スピラ・スピカがメジャー2ndフルアルバム『ナガレボシトレイン』をリリースした。
前作『ポップ・ステップ・ジャンプ!』からの約2年間にリリースされた「サヨナラナミダ」「ほしのかけら」「君なんか好きにならない」「燦々デイズ」といった既発曲に、インディーズ時代の楽曲のリメイク作「にゃらんごろん」やシンガーソングライター・大塚紗英による提供曲「なんてね、バカ。」などバラエティに富んだ新曲群を加えた全12曲を収録。音楽性をさらに拡張させた楽しいスピスピワールドが縦横無尽に展開されている。
4月からは本作を携えた全国ツアーの開催も決定しているスピスピメンバー3人に、制作にまつわるエピソードをじっくりと聞いていく。
INTERVIEW & TEXT BY もりひでゆき
PHOTO BY 大橋祐希
■寄り添い方に幅が生まれた感じがある
──約2年ぶりとなるメジャー2ndアルバム『ナガレボシトレイン』はスピラ・スピカの大きな成長を実感させる仕上がりになりましたね。
寺西裕二(以下、寺西):僕らは音楽を通して聴いてくれる方の背中を押していきたいという気持ちが強いんですけど、前作の『ポップ・ステップ・ジャンプ!』(2020年3月リリースの1stアルバム)と比べると、その背中の押し方に少し変化が出てきたような気がします。これまでのようにむしゃらに応援するのではなく、いろいろなシチュエーションに合わせた背中の押し方ができているというか。
幹葉:聴いてくださる方への寄り添い方に幅が生まれた感じがあるかな。わかりやすく背中を押すのではなく、ただそばにいるだけで応援になることもあるというか。徐々にそういう感覚に気づけていったところがありますね。
──バンドとしていい意味での余裕を手に入れたことで、より広い視点での表現ができるようになったのかもしれないですね。
寺西:そうですね。どんな人に音楽を届けたいか、それをどんなタイミングで聴いてもらいたいか。そういった曲作りにおいての着眼点が以前よりも増えてきている実感はあります。
ますだ:前作からの2年間で培ったものを詰め込んだことで、楽曲自体の幅もすごく広げられたと思うんですよ。今までやったことのなかったアプローチの楽曲もありますし、いろいろな方面からスピラ・スピカとしての表現を追求できたかなって。
幹葉:今回はいつもライブをサポートしてくださっている重永亮介さんであったり、私のプライベートな友達でもあるシンガーソングライターの大塚紗英ちゃんであったり、いろんな方のお力を借りて出来上がったアルバムでもあるんです。コロナ禍になってからは人と人との繋がりの大切さをあらためて実感することが多かったので、そういった部分もアルバムの曲たちには反映することができましたね。
■パッといろんなイメージが膨らむ
──『ナガレボシトレイン』というタイトルにはどんな意味を込めましたか?
幹葉:前作同様、メンバーそれぞれが考えたものをどんどん挙げていく中でてらくん(寺西)から“ナガレボシトレイン”というワードが出たんですよ。
寺西:みんなにもわかりやすく、なおかつみんなと一緒に進んでいくスピスピらしさを出そうと思って考えました。口に出して言ったときの気持ちよさもある言葉なので、わりとゴリ押しに近い感じで「これでどうでしょう?」ってプレゼンさせてもらって(笑)。
幹葉:あははは。でも、この“トレイン”に乗ったらワクワクしそうな感じがしたんですよ。“絶対に楽しい場所に連れてってくれるはず!”みたいな。
ますだ:タイトルだけ見ても、パッといろんなイメージが膨らみますからね。そこからの流れでアルバムのジャケットなんかのアートワークが思い浮かんでくる感じもあったし。これしかないなという感じで決まりました。
幹葉:アルバムとしての大枠であるタイトルが決まった後、じゃあそこに入れるのはどんな曲がいいかなって考えながら新曲をどんどん作っていった感じでしたね。
──それぞれの楽曲は、ナガレボシトレインが停車する駅のようなイメージですよね。
寺西:そうなんですよ!
