約2年に及ぶ充電期間を終え、新始動を果たすポルノグラフィティ。その新たな幕開けを飾るのが約2年2ヵ月ぶりのリリースとなるニューシングル「テーマソング」だ。
コロナ禍の時代に希望を投げかけるべく制作された本作には、ユニゾンパートを盛り込むことで力強いメッセージを高らかに鳴らす表題曲「テーマソング」に加え、昨年12月の一夜限りのハイブリッド型ライヴで披露され、その後新たにスタジオでレコーディングされた「REUNION」と、ドラマチックな展開で未来への光を感じさせる「IT’S A NEW ERA」の3曲を収録。ソロとしての活動で得た新たな力を注ぎ込んだ渾身の作品について、岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(Gu)のふたりにじっくりと話を聞いた。
■個人での活動は母屋であるポルノにしっかり返ってくる
──19年9月の東京ドーム公演『NIPPONロマンスポルノ’19~神vs神~』を終えた段階で、ポルノとして充電期間を設けることは決まっていたんですか?
新藤晴一(以下、新藤):そうですね。そもそもは1年くらいかなと思ってたんですけど、それがコロナによって思ったよりも長くなった感じではあるんですけど。
──その期間に昭仁さんはソロシンガーとして配信シングルのリリースや配信ライヴを行っていました。一方の晴一さんはミュージカル用の物語を執筆されたり、noteで身の回りの出来事を積極的に綴るなど、言葉にこだわった活動をされていた印象です。ポルノとしての20周年を終えたタイミングで、ソロとして動くに至ったのには何かきっかけがあったんですかね?
新藤:きっかけというほどのことはないですけど、それぞれにいろいろなことをやればいいんじゃないかなとは思ったんですよね。大坂なおみさんが以前、「テニスは自分のものだけど、すべてではない」といったようなことをおっしゃっていましたけど、結局はそういうことだと思うんです。自分らにとってポルノは間違いなく大事なものではあるけど、でもそれがすべてではないという思いもある。振り返ればね、若い頃はポルノがすべてだった時期もあったけど、今はまたそれとは違った立ち位置で付き合えているように思うんですよね。だったら20周年という大きな節目を迎えたことを機に、ソロとして好きなことをやってみるのもいいんじゃないかなっていう。
岡野昭仁(以下、岡野):グループの場合、ほんとの意味で突き詰めていけばふたりの思考が完全に一致しているかっていうと決してそうではないと思うんですよ。だからこその苦しみもどっかにはあったりもするんだろうし。でも、それぞれが個人の活動をすることでそこを突破できるのであれば、それはもう全然やってもいいんじゃないかなって思うんですよね。個人での活動は自分自身を突き詰めることだとも思うし、そこで得たすべてのものは母屋であるポルノにしっかり返ってくるものだから。
新藤:ポルノのファンの方々は僕らがまた動き出すのをちゃんと待ってくれていたので、それによって思いきり好きなことができたところもありましたよね。非常に心強い気持ちで、この2年を過ごすことができていたと思います。
岡野:うん。ドーム以降、ポルノとしての活動のインフォーメーションをほとんどしていなかったわけだから、「もういいわ」って言って離れていってもおかしくない状況だったと思うんですよ。にもかかわらず、みんな待っていてくれたわけですから。僕らのことをひたすら応援してくれる方々がいてくれることは、ほんとにありがたいですね。
──そして今回、ニューシングル「テーマソング」を引っ提げて、いよいよポルノが新たに動き始めます。制作に関してはどんな流れで動いていったんでしょう?
新藤:そこはもういたってシンプルですよ。ふたりがそれぞれに曲出しをして、その中から“いいね”と思ったものをアレンジし、歌詞を書いて、歌を録っていく流れです。で、最終的にそこでできた数曲の中からどれをシングルに入れるかを決めていくっていう。
■勇気や希望を持ってもらえるような作品に
──その際、新始動一発目ということは意識されました?
