どうしてこうも軽やかに前作のハードルを超えてしまえるのだろうか、このバンドは。2021年12月22日にリリースされたUVERworld11作目となるニューアルバム『30』(サーティー)に込められた途方もない熱量と果てしない自由度にそう唸らずにはいられなかった。
2020年末から常にライブで演奏され続け、そのたびにブラッシュアップされてきた今の彼らの軸であり、真骨頂とも呼ぶべき名曲「EN」に始まり、ドラマ『アバランチ』の主題歌でありながら従来の“ドラマ主題歌”というイメージを大きく覆す壮大なスケール感で新たな境地を示してみせた「AVALANCHE」(なお、ドラマの第二章には「EN」が主題歌として異例の抜擢、ひとつのドラマに同じバンドの楽曲が2曲採用されたことでも大きな話題を呼んだ)、さらには山田孝之、青山テルマ、愛笑むとのコラボレーションでも注目された両A面シングル「来鳥江/SOUL」など脚光を浴びた既発曲、そして「One stroke for freedom」「OUR ALWAYS」といった音楽性もメッセージ性もずば抜けたアルバムオリジナル曲がずらりと並ぶ今作は間違いなくUVERworldの現時点最高の傑作だ。
前作『UNSER』から約2年、コロナ禍の渦中にありながらも自分たちの信念を貫いて活動を続けたこの期間をも振り返りつつ、ついに世に放たれた今作についてTAKUYA∞(Vo)と真太郎(Dr)のふたりにとことん語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 本間夕子
PHOTO BY 中野敬久
■今いちばん聴いてほしい楽曲、「EN」
──まずはニューアルバム『30』が完成した今のお気持ちを。
TAKUYA∞:いいものが出来たなと思ってますね。ファンのみんなも喜んでくれそうだなって。好きなアーティストの最新作が前作よりカッコ良かったらうれしくないですか?そういう手応えがありますね。
真太郎:僕もリリースが楽しみです。みんなに聴いてもらえるのも、その反応を見るのも楽しみで。今回はタイアップになった曲も多いし、シングル曲も多いぶん、前作『UNSER』からここまでの間にUVERworldが活動してきた道筋みたいなものが見えやすいアルバムになっているとは思うんですよ。でもシングルでUVERworldを知った方がこのアルバムを聴いたら、また違う世界を感じてもらえるんちゃうかな。すごく内容が濃くて幅広さもある、そんなアルバムが出来上がったと思っているので。UVERworldとCrew(※UVERworldファンの呼称)との距離感みたいなものも感じてもらえると思うし。
──シングル曲はもちろんですが、それ以上にアルバム曲が本当に強い作品ですよね。なかでもやはり1曲目「EN」が素晴らしくて。未発表の新曲として2020年末のツアー“UVERworld ARENA LIVE 2020”で初披露されて以降、ライブに欠かせない楽曲としてずっと演奏されていて。しかもライブのクライマックス、ラストを飾ることが多いじゃないですか。なので、アルバムの1曲目に早速この曲が置かれていることにとても驚いたんです。
TAKUYA∞:やっぱり今いちばん聴いてほしい楽曲なので、「EN」は。例えばCDショップとかで試聴するときってだいたいは1曲目から聴くじゃないですか。僕自身、誰かのアルバムを聴くときってまず1曲目でいいかどうか判断することが多いんですけど、そういうところで試されてもいい楽曲だと思っているんですよね。今、自分たちが言いたいこと、自分自身に言いたいことがしっかりときっちり詰まった1曲になったので、これを聴いてアリかナシか判断してもらって構わないなって。もしアリなら、他のUVERworldの曲深掘りしてもらってもきっと響くはずだし、これがナシなら、ひょっとしたらあなたにはUVERworldは響かないかもしれないねって言えるぐらい、ここに込めたメッセージの一つひとつが今の自分たちの軸にあるような曲なんです。今のUVERworldを象徴してるというか。
真太郎:僕も「EN」は1曲目がいちばんしっくりくる気がしますね。ライブでずっとやってきているけど改めて音源で聴きたいっていう人はたくさんいると思うんですよ。僕らとしてもやっとちゃんと聴いてもらえるっていう気持ちだし、だからこそ1曲目でバシンと届けるのがいいんじゃないかなって。
TAKUYA∞:でもね、これはもうライブでしか披露しない曲になるのかなって思った瞬間もあったんですよ。
──え?
