「FLOW優勝!」と、とりあえずでかい声で叫んでみる。2021年3作目のシングル「DICE」は、それぐらいに聴き応えのある、ビッグチューンを3曲も詰め込んだ最強盤だ。TVアニメ『15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ』オープニング主題歌の「DICE」。リズム&アドベンチャーゲーム『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』期間限定実装曲の「優勝 feat.Afterglow」。『パチスロANEMONE 交響詩篇エウレカセブン HI-EVOLUTION』遊技機実装曲の「モメント」。
懐かしさ右手に、新しさを左手に、そして心の中には変わらぬロックスピリットをしっかり持って。FLOWは2022年、いよいよデビュー20周年のアニバーサリーイヤーへと突入してゆく。
INTERVIEW & TEXT BY 宮本英夫
PHOTO BY 大橋祐希
■15年経っても色鮮やかな作品にまた携われることが光栄
──「DICE」は、言ってしまえばセルフ・オマージュですよね。15年前の、『コードギアス 反逆のルルーシュ』第一期の主題歌「COLORS」の要素を踏まえつつ、懐かしさと新しさの融合とでも言いますか。
TAKE:作品のテーマは一緒なので、「COLORS」の要素が入ることで整合性が取れるし、当時のファンも新しい人たちも、今のFLOWのサウンドとして楽しんでもらえるようなものにしたかったなという思いはありましたね。そこで、やっぱり「COLORS」は超えられないというか、当時の思い出や、ファンの求めているものもあるので、超えられないだろうなと思いつつ、15年後の成長過程を経てきたバンドとして、新しい『コードギアス』のオープニングを別の形で表現できるんじゃないか?というところが、最初の糸口です。
KOHSHI:15年経っても色鮮やかな作品にまた携われることが光栄だったし、逆に言ったらそんなに愛されている作品でもあるし、「COLORS」を超えられないということも含めて、すごいプレッシャーはありました。年々ファンは増えているし、『コードギアス』に対する愛情もどんどん深くなってるから、そのプレッシャーを感じつつ、谷口監督とやりとりさせてもらって、お互いの意識にブレがないことを確認しながら歌詞を書いていきましたね。
TAKE:谷口監督と話すのは初めてだったんだよな、俺。今まではメールのやりとりで、間に入る人もいたので、リモートではあったけど、今回直接話ができて良かったなと思います。監督からもいろんなアイデアが出てきて、それを新しい『コードギアス』のオープニングとして具現化していこうという形でした。
──つまり、15年前よりも、アニメの制作陣との距離が近くなった?
KOHSHI:そうです。だって15年前は、プロットを書いた紙を2,3枚もらって、「あー、こういう感じなんですね」っていう感じだったから。
KEIGO:原作のないオリジナルアニメだから、“ルルーシュはこういう設定の子で”とか、そういうことだけ書いてあって。
KOHSHI:だから、プレッシャーがないんですよ。みんなゼロから“よーいドン”で始まるから。もちろんいい曲を提供したいとは思ってるけど、今回みたいなプレッシャーはなかったです。
TAKE:今回は谷口監督がぶっ飛んでて、「冒頭にサブマシンガンの音を入れたい」っていきなり言うんですよ(笑)。“暴力性を表現する、武器の音を入れたい”って。要は、人間の営みの愚かしさと、愚かながらもその瞬間を讃える、ある種の人間賛歌がテーマの作品なんですね、『コードギアス』は。ルルーシュも完璧ではないし、その中で目的に向かって試行錯誤していく。だから、ダダダン!っていうサブマシンガンの音をド頭に入れました。実は物語の後半に、サブマシンガンが出てくるシーンがあるので、ファンの人はそれも想起できると思います。そして歌は、黒の騎士団をイメージした合唱から始まるので、「COLORS」がルルーシュ側の曲だとしたら、「DICE」はゼロの曲に近い印象になったと思います。その二面性が2曲で表現できたのかな?と思いますね。
──そして「COLORS」と同じく、アレンジャーには蔦谷好位置氏が参加してます。
TAKE:この話をいただいたときに、真っ先に直LINEしましたよ。「COLORS」と同じ座組でやったほうが、より面白みが出ると思ったので。蔦谷さんとは本当に久々で、13年振りとかになるのかな?
