを勝ち取ったんですか?
北村:勝ち取ったんです!もともとは僕、柊生、大智の3人がそれぞれで曲を出して。結果、大智の曲に決まって、ほんとにうれしかったですね。
■DISH//というバンドが0から作った曲がさらに大事になっていく
──すごくシンプルで王道の構成の曲になってますよね。
泉:そうですね。すごくポップなど真ん中を狙う意識があって。僕らが作った楽曲で主題歌を担うっていうことがいちばん意味があるというか。そこは、4人とも共通の意識があって。自分たちの曲でやっていきたいというのが一番やりたいことだし、そこはど真ん中で正々堂々と戦うという気持ちで作ってました。
橘:僕もギリギリまで曲を作ってて。絶対にメンバーの曲で、って思ってたので。ああ、良かったなっていう感じですね。
矢部:あいみょんが提供してくれた「猫」とか、匠海がはっとりくん(マカロニえんぴつ)と共作した「沈丁花」とか、いろんな人に聴いてもらって進んできましたけど、これからはDISH//というバンドが0から作った曲がさらに大事になっていくよねという話をしていたので、すごくうれしいですね。
──大智×匠海コンビの曲は、過去に「宇宙船」と「ありのまんまが愛しい君へ」があります。
北村:他にも大智と僕で作って、まだ世に出てない曲いっぱいあるんですけど、大智の曲は、ほんとに歌詞が湧きやすいんですよ。大智がデモの段階から曲に込めている色とかイメージが見えやすいんですね。今回も、具体的な何かというよりは、「デモで風が吹いてたので、風吹かしますわ」みたいな抽象的なところから書き始めていったっていう感じでした。
泉:最初はもっと爽やかに振り切って作ったんですけど、意外と爽やかすぎるねってなって。ドラマサイドから“大人の青春”というテーマを投げてもらったので、大人っぽさも含めて修正していきました。
──楽曲を作った際のイメージは何か伝えましたか?
泉:ドラマのプロットを見たら、“チャレンジ”がテーマのひとつだったんですね。何歳でもチャレンジしていいんだっていうのは、自分にも置き換えられる部分だったので、歌詞を書いてもらうときに、そこを噛み砕いて匠海に伝えて。
北村:僕も脚本を読ませてもらって。ラブコメでもありながら、チャレンジする人間模様や、大人の青春を描いていて。僕は、いくつになったとしても、その人次第で絶対に青春になると思うんですね。誰だっていつだって青春時代があり、青春は今、巻き起こってることだっていう。そこで、どんなに打ち砕かれて、紆余曲折あったとしても、自分がじいちゃんばあちゃんになったときに、幸せだったなって笑えたら、その人の人生は誰にも邪魔のできないかけがえのないものになるんだっていうのが浮かんで描いた感じでした。
■ネガティブもポジティブも絶対に入れたくて
──DISH//っぽいなと感じる歌詞ですよね。メンバーが作詞作曲した「ルーザー」の目線もありつつも、“笑い合っていたい”(「僕らが強く。」)、“明日を笑って欲しい”(「ありのまんまが愛しい君へ」)という最近の曲と共通するメッセージ性があって。
北村:言ってしまえば、曲も4分くらいの映画なので、その中には、僕はネガティブもポジティブも絶対に入れたくて。ポジティブエネルギーだけで生きていける世の中ではなかったりするし、逆にネガティブだけでも生きていけないし。毎日ってそんな連続だと思うので、僕は歌詞を書くときには両方を落とし込んでますね。
橘:匠海っぽさがあって、すごく好きな歌詞ですね。匠海って、「頑張れよ」っていう背中の押し方じゃなくて、「大丈夫だよ」っていうほうの優しさがある。匠海の“寄り添う系男子”な感じが出てるなって(笑)。
北村:いい男なんです!
矢部:あははは。僕は匠海の歌詞って、優しさもあるし、「~しようよ」とか、相手に語りかける、呼びかける歌詞も多いなって感じてて。そういうところもポジティブな気持ちになれるし、好きだなって思いますね。そして、何よりも、この中でいちばん好きなのは“しわくちゃな雲”ですね。タイトルにもなってるけど、雲を見て、しわくちゃって出てくる匠海、すげえなって思います。匠海が描く歌詞って、どれも匠海にしか出ない言葉で書いてるから。それがDISH//の色になりつつあるなって思いましね。
──今、昌暉くんから出たタイトルについて聞いていいですか。サビでは“太陽”を高らかに歌ってるし、歌詞のそこかしこに“風”が吹いてます。なぜ雲にしましたか?