TAKUYA∞:1年ぐらいかけてレコーディングし続けてきたんですけど、なかなかライブでの叫びみたいなところをCDに落とし込むのが難しかったんですよね。だったらもうライブでだけ披露する曲になればいいかなと思う瞬間もあったんですけど、結果しっかりレコーディングできたので。この曲はライブのたびに歌詞も変わっていったんですよ。それこそ一行だけとか、そういうのも数えれば7〜8回は書き換えたのかな。
──そんなに!ある意味、「EN」が出来たことで今作の方向性が定まったようなところもあったりしませんか。
TAKUYA∞:今回、シングル以外のアルバムの曲は全部「EN」以降に出来ているので、そういうふうな捉え方をしてもらってもいいのかもしれないんですけど、そもそも僕ら、アルバムにテーマを設けて作ることってないですから。ただ、方向性というか…前回の『UNSER』を出したときに「次のアルバムはどうなりますか?」って質問されたことがあって。僕は「次は『UNSER』の延長線上みたいな音に特化したもの、その次のアルバムでは言葉に特化したものをやりたいです」って言ってたんですね。そしたら、それを聞いていた克っちゃんが「次のアルバムで半分ずつやればいいやん」ってすごく単純な答えをくれて(笑)。なので、そういうアルバムにはなってると思います。自分の中では「AVALANCHE」含め、シングルになってるような曲は音に特化したもの、「EN」もそうですけど、今作の前半に入ってきてるような「OUR ALWAYS」や「One stroke for freedom」、「THUG LIFE」とかは『UNSER』後、自分の中に溜まっていたメッセージを全部吐き出したような、言葉に特化したものみたいな位置付けというか。
■自分たちらしいやり方でも歩みを止めずに
──振り返るに前作『UNSER』のリリース後、2019年12月19、20日の2日間にわたって東京ドーム公演を大成功、しかも20日は男性Crewオンリーで4万5千人を動員するという大記録を打ち立てましたよね。年末恒例のツアーも無事完走し、ここからさらに加速して進んでいこうという矢先、コロナ禍で活動を止めざるを得ない事態となって。どのアーティストもそうですが、それってやはり相当なダメージだったと思うんです。そうなったときにご自身やバンドを奮い立たせたものはなんだったのでしょう。
TAKUYA∞:でも活動が止まったっていう意識もないんですよね、僕らは。リリースもし続けたし、僕らくらいの規模のメジャーアーティストとしてはおそらくいちばん最初に配信ライブもやりましたし。2020年6月6日、バンド結成20周年の日だったんですけど、その頃ってまだ誰もやってなかったんですよ。むしろ、やったら世間から怒られるんちゃうかっていう空気もあって。でもUVERworldはそういうなかでも自分たちらしいやり方でも歩みを止めずやってこれたんじゃないかな、と。ちょっとした意地もあったかもしれないですけどね。
──意地?
TAKUYA∞:配信じゃライブの良さが伝わらないとか、モッシュやダイブがなければライブじゃないとかいう意見に対して、そんなわけないって思ったんですよ。実際、配信ライブを重ねていくなかで“やっぱりそんなわけなかった”って思う瞬間もどんどん増えていきましたし。だって自由にやれてた頃よりもライブが確実に良くなっていきましたから。観てくれた人たちからの反響も良かったし。自由だった頃の自分たちを抜くことができてるって実感することで、純粋な音楽の力をもう一回、信用できたので、僕らはほんと何ひとつマイナスにならなかったです。
──やる気が削がれるようなこともなかったですか。
TAKUYA∞:最初の頃の、何が起きてるかもわからないような時期があったじゃないですか。僕たちはちょうどライブハウスツツアーの最中だったんですけど、2月26日に予定されていた北海道のライブが急遽なくなって、それ以降も全部白紙になって。そのときは2ヵ月くらいいっさい、曲を作リませんでしたけど。何もわからないまま、本当に怖いものなのかなと怯えたりもしましたし。でも、その時期を省けばもう止まっていた感じはまったくなくて。
■やってみないとわからないことってやっぱりある
──真太郎さんはいかがでした?