幹葉:まさしくその通りです(笑)。結果として、どれもみんなにしっかり楽しんでもらえる駅になったかなって思います。収録されている既存曲はタイアップで作った曲が多かったので、新曲に関しては“自分たちのやりたいことを思いきりやっちゃおう!”みたいな気持ちがより強かったです(笑)。
──最新シングル「燦々デイズ」で幕を開けるアルバム。冒頭はスピスピらしい青春感のある曲たちがまとめられていて。2曲目の「夏のキセキ」は“爽快系目薬 ロートZ!”のCMソングになっている曲ですね。
幹葉:去年の夏にSTAGE:0(ロート製薬がスポンサーとなっている高校生のeスポーツ大会)のロート製薬さんのCMでサビ頭だけ使っていただいていた曲で。今回、ようやくフルで皆さんに聴いていただくことができます。eスポーツを頑張る若者たちをイメージしながら、自分自身の青春時代の思い出を詰め込みながら作っていきました。
■学生時代に戻った気持ちで歌うことができました
──歌詞には具体的なワードが結構使われている印象ですよね。だからこそ聴き手は情景を想起しやすいし、自分自身にも重ねやすい。
幹葉:“勝った日のアイスの味”“負けた後の帰り道”と言うフレーズは、まさに私自身の部活時代にあったリアルな思い出です(笑)。あと、私の地元には徳島阿波おどり空港があるので、“空港”という言葉を使ったりもしました。なので、レコーディングではどこか懐かしい気持ちというか、学生時代に戻った気持ちで歌うことができました。
寺西:この曲はアレンジも含めて重永さんにお願いしました。ちょっぴりせつないエモーショナルな感じがありつつも、でもちゃんと爽やかな光が見えて、やる気を漲らせてくれる。その仕上がりはもうほんとに“さすがです!”という感じでした。
ますだ:スピスピの持っているイメージにすごくマッチした曲ですよね。楽しい部分だけじゃなく、ちょっとセンチメンタルな要素も上手いこと融合させてくれたのがうれしかったです。
幹葉:ライブではクラップでみんなと一体になれそうですね。声が出せる状況になったら、最後の“♪ラララ~”のパートもみんなと一緒に歌いたい!
寺西:うん、その日が待ち遠しいね。
──4曲目の「ゲットゴーイング」はJazzin’parkが作曲を手掛けています。
幹葉:私はもともと、Jazzin’parkさんの曲が大好きだったので、「スピスピにも曲を書いていただきたい!」と今回ちょっとわがままを言わせていただいた感じで(笑)。快く引き受けていただけて本当にうれしかったです。Jazzin’parkさんは幅広くいろいろな方に楽曲提供されているんですが、どれもそのアーティストさんのカラーにハマっているんですよね。なので、スピスピにはどんな曲を書いてくださるんだろうというワクワクがありました。
寺西:結果、今までのスピスピにはなかったタイプの曲をいただくことができて。きっと聴いた人も驚いてくれるんじゃないかな。僕自身、クリエイティブの面で勉強させてもらえたので、いい経験になりました。
ますだ:こういう裏ノリの楽曲は今までになかったので、自分としては新たな挑戦という感覚もあって。ベーシックなアレンジの合間でどう遊び要素を入れていくか、みたいなことをしっかり考えながらレコーディングには臨みました。
──Sakuさんのアレンジも相まって、本当に新しい感触の曲になっていると思います。
幹葉:スピスピの曲はテンポが速くて前のめりなものが多いんですけど、この曲はまた違ったアプローチになっていて。メッセージ性とか力強さはあるんですけど、どこか軽快な感じがあるというか。それは自分たちにとっても斬新な印象だったので、ライブではシーンを切り替える重要な1曲になりそうだなって思います。歌うのもすごく楽しい曲で、レコーディングはあっという間に終わりましたね。楽しく歌ってたら“アラ、もう終わってた”みたいな(笑)。
──前へ踏み出すことを恐れる人たちの背中を優しく押してくれる歌詞もいいですね。
幹葉:サビの最後にある“大丈夫”という言葉を大事にしました。ありきたりな言葉ではあるけど、でもそう言ってもらえるとやっぱり安心できるじゃないですか。“あ、自分は間違ってなかったんだ。よかったな”って。そういった思いをしっかり届けられるように、できるだけ優しい気持ちで歌っていきましたね。
■歌詞として新しい書き方ができた
──既発曲「ほしのかけら」「サヨナラナミダ」で大人っぽいシリアスな表情を見せた後、アルバムはスピスピの真骨頂とも言えるはちゃめちゃ元気ゾーンへ突入します。「にゃらんごろん」はインディーズ時代の楽曲のリメイクだそうですね。
