INTERVIEW & TEXT BY 松浦靖恵
■アーティスト・山下優太郎の第一歩を記す、新企画
7月8日、配信シングル「無色透明」でアーティストとして大きな一歩を踏み出した山下優太郎。
昨年実施された、一発撮りオーディションプログラム『THE FIRST TAKE STAGE』のファイナリストである彼がデビューを迎えるまでに、どう過ごしてきたのか。
“まだ何者でもない”山下優太郎が、どんな想いで音楽と向き合い、そしてどんな感情を抱いているのか。
デビューまでの日々を日記に綴ってもらい、その心の動きを共に感じる新企画『THE FIRST TIMES DIARY』が始まる。
【日記の全文は記事の最後に掲載】
■“掴みきれていなかった自分のこと”がわかる
──これまで日記を書いたことはありましたか?
山下優太郎:なかったです。今回このような機会をいただいて初めて書いてみて、日記って面白いなって思いました。書いたものを読むと、あの時の自分はどういう気持ちだったのか、こんなテンションだったな、と日記を書いていた時の自分の気持ちを思い出せるんです。
日記ってただ文字を残すものではなくて、気持ちも残っている感じがすごく不思議だな~って。文字と気持ちが一緒に残るのが日記の面白さだと気づきました。
──普通、日記って今回のように皆さんに公開して、見ていただくものではないんですけどね。
山下:ちょっと恥ずかしいですね。日記を書きながら振り返っていると、なんだかひとりで盛り上がっちゃって、よくわからない感じの文章になっちゃってたりもするので(笑)。
──でも、日記を通して“山下優太郎”という人の人間性や性格、今どんなことを考えているかが伝わってきましたよ。
山下:そうですね。こんなふうに感じているんだな、こういうことを大事にしたいと思ってるんだな、という“掴みきれていなかった自分のこと”がわかるんです。意外と覚えていないことも多いので、あの時はどういう体調だったか、何を食べたのかとかも写真に撮ったりしてます。日記は自分の説明書みたいですね。
せっかくの機会なので、皆さんに楽しんでいただけたらうれしいです。自分を見つめるって面白いなと思っているので、これを機にこれからも日記をつけてみようかなと思い始めています。
■消えたり戻ったりする、デビューする実感
──7月8日に配信シングル「無色透明」(TVアニメ 「15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ R2」EDテーマ)でメジャーデビュー。思えば、一年前は一発撮りオーディションプログラム『THE FIRST TAKE STAGE』のファイナリストのひとりに残っていたんですよね。
◎6/29(水)
明日は『THE FIRST TIMES』のインタビューの日、緊張する。また『THE FIRST TAKE』関連にかかわることができて嬉しい。1年前は先が見えないまま歌っていた、でも今はメジャーデビューして歌っていくという環境に変わった。事実は大きく変わったんだけど、「山下優太郎」という人物はちゃんと変われているのか? ついてこれるのか? という心配ばかりしているのはまだ成長してないのかな? とか考え出すと、仰向けに寝たくなる。
山下:この一年は長かったようで、短かったようで…あれから一年経ったんだなっていう感覚ではあるんですけど、一年前はまさか今のような状況になるなんて想像もしていなかったので、「えっ、もう一年経ったの!?」っていう感覚もあって。それがすごく不思議です。
今もそうですけど、レコーディングや取材等を通じてデビューを実感する日もあれば、ふとそうじゃない日もあって。まだデビュー前で本格的な活動してないからこういう気持ちになるのか、それとも実感って消えたり戻ったりするものなのかが、自分でもよくわからなくて。
これから(テレビやラジオなどで流れる)「無色透明」を聞いた時の自分のテンションもまったく想像できませんし(苦笑)。CM用の仮映像を見た時は、「ヤバイ! マジじゃん!!」ってかなり興奮したんですけどね。
◎6/22(水)
やばい、これはやばい、いまテレビCM用のスポット? の仮映像が届いて確認した。まじか、、、本当にこの「ピュヒューイン!」(※ソニーミュージックのCMの冒頭に入る印象的な音“サウンドロゴ”のこと)のCMとして自分のPVが出るんだ…。実感なかったけど一気に実感がでてきた、嬉しい本当に、なんだこれ、みんなありがとう。
支えられてばっかりで申し訳ないけど、それはこれから返していく。絶対。
改めて背筋を伸ばして進もう。加速しよう。
めっちゃ書き殴ってるやん、怖
■初めてのMV撮影。少しずつできることを増やす日々
──6月5日の日記には「MV撮影でアタフタした」と書いていますが、どういうところにあたふたしてしまったんですか?