真太郎:僕も一緒ですね。何が何だかわからへん、もしかしてずっとライブできないの?いや、そんなことはないやろ、みたいな感じで。当初は本当にパタッと全部がなくなって、こんなにライブをしないのって初めてやなとも思いましたし。でも、ライブができなかったところから、配信ライブを始めて、その後、キャパは半分だけど有観客でやれるようになって、今はまだお客さんは声を出せないけど、少しずつもとの形にやれるようになってきて。そうやって段階を踏みながら、自分たちの活動がまた広がってくると、これまで以上に楽しめるというか、それこそ配信ライブをやるだけでめっちゃ楽しかったんですよ。目の前にお客さんはいないけど、また現場に戻ってこられた喜びがあって。今はさらに楽しいし、面白いですね。有観客ライブを再開してからずっとUVERworldは1日2公演体制でやってますけど、最初は「2回まわしか、大変やな」とか言ってたのに、今は逆に一日1回しかライブやってなかったんやって感覚ですもん(笑)。やってみないとわからないことってやっぱりあるんやなって。
──ここにきて新しい発見があるっていいですね。
真太郎:最初に2日で4公演やったとき、自分の集中の仕方とかライブの捉え方とかガラッと変わりましたから。いい意味で力も抜けるようになったし、1本1本をちゃんと考えながらやるようになったし。
──では、配信ライブをやり始めた頃にはもうバンドのムードはかなり前向きだった、と。
TAKUYA∞:そうですね。こういう状況下でもやっぱり自分たちの軸にはライブがあったし、だからこそ「EN」を完成させたっていうところもあるんですよ。止まっていた時間、自分の中に溜まったメッセージや想いみたいなものをちゃんと曲にして、ライブでしっかり伝えたいと思って作り出したのが「EN」なんです。
■ここまでバンドを愛せるのかってぐらい
──「EN」が生まれて以降、UVERworldの活動が目に見えて活発化していった印象があるんですよ。2021年に入ってからはシングルも次々にリリースされましたよね。1年で4枚リリースするのって2006年以来、15年ぶりらしいですよ。
真太郎:おお!
TAKUYA∞:すごい!
──初期衝動的というか、原点回帰じゃないですけど、それぐらいの勢いが今のUVERworldにはあるのかなって。
TAKUYA∞:めちゃめちゃ雰囲気いいですよ、今。ここ数年、ずっといいんですけど、ここまでよくなっていくか?っていうぐらい今はいいですね。僕自身もここまでバンドを愛せるのかってぐらい、今はもうバンドだけになっていて。
──その愛情は「OUR ALWAYS」にも溢れまくっていますよね。ちょいちょい漏れ出た曲はありましたけど、ここまでバンド愛をストレートに歌い上げたのは…。
TAKUYA∞:ないですね。こんなふうに歌えるアーティストも少ないと思います。
──変な話、照れくさくはないんです?