幹葉:「サヨナラナミダ」の後をどの曲にするかでかなり迷ったんですけど、“もういっそのこと振り切ってしまえ!”という気持ちで「にゃらんごろん」を入れることにしました(笑)。もとになったのは「だらんごろん」というインディーズ時代の曲で、ライブの定番曲「ちょっと待って」の続きを歌った内容だったんです。「ちょっと待って」で王子様と結婚したお姫様が、贅沢を手に入れたことでやる気がなくなってだらだらしてしまうっていう(笑)。今回リメイクするにあたっては、ファンタジーだった内容を現代に寄せて。さらにスピスピの曲によく出てくる“しゃべる猫”の要素をがっちゃんこさせることによって「にゃらんごろん」という曲に生まれ変わりました。やる気を取り戻すことなく、だらだらしきったままで曲が終わるっていうのは、スピスピの歌詞として新しい書き方ができたと思いますね。
寺西:アレンジも含め、原曲からの変わりようにかなり驚きました(笑)。もともとはゆったりした横揺れの曲だったんですけど、今回は2ビートになってるっていう。バンドとしてのいい意味での土臭さとか、シーケンスによるちょっとしたSFっぽさとか、サウンドやビート感で曲の印象がここまで変わるのかっていう発見がありました。このアルバムの中でお気に入りトップ3に入るくらい気に入ってます(笑)。
──猫語で歌うボーカルもかわいくて。
幹葉:デビューの頃だったら恥ずかしがっていたかもしれないです(笑)。でも、活動を重ねていく中で、恥ずかしいことなんてないなと思えるようになったというか。自分がいいと思えることであれば、信念を貫いてやりきることこそがかっこいいんだぞと。なので、自信を持って「にゃーにゃー」歌うことができました(笑)。
ますだ:この曲はアレンジがガラッと変わったことで、ライブ映えすると思うんですよ。どこに配置するかでライブのストーリーがいろいろ変わってきそう。それが楽しみでもありますね。
■スピスピの音楽に対しての“今が旬よ”という気持ちも詰め込んで
──続く「サークルフィッシュ」はまさにライブをイメージした曲ですよね。ただ、そこにもうひとつ別の要素を混ぜているのがスピスピらしさ。
幹葉:これは作っていてすっごい楽しかったです!新たなライブの定番曲を作ろうと思ったときに、私の憧れでもあるサークルモッシュをテーマにすることを決めたんです。ただ、スピスピのライブに来てくれる方はモッシュを経験したことのない人も多いだろうし、そこまで激しい盛り上がり方を求めていない人もいると思うんです。なので、もうちょっと平和にぐるぐる回るにはどうしたらいいかなと考えた結果、“あ、回転寿司だ!”とひらめいて(笑)。
寺西:その着眼点はほんとに尊敬しますね(笑)。
幹葉:あははは。ただ普通に回転寿司こと書いてもアレかなと思ったので、そこにちょっと恋愛要素を入れたのもこだわりですね。「今すぐ食べて。今を逃したらダメよ」みたいな。そこはスピスピの音楽に対しての“今が旬よ”という気持ちも詰め込んでいます。
──これはもうライブでは間違いなく盛り上がりますよね。
幹葉:そうなってくれたらいいですね。あと、レコーディングのときに重永さんが提案してくれたことなんですけど、間奏ではお寿司を握るような感じでクラップをしているんですよ。レコーディングではメンバーみんなで一緒にクラップをしたんですけど、もう笑いが止まらんくなってしまいましたね(笑)。なのでライブでも、この曲だけはみんなにもお寿司を握るポーズでのクラップをお願いしたいです!
寺西:みんながどうやってフロアをぐるぐる回ってくれるかも楽しみやしな。
幹葉:この曲だけ楽器置いてファンのみんなと回ってもいいよ(笑)。
ますだ:え、いいの(笑)?
■幹葉の近くにいる人が幹葉をイメージして作ってくれた曲
──10曲目には幹葉さんと交友がある大塚紗英さんが作詞・作曲を手掛けた「なんてね、バカ。」が収録されていますね。
幹葉:はい。さえチ(大塚)はPoppin’Partyのギタリストでありつつ、シンガーソングライターとしても活動していて。私は彼女の曲が純粋に大好きなんです。よくお家に遊びにいったりもしてるんですけど、あるとき、「私がスピスピの幹葉をイメージしたらこんな曲を作るかなぁ」ってピアノでメロディを弾いてくれて。そこに私が歌を合わせたりしていたら、すぐに1コーラスが出来上がっちゃったんです。それがこの曲。メンバーやスタッフさんもみんな気に入ってくれたので、今回アルバムに収録することになりました。
寺西:ちょっと懐かしさを感じるメロディやコード進行で、めちゃくちゃいい曲だなって思いました。幹葉の近くにいる人が幹葉をイメージして作ってくれた曲という部分でもすごく面白いなと感じたし。
ますだ:最初に聴いたとき、どこかアニソンの雰囲気を感じたんですよ。僕は昔からアニソンをよく聴いてきたので、自分のカラダの中にもスッと入りこんできましたね。これをスピスピとして演奏したらどうなるんだろうっていうワクワクもありました。
■はかなく終わってしまった片想いを描いた歌詞はすごく新しい
