DoulとSO-SO、世界で活躍するふたりの対談が実現した。
Doulは、デビュー曲からストリーミングサービス各種で世界90ヵ国にて再生され、国内のみならず海外リスナーの耳と心も掴んでいるアーティスト。SO-SOは、国際ビートボックスコンテスト『Grand Beatbox Battle 2021』にてタッグループ部門で優勝、ビートボックス集団“SARUKANI”として準優勝を果たした、ヒューマンビートボクサー。
両者は、Instagramのメンション&フォローをきっかけに知り合って意気投合し、昨年11月、SO-SOがDoulの楽曲をリミックスした「Bada Bing Bada Boom feat. Zag SO-SO REMIX」をリリースした。
現在18歳のDoulと、22歳のSO-SO。“革命を起こしたい”という熱き想いを共有するふたりに、世界へ発信する表現者としての信念を語り合ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 矢島由佳子
PHOTO BY 関信行
■共感できるところがある。クレイジーさが似ているふたり
──撮影中も和気藹々とした雰囲気でしたが、ふたりは楽曲制作以外でも交流があるんですか?
Doul:制作以外のほうが一緒にいる時間が長いよね(笑)。
SO-SO:お互いのライブに行ったり、一緒にクラブへ行ったり。
Doul:基本、クラブへ行くか、“ちょっと話そうや”っていう仲間ですね。初めて会ったときからバイブスが、ね?
SO-SO:“初対面やっけ?”みたいな。
Doul:初対面の感じがまったくしなかった。すごく共感できるところがあるのと、クレイジーさが似てるんだろうなって思います。
──具体的にどういったところが似ていると感じますか?
SO-SO:海外志向であるところとか?
Doul:そうだね。お互い、何かをすることに対して恐れて生きてないんだろうなって。
SO-SO:日本人に本来あるはずの“躊躇”のリミッターがはずれてます(笑)。
──ふたりは“世界から注目を集める若き日本人”と言えると思うのですが、国内だけでなく海外に自分の表現を届けたいと思って行動する背景にはどういった想いがあるのでしょう。
SO-SO:僕は、自分がやってる音楽があまり日本人に刺さらないからっていう(笑)。J-POPは作れないので、海外に目が行くのはある意味自然かもしれないですね。どう、一緒?
Doul:そうだよね。自分が作った音楽を聴いても、世界にポンと落としたときに海外のリスナーのほうが自然と多くなるような楽曲だなと思うし。
SO-SO:むしろ、たまたま日本に住んでるだけなんですよね。
Doul:それはあるかもしれない。規模感も関係するというか。日本全国の全員に音楽を聴かせたいと思っているけど、世界中にもっと多くの人間がいるんだったら、その人たちにも向かって、今伝えたいメッセージを伝えたいし、音楽を聴いてほしい。昔よりも洋楽が聴かれなくなっているような気もするので。
SO-SO:全員がそうだとは思わないですけど、日本人って、共感性の高い歌詞に惹かれる人が多いじゃないですか。僕みたいに“気持ち悪い音が鳴ってたら最高!”みたいなタイプの人はかなり少ないと思うんですよね(笑)。
Doul:感じ方はもちろん人それぞれですけど、もっと広く音楽に触れてほしいという気持ちがあって。SO-SOもDoulも、幅広い音楽を、どの時間でも愛して、もっと深めて、音楽だけで何時間も語れるような人を求めているんだと思うんですよ。だから幅広い音楽をやってる。そうじゃない?
