SNS世代の代弁者として20代の男女からの高い支持を得ているシンガーソングライターのMACOが、前作『交換日記』から実に3年ぶりとなるメジャー通算5枚目のアルバム『We Promised.』をリリースした。
2019年にレーベルを移籍し、コロナ禍の入った2020年には4ヵ月連続を含む7曲の新曲を配信するなど精力的な活動を行ってきたが、2021年は小休止。
同年7月に配信リリースした「運命」の1曲のみとなっていたが、MACOはその年の夏に“ある答え”を見つけたという。その答えとは何なのか。「生まれる前にしてきた私たちの約束」という意味を込めたニューアルバムを完成させたばかりの彼女に話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 関信行
■音楽と自分は切っても切れないものだということがわかった
──フルアルバムは3年ぶりとなりますが、MACOさんにとってこの3年間はどんな日々でしたか。
レーベルの移籍があったり、コロナでライブができなくなったりして。自分の中での心境の変化もあって。いろんなことがあったんですけど、最終的にこのアルバムにたどり着けたし、自分の思いをうまく反映させられた10曲が作れたなと思います。
──心境の変化というのは?
歌をこのまま続けようかな、違うこともちょっとやってみたいなと迷う時期があったんですね、この3年間、アルバムを出さなかった間に自分との答え合わせみたいなのがあって。でも、やっぱり“自分との約束”はこれだったんだなって。去年の夏の終わりに自分の中で気持ちが固まったんですよね。
──その答えというのは、歌い続けていく決意や覚悟ですか。アルバムを通して聴くと、全体から音楽と結婚したような印象を受けました。
あははははは。そう感じてもらえたらうれしいです。音楽と自分は切っても切れないものだということがわかったし、ずっと手を繋いでいるのかなって感じて。去年は、自分が好きな曲だけじゃなく、自分とはかけ離れたジャンルの音楽にも支えられたり、救われたことが多かったんですね。そこで、自分がうずうずしちゃったんですよ。“MACOは何がしたいの?”って考えたときに、やっぱりMACOは、言葉を曲に乗せて歌わないと言葉を紡ぐことはできない。やっぱり音楽がないといけないなって、自分で気づきましたね。
──その想いが最も反映されているのはアルバムの1曲目を飾っている「Promised.」と「愛」ですかね。
そうですね。「Promised.」の作曲はHACBIさんなんですけど、この曲をあっためていたというか、このアルバムにぴったりだな。キーになるなと思って。自分の声の低い部分から始まって、ものすごく転調して高くなる。MACOの全部がこの曲で聴けるんじゃないかなと思ったし、HACBIさん、すっごい素敵な方なんですよ、お久しぶりだったので、昔の話をしながら、この曲にもう一回息を吹き込む作業を一緒にスタジオでして。久々の制作でもあったのでHACBIさんに支えてもらいながら、MACOのいいところをたくさん引っ張り出してもらいました。
──MACOさんの代名詞とも言えるラブバラードになってます。もう一度生きようと思えた“私”は、“あなた”に全てを捧げる決意を誓い、“命尽きるその日まで/一緒にいよう”と歌ってますよね。
恋愛というよりかは、本当に手を繋ぎ合う家族みたいな心境になれたというか。なんなんでしょうね…歌詞はもちろん、今の心境で書き直して、全体的にブラッシュアップさせて。去年の夏の終わりの頃を思い出しながら書いたんですけど、もうなんか、別に失うものも怖いものもないかもって思えたんですよ。
──ウェディングソングも聴こえますし、音楽へのプロポーズソングにも聴こえますが、「Promised.」というタイトルにはどんな思いを込めてますか。
生まれる前からしてきた自分との約束でもあるし、かけがえのない人との約束でもありますね。この先もずっと、必ず守り抜きたい約束。この人とは約束してきたから、きっと今、こういうことになってるんだろうなって思うような人とのすごーく遠い昔からの約束ですね。
■今回の“約束”は未来というより過去からの意味のほうが強い
──3rdアルバム『メトロノーム』のときもタイトル曲「メトロノーム」で“遠い何十億年も前から/繋がっていたんだね”と歌ってました。
初めて会ったときから、“え?なんでこんなに仲良くなれるんだろ。初めての感じがしない”っていう人がいるじゃないですか。それはきっと、ずっと昔に「もう一回、どこかで会おうね」って言ったからこそ、今世で会ってると思う。だから、今回の“約束”は未来というより過去からの意味のほうが強いかな、「これからも一緒にいようね」っていう約束じゃなくて、もともと約束していたから、「もう離れることはない」っていう約束ですね。
──自分自身との約束というのは?
