22/7は今、変革の真っ只中にいる。今年2月にリーダーとしてグループを支えてきた帆風千春が卒業。そして、同年9月末日に、海乃るり、倉岡水巴、武田愛奈の3人がグループからの卒業を発表し、高辻麗は活動停止となった。同時に、2016年10月に現在の初期メンバーを募集して以来、約5年ぶり2度目となる新メンバーオーディションの開催も発表され、ナナニジの第二章の幕開けが宣言された。卒業していくメンバーもいれば、新たに加入してくるメンバーもいる。
通算8枚目にして、現メンバーによるラストシングルに各メンバーはどんな思いで臨んだのか。白沢かなえと河瀬詩に加え、11月末に卒業する倉岡を加えた3人に現在の率直な思いを聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 大橋祐希
■みんなで前を向いて走り出していこう
──現体制では最後のシングルになりますね。
白沢かなえ(以下、白沢):このシングルで卒業するメンバーが3人いるということで、今までのナナニジを形として残せるシングルなので、ぜひ皆さんには、このシングルを通して今までのナナニジを感じてもらいたいです。私、個人としては、卒業するメンバーが前に進むためにも、歌詞に沿って力強く進んで行かなければなという心境でいます。
河瀬詩(以下、河瀬):8枚目のシングルなので、今までやってきたことの積み重ねの先にある曲だなと思ってて。今までは内に籠る曲が多かったんですね。それはナナニジらしさだったんですけど、6枚目「風は吹いてるか?」くらいから、自分で動いていこうという前向きな曲が増えてきて。今回のシングルも力強い歌詞で、命令形の口調もあったりする。ナナニジらしいセリフがありつつも、今までよりも、さらにガツンと走り出そうっていう感情が前面に出ているので、これから別の道に進むメンバーも、ナナニジに残るメンバーも、みんなで前を向いて走り出していこうって感じられる曲だなと思ってます。
倉岡水巴(以下、倉岡):私は卒業してしまうんですけど、背中を押されるような曲になっているなと思いました。私たち自身も、4年間やってきて、大人になってきて。うちに籠もってばかりいた主人公も大人になって、どんどん前を向いていくようになった。大人になった今の私たちにぴったりな曲なんじゃないかなと思います。
──特に歌詞で共感したのはどんな部分ですか。
河瀬:私は2番のサビ“他人を気にするな 青春なんて恥ずかしいものだ”というところですね。私、他の人よりも他人にどう見られているかが気になるタイプなんです。“あ、どうしよう……今の嫌われたかな”とか、“あのときあんなこと言わなきゃよかった”とか。すごく他人の目を気にしちゃうんですけど、こうやって自分が歌うことによって、どう見られているかをそんなに気にしなくていいんだなって思うことができて。みんなも恥ずかしいものをたくさん抱えて生きているんだと思ったら、ちょっと気分が楽になったんですよね。自分に言われてるなってすごく感じたし、心に残りましたね。
倉岡:私は“走り出すってのはいつだって勝算なんかなくて見切り発車なんだよ”っていうセリフですね。私、卒業するんですけど、将来のことはまだ何にも決まってなくて。でも、やらなきゃ負けだっていう思いで卒業するんですね。私自身、今、ほんとになにも決まってないけど、何かやらないとダメだなっていう状態でいて。本当に、夢を持ってナナニジに入ったんですけど、全然何もできないまま卒業していく──。
白沢:何もやってないなんてことないよ。
河瀬:そうですよ。いろいろやってきたじゃないですか。
倉岡:ふふ、ありがとう。ファンの方に「恩返しする」って言ってたのに、何もできずに卒業してしまうので、申し訳ないなって感じてて。でも、“確実に夢を手にする方法なんかあるわけないだろう”というセリフの通り、とにかく今は前に進むしかないなって思ってます。
■自分のつらい経験を糧に前に進んでいかないと
──聴けば聴くほど、卒業メンバーの背中を押す歌詞になってますよね。白沢さんは?
