乃木坂46が通算29枚目となるニューシングル「Actually…」をリリースした。昨年12月にリリースした10周年記念ベスト『Time flies』からは初となるシングルの表題曲は、社会の現状に向き合ったダークなムードのエレクトロ・ダンス・ポップとなっており、カップリングには、成人式を迎えた“新・華の2001年組”による「価値あるもの」や、今年2月に加入したばかりの5期生楽曲「絶望の一秒前」も収録されている。11年目の第一歩にして、新機軸を盛り込んだ作品に、初めての後輩を迎える4期生の筒井あやめと早川聖来はどんなアプローチで挑んだのだろうか。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 関信行
■5期生の子にはいろいろ相談してきてほしいなと思います
──4期生として、初めての後輩となる5期生の加入に対してはどんな心境でいますか。
早川聖来(以下、早川):どうです?
筒井あやめ(以下、筒井):うれしいです。入る前からワクワクしてました。まだそんなに深くお話はできてないんですけど、これから徐々に仲良くなっていけたらいいなって。でも、人見知りでなかなか自分からいけないので…。
──5期生から話しかけるのも難しそうですよね。
筒井:そうですね。でも、自分が後輩だったときに、自分から来てくれたらうれしいっていう先輩方からの気持ちがわかったので、来てもらえたらいいなと思います。
早川:ふふふ。私も楽しみだったので、入ってきてうれしいです。とにかく美女とかわいい子たちばかりなので、これから一緒に活動できるのが楽しみですね。それと同時に、大変なこともたくさんあるし、慣れないことも多いだろうから、自分が先輩にしてもらってうれしかったことを後輩にもたくさんしてあげて、支えてあげたいなと思ってます。
──先輩にしてもらってうれしかったことというのは?
早川:乃木坂に入ったばかりの頃に、先輩とお仕事が一緒だけど、誰と話していいのかわからなくてどうしようってなっていたことがあって。そのときに、「悩みはある?」って、親身に話を聞いてくれたり、自分から言いづらいところを聞いてくれる先輩がたくさんいて。
──例えば誰ですか?
早川:いちばん最初に仲良くなったのは、舞台『美少女戦士セーラームーン2019』を一緒にやった3人の先輩(向井葉月、伊藤純奈、久保史緒里)だったんですね。特に久保史緒里ちゃんは、私より年下だけど、乃木坂に入る前から乃木坂のことを大好きな子だったし、ご自身が加入してから休業した経験もあって、“乃木坂のために”っていうことをたくさん考えていて。その中で、先輩としてのアドバイスをいっぱいくれたんですよね。例えば、私が、ファンの方の期待に添えなくて苦しいっていう話をしたときは、「自分が苦しいって思うということは、それだけ向き合っている証拠だし、どんなときでもついてきてくれる人がいるから、その人のことを思って頑張れば、どんなことでも頑張れるよ」って言ってくれて。今、当時の私がすごく救われたことを思い出しました。あと、伊藤純奈さんは、一緒に活動し始めてからすぐにフランクに話しかけてくださって。舞台『美少女戦士セーラームーン2019』で上海公演があったんですけど、当時…10月だから、まだ加入して1年も経ってないのに、私と田村真佑ちゃんを上海の街に連れ出してくれて。こないだ、3人で一緒に観光地で小籠包を食べた写真が、まゆたん(田村真佑)とふたりでいたときに出てきて。「懐かしいね」って言いながら見てたけど、よくよく考えたら、すごいフランクだよねって。大事な休演日に、こんなに小生意気な後輩ふたりと一緒に遊んでくれて(笑)。純奈さんが、率先して観光地に誘ってくれたんですよ。すごくあったかいなと思って。何よりも心を開いてくれていたのがうれしかったので、私も真っ先に心を開きたいなって思います。ごめん、長くなっちゃった(笑)。
