羊文学がメジャーから2枚目のフルアルバム『our hope』を完成させた。アニメ映画『岬のマヨイガ』主題歌「マヨイガ」や、TVアニメ『平家物語』オープニングテーマ「光るとき」といったバンドの知名度をさらに向上させたタイアップ曲や、初めてシンセを取り入れた「OOPARTS」など、充実の12曲を収録。塩塚モエカが約2年を過ごした新宿で感じたパーソナルな想いを起点に、現実の社会と向き合い、時代の空気も纏いながら、それを磨き上げられた3人のアンサンブルで楽曲に昇華していった本作は、彼女たちが誠実なバンドであることを改めて証明している。メンバー3人に作品について語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 金子厚武
PHOTO BY 関信行
■「多くの人に届ける」というテーマ
──音楽作品としてすごく丁寧に作られているし、言葉の強度もさらに増していて、素晴らしいアルバムだと思いました。手応えをどのように感じていますか?
塩塚モエカ(以下、モエカ):このアルバムでやりたいと思っていたことはちゃんとできたかなって。曲単位なんですけど、やりたいと思ったことをちゃんと諦めずに、最後までできたのはよかったと思います。全体としては、「多くの人に届ける」みたいなことが、今年と来年のテーマとして何となくあって、今までよりも音像をクリアにしてみるとか、そういうことにもトライできたし、大変だったけど、充実感のあるレコーディングでした。
──「多くの人に届ける」という想いはこれまでも少なからずあったと思うんですけど、その想いがより強くなるきっかけがあったんですか?
モエカ:まだ思ったより多くの人に届いてないなっていうのはずっと思っていて。もちろん、数字がすべてではないし、自分たちのポリシーもあるけど、せっかくメジャーの環境でできることがあるなら、何か迷ったときに「多くの人に届くかどうか」を軸にやってみようって。それは「曲がどうこう」というよりは、どのメディアに出させていただくのかとか、そういうことが大きいんですけど。
──フクダさんとゆりかさんはアルバムにどんな手ごたえを感じていますか?
フクダヒロア(以下、フクダ):前回のアルバムは「祈り」とか「お守り」というテーマがあったんですけど、今回は塩塚が2020年から過ごした新宿での出来事が書かれた曲が多い印象で、それに合わせてドラムのフレーズも考えました。あと「いろんな人に届けたい」と言ってたこととも関連して、今回初めてドラムテックさんを入れさせてもらって、チューニングのことだったりを一緒に話しながらできて。たとえば、「パーティーはすぐそこ」だったら、J-POPに振り切った感じの抜けるサウンドにしたり、「予感」はポストロック要素が入ったスネアだったり、これまでは自分だけで作ってたけど、ちゃんと自分のイメージやリファレンスを共有して、それをよりよくすることができました。
河西ゆりか(以下、ゆりか):今回制作期間がすごくまとまっていて、12月末から2月末くらいでやったんですけど、すごくギュッとした制作のなかで、毎日このアルバムのことを考えて。あと、今回塩塚がデモを作ってくれて、最初から12曲どんな曲かがわかっていたので、全体で考えることができたというか、一曲一曲がどういう役割の曲なのかを考えることができました。『POWERS』のときは「毎週土日にやる」みたいな感じで、毎回頭をリセットしていたから、その分カラフルになったと思っていて、今回も曲はいろいろあるんですけど、気持ち的にはまとまったものになった気がしています。
モエカ:『POWERS』のときはまだ私が会社に勤めていたので、土日にやってたんですけど、今回も今回で余裕は全然なくて(笑)。11月の末くらいに足りない曲を作り始めて、12月にビルボードでライブがあって、それが終わったらすぐプリプロだったので、スケジュールがなさ過ぎたから、それで一回家でデモを作ってみようと思ったんです。ビルボードが終わったあとは、都内のスタジオとホテルを行き来して作ったので、その分集中して作ることができました。
──コロナの影響でライブがあまりできなくて、その分制作に時間をかけられたという話はよく聞くけど、羊文学の場合はそうじゃなくて…。
モエカ:私たちはライブをやりすぎました(笑)。でもその分ギュッとまとまった制作をすることができて、それはよかったかなと思います。
■あの場所があったからこそできた雰囲気
──フクダくんが話してくれたように、「新宿」というのがアルバムのテーマになっているのでしょうか?