KOHSHI:最近、テレビでしか見ないですからね(笑)。
TAKE:速攻連絡させていただいて、「こういう曲なんですけど、また一緒にやりましょう」って。蔦谷さんには(バンドサウンドの上に乗せる)ウワモノのアレンジメントをお願いしてもともとの自分のデモをブラッシュアップしてもらいました。生の弦、良かったなー。
IWASAKI:俺も、「COLORS」を超えるのはかなりハードルが高いと思っていたから、だったら兄弟ソングみたいなことはどうだろう?という解釈ですね。「COLORS」が兄だとしたら、「パンチのある弟だね」みたいな、しかも「お兄ちゃんの顔にちょっと似てるよね」という、そういう着地点が見えていたから、結構やりやすかったですよ。
──リズム、すごいことになってます。次から次へと違うリズムパターンが登場して、息つく暇もないくらいに。
IWASAKI:大変です(笑)。でも、やってて楽しいです。
──もうね、「イワさん優勝!」と思いました。
IWASAKI:もう2曲目に行っちゃいますか?
■見せたくない部分も飲み込んで、でかい人間になれるか?
──いや、言ってみたかっただけです(笑)。そして歌詞は、ゼロ目線で書いたわけですか。KOHSHIさん。
KOHSHI:そうですね。今までのFLOWだったら、サビの最後の“光を前に闇で構えろ”のところを、“闇を前に光で構えろ”と歌っていたと思うんですけど、ゼロの立場だと逆になる。光に対して闇で戦わなければいけないというゼロの心境を書きつつ、“清濁併せ飲むことができるか?”というテーマもあって、自分の中の見せたくない部分も飲み込んで、でかい人間になれるか?という意味を含めて、“光を前に闇で構えろ”という表現にしました。あれだけの闇をひとりで抱えてる、ゼロという人間はすげぇなと思いながら、俺には無理だなと思いながら書いてましたね。
──「DICE」というタイトルは、「賽は投げられた」という有名な言葉から?
KOHSHI:そうです。「賽は投げられた」を英語で「The die is cast」(*dieはdiceの古語)というので。古代ローマの軍人が、自軍の士気を高めるために放った言葉らしくて、それって黒の騎士団ともかぶるなと思って、「DICE」というタイトルにしました。
■ストレートなロックに近い形で一緒に歌えるんじゃないか?
──では2曲目、行きますか。『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』とコラボした「優勝」です。一緒に歌っているのは、ガルパン内のバンド、Afterglow美竹蘭役 佐倉綾音さん。
TAKE:ガールズバンドパーティに男が入ってきちゃってすいません!ボーイズになっちゃいました。もはやボーイズでもないかな。
──FLOWらしい、イケイケのミクスチャーロックじゃないですか。
TAKE:事前にAfterglowさんの曲を聴かせてもらったら、たとえば「Y.O.L.O!!!!!」という曲とか、ストレートなロック調の曲が結構あるので。こういうテイストだったら、FLOWの「Re:member」のような、ストレートなロックに近い形で一緒に歌えるんじゃないか?と思ったところから、作曲を始めましたね。
KEIGO:3人の掛け合いが楽しかったです。佐倉さん、すごいカッコ良い歌を歌うんですけど、お話を聞いたら、キャラの声に合わせてやっているらしくて。
TAKE:キャラを乗せて歌うのがすごいと思ったんですけど、逆に、キャラを乗せないと歌えないらしい。普通に歌うとどうなるかがわからないから、「ミュージシャンの人はすごいですね」と言われました。
KOHSHI:俺らは逆に、“キャラを入れて”とかないから(笑)。そっちのほうがすごいと思うけど。
GOT’S:「優勝」は、良かったですね。最近、4弦ベースにハマっていて、やっぱり違うなと思ってます。音の範囲が狭まるぶん、今までは低いところに行きがちだったものが、あえてそこを使わないという面白さもあって、「DICE」も4弦ベースですね。それには理由があるんですけど、「COLORS」のレコーディングのときに、ベースのチューニング1音下げにダメ出しされたんですよ。蔦谷さんに。
TAKE:「楽器本来の鳴りをしていない」と。
GOT’S:それで現場でチューニングを変えて、死ぬ思いで弾いたというのが、トラウマになってます(笑)。
TAKE:覚えてきたフレーズを、全部変えなきゃいけないからね。
KEIGO:それはトラウマになるね。
■ドキドキしながら蔦谷さんに聴かせたら、「いいね」って
