今年8月で、デビューから丸5年を迎える足立佳奈。
昨年秋に3rdアルバム『あなたがいて』をリリースし、今年2月からはバンド編成での全国ツアーも実施。いち早く新曲も披露されたこのツアーの手応えと各地での反響を追い風とし、4月からは毎月連続で配信シングルをリリースするなど精力的な活動が続いている。
そんな足立佳奈が、連続リリース第3弾となる「ゆらりふたり」を6月24日にリリース。現在「W/X/Y」が話題となっているTani Yuukiとコラボした楽曲ということで、その経緯や制作にまつわるエピソードなどを聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 山田邦子
PHOTO BY 関信行
■この先もずっと“ステージ”で歌って表現していきたい
──今年8月でデビュー5周年を迎えるわけですが、実感としてどうですか?
私は10代でデビューさせてもらったんですが、精神的な面での変化もありましたし、時代としての変化も感じてきました。まだまだ新人だと思っていたけど、その肩書きが外れていくようなタイミングでもあったのかなと思います。深く長いようで、やっぱり短い5年。今は8月からのアニバーサリーイヤーに向け、自分的にはかなり意気込んでいる感じです。
──昨年アルバムをリリースし、今年2月からは全国ツアー。そして4月からは連続配信リリースと、たしかに前のめりな意気込みを感じますね。
ツアーではバンド編成でアルバムからの楽曲をお届けできたのもうれしかったし、何よりも、皆さんが前向きな気持ちでライブに来てくれていたことにすごくパワーをもらいました。ファイナルのとき、まだまだここにいたいなって心から思う瞬間があったんですよ。このツアー、このライブを終わりたくないっていう気持ちもそうだし、この先もずっと“ステージ”で歌って表現していきたい、みんなとつながっていたいっていう気持ちを実感したから。4月からの連続リリースもそうですが、5周年っていうところに向けてすごく気持ちが高まりました。
──第1弾としてリリースされた「オーマイガール」のMVは、そのツアーのダイジェスト映像になっていましたね。
ツアー最終日にリリースだったので、ツアーの集大成として、最後の思い出としてファンのみんなに届けられたらいいなと思って作りました。春を意識して曲作りしたいっていうテーマにぴったりだった中村泰輔さんの曲に一目惚れし、歌詞は電車から見える桜とか、ちょっと田舎に行ったときの恋人とのシチュエーションを具体的に盛り込みながら書いていきました。春を感じるラブソングです。
──第2弾の「Me」はこの形になる前の段階、つまりデモの状態としてツアーで歌っていたそうですね。
はい。いろいろ落ち込む時期があって、立ち止まりそうになる瞬間もあったんですが、そのときに真心ブラザーズのYO-KINGさんから「人生は幸せになるゲームだ」って言葉をもらって、なるほど!と。その言葉を深く考えるようになって、そこから曲を作り始めたんです。幸せになるにはどうしたらいいんだろう?ポジティブに考えられたらもっと楽しくなるんだろうなって思ったときに“あぁ、こうやって悩んでいる自分はもうスタートしているんだ!かっこいいじゃん私!”っていうふうに、どんどんワードが広がっていったんです。
──素敵なエピソードですね。
ツアーではタイトル未定の曲として披露していたんですが、5月のリリースにあたってShin Sakiuraさんと初めてタッグを組ませてもらいました。すごく素敵な、新しい風を感じてもらえる楽曲になったと思います。
■改めて「足立佳奈」という名前を皆さんに知ってもらうきっかけに
──そして今月いよいよ第3弾となる新曲がリリースされるわけですが、改めて、連続配信リリースをするに至った経緯を聞かせてもらえますか?
デビューして丸5年を迎える今年8月に向け、改めて「足立佳奈」という名前を皆さんに知ってもらうきっかけになればと思いました。新学期や新生活が始まる4月からのリリースということで、自分たちもチーム一丸となり、デビュー5周年に向けてここからスタートするぞという意味も込めています。
──そういえば足立さんも大学を卒業し、社会人になったんですよね。
はい。社会人になったというより、大学が終わったという感じのほうがしっくり来ますけど(笑)。
──音楽をやっている環境は変わらないわけですからね。
そうなんです。ゼロからのスタートではないけど、同世代のみんなと一緒にこれからまたどんどん成長していけたらと思っているところです。
──同世代という意味で言うと、6月24日に配信スタートとなる新曲であり、連続リリースの第3弾となる「ゆらりふたり」は、Tani Yuukiさんとコラボされているんですよね。
はい。前々から、同世代の男性アーティストとコラボをしたいなと思っていたんですね。Taniくんとは去年『アトリエプロジェクト』というプロジェクトで初めてお会いし、みんなでご飯に行ったり、Taniくんのライブに行かせてもらったりするなかでたくさんの刺激を受け“一緒に曲を作りたい!”という思いが強くなったんです。最初は「いつかこんなことできたらいいね」って軽いノリで言っていたんですが、半年も経たないうちに実現したというのは、私の中ではすごく大きな変化であり、うれしい出来事のひとつでした。
■(今回の歌詞に)優しさとか、余裕みたいなところが出てるなって
──足立さんはTani Yuukiさんのどういうところに魅力を感じていますか?