岡野:コロナ禍ということもあったので、僕らの音楽を聴いた人たちが勇気や希望を持ってもらえるような作品にしたいというイメージはシンプルにありましたね。そこを新始動にあたっての力にしていたというか。もちろん音楽的なチャレンジはいろいろやっていくんですが、気持ち的にはそこまで新たな局面を意識せず、自分の役目をもう一度、心したという感覚だったと思いますね。
新藤:みなさんの3分なり4分なりの時間をもらって曲を聴いてもらうのであれば、完全に明るいとは言えない今の世の中のことを忘れられるものがいいなとは思っていましたね。平時であれば新始動として恋愛の曲を出しても全然いいとは思うんだけど、今のタイミングでの僕らが聴いてもらいたいのはやっぱり恋愛の曲ではなかったってことですね。
──表題曲となる「テーマソング」は、まさに今の僕らにとっての希望を携えたテーマソングになり得る曲だと思います。作曲は昭仁さん。みんなでシンガロングしたくなる合唱パートが印象的ですね。
岡野:曲の発端はまさにそこだったんですよ。1年くらい前からみんなでユニゾンで歌い合えるような曲を作りたいとずっと思っていて。“♪ラララ”で歌い合う曲は今までにもあったけど、歌詞の乗ったフレーズをみんなでユニゾンするのってポルノではほぼやってきたことがなかったので。コロナ禍が明けたときにこの曲をみんなで一緒に歌えるんだと思えたら、すごく希望にもなるじゃないですか。そんな気持ちを持って曲を作っていきましたね。
──作詞は晴一さんですね。曲からはどんなイメージを受け取りましたか?
新藤:たしかね、レコーディングスタジオですれ違いざまに昭仁からリクエストがあった気がするんですよ。ちょっとうろ覚えなんだけど、「全体的に大きな世界観にしてほしい」みたいな感じの話だったような気がするんだけど…。
岡野:この曲はある意味、サビが2つあるような構成だし、ユニゾンで歌うパートとそうじゃないパートがあるから、それをうまいこと書き分けてほしいってことを伝えたんですよね。そこが難しいんじゃないかなと思ってたから。
新藤:わ、全然違ってた。すみません(笑)。いやでも、さっきも話した希望を感じてもらえるような歌詞っていう大まかなイメージに対して、メロディや曲の展開がすごく盛り付けやすい器になっている印象があったんですよね。このパートではこういう言葉、フレーズを乗せてほしいんだなっていうのが、よくわかるメロディというか。だから僕はそこに素直に言葉を乗せていった感じです。特にユニゾンする部分の歌詞なんて、詞先みたいでしょ?
──本当にそう思います。言葉とメロディが気持ちよく一体になっていますよね。
新藤:そういう言葉を乗せろっていうメロディだったから、たぶんあれ以外にはないんですよね、きっと。
──ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?
岡野:このパートはこの声色で、みたいな声のトーン決めは以前よりも強く意識してやれたような気はしますね。これは余談なんですけど、昔、事務所の会長に「お前は声色を何本持ってるんだ?」って聞かれたことがあって。「ギリ2本くらいですかね?」って返したら、「お前はアホか。桑田(佳祐)は7色の声を出せるんだぞ」って言われたんですよ。当時は、「何を言ってるんだろう?」って思ってましたけど(笑)、でも最近になってその言葉がちょっとわかるようになってきたというか。ポルノとして20年やってきたなかで、声色が5本くらいにはなったんじゃないかなって。
──5本どころではないように思いますし、それぞれの声色を曲に合わせて使い分けるスキルも確実に上がっていますよね、間違いなく。
岡野:思い描いた声のイメージをちゃんと体現できるようにはなったかもしれないですね。曲に求められている表現方法がわかるようになったというか。それはこの2年のおかげでもあります。ソロとして過ごしたことで手に入れたものは確実にあると思うので。
──2曲目には、昨年12月に開催された有観客&配信ライヴ「CYBERロマンスポルノ’20~REUNION~」で初披露された「REUNION」が収録されています。
岡野:あのライヴをやるうえで、その時期ならではの、なおかつそれがしっかりライヴを司るテーマになるような曲が必要じゃないかと思ったんです。そういう意味では僕の中ですごく強い意志を持って作った1曲ですね。とは言え、この曲は僕が最初に作ったメロディが制作の過程でどんどん変わっていった曲でもあって。もともとのメロに合わせてアレンジャーのtasukuくんがトラックを作ってくれたんだけど、それを聴いたら違うメロディが出てきて、どんどんかっこよくなっていったっていう。
──へぇ。それはある意味、トラック先行の作り方とも言えますよね。
岡野:そうそう。ポルノとしては今までそういう作り方をしてこなかったんだけど、案外トラック先行も性に合うのかなっていう発見がありました。
■自分の内側にも宇宙と同じくらいのスペースが広がっているはず
──歌詞は晴一さんと昭仁さんの共作になっていますね。
岡野:僕は基本的にサビでリフレインする英語の部分を、英語に長けたスタッフと一緒に考えた感じで。他は新藤が全部書いてくれました。