◎6/5(日)
初めてのミュージックビデオの撮影、当たり前だけど全てが初めての経験だった。一人でアタフタしてて、ちょっと申し訳なかった。『THE FIRST TAKE STAGE』とはまたちがう雰囲気で、みんなが一生懸命ひとつの作品を作っている。もっとなんか頑張んなきゃな。
山下:MVを撮っていただくのが初めてだったので、自分が映像の中でどう動けばいいのかを頭の中でシュミレーションしていたんですけど、最初に何回か撮っていただいいた映像を見たら、自分の体幅の中でしか動いてなくて。
映像ではしっかり大きく動かないとパフォーマンスしているということも世界観も伝わらないんだと知り、映像としてどう映えるように動けばいいのか苦労しました。なんで自分はできないんだろうって、ひとりで右往左往してしまい…。
──右往左往しながらも、どうコツを掴んでいったんですか?
山下:影が多めの映像なので、自分の影の動きを見ながら、どうきれいに動いているか、ワンパターンにならないような動きにしようとか。何回か撮っていくなかで理解していきました。
現場では、本当に勉強になったことがたくさんありました。「初めてだから」という言い訳ができるのも最初だけですし、次はもっとこうしてみようっていうことがこの撮影を通じてなんとなくが整理できているので、現場で掴んだものを今後しっかり活かしていきたいです。
■熱い自分、臆病な自分、冷静な自分…様々な自分と向き合う
──メジャーデビュー情報解禁の日は何をしていました?
◎6/10(金)
メジャーデビューに関しての情報解禁の日。
正直未だに実感が湧かない。これから自分がやっていくことは把握してるけど、いままで通りすぎて本当に実感がない。家のテレビで、流れてきた自分の歌を聴いてやっと実感がでるんかな。嬉しいけど「大丈夫かな?」と思う気持ちが強い。まぁなんとかなるかぁ。
山下:「そういえば、今日は情報解禁の日か…」っていう感じでした(笑)。解禁する前までは普段とあまり変わらない、ほわっとした感じだったんですけど、解禁したということはデビューすることを皆さんに知っていただいたということだから、自分はこれから歌手として生きていくことになるんだ! という気持ちの変化がありました。それまで何者でもなかった自分が、歌手として生きていくんだなと。
──発表したことでより覚悟が決まったと?
山下:そうですね…“こうして宣言したからには、自分はプロの歌手として歌っていくんだ!”という覚悟と、“果たして自分はプロとしての心構えがちゃんとできているのか?”という不安が共存しているので、“行動に気持ちが早く追いついてきてください!”と、もうひとりの自分に言われているような感覚です。どっしり構えられるように早くなりたいです。
■山下優太郎、初のオリジナル曲「無色透明」
──「無色透明」を初めて聴いた時の印象は?
山下:元々、『コードギアス』のファンなので、初めて聴いた時の第一印象は、あの物語の世界観にめちゃくちゃ合う! と思いました。と同時に、自分が好きな作品のエンディングテーマ曲を自分が歌うんだ! っていう、うれしい気持ちで心がいっぱいになりました。
──レコーディング時の様子も教えてください。
山下:物語のキャラクターが詞や曲からしっかり表現されているので、自分の中にその物語のキャラクターの気持ちをがっつり入れて歌ってしまうと、過剰な表現になってしまうと思ったので、あえて淡々と、手紙を読み伝える感覚で歌いました。
今までの自分は細かい歌い方をするというよりも、パッと声を出して一直線に乗せていく感じでしたが、今回“手紙のように歌う”というコンセプトを自分の中に入れて歌った時に、空気を多く含んで喉を開き、空気をいっぱい出しながらもちょっとか細く、でもこの曲のゆったりした世界感の中で伝いたい気持ちは残すっていう新しい歌い方にチャレンジできました。
自分にとって初めての体験になったし、得たものは新しい武器にもなったなって思います。
──大変だったことはありましたか?