TAKUYA∞:照れくささはまあ、あったでしょうけど、でも全然それに勝るものが多くて。こういう曲に出会えたことに感謝したし、これを歌えることに感謝したし、メンバーにも感謝したし…曲が出来上がったときはいろんなものに謎に感謝してましたね(笑)。
■UVERworldが好きで続けてきた
──謎に(笑)。最初からバンドのことを歌おうと思って書かれたんですか。
TAKUYA∞:いや、四転ぐらいしたんですよ。恋愛の曲にしたり、抽象的な言葉を並べたり、「EN」のような自分の中に溜まっていたメッセージを羅列した瞬間もあったけど、どれもしっくりこなくて。そうしてるうちに、このサビのフレーズが出てきたんですよね。僕は音楽が好きですけど、音楽が好きだから続けてきたわけじゃなくて、UVERworldが好きで続けてきたんですよ。たぶん、仲がいいことを売りにしつつも本当はちょっと違うって人たちだったら、こういう曲を作れないし、作っても歌えないと思うんですね、気持ち悪くて。それをすんなり歌えるっていうのは、僕が本当にメンバーに恵まれているからで。バンドへの愛情を書くって決まってからは4時間ぐらいでサクッと書けました。
真太郎:僕らもうれしかったです。この歌詞が上がってきたのが、ちょうど制作が佳境を迎えているときだったんですけど、みんな、やる気を出してましたね。
──「One stroke for freedom」はファンのみなさんへの誓いみたいな曲だなと感じました。これからもこうやって生きていくよ、というか。
TAKUYA∞:うん、そうですね。今まではとにかく広範囲のいろんな人たちにUVERworldを知ってもらいたいって気持ちもあったし、だから歌詞も言おうと思ったことを違う言い回しにしてきたこともあったんですよ。曲調もそう。それこそドラマの主題歌を手がけるとなったら、より多くの人たちにわかりやすい曲調を目指してみたり。でも、そういうのはもういいかなって思ったんですよね。それよりも今、自分たちのことを好きで傍にいてくれている人たちがもっと好きになれるようなものを追求していきたい。そうやって追求していったら逆に今まで頑張って獲得しようとしていたところにも評価されるかもしれないなって。
──“もう売れなくてもいい”って書けることがすごいと思うんですよ。強がりでも諦めでもなく、むしろ、この先どこまでも切り拓いていってやるっていう本気の希望を感じます。
TAKUYA∞:そう。すごい前向きな言葉なんです、これは。
■どうして今まで歌になってないんだろうと思って調べてみた
──「えくぼ」は今作で唯一のラブソングですが、モチーフにされたえくぼにまつわる物語はもともとご存じだったんですか。
TAKUYA∞:ずいぶん昔に友達から聞いたんですよ。人は輪廻転生するときにそれまでの記憶もすべて消されるんだけど、忘れたくないって懇願した人は1000年の孤独を経て、好きだった人のことを覚えたまま来世にいける、そのときに印として付けられるのがえくぼなんだ、って。中国の言い伝えらしいんですけど、すごくロマンチックやなと思って。でも、こんなにロマンチックなのに、どうして今まで歌になってないんだろうと思って調べてみたんですけど、やっぱりなかったんですよ。じゃあ僕が作ろうと思って。
──そうだったんですね。
TAKUYA∞:僕が作った曲をみんなに聴かせても、だいたいはいい反応をしてくれないんですよ。“ん、OK。で?これをどうしたいの?”みたいな感じで(笑)。そのたびに僕は心の中で“どうしたいとかあるか!これをやりたいねん!”ってイラァッてしてるんですけど。ドキドキしながら聴かせてるのに、なんやねんって。
真太郎:あはははははは!
TAKUYA∞:でも、この曲は聴かせた瞬間に「お、いいなあ!」ってなったんですよ。うれしくて「じゃあ、もう一回、聴こうか!」って続けてもう一度、聴かせたくらい(笑)。
真太郎:いや、ほんといい曲ですよね。聴かせてもらったデモの段階からほぼこの形だったんですよ。めっちゃいい曲っていうのがすぐ伝わってきたし、TAKUYA∞くんの“これ、やりたい!”みたいなのがすごくわかりやすかったんですよ。
TAKUYA∞:いつもは伝わってないみたいです(笑)。
──個人的には「THUG LIFE」がとても好きで。タイトルは直訳すると“ならず者の人生”、転じて“我が道を行く”“何にも縛られず自由に生きていく”という意味だそうですが、自分が信じた道を行く、それが何より大切にすべきことだというのは、もうずっとMCでもTAKUYA∞さんが発信し続けてこられているメッセージですよね。ここで改めて曲にした意味や狙いってあるんでしょうか。
TAKUYA∞:意味とか特にないですね。力を抜いて作りました、この曲は。だいぶ瞬間で作ったよな?サァ〜〜ッて。
真太郎:うん。
──メッセージがブレないから、すぐ書けるんですかね。