北村:雲って、子どもの頃からいろいろと教えてくれるんですよね。僕、小学生のときに、誰とも遊ばずに校庭の鉄棒にぶら下がって雲を眺めてて。雲がいろんな形に見えるんですよ。ドラゴンになったり、友達のお母さんに見えたりする。形はないけど、ものすごいスピードで流れていって、自分の暗かった気持ちも一緒にどんどん遠くに流されていく感覚になったこともある。空って、すごく表情豊かだと思うんです。そんな中で、比喩ですけど、雲=あの人たちは、僕らに雨を降らせてくれることもあれば、自分たちはいなくなって、まっさらな空を見せてくれることもあるし、強すぎる日差しから守ってくれることもある。そこと、人生が重なっていった感じですかね。しわくちゃな雲、しわくちゃな人生、しわくちゃな僕たち、そういう結びつき方でしたね。
■幸せなゴールは、しわくちゃな未来
──風が吹いて天気が移り変わる様子と人が歳を重ねてしわくちゃになっていく姿を掛け合わせてるってことですよね。“しわくちゃな雲”と“幸せにならなくちゃ”もかかってる?
北村:これはアナグラムになってますね。他にもいっぱい仕掛けがあって。Bメロの横読み縦読み”恋も友も/恋愛/愛情/友情”とか、太陽で踏んでる韻とか。こういうギミックが個人的には好きなので、あくまでも遊び要素ですけど、各々で気づいてくれたらうれしいなって思って書いてました。でも、いちばん言いたいことは“幸せにならなくちゃいけないよ”っていうことであり、幸せなゴールは、しわくちゃな未来だなって思ってますね。
──みなさんは、“幸せ”と聞いてどんな場面が思い浮かびますか。
橘:遊んでる瞬間、笑ってる瞬間だと思います。個人的には音楽自体が僕は遊びだと思ってて。義務的な仕事だと思ってやりたくない。ライブは特にそうで、義務でやってる感じじゃない。
■アドレナリンが出る瞬間のために音楽をやってる
──パシフィコで匠海くんと2マイクで向かい合ってラップしてるときの柊生さんはほんとに楽しそうな表情をしてましたね。
橘:楽しかったですね。ああいう、アドレナリンが出る瞬間のために音楽をやってると思う。もちろん、仕事だって考える人を否定するわけじゃないですけど、僕自身は、音を楽しむと書いて音楽なので、楽しいことをしたいんですね。あと、最近の僕のスタンスでもあるんですけど、どんな曲でもいい曲やんってなるんですよ。あえて言うようにしてるんじゃなくて、なっちゃうんですね。どんな曲だとしても、“微妙でしょ”とは思わないし、“こういう音楽性もいいな~”って本気で思ってる。なんというか、友達が家にゲームソフトを持ってきて、「このゲーム、面白いからやろうよ」って言われたら、とりあえず一緒にやって盛り上がったりするじゃないですか。今は、音楽に対して、そんな感覚が強くなってますね。
──ライブでは昔から、最後に「また遊ぼうな」で締めてました。
橘:マジでそのつもりで言ってます。ほんとに今、ちゃんと遊んでる感覚でいて。家で遊びながら曲を作ったり、お酒を飲みながら作ったりすることもあって。楽しいですよね。そういう感覚は。
矢部:僕はこの曲のことをいろいろ考えているときは、ちょうど「再青プロジェクト」のレコーディングだったり、ライブツアー『今』のリハーサル中だったりしたんですよ。DISH//でいる時間が多かった時期だったので、ライブで全曲終わった後に、みんなが楽器を置いて、前に出てきて、誰かが喋り出すみたいな。あの、ニヤニヤしているときの空間が思い浮かびますね。あれが、いちばん幸せな時間ですね。
■音楽をしてるときがいちばん楽しいし、幸せだなって
──青春でもありますね。大智くんは?
泉:やっぱり音楽をしてるときがいちばん楽しいし、幸せだなって思いますね。むしろ、本当に音楽以外で、自分の存在証明をできるものがないので、音楽を仕事にできているのが幸せだなと思います。
──作曲者として、匠海くんの歌詞はどう感じましたか?
泉:めちゃくちゃいいですよね。「エロいな」って言っちゃいました。
──あははは。最初の感想がそれだった?
泉:メンバーのグループラインで送りました(笑)。ぱっと見気づかないけど、ひとつ深いところで解釈したときに気づく仕掛けがいっぱいあって。そういうのがすごい面白いし、エロいなと思いました。
──(笑)ドラマの主人公も意識しましたか?