新藤:昭仁の考えた“REUNION”を繰り返すサビはもう念仏みたいなもんだから(笑)。必然的にちょっと内省的な世界観になりましたね。外出の自粛によって外の世界から閉ざされていた時期だったけど、自分の心の内面を顧みれば外と同じくらいの広さはあるでしょっていう。自分の内側にも宇宙と同じくらいのスペースが広がっているはずだよっていう、そんなイメージで書いて行きましたね。
──ライヴで披露されたものと歌詞が少し違っている部分がありますよね。
新藤:そうですね。大サビもライヴ後に加わりましたし。音源としてレコーディングするにあたって、あらためてブラッシュアップした感じです。
岡野:レコーディングは半年くらい前にやったんですけど、その時点でもライヴをやった去年の12月とは世間の空気感や色合いがちょっと変化していたところがあったので、ボーカルも必然的に違った表現になったところがあるかもしれないですね。歌詞の内容をより強く噛みしめながら歌えたと思います。
──もう1曲は晴一さんが作詞・作曲を手掛けた「IT’S A NEW ERA」です。
新藤:曲のテーマは1曲目の「テーマソング」と同じです。曲調が違うから違う言葉を使っただけで、言いたいことはまったく一緒。曲に関しては、自分が元々好きなミュージカル音楽からの影響があったような気がします。そもそも自分が好きなタイプの曲として書きました。
──物語性を感じさせながらドラマチックに展開していく曲ですよね。「テーマソング」とは違った形でしっかりと希望を感じさせてくれます。
新藤:楽器を演奏してもらうミュージシャンにも、そういう物語性は意識してもらうようにディレクションはしましたね。最初から走り出さないことが大事、みたいな話はしました。
岡野:この曲のオケ録りには立ち会えなかったんですけど、仕上がったものを聴いたときはすごく感動しましたね。弦が入ったことで、曲の世界がより広がったというか。で、トラック自体がそういう物語を感じさせる流れになっているから、ボーカルもそこはすごく意識して。新藤やアレンジャーの(宗本)康兵からいろいろディレクションをもらいながら、サビに向けてどんどん力強くなっていく表現を心掛けた感じです。
──平メロの少し抑えたボーカルがいいですよね。力強いサビを引き立てるあのニュアンスは、ちょっと新しい昭仁さんを感じられたような気がしました。
岡野:そうかもしれないですね。少しはうまくなったのかもしれません(笑)。この2年で自分の声をじっくり研究したのがデカかったんかなとは思いますね。
──タイトルにもなっている“NEW ERA=新時代”という言葉には、コロナ禍が明けた後に訪れる未来を示唆しているようでもあるし、同時にポルノとしての未来としても受け取れますよね。
新藤:うん、もちろんそれも含まれてると思います。このシングルで伝えたかった前向きな感情や希望みたいなものは、聴いてくれる人はもちろん、ポルノに対してでもあるので。
■1本1本のライヴに付加される意味合いは今までと違ってくる
──9月25日からは17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”がスタートします。久々となるツアーへの意気込みを最後に聞かせてください。
岡野:去年の12月のライヴは単発だったので、ツアーを周れることが今は本当に楽しみですね。お客さんが目の前にいるステージに立つ喜びを各地で感じながら、とにかくうれしそうに歌ってる僕の姿を見てもらいたいです(笑)。そして皆さんにも少しでも楽しい気持ちになってもらえたら最高だなと思います。
新藤:ここまで待ってくださった方々に、待ったかいがあったと思ってもらえるライヴをしなきゃなっていう気持ちがいちばん強いですね。今回はいろいろ困難なことがあるので、ちゃんとステージに立てるかどうかも含め、確約したものがない状態でツアーを進めることになるとは思うんです。だからこそより感謝の気持ちを持ってライヴをすることができると思うし、今までとはまったく違ったライヴになるような気もしていますね。
──ステージの上からポルノとして放つものも、今までとは違ったものになる?
新藤:うん。今回のツアーに関してはたぶん変わると思います。安全対策は徹底的にやりますけど、みんな少なからずリスクを持って参加してくれるわけですから。1本1本のライヴに付加される意味合いは今までとはやっぱり違ってくるんじゃないかな。
プロフィール
ポルノグラフィティ
岡野昭仁(Vo)、新藤晴一(Gu)。1999年、1stシングル「アポロ」でメジャーデビュー。4thシングル「サウダージ」で初のミリオンセールスを記録。その後も、「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」「オー!リバル」などヒット曲を発表。2019年にはデビュー20周年を迎え、東京ドーム2DAYS公演を開催した。
リリース情報
2021.09.22 ON SALE
SINGLE「テーマソング」
ライヴ情報
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