山下:ハモリ部分のメロディがすごく難しくて。歌っては聞き直して、もう1回歌ってもいいですか? を何度も繰り返しました。
──高い歌唱力と表現力を持っている山下さんなら、なんでもできちゃうと思っていました。
山下:まだまだできないことが多いので、そんなことはないです。歌手の皆さんは大変なことをしていらっしゃるんだな、自分はもっと頑張らないといけないと自覚しました。なんでできないんだ! って、悔しい思いになるし、できるまでは苦しいけれど、できるようになった! って実感できた時はすごく楽しいし、気持ちいいです(笑)。
──得るものがたくさんあったレコーディングだったんですね。
山下:はい。めちゃくちゃ勉強になったし、「無色透明」には自分の新しいものがいくつも詰まっているので、達成感がすごくあります。これまでの自分は歌い方を変える、新しい歌い方を見つけるということをしてこなかったので、(野球で例えると)ストレートしか投げられなかったのに、カーブも投げられるようになったみたいな感じです。自分はこういうのもできるんだなっていう新しい発見があったし、これからそれらを使える場面は結構あるんじゃないかと期待しています。
■山下優太郎が感謝の気持ちを綴る理由
──日記には支えてくれた方たちへの感謝の気持ちが何度もつづられています。自分が支えられていると実感できる出来事をあえてあげるなら?
山下:何者でもなかった自分の“声”というひとつのものに可能性を見出してくれて、より良いものにしていくために動いているチームの皆さんの姿や言葉に本気を感じるんです。以前は自分のことで精一杯で、なかなかまわりを見る余裕がなかったけれど、皆さんの本気を感じるから、感謝の気持ちしか出てこないし、自分も頑張ろう! って素直に思える。そうやって支えてくれる人がいるから自分はこの曲を歌えるんだなって。本当にいつも自分は支えられていますね。
──お友達やご家族にも支えられているのでは?
山下:親は何も言わずに応援してくれています。妹と弟も「お兄ちゃんだったら大丈夫!」って言ってくれます。
これまでも自分はいろんな人に支えられてきたけれど、そこに自分が返せるものが今はまだなくて…でも、何もしないのは嫌だし、自分ができることはまだ少ないかもしれないけれど、感謝の気持ちを伝えることが今の自分にできることのひとつだと思うので。
自分の人生ってずっとそうだったんです。自分では運が良いかどうかよくわからないけれど、まわりに支えられて上がってくることができて、ここまで来ることができた。感謝の気持ちは常に強く持っていたいです。
──日記の中でセルフ突っ込みをしていたり、悩んでいても立ち直りが早くて、まぁなんとかなるかなって前向きになっていたり。“山下優太郎”ってどんな人なんでしょう?
山下:うーん…ラフなのかな? 普段は力が入ってないかもしれないです(苦笑)。ゆる~く、ゆったりしているというか。何が自分には足りないんだろうなって考えていても、ちょっと寝てから起きて、お腹が空いたから何か作って食べようってなったり、ひたすら猫にかまったり、音楽をかけて踊りながら料理をしたり…。
──踊りながら料理!
山下:良い意味で何も考えてないのかな(笑)。さすがにお仕事の時は気持ちが変わっていると思いますけど、普段は本能のままに生きてます(笑)。
■なんとかなるためには、日々努力することを忘れてはいけない
──基本的に前向きな性格?
山下:後ろ向きになる日もあるんですけど、最終的には前向きになります。“なんくるないさ”(※沖縄の方言。ちゃんと挫けずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつかきっと報われて良い日がやってくるよ、の意)精神じゃないですけど、頑張っていればなんとかなると思って自分はこれまでやってきて。
というのも、中学の時に“なんくるないさって、頑張ってるベースがないと、なんとかならないんじゃないか?”っていうことに気づいて。そこから考え方が変わったし、それが自分の核になりました。沈んだり動揺したりしてもそのまんまではどうにもならない。でも、めげずに自分が頑張っていれば、それが積み重なって“なんとかなるんだ”っていつも自分に言い聞かせてます。
──こんな自分になりたい、こんな歌手になりたいと、自分の中で思い描いている姿はありますか?
山下:デビューして歌手になって、ここからまたあらたな道、人生が始まっていくのなら、行けるところまで行きたいので、世界で歌える人間になりたいです。おこがましいけれど、誰もが知っているような世界的な歌手になりたいです。
実は…歌手になりたいなって思ったときから自分がなりたい歌手のイメージは大きく持っていたんです。でも、その思いは今と比べるとまだ小さくて、自分の中では妄想みたいな感じでした。
自分に実現できるとは思えなかったし、当時の自分はそういう思いを外に出してはいけないとも思っていたので、気持ちを抑えて口に出すことはなかったですが、こうしてデビューして、皆さんに宣言したなら行くところまで行きたいです。頑張ればなれると信じています!