白沢:私は“人は誰も もがき苦しみ そして/大人になるんだ”というところに共感しました。今まで生きてきたなかで、自分の中で嫌なこともあったんですけど、それを抱えたまんま、どんどん大人になってきて。でも、他の人の話を聞くと、“え、この人、こんなに苦しいことがあったのに頑張ってるんだ”って思うことがたくさんあって。自分のつらい経験を糧に前に進んでいかないとなっていう思う瞬間がいっぱいある。“覚醒”って、まさにそのことなんだなって感じました。
──今、出たタイトルはどう感じましたか。
白沢:今のナナニジに言われてるようだなって思いました。神様みたいに上からお告げみたいな感じを想像しましたね、最初は。
河瀬:初めてタイトルを聞いたときはびっくりしました。こんなに強い印象を与えるタイトルは、今までになかったですし、身が引き締まる思いがするというか。白沢さんが言ったように、「今、覚醒していかないといけないよ!」って言われてるような気分。変えられるところは変えて、いろいろいい方向にチェンジしていかないといけないなと思わされました。
倉岡:1stアルバムも経て、ナナニジ第2章に進んでいくなかで、「覚醒」というタイトルの曲をもらって。繰り返しになりますけど、今までは内に籠ってる子が多かったなかで、だんだん大人になってきて、覚醒して、前に進んでいくんだっていう。強いタイトルがきたことで、私たちもどんどん強くなっていかないとなと思いました。
──レコーディングにはどんな思いで臨みましたか。歌詞だけでなく、曲調も情熱をかき立てるような燃えるサウンドになってます。
河瀬:私は負けないように歌いました。歌が曲に負けたら、この曲のカッコ良さが出ないなと思って。気持ちをいつもより強く持って、後ろで鳴ってる音に声が負けないように、たくさん息を吸って、力強く歌おうと思ってましたね。個人的に歌が得意ではなかったんですけど、最近、舞台に出させてもらうようになって、ちゃんと歌えるようになりたいなと思って。この曲もたくさん聴いて、家で何度も練習したり、ちゃんと自分で納得できるように歌おうという気持ちでやったので、自分の中ではいい感じにレコーディングできたなって思ってます。
倉岡:今までの曲はうちに秘める曲が多かったので、自分の中に中に落とし込むように歌ってたんですけど、今回は前に進んでいくっていう曲なので、前に飛ばすように飛ばすようにっていう意識で歌いました。
白沢:諭されてるような曲ではあるんですけど、受け入れて歌うっていうよりは、それに対して負けないぞっていう反抗の気持ちで歌いました。その分、声もいつもより太くなったなって思います。
■「この“やるか、やらないかだ”でお願いします」って
──レコーディングの裏話はありますか。
倉岡:私はセリフはないんですけど、セリフがあるメンバーは、レコーディング前に練習してて。「こんな感じでどうかな?」とか聞かせてくれてましたね。
河瀬:天城サリーちゃんと一緒だったんですけど、「やるか、やらないかだ」っていうセリフを言ってて。事前に、「ここ、なんて言われようとローランドさんみたいにカッコよく決めるから」って言ってて。ディレクターさんに何を言われてても、私がやりたいようにやるから聞いててねって言われたんですね。何回も録るんですけど、全部、同じカッコいい感じでやってて。その後で、どのテイクがいいかを話し合うんですけど、サリーちゃんは迷いなく、「この“やるか、やらないかだ”でお願いします」って言って。その言い方さえも決まってて、カッコよくなってて。さすがだなって思いました。
白沢:(笑)私が「走り出すってのはいつだって勝算なんかなくて見切り発車なんだよ」って言ったあとに、宮瀬玲奈ちゃんの「確実に夢を手にする方法なんかあるわけないだろう」というセリフがあって。仮歌の音源にもそのセリフが入ってたんですけど、それとは変えて、自分なりにしたいって言ってて。切るところを工夫して、何回か録ってるのを見てたんですけど、こだわりというか、曲に対してすごく向き合ってるなと思いました。
──ありがとうございます。ここから少し曲から離れたキーワードトークをいくつかしたいんですが、最初に皆さん“大人”というキーワードをあげてましたが、もう大人になってる実感がありますか。
白沢:私は…なりましたね。あはははは。自分というよりは、友達の話を聞いて、みんな大人だ、じゃあ、私も大人なんだなって。大人ってことに気付かされる感じがしてます。
河瀬:私、このグループに入って、もうすぐ2年になるんですけど、そのときに比べたら、いろいろできるようにはなったなと思います。前よりもちょっと客観的に自分を見られるようになって。自分のすべきことが、グループに入ったときよりも、明確になってきた。いろんなお仕事があるなかで、じゃあ、ここは私が頑張ってみよう、とか。自分の中でちょっとずつ考えられるようになってきたので、大人になったのかなと思います。
倉岡:ナナニジに入ってから、目の前のことをがむしゃらにやってきたので、4年間経ったっていうことを全然実感できてなくて。だから、心はまだ全然大人になりきれてないなって思うんですけど、年齢的にはみんな大人ではあるんですよね。自分的には全然実感できてないけど、大人にならなきゃと思ってるというか。何を決断するにしても、私はもう大人なんだから、冷静にならなきゃなって自分自身に言ってる感じですね。
──では、続いて。「覚醒」にかけて、“最近、目覚めたもの”を教えてください。
河瀬:私はホットサンドメーカーを買ったんですけど、それで作るホットサンドがめちゃくちゃおいしくて。ひとり暮らしでパンを買って食べることがあんまりなかったんですけど、食パンをすごい買い込んで。ひとりで焼くのも楽しくて、ホットサンドにハマってます。チーズとハムとケチャップぬって。普通のトーストより、ホットサンドにするとめちゃくちゃおいしくなるので、みんなにもやってもらいたいです!
