DISH//が、13枚目のシングル「No.1」から4ヵ月ぶりの新曲「ありのまんまが愛しい君へ」を配信リリースした。
ギター&ボーカルの北村匠海と女優の永野芽郁が出演するサンスター「Ora2 me アロマフレーバー コレクション ペースト」のCMソングとして制作された本作は、北村が作詞、ドラムの泉大智が作曲を担当。ありのままの自分でいいと“全肯定”してくれる、無条件に背中を押してくれる優しい歌詞に涙が出る、との声が殺到している。10月17日にコニファーフォレストでの野外ライブを控える彼らが今、伝えたい思いとは──。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 大橋祐希
■もっと自分らしくありのままでいいよ、と伝えたい
──新曲はどんなところからとりかかったんですか。
北村匠海(以下、北村):僕が出演しているCMソングを、ぜひDISH//に、って言っていただけて。大智と柊生と僕がそれぞれ曲を作ったなかで、大智の曲が選ばれました。
泉大智(以下、泉):まず、CMソングだっていうことを考えて。最初のデモはアコギで作ったので、アレンジでだいぶ印象は変わったんですけど、爽やかでよりポップにしたいということを意識しました。
──大智さんの曲を受け取って、匠海さんはどんな歌詞を書こうと考えてましたか。
北村:そもそものCMに「働く女性を応援する」っていうメッセージがあって前から知っている永野芽郁(映画『君は月夜に光り輝く』で共演)と自分もCMに出演しているという状況で、大智とふたりで何をいちばん伝えたいかっていうのを話し合ったんです。そこで、僕らもそうですけど、社会に出て仕事をしていたりすると、1枚、何かを被って生きなきゃいけない瞬間があるじゃないですか。辛いとか、苦しいとか、ネガティブな思いはあまり表に出せなかったりするし、きっとひとりで闘っている人もいるだろうし。そういう人たちに、もっと自分らしくありのままでいい、ありのままの君が愛しいよってことを伝えたいよねっていう共通認識があったので、そこから作っていきました。
■“明日”が歌の主人公を励ましてくれてる。そこは新しい視点
──受け取ったメンバーはどう感じましたか。
橘柊生(以下、橘):世界観が匠海と大智っぽいなって思いましたね。愛っていうワードを直接言ってるところもあれば、そうじゃなく伝えているところもあって。曲全体として愛に溢れていていいな、という印象ですね。
矢部昌暉(以下、矢部):ファンの方は大智にはパンクとかロックとか、あまり何も語らないから、何を考えているかわからないっていうイメージがあると思うので、そんな人からこんな爽やかな楽曲が上がってきたことにびっくりすると思うし、僕自身も驚いて。
泉:意外と僕はアコギの弾き語りみたいなところから作曲を始めているので。歌ものっていうか。フォークソングが自分のルーツのひとつだったりもするんです。
矢部:うんうん、ファーストインプレッションで、すごくいい曲だなって思いました。あと、匠海の書く言葉の力もすごいんですよね。
泉:匠海は言葉の人というか。歌うのは匠海だし、書いた本人が歌うことによってより伝わるというか。いい歌詞だなって思いますね。
矢部:ちょっと喋り口調な感じが親しみやすかったりするし、自分が想像しやすい世界観になっているなって思って。しかも、“君”に対して、歌ってる僕らが言ってるわけじゃなくて、“明日”というものが、歌の主人公を励ましてくれてる。そこは新しい視点で、いいなと思いました。
北村:明日って当たり前に来るんですよね、平等に。明日が無慈悲にも来るっていう現実で、この歌を通して、少しでも、明日見える景色が違うといいなっていうのがあって。ありのままでいるっていうことがどんなに素敵か。君が笑うことがどんなに素敵か。そういうあなたが愛しいよって言ってあげられる存在に、この歌がなればいいなっていう。
■落ち込んだりすることも包み隠さずに書きたいなと思ったんです
──明日が励ましてくれたり、明日も笑ってくれたりしてますね。