SO-SO:いや、もう、本当にそう。そうです。
Doul:音楽がもっと身近な存在になってほしいということは毎日思ってますね。
SO-SO:2年前の成人式のときに同級生たちと会って、“音楽作ってるらしいやん、聴かせてや”って言われて聴かせたら、僕の曲ってあまり歌詞とかがないので、“これ何? どうやって聴けばいいん?”みたいに言われて。それが悲しかったんですよね。それで僕は、“これが日本という国か”と思って。一般的な反応はこういうものか、と……。
Doul:だから、“革命を起こそう”という感じでやってますね。SO-SOとよくそういう話をする。
SO-SO:そう、革命は起こしたい。
Doul:うん。革命を起こそうと思ってます。
──革命を起こせるくらい、自分たちの音楽や表現で世界中の人を感動させるためにはアーティストとして何が大事だと思っていますか? SO-SOさんは『Grand Beatbox Battle 2021』で優勝もされていますが、あの舞台に立ったとき、どんなことを考えたり感じたりされましたか。
SO-SO:大事なのは、意外性かな。初めて出た『Grand Beatbox Battle 2019』は、僕は無名の日本のダークホースで“ようわからん坊やが来たぞ”みたいな感じだったんですよ。しかも、対戦相手が前回の世界チャンピオンだったので、“今年もチャンピオンが勝つだろう”という空気感だったんです。その状況を逆に活かして、めちゃくちゃぶちかましたら、油断していたお客さんの想像を超えて盛り上がりが爆発して。新しいことをやれば盛り上がると思って、ゲームっぽいピコピコした音を再現してみたりしたんですけど、それがハマりました。誰かが今までやったことのあることって、その道のトップやパイオニアがいるわけじゃないですか。だからそこで戦うよりも、まったく誰も足を踏み入れてないところを探してやるほうがインパクトを作れるのかなとは思ってます。
Doul:Doulの場合は、一番好きな音楽がロックで。ロックという文化は昔からあって、そこには作り上げられてきた“本物のロック”があって。その人たちには勝てないと思ってるんですよ。でも、この2000年代に生まれた自分にしかできないことがある。それは、新しいものを作るというより、昔の人たちが残してきたロックだったり、いろんなジャンルのカルチャーをひっくるめたものを作ること。それを作れるのは、たぶんDoulしかいなくて。この時代に生まれた人間にしかできないから。自分がいいなと思ういろんなものをハイブリッドにして何かひとつを作ることが、次の新しいものを作ることであり、自分が本当にしたいことかなと思ってます。今作ってる曲は、ジャンルがいろいろで“何の音楽をしてる人だろう?”って思われるかもしれないんですけど、自分の尊敬する音楽たちを自分流に集めたうえで、もっと爆発させる、ということがやりたい。それができたときに、たぶん、革命が起きるなと思ってますね。
SO-SO:俺はDoulの考え方を理解はできるんですけど、こんな芸当はできない(笑)。彼女のセンスも、それを発揮できる力も、めっちゃかっこいいなと思います。自分とは全然違う武器を使って戦っているアーティストという感じがするので、そこが一番の尊敬ポイントですね。
■「Bada Bing Bada Boom」のSO-SOの最高のリミックス
──そんなふたりが初めて共作した(SO-SOがDoulの楽曲のリミックスを手がけた)のが「Bada Bing Bada Boom feat. Zag SO-SO REMIX」ですが、この制作においてはどういった意識や工夫がありました?
Doul:『One BeyonD』(1stEP /2021年7月発表)を出した時期で、EPの5曲の中から“SO-SOやりたいやつない?”っていうノリで(笑)。
SO-SO:そう。最終的に「Bada Bing Bada Boom」か「From The Bottom」のどちらかで迷って、でも「Bada Bing Bada Boom」にしようってなりました。
Doul:正解でしたね。
SO-SO:曲を決めたときは全然完成形が見えてなかったんですけど、ステムデータをもらって、ボーカルとギターはそのまま使って、あとは全部俺の声で作ろうと思って作っていったら……気づいたら出来てた、みたいな(笑)。
Doul:本当に早かったんですよ。“もう出来たの?”って。
──ギターとボーカル以外は全部SO-SOさんの口から鳴らしている音なんですよね?
SO-SO:全部声です。僕、ひねくれてるので、“楽器使いたくないな”みたいな(笑)。普段の曲も全部、基本は声で作ってますね。
──あきらかにビートボックスだとわかる音もあるんですけど、“これは声、打ち込み、どっちだろう?”と思う音もたくさんあって。
SO-SO:あ、そうですね。全部加工しちゃうと“べつに音源でいいや”ってなるので、生の人間らしさを出すようにはしてます。
Doul:特に曲の後半の盛り上がり、最後のラスサビが半端なかったんですよ。そこが本当に最高で。そもそもSO-SOのセンスを信じていたんですけど、あの曲の良さが出たリミックスが出来上がってめっちゃ嬉しかったですね。
──そもそも「Bada Bing Bada Boom」はどういう曲を作りたいと思って書いたものでしたか?
Doul:サウンド的には、今までなかったちょっと面白い感じで。ギターが軸になってるというか、あのギターのカッティングがすごく好きで。最初にメロがついてラップに入って、みたいなスタイルをやりたくてやりました。歌詞は、その時期の悩みをそのまま書いたようなものですね。“Zag”という別人格のラッパーを入れることで、Doulとしては言えない、内面的にもっとディープな面まで伝えられるということを示した曲でもあって。今までと違った面白い見せ方をしようと思って作りました。
──Doulさんのソングライティングで印象的なのは、自分の悩みや人生を素直に綴りながらも、フロウや音階、ビートに合う言葉をはめるワードチョイスのすごさで。しかもそれを英語でやっているという。
SO-SO:そうなんですよ! 僕も英語でリリックを作るときがあるんですけど、“Doulヤバいな”って思います。英語で作るのって難しいんです。合う言葉がなかなか見つからない。例え、僕が英語をまったくわからなかったとしても、彼女のワードセンスはすごく良くて、語感がビートに合ってるので“かっこいいな”と思うと思うんですよね。
Doul:「Bada Bing Bada Boom」の歌詞を組み立てるときにいちばん気をつけてたのは、音なんですよ。
SO-SO:うん、それはなんか感じたな。
Doul:特にZagに入る瞬間は音に集中して、本当に心地いい単語しか入れなかった。音にこだわったラップ部分じゃないかな。メロディっぽいラップだし。
──Doulさんは、ビートボックスやラップなどヒップホップのカルチャーにはどのように触れてきたんですか?