TAKUYA∞:というか、曲の作り方にもいろんなパターンがあったほうがいいってことに気づいたんですよ。例えば画家さんがよく言うんですけど、ラフスケッチをまず描くじゃないですか。そこから本チャンを描こうとしたときにラフが抜けないことがあるんですって。僕も仮歌が抜けないことってめっちゃあるんですよ。いざ歌おうとしたときに想いが空回ってしまう、みたいな。きっと文章にもあるんじゃないですか。
──あるかもしれないです、最初にふと浮かんだフレーズに引っ張られすぎたり、囚われすぎたり。
TAKUYA∞:でしょう?曲作りにもめっちゃそれ、あるなと思って。なので、そういう曲ばっかりになるのはイヤだけど、そういうラフな曲作りもしておきたいなと思ったんですよね。例えば「SOUL」は“適当に遊ぶ”がテーマだったんですけど、サビの歌詞を縦読みすると“ABCDE”になるじゃないですか。でも“C”の一行なんてまったく意味ないですからね。(青山)テルマにも聞いたんですよ、「何か“C”で始まる言葉はない?」って。でも“し”っていう音で始まる言葉って、アルファベットにしたときに“C”では始まらないよなって話になって、じゃあもう視力検査のときにあの輪っか(ランドルト環)を見て「Cです」って答えているのがこの瞬間ってことでいいか、みたいな(笑)。感覚で楽しめるのが音楽だから、そういうニュアンスも忘れたくないなと思って、なので「THUG LIFE」を作るときはすごく力を抜いてみたんです。
■自分に響くものは今のファンの人たちに響く
──“毎週のサザエ∞”というフレーズがもう最高でした。
TAKUYA∞:出てきましたね、“サザエ∞”(笑)。たぶん、この言葉が仮歌のときに出ていても、ヒットするような曲にしようと思ったら別の言葉に換えてしまうんですよ。でも、そういう余計な考えはいらないなって。もう自分に響くものしか書かない、自分に響くものは今のファンの人たちに響くってどこかで信じているので。
──「イーティー」はTAKUYA∞さんの親友であり、この12月に解散したLAID BACK OCEANのYAFUMIさんに向けて作られた曲だそうで。
TAKUYA∞:はい。真太郎も僕も、UVERworldの前にいくつかの夢に挫折していますし、目指していたところから逸れた道の先に正解があるってことを知っているので、YAFUMIも絶対それを証明してくれるとは思うんですけど…やっぱりコロナ禍のこの2年間って、僕らにはマイナスはなかったけど、影響をもろに受けているバンドもいっぱいいて、志なかばで諦めた仲間たちもその中にはいるんですよね。僕はそいつらのこと、YAFUMIもそうですけど、見ていて悔しくなるくらい才能があるなって思う瞬間があるんですよ。LAID BACK OCEANの解散ライブを観に行ったときも改めてそれを感じて。こんなに求められてるのに、こんなにいいライブをしてるのに、なんで?みたいな、自分でもうまく説明がつかないような感情と、でもこれが最後だと思いながら自分の鼓膜と目と脳みそにしっかり“忘れるなよ”って焼きつけて観ている時間帯っていうのがすごい不思議な感じで。そういう感覚のまま、ライブから帰って数時間でサッと書いたのがこの曲なんです。
──個人的とも取れるメッセージソングですけど、それだけではない普遍性も滲み出ているのがさすがだなと思いました。
TAKUYA∞:この曲を歌いながらファンの顔も浮かんでくるんですよ。東京ドームで男祭りをやったときに4万5千人の男たちが全員、必死になってウワーッて声を上げている姿を見て、僕、びっくりしたんですよね。こんなにガッツのある少年たち、青年たちがこれほどいっぱいいるのかって。その顔を思い浮かべながら、きっとあいつらも頑張っていろんな夢を追いかけていて、でも、みんなの夢が全部叶うはずもなくて…って思ったときに、すごく悔しいなと思ったんです。だからYAFUMIに向けて書いたけど、YAFUMIのためだけの歌じゃないっていうか。
■立ち止まらざるを得なくなったときに、どうせならと思った
──わかります。一方でシングルとしての既発曲を俯瞰して思うのは、バンドの世界がグッと開かれたんだな、ということで。ドラマ『アバランチ』も然り、両A面コラボレーションシングル「来鳥江/SOUL」然り、2021年のUVERworldはバンドの外にある世界ともがっちり手を取り合って、活動領域を一気に広げましたよね。それこそ、これまでほとんどしてこなかったコラボを、自分たちの作品ですることにいたのはどんな理由があるのかと思って。
TAKUYA∞:おそらくこういう状況にならなかったら、やらなかったと思うんですよ。コロナ禍もなく、すべてのことがスムーズに進んでいたとしたら。でも立ち止まらざるを得なくなったときに、どうせならと思ったんですよね。リリースがしづらくなったりするのであれば、どうせならなかったことにしたくなるようなものとか、そういうのも踏まえつつ、幅を広げてみようって。
──なかったことにしたくなる、とは?