筒井:ふふふ。いいよ、いいよ。私は4期生で最年少だったんですけど、歳がいちばん近い(岩本)蓮加さんが最初から話しかけてくださって。「蓮ちゃんって呼んで」って言ってくださってたんですけど、私はなかなかいけなかったんですよね。先輩に相談をしたこともなくて。でも、先輩になった身として、相談してもらえることはうれしいので、頼れるかわからないですけど、5期生の子にはいろいろ相談してきてほしいなと思います。
■新しいことにチャレンジしていくという姿勢を見せるシングル
──10周年記念ベストの後の新曲ということに関してはどう感じてましたか。
早川:私たちはまだ4年目なので、10周年という言葉が大きすぎて、プレッシャーを感じることが多いんですよ。私は“10周年”という言葉が出るたびに、その重みに反応してしまって。今まで積み上げてきたものをこれからも繋いでいかないといけないし、大きくしていきたいという気持ちになってたんですね。だから、今回のシングルがどういう感じになるのか不安だったんですけど、カップリングに5期生曲があったり、一気に新しい風がどんどん入ってきて。今は単純に楽しみだなっていう気持ちになれてますね。これから、5期生も入ってきて、どんな乃木坂になるのか。今回の曲も今までにない雰囲気なので、10周年だからこそ、また新しいことにチャレンジしていくという姿勢を見せるシングルなのかなって思っていて。プレッシャーよりは、楽しみだなって思えるようになりました。
筒井:10周年には安定のイメージがありますよね。でも、ここで、また新たな乃木坂を見せるっていう姿勢がすごいなと思って。今までの乃木坂の感じで10周年を迎えるんじゃなくて、全然違った感じで10周年を迎えることで、これからもいろいろなことにきっと挑戦していくんだなっていうのがわかるなって、メンバーとしても思うんですね。それに応えられるように、私たちもこのシングルをきっかけに新しい一歩を踏み出して、また頑張っていかいないといけないなという気持ちでいます。
■“こういう乃木坂も好きだな”って思ってもらいたくて
──これまでとは違った雰囲気の曲を受け取ったときはどう感じました。最初に聴いたときは、率直に言って、驚いたんですが。
早川:あはは。私たちもびっくりしましたよ。
筒井:ね。びっくりした~。
早川:歌詞の世界観が抽象的で、“この世の美しさとは?醜さとは?”みたいな問いかけもあって(笑)。具体的じゃないからこそ、メンバーもそれぞれいろんな受け取り方をしたと思うし、とにかく、新しいなって感じました。今までは歌詞も具体的で、例えば、恋なら、相手の姿もわかるし、“僕”や“私”という主語もあったけど、この曲はそれもなくて。新しいからこそ、受け取り手によって変わる世界観を楽しめるんじゃないかなと思いましたね。
筒井:私も、歌を聴いたときも、フリ入れをしたときも、初めてテレビで歌ったときも、いろいろびっくりしてました(笑)。でも、ファンの人に、“こういう乃木坂も好きだな”って思ってもらいたくて。そう思ってもらえるには、乃木坂らしさっていうものもこの曲で出したいなと思うので、乃木坂らしさも出しつつ、新しさも出しつつ、いろんな一面が見せられたらいいなと思ってます。
──1期生が4人、2期生が2人になった11年目の今、ふたりが思う“乃木坂らしさ”とは?