使命みたいなものかな。音楽は自分との約束だから捨て切れなかったのかな、破れない約束だったのかなって。魂との約束みたいな感じ。これを無視すると、自分が悲しくなっちゃうっていうことに気づいたんですよね。
──アルバムのタイトルのほうには「We」がついてます。
自分の恋とか愛とかっていう部分だけじゃなくて。やっぱり“私たち”だなって思って。MACOの曲を聴いてくれてるファンのみんなと“私たちって約束してきたよね?”っていう意味を込めて、『We Promised.』にしました。
■気づけたのはみんなのおかげ
──「愛」はファンのかたに向けて描いてますよね。この曲は一対一の恋愛ではなく、“君”や“あなた”も出てきて。
そうですね。離れて会えなくても支えてくれた人たちに感謝の気持ちを込めて描いてますね。みんなは、「MACOの歌に元気や勇気をもらってます」って言ってくれるんですけど、MACOにとっては、みんなの存在が支えになってるし、ライブでMACOのことを見てくれている目をたくさん思い出したりもしてて。歌詞にある“やっと見つけたよ この居場所”というは、MACOにとっては音楽をしていく場所。活動できる場所がもともとあったのに、自分でなくしていた。それをもう一回見つけることができた、気づけたのはみんなのおかげだなと思います。
──感謝から生まれてきた感情は「愛」でしたか?
最終的に愛がないと曲にもできないなと思って。MACOを支えてくれた、数え切れないくらいの人たちへのありがとうなんだけど、「いや、本当にどうもありがとう。愛してます」って伝えたくて(笑)。
──歌詞にもありますが、どんな存在になってますか。
自分が弱音を吐いたときに、「大丈夫だよ」って言ってくれる家族みたいな、恋人みたいな、親友みたいな感じというかファンのみんなに対しては、たまにお姉ちゃんみたいだな、お母さんやお父さんみたいだなって思うことがたくさんありますね。
──ファンとの関係性も変わってきてますよね。以前は聴いてくれてる人の心を落ち着かせるような存在になりたいっておしゃってましたが、今はもっと距離が近くなってるように感じます。
はい、ありがたいことに。みんなと一緒に成長できたのかなって思いますね。あと、「愛」は、音楽に対しても歌ってて。さっき、音楽と結婚したって言ってもらったけど、音楽は恋人みたいだなって思うんですよね。一回、別れたり、距離を置いてみたりしたけど、やっぱり付き合いました、みたいな感じですね。
■今まで歌ったことのなかったようなサウンド探しをしてて
──(笑)「愛」は一緒にクラップしながら歌いたくなるようなラブソングになってますが、アルバムにはこれまでとは違ったジャンルにもチャレンジしてますよね。
そうですね。「Promised.」と「愛」、あとは「End Love?」を土台にして、この3曲をスタート地点にして、アルバムを作っていって。せっかく、歌が歌えるような万全の精神状態になったから、いろんな曲で遊びたい、いろんな曲で自分の声を聴きたいと思って。今のチームのみんなと、あんまり今まで歌ったことのなかったようなサウンド探しをしてて。意外とMACO、こういうの好きかも、みたいな。例えば、「lonely」とか、「運命共同体」とかは、言葉でたくさん遊べたなと思って。今までは“これ、どうかな?”って思っていたところも、こういう時代だし、別に言ってもいいかな?って(笑)。
──(笑)「lonely」の歌詞はびっくりしましたね。その前に「End Love?」についても聞いていいですか。
これも言わば約束ですね。ただ、ふたりの愛という形に収まりきらなかったので、ずっとボーイフレンドのまま終わるんでしょうね。でも、人間だから、「End Love」とは言い切れなくて、「?」がついてる。「終わったんだよね?」みたいな感じ。
──“叶わない恋でよかった”なんて強がったりしてますが、ほんとはかなり好きになってますよね。