TAKUYA∞:それぐらいの気持ちで、ご法度だと思っていたことにも挑戦してみようってことですね。例えば俳優をボーカルにフィーチャリングするとか今までの僕らじゃ考えられなかったじゃないですか。今回、愛笑む(徳川eq.)が20年前にやっていたバンド、eq.の曲で、僕らがかっこいいと思っていた2曲をリメイクして「来鳥江」と「SOUL」を作り上げたんですけど、それも自分たちの幅をさらに広げてもらうためで。もちろん、あいつのことをフックアップしたいっていう気持ちもありましたけど。
■20年経って今、自分が演奏してるというのが不思議
──自分たち由来ではない楽曲をUVERworldでアレンジしてUVERworld名義のシングルとしてリリースするのも初ですよね。その作業はいかがでしたか。
真太郎:eq.とはデビュー前から対バンしていたので、「SOUL」も「来鳥江」も当時のライブで聴いてたんですよ。“うわ、かっこいい”って思っていて。その曲を20年経って今、自分が演奏してるというのが不思議でしたね。eq.のメンバーとも仲良かったので、あの人はこうやって叩いてたなとか、そういうことを思い出しながら、リスペクトも含めて叩かせてもらいました。
──ご自身以外のボーカリストとの掛け合いはどうでした?
TAKUYA∞:楽しいです。「来鳥江」を歌ってもらった(山田)孝之とはもともと仲良かったんですよ。カラオケにも行ったことがあったし、あいつが歌えるってことは知っていたので、一緒にお茶してるときに「歌ってや」って。そしたら「ぜひぜひ」って快諾してくれて、2日後くらいには「いつ歌う?」みたいな(笑)。「SOUL」をお願いしたテルマは会ったら挨拶するぐらいの顔見知りだったんですけど、共通の友達に清水翔太がいて、テルマとすごく仲がいいので連絡先を教えてもらってオファーしたんです。最初は打ち合わせで会って、2回目に会ったときにはもうあり得へんぐらい仲良くなって(笑)。なんや、この波長の合う感じ!みたいな。「SOUL」は女性ボーカルでいこう、とにかく太陽みたいなヤツがいいよなって話していたので、ほんとテルマでよかったです。「来鳥江」も孝之に頼んでよかったなって何回も思いながら歌ってました。
──「来鳥江」って歌詞の“raise your hands”の発音に当てた造語ですよね。
TAKUYA∞:なので特に意味はないです(笑)。
──あと、歌詞の中の“ボグベェ”がどうしてもわからなくて。
TAKUYA∞:それは内緒(笑)。「みんなの中に“ボグベェ”がある」ってことにしておいてください。
真太郎:それぞれの“ボグベェ”が(笑)。
TAKUYA∞:そういう楽しみ方がいいんですよ。だって、みんな引っ掛かってくれてますもん、この言葉に。「“ボグベェ”ってなんですか?」とか「今日も“ボグベェ”やってきます!」とか。
──ノリとしてすっかり定着してるんだ。いいなあ。
TAKUYA∞:いいですよね。やっぱり活動のフィールドが大きくなってくるとそういう遊びみたいなことってできなくなってくるんですよ。どうしても真面目になってしまうか、もしくは、ふざけすぎるかのどっちかで。だから、この適度な力の抜け加減がすごくいいなと思って。
──2曲ともこうしてアルバムにも収録されたということは“なかったこと”にはしたくない曲になったということでしょうか。
TAKUYA∞:はい。コラボというものに対するちょっとしたアレルギー反応みたいなものもだいぶなくなったというか、何よりやってみて楽しさを得られたので。ライブでも楽しいんですよ、この2曲をやるのは。一気に空気が変わりますし。
──ラストのSE「NEVER ENDING WORLD」は今回も彰さんが手がけていらっしゃいますね。何かオーダーされたりはしたんですか。