早川:以前、『乃木坂三昧』っていうラジオ特番を1日させていただいたときに、秋元(康)先生が「乃木坂らしさにとらわれなくていい。君たちが乃木坂なんだから、君たちがやったことが乃木坂らしさになるんだよ」って言ってくださって。私は後輩として、結構、乃木坂らしさにとらわれてきたところもあったんですね。“先輩たちみたいにやらなきゃ”とか、“乃木坂らしい空気にしなきゃ”って考えていたけど、そうではなくて。私たちも先輩が作ってきた空気に入って、触れ合って、乃木坂の一員になってる。だから、何かをしようとしなくてもいいんですよね。メンバーが変わっていったら、乃木坂が変わっていくのも当たり前だし、らしさなんてない!っていうことを言ってくださって。だから、私たちのそのままの雰囲気が乃木坂らしさで、この曲では、変わった世界観の中に、大人っぽくて、優雅で、女性らしい部分を詰め込めたらなって思ってました。
筒井:私が乃木坂に入る前に抱いていた印象は、清楚で可憐なお嬢様というイメージだったんですけど、自分が入ってからもそのイメージは変わってないです。カッコいい曲とか、ちょっと変わった曲を披露してるのを見てても、乃木坂らしいなと感じているので、さっき聖来が言ったように、自然に出ているのかなって、今、思いました。この曲でも、力強さの中にある繊細さは、乃木坂しか出せないと思っているので、そういう部分を大事にしたいです。
■具体的じゃないからこそ、いろんな捉え方ができて面白い
──抽象的な歌詞はどう捉えましたか。共感したとか、わかるなって思った箇所はありますか。
早川:共感というよりは、単純に“あ、そうなのかもな”って思いました。“この世のことは何もわかってない”。うん、たしかにわかってないなって(笑)。
筒井:私は最後の“そう実際は(思い違い)/そんな心配は/臆病な言い訳だ”が個人的に好きなんですよね。歌詞には若干、訴えかけている部分があって。“どうせ未来は1mmも変わらない”とか、“嫌ってるのは/誰でもなく自分”とか、ちょっと後ろ向きな歌詞だったりするんですけど、最後の“そんな心配は/臆病な言い訳だ”で、ちょっと変わろうとしてる感じがあって。
早川:たしかに、ここから変わろうとしてるのかも。私がいちばん納得したのは、落ちサビの“見えてる現実は一部でしょう”のとこかな。本当に今の感じだなって。デジタル化が進んでて、現実世界よりもデジタルの世界に入り込んでる人が多いから、もうちょっと現実の世界に目を向けましょうって言ってるのかな?って。でも、そう思う日もあれば、対人関係で、実際に喋ってても、誰も本当のことは言わないし、表面的な人が多いってことを言ってるのかな?って思ったりもする。具体的じゃないからこそ、いろんな捉え方ができて面白いなと思います。
──では、「Actually…」タイトルにかけて、「実は私、〇〇なんです」をもらえますか。
早川:きた!これ、難しいんですよね。なんだろうな…私、おしゃべりで、社交的で明るいって言われがちなんですけど、実は…ネガティブです。あはははは。メンバーは知ってるよね。
筒井:うん。よく、「…う~ん」ってなってます。
早川:基本的に言葉に敏感で、何気なく言われたことをすごい気にしちゃったりするんですよ。たまにファンの方に言われるんですよ。「聖来ちゃんって、意外と超気にしいで、ネガティヴだよね」って。私のことをすごく好きな方は知ってくださってると思うけど、テレビを見てるだけでは伝わらないだろうなって思います。ちょっとしたことでも、言われた言葉を悪く捉えちゃう。実は…社交的なネガティヴ人間なんですけど、そこは直したいです!
筒井:私、何かあるかな…。ふわふわしてるって思われがちですけど、ちゃんとテキパキ動けます!
早川:見た目はおっとりしてるかなって思いきや、仕事はテキパキこなすし、よくできた17歳です。
筒井:うれしー。褒められた~。
早川:結構、私たちは自分でやっていかないといけないことも多くて。ライブのフリとか、立ち位置とか。昔、先輩がやっていたポジションに入るときは、資料が送られてきて、リハーサルに行ったときにすぐにできてる状態にしておかないといけないんですよ。教えてくれる先輩もたくさんいるんですけど、基本的にはみんな時間がなかったりするので、各自が自分の責任でやらないといけない。でも、彼女はなんでもそつなくやってます。自分のお家でちゃんと予習してきて、ほんとに偉いなって思います。
■全部でひとつの芸術作品のようになっていて、新しくてすごい
──この曲はどんな振りになってますか。ダンスの見所を教えてください。