倉岡:アイドルをやってると、ダイエットしなきゃっていう気持ちが優先して、今までは食事制限ばかりをしてたんですよ。でも、筋トレをやってる友達に「食事制限じゃなくて、食事改善の方がいいんだよ」って教えてもらって。量はめちゃ食べてるんですけど、内容を変えたら、今までよりも体重が増えなくなって。変にダイエットするより、食事を改善して、健康的にバランスの取れた食事をするのが大事なんだなっていうことに気づいて、覚醒しました!
白沢:もともと絵を描くのが好きだったんですけど、スマホで指で簡単に描く感じが多かったんです。でも、ちょっと前にキャンバスに自分でアクリル絵の具で描くのにハマって。それをやってみたら、私はやっぱりアナログで描くのが好きなんだなって気づきました(笑)。
■今は、みんなの期待に応えたい!っていう夢
──(笑)最後のキーワードは“夢”です。皆さんはそれぞれ、どんな未来を夢見てますか。
河瀬:私はそんなに遠い未来ではなく、少しだけ先のナナニジですね。卒業していくメンバーがいて、新しく入ってくる子もいて。私はみんなよりも後輩なので、また違う立場になるって考えると、新しい関係性も楽しみです。自分ももうひと回り、大人になって、先輩として、いろいろできるようになっていけたらいいなって、近い将来のことが今、思い浮かびました。
白沢:もともと末っ子で、ずっと人に頼って、甘えて生きてきたんですけど、ナナニジに入ってからは、今まで生きてきた方法ではできないことを期待してくださる方もいて。だから、今は、みんなの期待に応えたい!っていう夢がありますね。
──倉岡さんは将来はまだ未定だとおっしゃってましたが。
倉岡:卒業して、ナナニジの私ではなくなるけど、応援してくださってくれた皆さんに恩返しはしたいし、笑顔にしたいなって思っているんですね。だから、待っててほしいですし、これからも22/7のことは大好きだし、応援してほしいなって思う。本当に、それぞれの道をいって、みんなが夢を実現できたらいいなと思ってます。
──また、本作は第二章の始まりにふさわしく、カップリングでも様々な新たな挑戦をしている印象を受けました。皆さんがそれぞれ好きな曲を一曲ずつあげていただけますか。
白沢:私は白組の「ヘッドフォンを外せ!」がすごく好きで。今までの22/7の曲の中でもいちばん好きです。
河瀬:え!そうなんですか?
白沢:ふふふ、そう。すごく好き。歌はテンポが速くて難しかったんですけど、すごくカッコ良い感じになってて。私、詩ちゃんの歌声がすごく好きみたいで、詩ちゃんの歌声を聴くために聴いてるみたなところがあって。
河瀬:ええ、どういうことですか。
白沢:特に好きなのが“どこかで鳴いてる犬の遠吠え”のところ。
■卒業する前に、こんなアイドルらしい曲を歌えて本当にうれしい
──そのあとに犬の遠吠えが入ってますよね。
白沢:レコーディングのときに、「誰か、犬の鳴き声が得意な人いる?」って聞かれて。
河瀬:みんな、「やったことないです」って応えて。
白沢:誰もいなかったので、「SE、入れとくね」って言ってて。完成したのを聴いたら、本当に入っていてびっくりしました。
河瀬:冗談かと思いましたね、軽い言い方だったから。でも、この曲、私もめちゃめちゃ好きです。「令成エモーション~透色~」という、現代的なヴォーカロイド曲というコンセプトがあって。歌うのはめちゃめちゃ難しいので、すごく練習したんですけど、白組みんなで口をたくさん動かしながら、時間をかけてレコーディングしたので、出来上がったのを聴いて、すごく感動しました。
倉岡:曲すごく早いし、ダンスもすごく激しくて。赤組とは全然系統が違う。私、白組やったら、このダンス、絶対にできひんかったやろうなって思って(笑)。白組はダンスがうまいメンバーが揃っているので、なんか見応えがあるんやろうなって思いました。でも、私は、紅組の「今年 初めての雪」がダントツに好きです!本当にかわいくて。前回の紅白ユニットのときも、カッコ良いほうの曲に配属されていたので、こんなにアイドルアイドルした曲を歌うのは今回が初めてなんですよ。ずっとかわいい曲を歌ってみたいなと思っていたので、卒業する前に、こんなアイドルらしい曲を歌えて本当にうれしいなと思いました。