北村:僕はたびたび、“今日が終わってほしくない”とか、“なんとなく明日が怖い”って感じることがあって。2020年から今に至るまで、自分の中で結構多くあったんですね。それでもやってくる明日に、少しでも自分の中で希望を持ちたかったんです。だから、ちゃんとネガティブも描いていこうと思って。当初は、爽やかさに重きを置いた歌詞だったんですけど、立体的に考えたときに、落ち込んだりすることも包み隠さずに書きたいなと思ったんです。もともと、自分の生きてるマインドはだいたい暗いんですけど(笑)。
──(笑)かつては「ネガティブブルー」っていうソロ曲もありましたからね。
北村:あははは。ちゃんとそこも描きつつ、君の手を握ってあげられる曲にしたいなと思ってましたね。
──“生きることを譲るなよ”と歌ったメッセージソング「僕らが強く。」や“一人じゃないから 側にいるから”と歌ってた匠海くん作詞の「あたりまえ」との関連性は考えてましたか。
北村:意識はしてなかったんですけど、今、僕らアーティストがすべきことって、やっぱりひとつしかないというか。目に見えて何かが良くなっている状況ではないなかで、音楽を聴いたり、MVやライブを観てる人たちに、少しでもポジティブなエネルギーを持ってほしいし、生きることを諦めてほしくないって思うんですよね。そういう一貫性は、自分も言葉を紡いでて自然と湧き出てくるものなので、意図せずに繋がっていくというか。他のアーティストと話していても、今、自分らがやることはそれしかないと思う。実は今、いちばん音楽が必要とされているんじゃないかって思うんです。もちろん、あまり過多にならない様に意識してますけど、伝え続けることが大事だなって思うので、そういう思いが反映された楽曲になったなって思います。
──この曲にもクラップが入ってるので、「僕らが強く。」と通じるものをより感じちゃうんですよね。
北村:たしかに。
橘:「僕らが強く。」では“笑い合ってたい”と入ってて、この曲でも“君が笑えば”って歌ってる。“笑う”っていいワードですよね。ネガティブのなかにポジティブを感じられる言葉だなって感じていて。そこは共通してるかもしれないです。ネガティブを前提に置いているわけではないですけど、やっぱり何かがあった人を励ますという意味では、このご時世に生きる皆さんの心に響くと思うし、同じ時代を生きているからこそ、繋がってるように感じるんじゃないかな。
北村:今、マスクをしていることで、笑うという行為がすごく遠く感じているんですよ。仕事のときはマスクを外したりすることもありますけど、プライベートで人と会って、直で顔を見て笑い合う機会が少なくなっている。感情を共有することが難しくなってますよね。人ってこんなにも顔に情報が詰まっていたんだっていうのを再認識してます。
■この時代だからこそ、出てきた言葉
──この2年間で知り合った人で、顔の下半分をまだ見たことない人いますからね。
矢部:いや、本当にそう。
北村:現場で会っても、みんなマスクをしてて。集合写真を撮るときだけ外したりするんですけど、そんな顔してたんだ! って驚くこともあるからね。コミュニケーションというものが今までよりも取りづらくなりましたよね。
矢部:この時期になって、マスクをしてから人の顔とか感情がよりわかりづらくなったと思います。でも、僕は、さっきも言った通り、“明日も笑うから”っていう“明日”のほうがポイントだなって感じてて。人じゃなくて、当たり前に来る“明日”というものが、ありのままの自分を受け入れてくれる。その表現はこの時代だからこそ、出てきた言葉だし、響く言葉だなって。そこに嘘がないなって感じるんですよね。だから、頑張ってる人を応援するとか、背中を押してあげるような楽曲の「僕らは強く。」とは、僕の中ではちょっと感覚が違うものではあるなって思いました。
■明日を信じることしかないんじゃないかと
──繰り返しになるかもしれないですが、匠海くんはどうして“僕”や“私”ではなく、“明日”にしたんですか。励ましたり、受け入れてくれるのが、家族や恋人や友人でなく、DISH//でもなく、“明日”だっていう。