早川:「インフルセンサー」や「シクロニシティ」の振り付けをしてくださったSeishiroさんが作ってくださって。Seishiroさんのフリの割には激しい感じがするんですけど、その中にも女性らしい、ちょっと大人っぽくて、しなやかな乃木坂らしさが詰まった振り付けになってます。
筒井:サビの最初の“Actually”のところで、みんなでセンターに向かって、バーっと手を伸ばすところがあって。そこは、今までの曲にはなかったまったく新しいものになってますね。最初は難しかったんですよ。顔も手と一緒にバーって行くので、顔も見えないんですね。今までは表情もちゃんと意識していたけど、その部分は、表情を気にすることなく、体全部で行きます!っていう感じになってて(笑)。全部でひとつの芸術作品のようになっていて、新しくてすごいなって思いました。
早川:確かに。一人ひとりの表情ではなくて、全体で“実はこう思ってる”というひとつの気持ちを表してる。見てる人に大きく届けられるんじゃないかなと思いますね。顔を気にせずに体全体で表現できるから、踊っていてもすっきりしますね。
──ありがとうごございます。パフォーマンスに参加したカップリング曲についても聞かせてください。
早川:「深読み」は飛鳥さんって感じ。
筒井:ね!めっちゃ飛鳥さん。
早川:あははは。飛鳥さんの魅力が書かれてるよね。
筒井:“ごく自然に 部屋の隅を選んでしまう”という歌詞があるんですけど、飛鳥さんもいつも隅っこにいて。
早川:でも、最近は違うよね。1期生さんが減って、4人だからか。(和田)まあやさんがいつも、「飛鳥、おいで」って楽屋の真ん中の方に呼んでるイメージ。あと、すごく覚えやすい曲なので、みんなも口ずさみやすいんじゃないかなって思う。
筒井:個人的にもすごい好きな曲です。歌詞も、女の子じゃなく、ちょっと生意気な女性になってて飛鳥さんそのものってわけじゃないけど、言い回しが好きですね。
早川:「好きになってみた」は(山下)美月さんって感じ。
筒井:平和だね!
早川:この曲、めっちゃ好きです、私。
──ラブソングですよね。お二人はもしも恋に落ちたらどうなると思いますか?
早川:どうなる?どうなる?落ちたいよ、いつか!あはははは。
筒井:きっとそれだけになっちゃうな。周りが見えなくなるんじゃないかな。
早川:うん。私も相手の行動に全部一喜一憂して、自分の感情が揺さぶれるんだろうな。でも、楽しそうだな。恋してる周りの友達を見てる、苦しいのもうれしいのも全部楽しそうだなって思うから。
筒井:私もきっと、“好き──”ってなっちゃう気がする。この曲は、最初のラララのところのキーが高くなくて。低めの歌い出しが好きですし、歌詞もキュートな女の子っていう感じでかわいらしくて。
早川:わかる。めっちゃ共感しちゃう。私もこういうタイプなのかなって思って。ドラマを一気見しちゃうタイプなので、ハマったらきっと、この歌詞のようにせっかちになるだろうな、とか。いつか経験したいけど、今はファンの皆さんが恋人です!
■飽きることなく楽しんでもらえる1枚になった
──そんな恋人にはどう届けたいですか?
早川:表題曲は抽象的な歌詞で、独特の世界観が詰まっているので、聴いてる人によって解釈を変えてもらえればいいなと思います。そのほかにも、王道の恋愛ソングもあれば、爽やかな曲もある。卒業してしまう2期生の北野日奈子さんのソロ曲もあるし、5期生の曲の「絶望の一秒前」も歌詞は暗いけど、曲は明るくなってて。すごく個性的な曲たちが詰まってるので、飽きることなく楽しんでもらえる1枚になったんじゃないかと思います。
筒井:5期生の曲も今までにはない感じになってるので、表題曲も含めて、今までにない感じもありつつ、新・華の2001年組の「価値あるもの」は“ザ・乃木坂”という良さがあって。
早川:杉山(勝彦)さん曲だしね。
筒井:そういう部分もありつつ、この1枚で乃木坂メンバーのいろんな魅力を楽しんでほしいですね。
リリース情報
2022.03.23 ON SALE
SINGLE「Actually…」
プロフィール
乃木坂46
ノギザカフォーティシックス/2011年8月21日に、秋元康プロデュースにより誕生したアイドルグループ。2012年2月、シングル「ぐるぐるカーテン」でメジャーデビュー。同年5月、シングル「おいでシャンプー」で初のオリコンランキング1位を獲得。2015年には『第66回 NHK紅白歌合戦』に初出場を果たす。2021年8月に結成10周年を迎えた。2022年2月1日には、5期生11人の加入が発表された。
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