──キラキラの胸キュンアイドルソングですよね。
倉岡:はい。今までのアイドル人生をぶつけよう!と思いました。
白沢:ザ・アイドルみたいな感じで、フリがめちゃめちゃかわいくて。お尻を揺らして、メンバーごとに上下しているので、パフォーマンスを見るのが楽しくて。セリフも、個人的に最後のみずはんの声が好き。透明感があって、綺麗で、演技も上手で。最後の“やっぱり、雪っていいよね”で曲がしまる。このセリフがあってこそ、アイドルらしさが出てるんだなって思います。
倉岡:ええー。でも、本当にかわいらしさ全開でいこうって思ってましたね。
河瀬:私もめちゃめちゃ好きです。もともとかわいい曲やアイドルソングが好きなので、リハーサルのときに端で見てるのが楽しくて。しかも、こんなにかわいいのに、歌詞にちょっとだけ不穏なところが見えて。ただただ甘いだけじゃないところも好きです。暗い面もあるからこそ、今の綺麗さが際立つんだよっていうところ。こんなにかわいい曲だけど、ちょっとメッセージ性もあって、素敵だなって思いました。
──そんな詩さんのおすすめは?
河瀬:踊ってていちばん楽しいのは、「いつの間にSunrise」です。ゆったりしてて、全然動かないんですけど、心があったまるんですね。(インタビュー時点では)まだライブでやったことないんですけど、心を込めて歌える曲だなと思って。自分の気持ちを曲にぐっと入れ込めるので、たくさん歌いたいなと思える曲になりました。
白沢:曲として聴く分には、ゆったりして心が落ち着くんですけど、私は詩ちゃんとは逆の感想です。ダンスのサビのパターンが5〜6種類くらいあって。ゆったりしてるからこそ、ちょっとずつ違ってて。まだフリを頭で考えながらやってるんですね。心を込めて歌える曲なので、歌に集中できるように、早くフリが頭に入るといいなと思ってます。
倉岡:この曲、歌い出しが卒業メンバー3人なんですよ。私たちの背中を押してくれる曲なので、本当に最後に心を込めて歌いたいなと思います。
■「覚醒」を聴いて、誰かひとりでも前向きになってくれたら
──ご自身にとってはどんな1枚になってますか。そして、ファンの皆さんにはどうどう届いてほしいですか。
河瀬:本当にカップリングも今までにない曲ばかりなんですね。「Just here and now」も、最初に歌詞を見たときにびっくりしちゃったくらい恋愛の曲で、ダンスもバキバキに踊ってて。6枚目のシングルも、7枚目のシングルのときも“新しいことができた”と言ってたんですけど、今回も違う角度の新しいことに挑戦できてて。新たなことにチャレンジさせてもらえるのはうれしいし、それをちゃんと完璧にできないと、次に繋がらないので、もっともっといろんなことを表現できるようになりたいなと思わせてもらった曲たちになってます。
白沢:卒業するメンバーのラストシングルなので、「いつの間にSunrise」に私たちの思い出を乗せているし、みなさんの胸にも思い出を刻めるシングルになったらいいなと思ってます。「覚醒」で前を向きつつ、カップリングでしみじみしたり、かわいくなったり、カッコよくなったり、いろんな感情が呼び起こせるシングルになってると思う。私は「ヘッドフォンを外せ!」がいちばん好きって思うくらいなので、皆さんにも好きな曲を見つけてもらいたいなと思います。
倉岡:今までと違って前向きな曲が多い一枚ですよね。私、アイドルは人に元気を与える仕事やなって思っていて。今回はそれが実現できるシングルやなと思っているので、「覚醒」を聴いて、誰かひとりでも前向きになってくれたらうれしいですね。
プロフィール
22/7
ナナブンノニジュウニ/秋元康総合プロデュース、Sony MusicとANIPLEXがタッグを組んだアイドルプロジェクト22/7(ナナブンノニジュウニ)。日本を代表する有名クリエイターがてがけたキャラクターを演じる声優アイドルを募るオーディションで結成された。2017年9月20日、1stシングル「僕は存在していなかった」リリース。
リリース情報
2021.11.24 ON SALE
SINGLE「覚醒」
22/7 OFFICIAL SITE
https://www.nanabunnonijyuuni.com