モエカ:今はもう引っ越したんですけど、2020年から今年の2月くらいまでずっと新宿に住んでたんです。もともと実家は西東京で、自然が多くて、空がすごく見えるきれいな場所だったんですけど、社会人になると同時に新宿でひとり暮らしを始めて、周りにはビルが多いし、育ってきた環境と全然違って。それをテーマに作りたいと思ったわけではないんですけど、その部屋で考えたことや感じたことが曲に反映されているので、あの場所があったからこそできた雰囲気なのかなと思います。
──個人的な印象としては、「自分の内面を見つめる」みたいなムードは前作の『POWERS』の方がより強かった気がして、今回の作品もパーソナルが根底にありつつ、もう少し外向きというか、広い世界を描いている印象を受けました。それはアニメ関連のタイアップ曲の影響も大きいと思うんですけど。
モエカ:「光るとき」や「マヨイガ」はいろんな方の意見があってできた曲というか、その映像がたくさんの人に届くように、それにふさわしい曲という意識がすごくあった上で作ったものだったので、そういう意味では、外に向かうっていうのはあったかもしれない。
──その2曲に関しては、ストーリーや登場人物の心情に寄り添うことによって、これまで以上に強い言葉や優しい言葉が選ばれていた印象で、そういう曲を作ったことがアルバム全体のムードにも影響したとは言えますか?
モエカ:「光るとき」と「マヨイガ」は作品がなかったらできなかった曲だっていうのは100%そうで、あと「ワンダー」に関しては、私がもともと書いていた曲を気に入ってもらえたんですけど(コニカミノルタプラネタリウムドラマの主題歌として起用)、壮大な世界観の曲が多くなっていたので、アルバム後半の曲作りでは“あんまりコテコテし過ぎないように、ちょっと引いた曲を足していこう”みたいな、そういうイメージはありました。
■3人だけだったら絶対にできないものができる
──フクダさんとゆりかさんは、アニメ作品と関わりながら曲を作った経験はバンドにとってどんな意味があったと思いますか?
フクダ:『平家物語』は鎮魂の物語で、戦の物語だから、「光るとき」はフロアタムの強さを強調したフレーズにしたり、タンバリンにリヴァーブをかけたCメロの感じを作ったりして、「マヨイガ」に関しては力強さと包容力が大事だったから、最初の繊細なハイハットの感じから、サビでルームっぽくなる感じにしたり、ちゃんと作品と連動して作るっていうのは意識しました。
ゆりか:やっぱり3人以外のものが入ってくると、3人だけだったら絶対にできないものができるので、それはすごいなって。音とかは結果的に自分たちらしくなったんですけど、歌詞は化学反応みたいなことが起きて、新しいものができてるのが面白いと思います。
──『our hope』というタイトルはどのように決まったのでしょうか?
モエカ:あんまり「こういう理由で」みたいな強い意味はなくて、何となくと言えば何となくなんですけど、去年の夏に私が音楽で参加させていただいたダンスの作品があって、そのテーマが「hopeful,colorful」みたいな感じだったので、そこからずっと「hope」というのが頭にあって。で、アートワークの打ち合わせのときに、アートディレクターさんが、車の窓から私が何かを見つけて、そっちを見てるのか、誰かにそれを伝えようとしてるのか、みたいなところをジャケットにしたいと言ってて、じゃあ、何がその先にあったらいいんだろうってぼんやり考えて、『our hope』になりました。
■「平和だったらいいな」っていう気持ちはずっとありました
──なぜ「希望」という言葉が今の自分のモードにハマったんだと思いますか?
モエカ:もともと私がつけたいと思っていたのは、1曲目のタイトルになった「hopi」だったんです。「hopi」は「平和の民」という意味で、2年間新宿に住みながらいろんなことを考えた中で、平和だったらいいなって、何となく思っていて。でも「hopi」はアメリカの先住民族の名前で、その方たちのことをテーマにしたわけじゃないから、リスペクトも込めて、アルバムタイトルにするのは違うかなと思って。それで『our hope』にしたんですけど、「平和だったらいいな」っていう気持ちはずっとありました。
──新宿の街に住んでいて、平和とは程遠い殺伐とした空気を感じていた?