──では、これまで応援してくださった方、「無色透明」で山下優太郎を初めて知った方へメッセージをお願いします。
山下:曲によって山下優太郎の声、歌の印象が変わっていくと思っていて。その変化する世界感をもっとはっきりと伝えられるようになりたいし、いろんな楽曲の中で、こういうのも歌うんだ、こんな声色もあるんだっていう変化を楽しんでほしいです。末永く応援していただけるとうれしいです。
【THE FIRST TIMES DIARY:山下優太郎】
◎6/5(日)
初めてのミュージックビデオの撮影、当たり前だけど全てが初めての経験だった。一人でアタフタしてて、ちょっと申し訳なかった。『THE FIRST TAKE STAGE』とはまたちがう雰囲気で、みんなが一生懸命ひとつの作品を作っている。もっとなんか頑張んなきゃな。
◎6/10(金)
メジャーデビューに関しての情報解禁の日。
正直未だに実感が湧かない。これから自分がやっていくことは把握してるけど、いままで通りすぎて本当に実感がない。家のテレビで、流れてきた自分の歌を聴いてやっと実感がでるんかな。嬉しいけど「大丈夫かな?」と思う気持ちが強い。まぁなんとかなるかぁ。
◎6/11(土)
お世話になった人へ、「デビューします」の報告をした。『THE FIRST TAKE STAGE』から1年、改めて本当に多くの人が「山下優太郎」とチームのみんなに関わってくれているんだとびっくりした。ここまでこれて嬉しい。まだ恩返しとか生意気言える余裕はないけど、言えるように今できる事をやっていこう、進もう。
◎6/19(日)
次のレコーディング楽曲を聞きなおしていたけど、こんなゆっくりな感じだっけな? 昔の仮歌を聴くとなんかリズムが気持ち悪い感じがした。テンション感が仮歌の感じでいいけど、もうちょいゆったりめのノリでいいかもしれないな。こんな変化あんまり感じた事なかったんだけど少しは成長できてるのかな??
◎6/22(水)
やばい、これはやばい、いまテレビCM用のスポット? の仮映像が届いて確認した。まじか、、、本当にこの「ピュヒューイン!」(※ソニーミュージックのCMの冒頭に入る印象的な音“サウンドロゴ”のこと)のCMとして自分のPVが出るんだ…。実感なかったけど一気に実感がでてきた、嬉しい本当に、なんだこれ、みんなありがとう。
支えられてばっかりで申し訳ないけど、それはこれから返していく。絶対。
改めて背筋を伸ばして進もう。加速しよう。
めっちゃ書き殴ってるやん、怖
◎6/25(土)
次回レコーディング用の歌詞入れ、変更RECがあった、すごくいい曲で何度も歌詞や世界観を変えてきた、ぐるぐるぐると回って原点に戻ってきてそこに少し修正を加える形で進むことが決まった。歌詞をはめたり、歌い方を変えたりして曲の雰囲気が変わってくる、この時間がわりと楽しい。
みんなとワイワイしながら、世に出す1つの作品を仕上げていくってとても貴重な体験だなーと、振り返りながら日記を書いてて思う。
◎6/27(月)
テレビのデビューに関してのインタビューが決まって、その日記が近づいてきた…。
何を言ったらいいんだろうなぁ…いい言葉がでてきたらいいな、いつもいつも頭ん中で真っ白になって、振り返ったら訳わからないこといってるし、質問内容とか答え方を、もう一度シュミレーションしてみよう。お腹痛くなってきた。
◎6/29(水)
明日は『THE FIRST TIMES』のインタビューの日、緊張する。また『THE FIRST TAKE』関連にかかわることができて嬉しい。1年前は先が見えないまま歌っていた、でも今はメジャーデビューして歌っていくという環境に変わった。事実は大きく変わったんだけど、「山下優太郎」という人物はちゃんと変われているのか? ついてこれるのか? という心配ばかりしているのはまだ成長してないのかな? とか考え出すと、仰向けに寝たくなる。
リリース情報
2022.07.08 ON SALE
DIGITAL SINGLE「無色透明」
プロフィール
ヤマシタユウタロウ/沖縄県出身の中性的で繊細な歌声をもつ、アーティスト。 5000組以上の応募があった、一発撮りオーディションプログラム『THE FIRST TAKE STAGE』のファイナリスト。プライベートでは猫が大好きな普通の青年。
山下優太郎 OFFICIAL PROFILE
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