TAKUYA∞:大きい感じ、みたいなことだけ伝えました。いつものEDMっぽいノリノリな感じよりも、もっと大きいイメージで作ってほしいとだけリクエストして。タイトルも彰が付けたんです。あいつから「NEVER ENDING WORLD」っていう言葉が出てきたのがうれしいなと思いましたね。バンドの中ではやっぱり彰がいちばん思っていることを口に出してこないんですよ。僕はあいつが信人みたいな、飲み会の席で一糸纏わぬ姿になるような(笑)、そういう感じになったらもっとすごい一体感が生まれるはずなのになって思ってるんですけど。
真太郎:あれ、ふたり要ります?(笑)
TAKUYA∞:ははははは!でも、それが彰の魅力でもあるし、こうやって時々、自分から発信してきてくれるから。
──いい話です。そして、たくさん聞かれているとは思いますが、アルバムタイトル『30』に込めた意味も教えていただけますか。
TAKUYA∞:バンドを結成した2000年6月6日からアルバム発売日の2021年12月22日まで7869日なんですけど、7、8、6、9を足していくと30になるっていう。今までのすべての歩みという意味も込めて30周年に向けて。
■このタイミングで音楽を作る環境とかを一新した
──それにしても毎回、前作をすごい勢いで超えていきますよね。次はどんなふうに考えていらっしゃいます?
TAKUYA∞:このタイミングで音楽を作る環境とかを一新したんですよ。走ることにプラスして、気持ちの切り替えとかリセットの仕方も自分なりに見つかって…氷風呂とかもそうなんですけど(笑)、今はもう音楽がめちゃくちゃ好きになってるんですよね。歌うこと、曲を作ること、歌詞を書くことが。それを来年からしっかり作り上げていって、次は2年のサイクルじゃなくて1年半でアルバムを作っていきたいなって。僕の中では1年半がいちばんベストなサイクルなので。
──だとしたら、めちゃくちゃうれしい!
TAKUYA∞:きっとファンもそのほうが楽しめますよね、ちょっと飽きてきた頃に新しいのが出てくるっていう(笑)。
──では最後に今年を振り返りつつ、来年に向けてひと言お願いします。
TAKUYA∞:2021年はバンドをしっかり更新できたし、成長できたと思うんですよね。いろんなものに制限がかけられたり規制があったぶん、ライブも強くなったし。
真太郎:僕は思いのほか楽しかったです。こういった状況のわりには楽しいことが多かったというか。ライブにしてもそうですけど、今まで当たり前のようにやっていたものを、ちゃんと楽しいと思えるようになってきた。そういう一年でしたね。だから来年はさらにもっと楽しくなりたいです。きっとその都度、状況は変わっていくだろうし、それにちゃんと対応しながら楽しみたいなと思いますね。
──今以上の場所にたどり着けそうですね、2022年は。
TAKUYA∞:いやもう自信ありますよ。楽しみにしていてください。
プロフィール
UVERworld
ウーバーワールド/滋賀県出身6 人組バンド。2000年に結成し、2005年D-tecnoLifeでデビュー以来、36枚のシングル、10枚のアルバムをリリースしそのほとんどがオリコントップ5にランクインしている。2010 年には結成10周年、メジャーデビュー5周年を迎え東京ドームライブを敢行し42,000 人を集客し大成功を収めた。さらに、2014年には京セラドーム大阪でのワンマンライブを敢行、約40,000人を即日完売。2019年に発売した10枚目のアルバム「UNSER」はオリコンウィークリーランキング1位を獲得、同年12月には9年ぶりとなる東京ドームを開催、そのうちの1日、12月20日には東京ドームでの男祭り「6 VS 45000人」を完売させ日本記録を樹立。2020年には結成20周年、デビュー15周年を迎えた。
リリース情報
2021.12.22 ON SALE
ALBUM『30』
UVERworld OFFICIAL SITE
https://www.uverworld.jp