モエカ:地元は周りにいる人も多くなくて、自然もきれいで、時間が止まってるような感じなので、テレビとかを見なかったら、そういうことを気にすることもなかったんですけど、新宿は家から出た瞬間に人がいっぱいいるし、空とか自然もあんまりないから、現実と向き合わなきゃいけない感じが強くて。あとは、私の周りに陰謀論が好きな友達がいて(笑)、「見えないところで人が死んでて」みたいなことを言ってたりして。でも、ニュースで言ってることも友達が言ってることも、自分が直接見たわけじゃないからわからないなと思ったり…そういういろんなことが重なってました。
──もちろん、新宿の街の雰囲気だけじゃなくて、この2年はコロナ禍の2年だったわけで、そのなかで感じた世の中の危うさや混沌とした空気みたいなものもこのアルバムには含まれていますよね。「平和」ということで言うと、ウクライナで起きている戦争も決して対岸の火事ではなくて、自分たちの生活ともある意味地続きで、そういったことに対する想いも「hopi」や「hope」という言葉に含まれているようにも感じます。
モエカ:タイトルとかは全部戦争が起きる前に決めてたんですけど…「そっかあ」ってなりました。
──「our」という単語を使っているのも印象的で、これまでは基本的に「個」を大事にして、いかに自分を愛せるか、いかに自分を赦せるか、ということを歌っていたと思うんですね。今回もそのムードはありつつ、そのうえで「our」という単語を使ったのは、「平和の民」のような、もう少し広がりのあるイメージがあったからなのでしょうか?
モエカ:そこまで考えてなかったんですけど…たしかに、そうかもしれないです。“自分がどうこう”というよりは、“世界が早く平和になってほしい”みたいなことを思っていて…それは私の個人的な想いではあるんですけど。
■ほぼ諦めてるんだけど、“10%のほうに頑張ってほしい”
──起点はパーソナルなんだけど、それが現実の社会に対する視点にも広がっているというか。このアルバムの背景には時間の流れがあって、“夜から朝へ”みたいなパーソナルな感覚と、“人類の歴史”みたいな大局的な視点が並走してる。で、“時間は止められない”という恐怖の一方で、”必ず夜明けが来る”という前向きな捉え方も可能で、後者に賭けるという意味での「hope」というか。抽象的だけど、そんなイメージがあったんですよね。
モエカ:なるほど…そこまで私のなかでちゃんと言葉になってたわけではないんですけど…時間の流れを感じるっていうのは、アートワークの打ち合わせのときにディレクターにも言われたことで、たしかに、夜眠れなくて朝になったとか、そういう歌詞も多くて。でも“絶対に希望はある”と思ってるというよりは、”90%ないかもだけど、10%あるかもしれない”みたいな、“信じたい”とかでもなく、ほぼ諦めてるんだけど、“10%のほうに頑張ってほしい”みたいな、そんな気持ちなんですよね。
──ここまでの話の文脈も含めて、やはり“OOPARTS”は重要な曲かなと。“時計はチクタクと チクタクと 進む”“未来はチクタクと チクタクと 迫る”という歌詞がストレートに時間の経過を感じさせて、すごく大局的な視点で描かれている曲だなって。
モエカ:No Busesの近藤(大彗)くんが去年の秋に出したアルバム(Cwondo/『Sayounara』)が素晴らしくて、ずっと聴いてて、私のイメージだと…私のイメージはずれてるって言われることが多いんですけど(笑)、自分が育った00年代のイメージをすごく感じたんです。ブラウン管のテレビとか、街の広告とか、雑誌の『Zipper』とか、今よりもうちょっといろんなものの色が濃かった気がして、その感じがすごく好きで。私もそれをテーマにした曲を書きたいと思って、“沢山の円盤に囲まれて 最高の瞬間を記録した”っていうところから書き始めました。
──“僕らのエンパイア 終焉の道をゆく”とか“際限ない欲望の果ての果て”とか、「人間だった」にも通じるような、物質的な豊かさを求め過ぎることの危うさが感じられて、今の時代にすごく響く曲だと思ったんですけど、そういう視点もありましたか?