まずは韻の踏み方です。Taniくんはワードの引き出しが多いですし、どんなテンポの曲でも韻を踏んで中毒性のあるフレーズを生み出している。あとこれはライブで改めて気づけたことですが、ハイトーンのすごさです。軽やかにすっと心に入ってくる歌声をされていて、そういうところがコラボしたいと思ったきっかけになりました。Taniくんは歳がひとつ上で先輩にも当たるんですが、ガツガツひとりで喋って圧をかけちゃうこんな後輩にも(笑)、例えば「なんでも大丈夫だよ」「ここはどうしたいの?」って聞いてくれるんですよ。優しい先輩であり、同世代の仲間なんです。その感覚が、まさに今回の歌詞にも出てるなと思いました。優しさとか、余裕みたいなところが出てるなって。
──具体的にはどういうふうに作っていったんですか?
まずCarlos K.さんと一緒にトラックを作って、自分で歌詞を書いて、Bメロのメロディと歌詞の部分を空けたものをTaniくんに渡して作ってもらいました。どう来るんだろう?ってワクワクして待っていたんですが、返ってきたものを聴いてみたら“うわぁ!”って感じでした。「どうしたらいい?」とか「もうお終いがいい?」とか、そうやって聞いてくれる感じ。さっきの優しさの話につながるんですが、まさにTaniくんそのまんまだなって思いましたし、Taniくんも「プライベートの自分と同じような感じだよ」って言っていました。
■同世代の私たちだからこそ“歩み寄っていくラブソング”
──揺らぎ始めたふたりの関係性や状況がとても切なく描かれていますが、このテーマやシチュエーションはどこから生まれたものなんですか?
Taniくんとコラボをすることが決まってから、私自身、じゃあどういうテーマで曲を作ろうかって考えたんですが、そのときに、Taniくんが悪者になるのも違うし、自分から別れたいとか別れようって言ってるのもまたちょっと違うなと。だったら、Aメロ、Bメロはふたりすれ違っているような感じだけど、サビの落ちどころとして“ゆらりふたり このまま繋いでいようよ”って、まだまだこれからも頑張っていこうねっていうニュアンスで締め括れたらと思ったんです。つまり、同世代の私たちだからこそ“歩み寄っていくラブソング”を作りたいなって。
──“歩み寄っていくラブソング”ってとても素敵な表現ですね。例えばですが4月から新生活を始めて、だんだんふたりの関係性が変化してきたことを不安に思っていた人にはすごく響く言葉だと思いました。
始まりはみんな勢いで頑張っているけど、これくらいの時期になると、仕事のこととか恋の選択とか、それぞれに考えるところもあるだろうなって思うんです。別に無理に一緒にいてくださいっていうわけではないんですが、少しでもその状況に寄り添えるような音楽になったらいいなって思うんですよね。Taniくんもきっと、同じ思いで書いてくれたんだと思います。
──実際、同世代の友達にも多い状況だったりするんじゃないですか?
多いですね。社会人になって、みんな「どうしよう」って言ってます。うまくいかないかもって言っている子もいれば、もう別れたよって子もいます。逆に新しく始まった恋もあったりするんですが、お互い社会人で忙しくてなかなか難しいとか。それでもお互い好きな気持ちは変わらないから一緒にいるよって子たちも、もちろんいたりして、やっぱりそういう節目というかタイミングだったりするんだなと思いました。
──そんななかで「お互いに歩み寄ってみよう」っていうふたりからの提案。なんだか、人間としての優しさがめちゃくちゃ伝わってきます(笑)。
(笑)。曲の中ではわりと私の方がわがままを言っているんですが、曲の中のTaniくんの優しさに“うわー、悔しいなあ”“ずるいなあ”“男の人ってそういうときあるよね”っていう共感もありました。どれも本当の気持ちだと思うし、どちらの言い分もわかるからこそ、ますます興味深いというか面白いなぁっていう気持ちにもなりましたね(笑)。
■うまく言い換えられたワード
──そういう視点も踏まえ、足立さん的にこの曲のポイントとなる部分はどういうところだと思いますか?
やっぱりこの「ゆらりふたり」というワードですね。曲のタイトルにもなっているんですが、お互いの距離感もわかるし、韻の踏み方も、これからも長く付き合っていこうとしているふたりの絶妙な状況も、うまく言い換えられたワードなんじゃないかなって思います。とても気に入っているフレーズなので、この言葉をサビ頭に持ってこられてうれしかったです。
──声の重なりや掛け合いの感じからも、ふたりのいい波長のようなものを感じました。レコーディングはいかがでしたか?