GOT’S:蔦谷さんといえばその思い出があって、今回のレコーディングでまた同じことをやっちゃまずいと思って、5弦ベースを使わずに、4弦でやろうと。それで新しい4弦ベースを買いに行ったりして、結局もともと持っているフェンダーのベースで録ったんですけど、すごい気合入りました。“リアンプ”と言って、家で録った音をスタジオで音作りするんですけど、ドキドキしながら蔦谷さんに聴かせたら、「いいね」って言われて、“うわー、良かった!”と思いました。「優勝」も4弦ベースで録ってます。
TAKE:でも、今回もあったよね。「DICE」の最後のサビで、盛り上げようと思って上の方に行って弾いたら…。
GOT’S:蔦谷さんが「そこの高いところ、いらない」って(笑)。
TAKE:それはね、ベースが高いところを弾くと、盛り上がるんだけど、低音が不在になっちゃうから。それは嫌だなと思って、俺が提案したです。
GOT’S:最後まで、そういうヒリヒリ感がありましたね。試験みたいな感じでした。
■オリンピック真っただ中で、完全にそこに引っ張られてます
──「優勝」の歌詞は、3人が熱く掛け合う、ストレートな応援歌になってます。
KOHSHI:ちょうど書いているときが、オリンピック真っただ中で、完全にそこに引っ張られてます。金メダルを獲った人の涙、それを支えるコーチやスタッフの姿を見て、グッときて、この要素も入れたいなと思いつつ書いてましたね。それと、AfterglowとFLOWの共通点はバンドということで、苦楽を共にしたメンバーがいるからこそ、今ここに立っているということが書けたらいいなと思って、「優勝」という歌詞ができました。
──「優勝」って、いわゆるネットスラングですよね。僕も最近知りましたけど。
KOHSHI:俺も何年か前まで知らなかったんですけど、アニメのイベントに出たあとに、ツイッターで「FLOW優勝!」とか言ってもらうことがあって、“そういうふうに使うのか”と。それを今さら使ってみました(笑)。
TAKE:この曲、「ガールズバンドパーティにボーイズが入ってくんなよ!」って、ネットでめちゃくちゃ叩かれるんじゃないか?と思ったら、意外と受け入れていただいてます。「AfterglowとFLOWでアフターフロウ、優勝案件じゃん!」みたいな。今後、いろんな形で広がっていけると面白いと思います。
──楽しみです。そして3曲目が、『パチスロANEMONE交響詩篇エウレカセブン HI-EVOLUTION』の実装楽曲になった「モメント」。
TAKE:マジ、ごった煮シングルですからね。今回。『コードギアス』のアニメ、『バンドリ!』のゲーム、そして『エウレカセブン』のパチスロ。多角的です。
KOHSHI:幕の内弁当です。
■いつか花咲くことを信じて、死ぬことを忘れずに、今頑張れ
──「モメント」は、あの「DAYS」を彷彿させるような、これもセルフ・オマージュ色の濃い曲になっております。
TAKE:「DAYS」で使ったコンガをフィーチャーしてます。今回はアネモネという、映画(『ハイエボリューション』シリーズ第二部)に登場したキャラクターがメインということで、今までに書いた「DAYS」「ブレイブルー」は、完全にレントンとエウレカ側だったのが、今回は違う角度から曲が書けました。
KOHSHI:アネモネという花は、厳しい冬を超えて春に咲く花で、それになぞらえて書き出したんですけど。一瞬という意味のMOMENTと、メメント・モリ=人はいつか必ず死ぬことを忘れるな、という、二つの意味をかけて「モメント」にしました。いつか花咲くことを信じて、死ぬことを忘れずに、今頑張れというメッセージを込めさせていただきました。
──演奏は、「DAYS」のダンスロックな面影をなぞりつつ、アップデートしていく感じですか。
IWASAKI:状況としては「DICE」と似ていて、まず「DAYS」という兄貴がいて、その弟としての「モメント」がいるわけです。そもそも「DAYS」という曲がなければ、四つ打ちのダンスロックをやっていなかったと思うので、あそこがひとつのきっかけだったと思うんですね。あれから10年以上経って、もっと深いものを出したい思いもあって、わざと手数を少なくしたり、ちょっとずつ差異はつけてます。同じ四つ打ちでも“今ならこうやる”というのが「モメント」ですね。そういう、自分の中でゴール地点が見えていたので、完結するのは早かったです。
■この19年でいろんなものを得たと思いますね
──イワさんがサウンドをアップデートしつつ、イワさん自身が、サウンドにアップデートされる面もあるんじゃないかな?と思ったりしますね。FLOWというバンドにいることで。