北村:頑張る人を応援するっていう幅広いテーマのときに、僕が応援する対象はひとりで頑張ってる人だったんですね。誰にも何も言えず、寂しい帰り道に、ひとりでバスを待ってるような情景が最初に思い浮かんで。そこから、こういう時代だからというのもあって、その人が抱えているものに誰も気づけなかったりする。ましてや、その人は故郷からひとりで上京して、恋人もいないかもしれないし、こんな時期だから友人にも会えないかもしれない。そうなったときに、頼れるものってなんだろうって。やっぱりそれは、“明日いいことないかな”って、明日を信じることしかないんじゃないかと。それが毎日、続けば、きっと今は変わらなくても、少しずつ未来は変わっていくかもしれない。だから、対象を人にしないで、毎日来る明日というものが、「笑っててもいいよ」「泣いててもいいよ」「悔しがっててもいいよ」って言っている。そういう全部を許してあげてほしいなっていう願望もあったんですよね。僕も明日嫌だな、明日が来るのが辛いなって思う時期もあったから。そういうときに、自分はひとりきりだなとか、心の奥底で思わないでほしい。昨年の自粛期間、朝が来て、太陽が昇るのだけで感動したんですよね。これだけは無慈悲に来る点みたいなものが、ちゃんと全部を受け止めてくれてるはずだという思いで“明日”という言葉を使いました。
──なるほど。レコーディングはどんなアプローチで望みましたか。
矢部:僕、今回歌は録ってなくて。ギターは家でひとりで録ったので、なんか寂しかったです(笑)。
橘:僕も家でレコーディングしたんですけど、家でも、スタジオでも、どっちも好きなタイプでした。家は家で、自分の好きなタイミングで休憩したりできるし、スタジオに行っても、「こっちがいいっす」「あっちがいいっす」ってワガママに言えるタイプなので。自分を突き通して、そのまま出す! って感じだから。みんなで騒ぐような曲はその場の空気感とかも大事だけど、メッセージを伝えるようなバラード系の曲は、家で録るほうがいいかもしれない。普通にひとりで誰ともしゃべらずに、黙々とやってた。昼くらいからカーテンを開けて、ヘッドホンしながらひとりの世界に入って弾いていくのがすごく好き。ひとりが結構好きなので。そんな感じでしたね。
泉:僕はスタジオで録りました。自分で作った曲なんですが、ドラムの跳ねてるリズムを叩くのがちょっと苦手で難しくて。でも、なんとか叩き切れたし、楽しかったです。自分で好きにアレンジしつつできた、っていう良さは出たのかなと思いますね。
北村:僕もスタジオで、最近は頭から最後まで歌って終わりみたいな感じなんですけど、すごく早かったです。自分で歌詞を書いているというのもあるし、テーマ的にも感情を乗せやすくて。僕は2Aがいちばんテンションを丁寧に歌ったところですね。自分が伝えたいことだからこそ、早かったですね。
■どんな天気でも、ダメなことなんてないじゃないですか
──“ありのまんまが/愛しいぜ/空見上げよう”のあとですよね。この曲を聴くと、目の前の空が次第にひらけていくような感覚があります。
北村:僕、空って好きなんですよ。子供のときから、みんながグラウンドで遊んでいるときに、ひとりで鉄棒にぶら下がって空を見ていたくらい好きなんです。いろんな表情があるじゃないですか。曇ってるときもあれば、雨が降ってるときもあるし、雲がひとつもないときもあれば、いろんな雲が浮かんでいるときもあるし。
橘:人間みたいだね!
北村:そうなんだよね(笑)。
橘:逆か? 人間の心が空みたいなのか?
北村:だからこそもっと、人も空みたいに広大でいいと思う。“○と×の紙か/いらないぜ忘れようぜ”って歌ってますけど、僕らは子供のときから、正解と不正解で優劣を決められてきて。だから、正解を出さないといけないんだっていう生き方をしてしまいがちだと思うんです。でも僕は、○がいてもいいし、×がいてもいいし、それこそ、△がいてもいいと思う。僕もそういう生き方をしていたけど、二十歳を超えて大人になって、それだけじゃないんじゃないかと思ったんです。晴れがあって、雨があって、曇りがあっていい。雨がないと植物は育たないし、晴れてるから散歩行こうとかもある。どんな天気でも、ダメなことなんてないじゃないですか。そういう意味で、下を向くのではなく、空を、明日を見上げるっていうのがキーワードになってますね。
──ミュージックビデオはどんな内容になってますか。
北村:いろんな議論が行われたんですけど、僕は映画みたいで好きですね。そもそも、監督のケイくん(Kei Murotani)が同世代で仲が良くて。ジャケ写にもなっている、この黒いタンクなんですけど…。
──これって何ですか?
橘:逆にどう思いました?