Doul:ヒップホップは生まれたときからずっと身近にあった音楽なんですよ。マミーの子宮の中でエミネムを聴いて、リンキン・パーク、アッシャーとか、その時期に流行ってる音楽を聴いて育ったので。ビートが流れたらフリースタイルで見せるとか、サイファーをするのが当たり前みたいな環境で、自然とラップができてました。だからヒップホップはずっと軸にあった存在ですね。よく家族と家のテレビでビートボックスバトルのYouTubeチャンネルを観ていて。ビートボクサーの中でも“音楽”をしている人がいて、そういう人に惹かれたし、人間がひとつの身体だけで音楽をできることがすごく面白いなと思って、ビートボックスにはめちゃくちゃ興味を持ちました。『Grand Beatbox Battle』で“ヤバい日本人いるな。盛り上げ方わかってんな”と思って観てたのが、SO-SOでしたね。だから、いきなりInstagramでメンションきたときは、“マジで? 好きなんだけど!”みたいな感じでした(笑)。
■ライブで観たいDoulのアルバム『W.O.L.F』
──Doulさんの最新アルバム『W.O.L.F』に関してもお伺いさせてください。SO-SOさん、どう聴かれましたか?
SO-SO:1曲目の「The wolf is at my back」、これね……“やべえ!”みたいな(笑)。“まるで映画やん”って。全体的に曲がサウンドトラックっぽくて。僕、映画音楽がめっちゃ好きなんですよ。
Doul:映画作ろうと思ってたもん。SO-SOの推し曲は?
SO-SO:「Super Hero」、良かったですね。あと「What’s missing」。Doulのサウンドって“古き良きを感じるビンテージギター”みたいなイメージがあったので、ピアノのスローテンポなバラードを聴いて“こんなんもいけるんや”と驚いて。
Doul:「What’s missing」を作った理由も、“Doulは雰囲気もん”って最初の頃に言われたことがあったからなんですよ。“本当に歌ったら歌ヘタやろ?”みたいな。“いやごめん、歌えるわ”っていうのを見せるために、こういうふうな歌い方ができるものをちゃんと見せつつ、自分の好きなテイストでDoulさを残したものを作ったら……“まあ見てみ”という曲が出来ましたね。
SO-SO:Doulの曲って、サビがめっちゃキャッチーなんですよ。だって俺、「Super Hero」を車でかけて一緒に歌ってたからね。
Doul:特に「Super Hero」は全員で熱唱したいし、「Free」もサビを熱唱したいという理由で作りました。
SO-SO:あと、僕はDoulのライブを観て100パーセント大好きになったんですよ。音源ももちろんいいんですけど、ライブで“ありがとうございました!”ってなって(笑)。本当に楽しかった。素晴らしかった。だから「Super Hero」とか「What’s missing」もライブで聴きたいですね。
Doul:さすがです、そういうことです! 私は何のために生きているかって、ライブするために生きているんですよ。だから、“絶対、Doulの曲はライブで聴け”って思います(笑)。本当の願いはそこ。
──『W.O.L.F』のジャケットはどういうイメージで作られたんですか?
Doul:今回はジャケのために写真をいっぱい撮って、めちゃくちゃ迷ったんですよ。あえて右半分と左半分の色が違うものを使うことで、ハイブリッドを表せるかなと。顔を半分ずつ隠すと全然違うものになるのもいいなって。色やライトによって違う顔に見えるんですけど、それが、どういうスタイルもいけるし、いろんなジャンルが入ってる、という想いを表せるかなと。あとは単純にこの顔が好きですね(笑)。
──ファッションアイテムについては、どういった考えで選びました?