──歌詞まで大塚さんに託しているのも大きな特徴ですよね。
幹葉:そうですね。女ふたりでいると、まぁいろんな話をするわけです(笑)。当然、恋愛の話になったりすることもあるので、そういう会話をもとにしつつ、そこにフィクションも織り交ぜながら恋愛のストーリーを書いてもらいました。今までのスピスピの恋愛の曲って、恋の始まりのドキドキを描いたものだったり、片思いの曲だったりが多かったんです。なので、この曲のようにはかなく終わってしまった片想いを描いた歌詞はすごく新しい。特に女の子には共感してもらえる内容になっているんじゃないかな。
──歌詞の中にたくさん出てくる“バカ”というワードを、それぞれ違った表情でしっかり歌いわけているのが印象的でした。
幹葉:ひとつの歌詞の中に同じ言葉がここまで出てくることって今までなかったので、難しさはありましたね。ただ、さえチが作ってくれた物語が本当にキレイでせつないものだったので、そこに身を委ねるように、流れるような感情で歌っていきました。最後の最後に出てくる“バカ”はかなり強い感情のこもった“追い込みバカ”になってます(笑)。
■旅の終わりにふさわしい壮大さを
──そしてアルバムの最後には「春は待っている」が。未来への希望を感じさせるあたたかなエンディングとなっています。
寺西:この曲はアルバムの締めくくりを意識して作りました。出会いと別れを感じられるようなメロディ感と、旅の終わりにふさわしい壮大さを出したいなと。サビだけでも5回くらい書き直しましたし、かなり悩みながら、より良い仕上がりになるよう突き詰めて作ったので、自分としては思い入れが強いです。
ますだ:ゆったりした曲でアルバムの終わりをしっかり感じてもらいつつ、同時に次につながっていく雰囲気も味わっていただけるんじゃないかなと思います。
──歌詞はどんな思いで綴っていきましたか?
幹葉:まさに、終わりやけど次が見える歌詞にしようと思いました。私たちはデビューして以降、大きな夢や目標に向かって進んできたんですけど、ここ2年ほどはコロナ禍でその歩みがゆっくりになってしまったところがあって。それはすごく悔しいことでもあったんです。でも、歩みがゆっくりになってしまったことで見えたものも確実にあったので、今の状況を否定するのではなく、しっかり前を向いて歩き続けていきたいなって思うんですよね。まだここで終わりたくはないけん、今まで繋がってきたみんなとさらに新たなステージへと進めるように頑張っていきたい。そんな気持ちを歌詞には込めましたね。
■スピラ・スピカの広がりを感じてもらえる
──このアルバムを引っ提げ、4月からは全国ツアー『スピスピと燦々輝こう!~ナガレボシトレインに乗って~』が開催されます。楽しみですね。
幹葉:アルバムがリリースされたことで、今までとはまたガラッと違う内容になると思います。私たちのことを好きでいてくれるみんなのことをもっともっと幸せにしたいという気持ちを持って1公演ずつ臨んでいきます!
ますだ:新しい曲が増えたことで、ライブの楽しみ方もますます増えているはず。そんなスピラ・スピカの広がりを感じてもらえるような、楽しいライブをお届けしたいですね。
寺西:今回のアルバムにはライブ映えする曲が結構多いですからね。遊園地のアトラクションを楽しむように、1曲1曲を自分なりに楽しみ尽くしてくれたらうれしいですね。
幹葉:楽曲はライブでみんなと一緒に楽しんだことで完成するところもあるので、アルバムの曲たちがツアーを通してパワーアップしていくのが私たち自身も楽しみです!
リリース情報
2022.03.16 ON SALE
ALBUM『ナガレボシトレイン』
ライブ情報
スピラ・スピカ Release One-Man Live Tour 2022
『スピスピと燦々輝こう!~ナガレボシトレインに乗って~』
4月7日(木) 神奈川 F.A.D YOKOHAMA
4月10日(日) 福岡 DRUM Be-1
4月16日(土) 大阪 BIG CAT
4月17日(日) 徳島 club GRINDHOUSE
5月7日(土) 愛知 名古屋Electric Lady Land
5月15日(日) 静岡 ROXY
5月29日(日) 宮城 仙台・enn 2nd
6月5日(日) 東京 Spotify O-EAST
プロフィール
スピラ・スピカ
幹葉(Vo)、寺西裕二(Gu)、ますだ(Ba)。観る人、聴く人を自然と笑顔にさせる天真爛漫なキャラクターを持つ元気少女 Vo.幹葉(徳島出身)を中心とした3ピースピュア・ポップ・ロックバンド。2018年8月8日にTVアニメ『ガンダムビルドダイバーズ』第2クールED曲「スタートダッシュ」にてメジャーデビュー!
スピラ・スピカ OFFICIAL SITE
https://spiraspica.com