──どこかに繋がるドアかなと思いました。
北村:ああ、鋭いですね。
■いろんな解釈をして、自分なりの答えを見つけてほしい
──でも、もしかしたら焼却炉というか、ゴミ箱なのかなとも思いました。
矢部:あははははは。そう思いますよね。僕も焼却炉でした。
泉:なるほど。
北村:(笑)ケイくんは、アイソレーション・タンク(光や音といった感覚を遮断し、深い瞑想状態入るための装置。暗闇で無重力に近い状態で浮遊できる)っていう、塩水に浮かべるタンクをイメージしてると思うんですよ。いろんな場所を繋げていく象徴として使ってて。でも、このジャケ写も、僕はとってもアートとして好きだったけど、柊生は「ホラー映画に出てきそう」って言ったり(笑)、いろんな意見がありました。MVは、僕が歌詞に書いたネガティブをしっかりと映像に落とし込んでから始まるっていう流れになっていて、色味から何から僕は好きでしたね。
橘:それぞれから違う見方が出たんですよ。でも、それでいいじゃんってなって。逆に人によって見え方が違っても面白いな。それがこのジャケ写の意味なんじゃない?って。
北村:さっきの話もそうですけど、正解を決める必要はないんですよね。捉え方は人それぞれだし。例えば、こちらがすごくいい映画を作れたと思っても、世論は星2.8ですってことも全然あるわけじゃないですか。だから、柊生が言ったことに、僕もすごく納得して。これを作った僕らの信念、チームの信念が曲がってなければ、何でもいいなって。
泉:僕もその監督を知ってるから、アイソレーション・タンクだと思ったんですけど、作品は本当に正解がないというか。受け取る人次第だというのは当たり前の考えなので、メンバーそれぞれの意見もわかるし、それぞれが正解なんじゃないかと思う。
矢部:なんにでも見えるし、人の数だけ見え方があるっていうのが、ほんとにこの曲に相応しいと思いますね。「ありのまんまが愛しい君へ」っていう、この曲のタイトル通りにいろんな解釈をして、自分なりの答えを見つけてほしいなと思います。
■色とりどりな、森羅万象を表せるのは俺らしかいない
──僕は、10月に延期になった富士急ハイランド・コニファーフォレスト公演に繋がってると思ってました。
北村:それ、いいですね。本当は8月28日に予定していたものが10月17日に延期になったんですが、そのときに届けたかったパッケージは変えずにいこうと思ってます。そのままの熱量というか、僕らが作りたかったものを届けるという。色とりどりな、森羅万象を表せるのは俺らしかいないんじゃないかというライブを作ってる。きっと面白いライブになると思います。
橘:ちょうど僕の誕生日当日(10月15日)は多分リハをしてそう。
北村:いいね。
橘:あはははは。忙しない誕生日を過ごすんだろうなって。
──翌日の10月16日に主題歌「沈丁花」が起用されている日本テレビ土曜ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』が始まって、10月17日がコニファー当日という流れですね。
北村:いいタイミングになったのかもしれないね。
橘:そうだね。26歳になる一発目のライブがコニファー。自分が生まれた秋という季節を皆さんと感じたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!
泉:今、ライブがなかなかできないので、開催できるってこと自体が素晴らしいことだなって思うんですよね。しかも、有観客でできるので、そのありがたさを噛み締めたいなと思いますね。生でお客さんに音楽を届けるっていうことがどれだけ貴重で、自分たちにとってどれだけ大事なのか。来てくれる皆さんにも、何かを受け取って帰ってもらえればやる意味があると思う。それに尽きるかな。
矢部:中止じゃなくて延期にできたのがまず良かったです。ポジティブに考えると、演出面で、照明や特効を使う部分で、夏より秋のほうが暗くなるのが早い分、効果が活かしやすいので、そんなところも楽しんでほしいなって思います。
北村:雨降ったら今度こそやばいね。
──2年前のコニファーは8月18日の開催で雨が降りました。伝説のライブにはなりましたが。
橘:今回は10月だから凍えると思う。寒さには気をつけてほしいですけど、秋は空気が澄んでるから、めっちゃ歌ってて気持ちいいと思うよ。遠くまで届くし。
矢部:そうだね。良いライブを用意しているので楽しみにしていただけたらなと思います。
プロフィール
DISH//
ディッシュ/北村匠海(Vo、Gu)・矢部昌暉(Cho、Gu)・橘柊生(DJ、Key)・泉大智(Dr)の4人で構成された、演奏しながら歌って踊るダンスロックバンド。
2011年12月の結成以降、日本武道館での単独公演を4年連続で開催するなど着実に支持を集め、2020年YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にて公開された「猫」の歌唱映像が話題となり動画再生数1億回を突破、ストリーミング総累計再生数は3億回を超えるなど大ヒット。
映画やドラマ、舞台、モデルなど、4人は個々でも活動を行っている。
リリース情報
2021.09.24 ON SALE
DIGITAL SINGLE「ありのまんまが愛しい君へ」
ライブ情報
『DISH// SUMMER AMUSEMENT ‘21 -森羅万象-』
10/17(日)富士急ハイランド・コニファーフォレスト
『DISH// 10th Anniversary Live』
12/16(木)パシフィコ横浜・国立大ホール
12/17(金)パシフィコ横浜・国立大ホール
12/18(土)パシフィコ横浜・国立大ホール
DISH// OFFICIAL SITE
https://dish-web.com
DISH// Twitter
https://twitter.com/dish_info
DISH// YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/dishSMEJ