Doul:今日着ているのも私服ですね。ジャケットはインパクトを与えるものとして赤い手袋をしようかなって。アルバムのイメージと自分の好きなものを組み合わせました。結局、自分のことをわかってるのは自分なので、自分でスタイリングしたほうがかっこいいんですよ。だからこのときもメイクも全部自分でやりました。初回盤のメガジャケ含めて、ジャケットのデザインも全部イチから自分で作りました。
──Doulさんにとって、メイクやファッションとは? 何のためにやっているんだと思いますか。
Doul:Doulからしたら“武装”だと思う。ヘアスタイルひとつで見え方が変わるし、メイクでも見え方が変わる。戦闘モードのときは絶対にこの格好、ライダースに革。べつに戦いに行くわけではないときもオシャレをしたいとは思うんですけど(笑)。昔からあるファッションを知って、どういう自分の見せ方ができるかを研究して、自分に似合って自然とかっこよく見せられるものを選んでます。だから私服が一番かっこいいと思ってるんですよね。
■まず行動してみる、動いてみる。ありえないことを一回やってみる
──今って、“個性を持たなきゃいけない”というプレッシャーと、個性を出すことで嘲笑われるプレッシャーの狭間に立っている人が多いんじゃないかなと思うんですね。悩みを抱える同世代へ、おふたりから伝えられることはありますか?
Doul:今の時代って情報量が多すぎたり新しいものが増えすぎたりして、みんな自分の個性がわからなくなっているんだと思います。10代前半とかからいろんなことをやってる子が増えたり、学校に行って社会に出るというルートがちょっとずつ崩れてきて、学校へ行かずに自分の好きなことをする子も増えたりしているからこそ、特に18、19歳の子たちがすごく焦ってるんですよね。“好きなことが見つからない”“まだ形にできてない”“同級生はこうやって稼いでる”とか。それに対して“焦らないでいいよ”ということはファンとかにもよく言ってます。あと、“何かしたいと思うんだったら、まず行動してみ、動いてみ”って。ファッションにしても、いろんな人が出てきたぶん、“違うことをやらないと”ってなってるけど、ちょっと違っても同じ系統にまとめられがちで、だから混乱するだろうなって思ったりする。そんななかで、ちょっと違う派手なファッションをしてたら、逆に何か言われるかもしれないけど、自分がいいと思えてたら、それが正解じゃないですか。
SO-SO:自分を出せているかどうかだよね。僕が話せるのは、やめる勇気。というか、大きな決断をするのはいいことだなと思ってて……実体験に基づいて話すと、僕は18歳ぐらいまで劇団で子役をやってて、ただ役者としてはそんなに大成せず、エキストラばっかりで。でも、劇団をやめたらビートボクサーとしての道が開けたんです。世界大会に応募したときも、僕が最初に出たループステーション部門は、当時YouTubeの一次予選で通過するのが世界でわずか6人で、基本通らないんですよ。“運ゲー”みたいな。だからそもそも応募することをやめている人が多いなかで、俺は本気で通りたいからといろいろ考えて、結果ギリギリ6位で予選を通過した。“そんなん無理やから”を一回やってみると意外といけるし、ありえないことを一回やってみたほうが楽しいんじゃないですかね。
──そろそろ対談を締めなければならないのですが、何か言い残したことはないですか?
Doul:今後、ふたりで面白いことをやろうと思ってるので楽しみにしといてください。次は何する?
SO-SO:戦う?
Doul:戦う?……準備はできてるよ(笑)。
SO-SO:(笑)。
リリース情報
Doul
2022.03.09 ON SALE
ALBUM『W.O.L.F』
プロフィール
Doul
ダウル/音楽シーンで大きな注目を集める期待のハイブリットアーティスト。2020年に配信シングル「16yrs」でデビュー。作詞作曲、ファッションコーディネート、MV製作までクリエイティブ全般のセルフプロデュースを行う。2021年7月に1st EP「One BeyonD」を世界同時デジタルリリースし、ワールドワイドに活動。3月9日にアルバム『W.O.L.F』リリース後、全国4都市ツアー『Doul First Tour 2022“A LONE WOLF -IF YOU CAN DREAM IT THEN YOU CAN BE IT.-”』を開催。
SO-SO
ソーソー/ヒューマンビートボクサー、音楽プロデューサー。ポーランドで開催された世界大会『Grand Beatbox Battle 2019』で日本人初のトップ4入りを果たし、同年、台湾で行われたアジア大会でチャンピオンに輝く。その後、中国大会やオンライン世界大会などでは審査員も務める。ソロとしての活動のほか、ビートボクサーグループ“SARUKANI”のメンバーとしても活動。2月に新曲「2022」、3月2日には“SARUKANI”の1stアルバム『What’s Your Favorite Number?』を配信リリース。
Doul OFFICIAL SITE
https://www.doul.jp/
SO-SO OFFICIAL SITE
https://sokosoco.com/so-so/