私が先に録って、Taniくんが後日だったのでレコーディングを覗きに行ったんですが、着いたときにはもう終わっていました(笑)。録ったものをその場で聴かせてもらったんですが、もう本当に素晴らしくて。正座しながら、しみじみ聴かせてもらいました。
──足立さんご自身のレコーディングに関して、何かエピソードがあったら聞かせてください。
いつもは男性が聴いても女性が聴いても寄り添えるように、かわいすぎずつらすぎずという感じで歌っているんですが、今回の楽曲には男性の声が加わるということで、自分の中の“女の子”っていうものをイメージして歌ってみました。“あぁ/最近会えてないな”っていうAメロの部分はある意味女の子のわがままな部分でもあるから、歌詞はちょっと切ないけどトーンはいつもよりちょっと明るめに。サビはこのまま一緒にいたいという気持ちの表れでもあるので、女の子の強さだったり、ちょっと芯のある感じの声を出しています。Dメロの“曖昧な 会いたいは/毎回は いらないわ”っていうところはTaniくんが出てこない、掛け合ってもいない部分なんですが、ここは女の子の本心を歌っている部分なので、声はかわいいけど甘さの中のつらさや強さを感じてもらいたいなと思い、ダブルで歌わせてもらいました。そこから“まあそんなこともあるけど。なんちゃってね”って意味も込めてのハミングがあり、落ちサビではキリッと切り替えてTaniくんと掛け合う。全体を通して、自分の中のイメージをふんだんに盛り込めたかなと思っています。
■本当に等身大の歌詞を書いている
──ただわがままを押し通そうとしているのではなく、ちゃんと人として向き合っている感じがすごく伝わってくる。足立さん自身の人間性にも通じているんだろうなと思いました。
本当に等身大の歌詞を書いているのでこんなふうにわがままを言うときもあるんですが(笑)、それでもこのまま一緒にいようよとか、友達にかける言葉を考えてもたしかにそうかもなって思います。友達と喧嘩したとしても、喧嘩別れじゃなくて、喧嘩したからじゃあ私たち次どうする?っていつもなるし。大学のときは結構たくさんあったんですよ。喧嘩というか、気持ちのすれ違いみたいなことが。噂で聞いた話なんだけどとかそういうことが本当に多くて、でも自分はそこから逃げるんじゃなくてじゃあどうしたらいいかを考えてましたね。そういうところが、考え方として出てるのかもしれないです。
──MVは現在制作中(※取材時)ということですが、どんな内容になりそうですか?
私もTani Yuukiくんも出ないスタイルで、この楽曲のストーリーを俳優さんに描いていただいています。楽曲の世界観にフォーカスすることによって、そこでまたひとつ新しい作品としても楽しんでもらえたらと思って。以前のRude-αさんのときはポップさとか明るさ、ふたりのパワーを感じてもらえるような感じで和気あいあいと撮影させてもらいましたが、今回はより楽曲の物語を感じてもらいたかったので、こういうスタイルを取ることにしました。
■自分がやりたい音楽をできる環境って、改めて幸せ
──5周年を機に、活動はさらに活発になりそうですね。
めちゃくちゃ盛り上がっていきそうです。次のリリースに向けての準備も始まっているし、デビュー日の8月30日には5周年記念ライブをshibuyaWWWXで行うんですが、自分がやりたい音楽をできる環境って、改めて幸せだなと思ってます。ライブもそうですが、自分の好きなこと、心から好きだと言えることをたくさんできる年なんじゃないかなと思うので、自分でも楽しみなんですよね。5周年がゴールじゃないけどまずはそこまで走って、その後も走り続けるっていう気持ちで突き進んで行こうと思っています。
リリース情報
2022.06.24 ON SALE
DIGITAL SINGLE「ゆらりふたり」
ライブ情報
【ADACHI KANA 5th Anniversary Live “Life Goes On”】
8月30日(火) 東京・shibuyaWWWX
プロフィール
足立佳奈
アダチカナ/岐阜県海津市出身のシンガーソングライター。2014年、LINE×SONY MUSICオーディションで12万5094人の中からグランプリを獲得し、2017年8月メジャーデビュー。Twitter・Instagram・TikTok・LINEなどのSNSフォロワーが計130万を超え、リリースした楽曲のストリーミング総再生数は1億2700万再生を突破するなど若者から幅広い支持を得ている。今年8月でデビュー5周年を迎えるに際し、4月より毎月連続配信リリース中。5月20日にShin Sakiuraとタッグを組んだ連続リリース第2弾シングル「Me」をリリースし、6月24日には連続リリース第3弾シングルとしてTani Yuukiとコラボした「ゆらりふたり」がリリースされた。
足立佳奈 OFFICIAL SITE
https://www.adachikana.com/