北村:意識しました。なにせ、永野芽郁様なので。役者としても、彼女は映画やドラマで主演として、中心に立っていて。現場の空気を良くするのも悪くするのも主演の居方次第だし、みんなからは座長って呼ばれるし、いろんな意見を求められる立場でもある。ドラマの場合はリアルに数字が出てくるし、彼女は僕なんかよりも全然早く、朝ドラの主演という責任感やプレッシャーも背負ってやってきた。そういう彼女の強くて弱い後ろ姿みたいなものは、歌詞を書いててもやっぱり浮かんでましたね。
──Aメロは少し、女性言葉のようでもありますよね。
北村:中性的な書き方をしてますけど、初めは女性目線で出てきてて。書き進めるうちに、世代感や性別をあまり感じさせない方向性になっていったんですけど、そこはそのまま残してますね。
──ドラマを見る人は、おじさんサラリーマンの新しいチャレンジとも重ねて聴けますよね。
北村:イコールがいっぱいできればいいなって思って。この曲を自分と=で繋いでくれたらうれしいです。歌詞の中にもいっぱいイコールで結びつくところがあって。さっきも言ったように、しわくちゃな雲=幸せにならなくちゃ=幸せな未来みたいなことがいっぱいあると、みんなが自分に置き換えて聴いてくれたらいいなと思いますね。
──新曲を楽しみに待ってる方々にはどう届くといいなと思いますか。
北村:ライブで直接届けるのが楽しみだなっていうのと、このツアーでも喋ってたんですけど、未来って不確定なものじゃないですか。だから、結局は、みんなが言ってたように、「この瞬間が幸せだよね」という、今、この瞬間が積み重なっていけばいいだけの話だと思うんです。人生はいろいろあるし、そんなに単純な話でもないけど、酸いも甘いもひっくるめて、その人が主人公だし、この曲を聴いてるときくらい幸せだなって思ってもらえたら、それはいいかなって思いますね。あとは、自分の今を生きるマインドが落とし込まれてる感じもするし、個人的には、自分のじいちゃんばあちゃんも思い浮かべながら歌いたいなと思ってて。テレビ番組で歌うときは、いつも、じいちゃんばあちゃんも観るだろうなって思うし、そんな幸せなことないだろうなって思うし。そのためにやってるのかなと思ったりしますね。
■やりたいこと、見せたいもの、パーソナルが詰まったもの
──そして、8月27日(土)には富士急ハイランド・コニファーフォレストでの野外ライブが控えてます。
北村:『森羅万象』をやっちゃったので、もう宇宙しかないので、『PLANET』というタイトルをつけてて。宇宙って僕らの共通言語みたいなところがあって。
矢部:あははは。みんな好きだしね。
北村:ある意味、僕らがやりたいこと、見せたいもの、パーソナルが詰まったものになりそうな予感がしてますね。
橘:現段階で仕掛けはたくさんあるので、すごく楽しめると思います。
泉:「宇宙船」をここでやるために作ったっていうね。
北村:ここにUFOが来て、昌暉は連れて行かれると思います、また。
泉:また?
北村:こないだ横浜でUFOに連れて行かれてたでしょ?
矢部:そうそう、って、家でライブ配信観てたわ!
北村:彼は毎年1回、連れて行かれるので。
矢部:調整しないといけないからね(笑)。今年は1回あったので、このあとは大丈夫です。メンバーの中では曲名を見ただけでテンションが上がるセットリストになってて。良い意味で予想を裏切るライブになりそうなので、すごく楽しみですね。皆さんもぜひ遊びにきてください!
リリース情報
2022.07.13 ON SALE
DIGITAL SINGLE「しわくちゃな雲を抱いて」
ライブ情報
『DISH// SUMMER AMUSEMENT ’22 -PLANET-』
8/27(土) 富士急ハイランド・コニファーフォレスト
『DISH// ARENA LIVE 2022』
12月24日(土) 大阪城ホール
12月25日(日) 国立代々木競技場 第一体育館
7/24(日)出演『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2022』大阪・舞洲スポーツアイランド特設会場
8/13(土)出演『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』
8/20(土)〜21(日)開催『EBiDAN THE LIVE 2022 ~EBiDAN AWARDS~』東京ガーデンシアター
9/3(土)出演『JOIN ALIVE 2022』北海道岩見沢市・いわみざわ公園
9/17(土)出演『J-WAVE presents INSPIRE TOKYO ~Best Music & Market』国立代々木競技場 第一体育館
9/18(日)出演『イナズマロック フェス 2022』滋賀県草津市 烏丸半島芝生広場 (滋賀県琵琶湖博物館西隣 多目的広場)
9/24(土)出演『北九州ロックフェスティバル2022 〜with SDGs spirits〜』福岡・ミクニワールドスタジアム北九州
プロフィール
DISH//
ディッシュ/北村匠海(Vo、Gu)・矢部昌暉(Cho、Gu)・橘柊生(DJ、Key)・泉大智(Dr)の4人で構成された、4人組バンド。2021年12月25日より結成10周年イヤーを迎えている。「猫~THE FIRST TAKE ver.~」およびオリジナル「猫」が各配信サイトにてストリーミング再生回数が合算4億回を突破。2021年には「沈丁花」をリリースし、身近な人へ感謝を伝える曲としてロングヒット中。2021年には紅白歌合戦へ初出場を果たした。映画やドラマ、舞台、モデルなど、4人は個々でも活動を行っている。
DISH// OFFICIAL SITE
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