TAKE:アメリカン・ハードロックしか叩いてこなかったのにね(笑)。「ダンスロック?何それ?」って。
IWASAKI:当時は、ほんとにそんな感じでしたよ。
TAKE:今度はソカのリズム?とか。
──ドラムンベースとか。
IWASAKI:しかもそれが、一曲の中に混ざってる。
──まさに「DICE」がそうなんですよね。全部入ってる。
IWASAKI:そうなんです。時間が経てばそういうことになるのか!と思いますね。
TAKE:15年の蓄積ですね。(デビューから)19年と言ったほうがいいかな。
IWASAKI:育ててもらったという感覚はあって、あそこでああいうことをやってなかったら、“自分、もう辞めてるかもしれない”というぐらいの感じがあるので。そういう意味では、この19年でいろんなものを得たと思いますね。「優勝」もそうなんですけど、自分たちの王道のような曲でありつつ、そこだけじゃやっていけないと思ったから、最新のパーティーロックをやってる後輩バンドの音を聴いて、今イケてるバンドがやってるスカのリズムを取り込んだりしてます。
■“色あせてる場合じゃねぇぞ”という、すごいタイミング
──進化するバンド、FLOW。過去と現在と未来をつなぐ、意味あるシングルになったと思います。
TAKE:19年間続けてきたからこそ作れたシングルですね。
KEIGO:このタイミングで『コードギアス』も『エウレカセブン』も、10年以上前に携わらせてもらった作品から新しい曲の依頼が来るなんて、すごいことだなと思います。この2年間、コロナでネガティブなことばかり多かったけど、“バンドとして何か新しいことができないか?”ということで、『炎の12ヶ月』(2020年9月~2021年8月/アルバム1枚ずつをコンセプトに、毎月1回、全12回の配信ライブ)をやったり、“下を向かず、前を見て、今できることをやっていこうぜ”と思っているときに、15年経っても色あせないどころか、さらに勢いを増した作品の楽曲をやらせてもらうことに、こっちが勇気をもらうというか。“色あせてる場合じゃねぇぞ”という、すごいタイミングだったなと思います。
TAKE:そこに『バンドリ!』という新しいコンテンツも入ってきて、ありがたいことです。今回のシングルには「FLOW×コードギアス盤」(期間生産限定盤)というものがあって、今まで『コードギアス』に書いた楽曲たちをコンパイルして、作品を好きな人がまとめて楽しめるようなアイテムにもなってます。『炎の12ヶ月』のライブ映像も、ここで初収録という形になります。
IWASAKI:「COLORS」と「WORLD END」は新ミックスで、聴感がかなり違うんですよ。
TAKE:「WORLD END」のドラム、激変したよね。どっちがいいかは好みによるけど。当時の曲を2021年にミックスしたらどうなるか?というテーマで、同じエンジニアさんにお願いしているので、その違いも聴きどころです。
──最後は、「FLOW優勝!」という締めでいいですかね。そして来年はいよいよ、20周年の始まりの年。何かでかいこと、やってくれますか。
TAKE:20周年イヤーに突入するタイミングで、ビッグタイトルが用意されてますよ。引き続き、楽しみにしていただければと思います。
プロフィール
FLOW
フロウ/KOHSHI(Vo)、KEIGO(Vo)、TAKE(Gu)、GOT’S(Ba)、IWASAKI(Dr)の5人組ミクスチャーロックバンド。2003年にシングル「ブラスター」でメジャーデビュー。特にアニメ作品との親和性に定評があり、アニメ『NARUTO-ナルト-』オープニングテーマ「GO!!!」や、『コードギアス反逆のルルーシュ』オープニングテーマ「COLORS」ほかを手がけている。海外活動にも精力的で、19ヵ国59公演を超えるライブ実績を持つ。2021年8月、Spotifyにて、『NARUTO-ナルト-疾風伝』オープニングテーマ「Sign」が、全世界で7,000万回再生を突破、全楽曲トータルで2億回を突破。
リリース情報
2021.12.15 ON SALE
SINGLE「DICE」
ライブ情報
FLOW KOHSHI展「UNDER CONTROL」弾き語りミニライブ&トークショー
12/19(日)、12/21(火)、12/24(金) KATA(恵比寿LIQUIDROOM内)
『FLOW TOUR 2022「THE DIE IS CAST」』
https://www.flow-official.jp/news/detail.php?id=1998
FLOW OFFICIAL SITE
https://www.flow-official.jp