うん、ただ自分でどこかでわかってるんでしょうね。これ以上の関係にはならないってことを。ふざけ合ったりとか、バカを言ったりしても、ずっと恋焦がれる存在が、MACOは「Promised.」みたいな曲でありたいんですよ。でも、「End Love?」は、ふざけちゃったら、もうそっちの方向にしかいけない。人としては好きなんだけど、成就はしないだろうなっていう感じ。
──そう聞くと、余計に切ないですね。
これ、めっちゃ切ない曲なんですよ。この曲を書いてるときに、友達が失恋した話を聞かせてくれて。それで、自分の想像がもっと膨らんで、歌詞をちょっとだけ書いてみたりして。人の話を聞いて、曲にしたのは、「この世界中で」以来かな。みんな、見えないところで失恋とか、片想いとかしてるんだなと思って。私はそんなに友達いないので、すごくうれしくなったというと不謹慎かもしれないけど、その話を私にしてくれたことがうれしくて。自分もその切なさをもらっちゃって、書いた歌詞になってますね。
■憑依して曲を書いた感じ
──そして、「lonely」ですが、まず、“クソみたいな恋”というフレーズに驚いてしまって。
パッと出てきたんですよね。トラックを聴いてて、自分のラップ好きが出てしまい、韻を踏みたいなと思ってしまったみたいです。最初に主人公を思い浮かべる前に、ファンの子たちにインスタでアンケートをとったんですよ。失恋したときにどうするのか。“やけ食い”か、“やけ酒”か、“友達と会って発散する”っていう人が多くて。みんなそうなんだなって思って。歌詞にもしたけど、ストロングゼロは体に悪いっていうのに、みんなめっちゃ飲むんですよね。そこからふわんふわんと主人公のイメージ像が浮き上がってきて、自分もそこに憑依して曲を書いた感じですね。
──どんな女の子でした?
ストロングゼロにストローをさして、ジュースのようにチューって飲み干せるような黒髪の子。Twitterでよくそういう子を見かけるんですね。すごく興味があって。
──サウンド的にはヒッポホップのビートをベースにした90s’R&B。
気持ちいいですよね。ミックスにもすごくこだわったんですけど、聴いてるだけで歌詞と映像がふわっと降りてきて。昼間にベットの上でパジャマでこの歌詞を書いたんですけど、この感じなら、“クソみたいな恋が終わって”と言っても良いと思って。チームのみんなもいいって言ってくれて。あと、スイーツの写真を撮ってSNSに載せるんだけど、載せるために撮ってるという今の時代を切り取って、皮肉として描いてますね。
──共感する女性は多そうですね。「嫌なこと 忘れる 方法」を調べてるところとか。
究極になってるときって、救いを求めていろいろと調べちゃうと思うんですよ。やけ酒してるんだけど、本当はひとりでスマフォに向かって調べてるっていう二面性を出してたくて書きました。
──「運命共同体」も新しいチャレンジですよね。ブギーファンクになってます。
こういう曲、好きですね。これは「Promised.」の前編かな。ふたりで1個の共同体。こんなに一緒にいても違和感ないよねっていう。もしかしたら1個の生命体だったんじゃないかって思うし、すっごいIQの低い自分になっちゃうくらいの恋ですね。もうべつに何も恥ずかしいことない、みたいな。今まで抱いていたいい女像みたいなものにも囚われなくなってるし、なんか“バカっぽ”って思うけど、素直な自分でいられるなら、そっちの方がいいじゃないですか。だから、駅前とかで、チューしてる人を見ても何も思わなくなった。ふたりの世界があっていいし、ルールも何もないと思って。ふたりの世界になっちゃうから、人混みでもチューしちゃうんですよね。束縛という言葉にも嫌悪感を感じなくてもいいと思える相手に会えたから、こういうちょっとバカっぽい歌詞になりました。
──寝る前も起きてからもずっと好きだよって言い合ってるし、棺桶まで一緒に入ろうとしてますね。