モエカ:この曲には今はないものがいっぱい出てくるんですよね。ブラウン管とか、「円盤」はCDとかDVDのことで、なくなってはないけど、00年代ほど主流ではなくなっていて、あの時代はすごく…これも想像ですけど、進歩しようといろいろ頑張って、でもいろんなことがだんだんおかしくなって、「ヤバい」ってなって、今は全部がすごくクリーンなエネルギーになったりしてるけど、それはロウソクの炎がギリギリ消えそうな感じっていうか。ただ、それが問題だと大きい声で言いたいわけじゃなくて、あの時代にはあんなこともこんなこともあったっていうのを一曲にまとめて、それが何かの考えのきっかけになったら、それはそれでいいなって。
■地球自体がOOPARTSみたいなになるのかなってふと思った
──“誰か聞いて、ただ、生きたいの”というラインもありますが、ここにはどんなフィーリングを込めていますか?
モエカ:それこそ「人間だった」のときもテーマにしたんですけど、地球がダメになって、火星に移住するっていう話を何年か前に美術館で見てびっくりしたんですよね。もし実際にそうなって、100年後にその子孫たちが地球を見たときに「古代の滅びた星にこんな文明があったんだ」って気付くかもしれない。それは私たちがピラミッドやナスカの地上絵を見るときと同じで、地球自体がOOPARTSみたいなになるのかなってふと思ったんです。“だから今を前向きに生きよう”とかそういうことでもなく、それってちょっと怖いというか、ホラーだけど、“地球の美しさって確かにあったよな”みたいな感覚というか。
──やっぱり起点はあくまでモエカさんの個人的な体験で、でもそこから視点が飛躍していくのが面白いですよね。
モエカ:あとこれを書いてたときに、『ぼくの地球を守って』っていう漫画を読んでたんです。前世で別の星から地球を憧れの気持ちで眺めていた高校生たちが、だんだん地球が危うくなっていくなかで、前世の記憶が呼び起されて、地球を守るっていう話なんですけど、それは80年代後半の古い漫画で、昔からこんなことを考えてた人がいたんだと思って。その漫画をもとに書いたわけではないんですけど、書きながら読んでて、“これボクタマ(=『ぼくの地球を守って』の通称)の世界じゃん”と思ったり、そうやって宇宙のこととかを考えることが多い時期だったんです。
──歌詞のイメージがサウンドともリンクしていて、「OOPARTS」ではシンセが非常に印象的に使われています。これまでは“3人の音”にこだわってきたわけで、これは大きな変化ですよね。
モエカ:シンセを買ったんです。シンセは前から結構好きで、詳しくはないんですけど、持ってるだけじゃもったいないと思って(笑)。
──いつ買ったんですか?
モエカ:今回使ったのは去年の夏くらいに買ったんですけど、マイクロコルグとかは前から持っていて、でも使ってなかったんです。「OOPARTS」はスタートが近藤くんの曲だったっていうのもあるし、くるりさんも突然シンセサウンドを入れたりしてましたけど、そういうときはどんな気持ちだったのかなってインタビューを読んでみたら、「シンセ買ったからもとを取りたくて入れた」みたいなことを言ってて(笑)、私も入れたいなって。一回3人だけのアレンジも作ったんですよ。それもすごくよかったんですけど、スタジオに向かう間に自分がシンセを入れて作ったデモを聴いてたら諦めきれなくて、「これをやりたい」って言ったら、プロデューサーの(吉田)仁さんが「合体したらいいんじゃない?」って言ってくれて。最初は「え?」って感じだったけど、合体して聴いてみたらすごくよくて。
■3人だけでできることもまだいっぱいある
──3人だけで作る楽曲に対して一定の達成感を得られたからこそ、次のチャレンジに踏み出せたという側面もあったのでしょうか?
モエカ:それはまだで、たとえば、People In The Boxさんとかって本当にすごいと思うんですけど、あそこまでの完成度にはもちろん行ってないし、3人でできることはまだいっぱいあると思います。これまでもシンセは入れたかったけど、やり方がわからなかった中で、今回時間がないから作ったデモがあって、それを組み合わせたらたまたま上手くいって、初めてやり方がわかったというか。あとは単純に、自分の手札というか、個人的にやれることは結構やったかなという感じがして、自分を飽きさせないためにやったところもあって。でもやっぱり、3人だけでできることもまだいっぱいあると思います。
──フクダさんは「OOPARTS」のアレンジをどう捉えていますか?
フクダ:楽曲全体の雰囲気として00年代がテーマとしてあったので、そのリファレンスとしてスーパーカーを聴いたりして、打ち込みではなく生で演奏してるんですけど、最初は4つ打ちでハイハットを刻んで、バンドインのところはゲートリヴァーブのかかったスネアで入るとか、テーマに合わせて作れたと思います。
──アルバム全体ではいろんなアプローチがあるんだけど、今回ループだったり、音色的にもミュート気味だったり、抑制されたアプローチの曲が多くて、その延長線上に「OOPARTS」のアレンジもあるようにも感じました。
フクダ:今回は一曲一曲のイメージが固まっていたので、テックさんと相談しつつ、よりそのイメージに近づけることができたと思います。「金色」はオルタナフォークみたいにしようと思って、スネアのサスティンを短くしたり、「電波の街」はタイトにしたかったので、スネアにゲートリヴァーブをかけて、ほぼ3点だけで行くみたいな手法だったり、「hopi」は4ADサウンドというか、コクトーツインズとかを意識して、陰鬱でダークでドライなサウンドにしたり、そういうのが曲ごとにありますね。
──「金色」はペイヴメントっぽい感じがして、すごく好きです。
モエカ:ちょっとイメージありましたね。やる気がない感じっていうか、しょぼい感じっていうか(笑)、そういう感じしたいと思いました。
──ゆりかさんは「OOPARTS」のアレンジをどう捉えていますか?
ゆりか:00年代のイメージと、あと宇宙のイメージもあったので、サウンドはカラフルにしつつ、疾走感を出す感じにはしました。
──前半のシンベからエレベへの切り替わりが効果的ですよね。
ゆりか:そうですね。一気に走り出す感じになったと思います。
──アルバム全体では特にどんなチャレンジがありましたか?
ゆりか:音作りですかね。“とりあえず違うことをやる”みたいなのが個人的なテーマで、「電波の街」はエフェクターを使わずに、個性的な音をアン直で作ることができたので、それは満足してますね。
──最後に、新宿で考えたこと、感じたことがいちばんストレートに歌詞に反映されている曲を挙げていただけますか?
モエカ:「キャロル」ですかね。「新宿」ということで言うと、「電波の街」もそうなんですけど、全体的なテーマになってるのは「キャロル」かなって。みんな言ってることが違って、真実がどこにあるのかわからないし、遠くで苦しんでる人がいても、自分はそこに行って直接助けることはできないし、それ以前に自分の暮らしに対しても全然満足してないし…このアルバムに限らず、いつもそうなんですけど、そういうことにずっとグルグル悩んでるんです。
■“記録した”という感じがより強い
──それでも「キャロル」は“10%の希望”を感じさせる曲ですよね。やっぱり起点はモエカさん個人の想いなんだけど、そこから広く社会や時代の空気も内包しながらこの2年という歳月を描いた、『our hope』はそんなドキュメント的な作品でもあるなって。
モエカ:そうですね。『POWERS』も『若者たち』もそのとき生きてきた記録で、今回も“時代がどうこう”というよりは、まずは自分の環境が変わったことがすごく大きかったと思います。ただ、特にこの2年は時代が特別だったこともあって、“記録した”という感じがより強く出ているのかもしれないですね。
リリース情報
2022.04.20 ON SALE
ALBUM『our hope』
ライブ情報
羊文学 TOUR 2022 “OOPARTS”
5/29 (日) 仙台PIT
6/9 (木) Zepp Fukuoka
6/11 (土) Zepp Namba
6/16 (木) Zepp Nagoya
6/24 (金) Zepp Sapporo
6/27 (月) Zepp DiverCity
6/28 (火) Zepp DiverCity
プロフィール
羊文学
ヒツジブンガク/塩塚モエカ(Vo,Gu)、河西ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)からなる、繊細ながらも力強いサウンドが特徴のオルタナティブロックバンド。2017年に現在の編成となり、2020年にF.C.L.S.(ソニー・ミュージックレーベルズ)よりメジャーデビュー。同年12月にはMajor 1st Full Album「POWERS」をリリース。 2021年公開のアニメ映画主題歌「マヨイガ」や話題のTVアニメ主題歌「光るとき」を 含む2nd フルアルバム『our hope』を4月20日にリリース。
羊文学 OFFICIAL SITE
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