あははは。そうですね。冒頭から“え?なにそれ?あんまりない”って思うかもだけど、実は“あるある”なんじゃないかなと思います。しかも、付き合ったばかりだからこうしてるんじゃなくて。きっとこのふたりは歳をとってからも、例えば、1つのアイスを半分こしてたりするんですよ。それは全然恥ずかしいことじゃないし、素敵だなって思ったので、歌詞に残しました。
■「友達に宛てた曲を聴きたい」って言われて
──また、アルバムの新曲「春一番」では、地元の友達の別れを思い出したりしました。
チームに「MACOの恋愛の曲はもう十分だから、友達に宛てた曲を聴きたい」って言われて(笑)。いろんなのを捻り出して書きましたね。もともと自分はそんなに春が好きじゃなくて、秋が一番好きなので、サウンドは爽やかだけど歌詞は少し切ない仕上がりにしました。
──AbemaTVドラマ『僕だけが17歳の世界で』の挿入歌「桜の木の下」も収録されてます。これも春の曲ですよね。
これはドラマに書き下ろした曲で、桜が散る頃にはその恋人もどこかに消えてしまうというファンタジー。桜の木の下で想いに耽るような一曲ですね。
■アルバムを紐をでキュッと縛るような
──そして、アルバムの最後を締めくる新曲「これは君への最初のラブレター」では、“生まれてきてくれてありがとう”という愛と感謝の気持ちが綴られてます。
SUNNY BOYくんのトラックがMACOの奥底に眠っていた思いを引っ張り出してくれました。この曲、実はアルバムの中でいちばん好きなんですよ。『We Promised.』というアルバムを紐をでキュッと縛るような、本当にあったかいラブレター。
──どんな思いを込めたラブレターですか?
何十年と違うところで過ごしてきたふたりが出会うまで。これまで会えなかった分、何十年も一緒にいようね”という気持ちを込めたラブレターになってます。私がいちばん肩の力を抜けて歌えた曲だし、いつかライブでみんなでも歌いたいと思ってます。
■このアルバムがまた新しいスタートになった
──最初のという言葉ある通り、ここからまた新たな歩みが始まってく気配がしますよね。
うんうん。アルバムの制作中に“そうそう、こんな感じだった”って体が思い返していって。ブランクもあったのですごく大変だったし、わ、めっちゃ、こんな労力使うんだったって思い出したりしたけど、制作が終わるとちょっと寂しいなと感じてて。本当にこのアルバムがまた新しいスタートになったなって思ってますね。
リリース情報
2022.04.06 ON SALE
ALBUM『We Promised.』
ライブ情報
MACO We Promised. Tour 2022 ~ Acoustic & Pop ~
05/01(日)東京・日経ホール
05/08(日)兵庫・クラブ月世界
05/10(火)北海道・PENNY LANE 24
05/14(土)愛知・ボトムライン
05/15(日)福岡・久留米シティプラザ久留米座
プロフィール
MACO
マコ/1991年5月10日生まれ、北海道函館市出身のシンガーソングライター。2014年にメジャーデビュー。1stアルバム『FIRST KISS』はレコチョクで総合1位&オリコン週間ランキングTOP5を獲得、YouTubeの総再生回数は日本人アーティスト最速で1億回を超えるなど、SNSを中心に話題を集める。2019年、SONYMUSICへの移籍を発表。2020年AbemaTVドラマ「僕だけが17歳の世界で」には、レミオロメンの名曲「3月9日」のMACOによるカバー曲と、新曲「桜の木の下」が異例のダブル挿入歌として起用された。2020年の9月から異例の4ヵ月連続新曲配信リリースし、約9ヵ月に渡りオンラインライブ『Endless Love Tour』を実施した。2022年4月6日、3年ぶりのアルバム『We Promised.』をリリース。
MACO OFFICIAL SITE
https://maco.futureartist.net