《結束バンド》とは、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場する4人組バンド。現在はフェスへの出演やツアーの開催など、いわゆる劇中バンドにとどまらない活躍を見せている。今回はその成り立ちや楽曲の魅力、人気の由来を解説したい。
■アニメから飛び出した4人組バンド
◎結束バンド(読み:けっそくバンド)
・メンバー:後藤ひとり / 伊地知虹夏 / 山田リョウ / 喜多郁代
・OFFICIAL SITE :https://bocchi.rocks/tv/
・YouTube https://www.youtube.com/@aniplex
・Instagram https://www.instagram.com/BTR_isosta/
・X(旧Twitter) https://twitter.com/BTR_anime
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結束バンドとは、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場するバンド。アニメの主人公は、人並み外れたギターテクニックを持ちながら極度の人見知り、“陰キャ”な“ぼっちちゃん”こと後藤ひとりだ。ひょんなことから伊地知虹夏(ドラム)率いる“結束バンド”に加入し、山田リョウ(ベース)、喜多郁代(ボーカル・ギター)といったメンバーとの出会いを経て成長していくストーリーが描かれる。
アニメの放送開始は2022年10月。下北沢を舞台にしたバンドシーンのリアルな描写や、エモーショナルな主題歌や劇中曲のクオリティが評判を呼び、話題が広がっていった。話数のサブタイトルがASIAN KUNG-FU GENERATIONの楽曲名に由来しているなど、ロックファンなら思わずニヤリとしてしまうような仕掛けがあったのもポイントだ。
アニメファン以外にも話題を広げたきっかけとなったのが、2022年12月にリリースされたアルバム『結束バンド』だ。主題歌や劇中曲だけでなくオリジナル曲やASIAN KUNG-FU GENERATIONのカバーも含めた全14曲収録で、この作品の高い評価とセールスが一気に結束バンドの人気を押し上げた。Billboard JAPANダウンロード・アルバム・チャートやオリコン『デジタルアルバムランキング』にて2023年の年間1位となるなど、アルバムはロングヒットを実現する。
当初はあくまで劇中だけに登場する存在だった結束バンドだが、2023年5月21日には初のワンマンライブ『結束バンドLIVE-恒星-』がZepp Haneda(TOKYO)にて開催され、ライブ活動をスタートした。さらに2024年5月4日には野外音楽フェス『JAPAN JAM2024』に出演し、初のフェス出演が実現。数万人のロックファンを熱狂させた。
アニメから飛び出し、いまや、リアルな音楽活動においても注目を集める存在となっている。
■メンバープロフィール
後藤ひとり(読み:ごとう ひとり)
極度の人見知りで陰キャな高校一年生。“ぼっちちゃん”とも呼ばれる。中学一年生のときにギターを始め、1日6時間の練習でめきめきと上達。ずば抜けた演奏技術を持つ。“ギターヒーロー”の名前で動画サイトに投稿し高い再生数を記録するようになるも、誰にも声をかけることができずバンドを組めないまま中学を卒業する。アピールのためにギターを背負って登校した姿を見た伊地知虹夏から結束バンドのサポートを頼まれ、バンドに加入。初めてのステージは緊張して散々な結果に終わるが、バンドメンバーとの交流を経て、少しずつ人間的に成長していく。また、結束バンドの楽曲の作詞も手掛ける。
伊地知 虹夏(読み:いじち にじか)
世話焼きで明るいバンドのまとめ役の高校二年生。中学時代からバンドの経験があり、親友である山田リョウを誘って結束バンドを結成。ライブハウス『STARRY』の店長である星歌を姉に持ち、ライブハウスに強い思い入れを持つ。面倒見がよく、包容力のある性格で、バンドのロゴをデザインしたり経費を管理したりといった仕事もマメにこなす。結束バンドを人気バンドにして、STARRYをさらに有名にするのが将来の夢。「なにが悪い」でボーカルを担当している。
▼TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」エンディング映像/「なにが悪い」
山田 リョウ(読み:やまだ りょう)
“変わり者”と言われると喜ぶ、クールで孤高な高校二年生。マイペースな性格で、虹夏の親友。虹夏以外に友達はいないが孤独なのではなくひとりが好きなタイプ。中学時代は別のバンドで活動していたが脱退し、バンド活動にも嫌気がさしていたが虹夏に誘われて結束バンドを結成する。裕福な家庭で暮らしているが、楽器に対してお金遣いが荒く、常に金欠。たまに雑草を食べたりもする。音楽への情熱は高く、バンドの中では作曲を担当している。作詞に悩むひとりに「個性捨てたら死んでいるのと一緒だよ」と助言を投げる場面も。「カラカラ」でボーカルを担当している。
▼TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」エンディング映像/「カラカラ」
喜多 郁代(読み:きた いくよ)
後藤ひとりとは対称的に、社交的で明るい性格の、いわゆる陽キャな高校一年生。人と関わるのが好きで友達も多く、アウトドア派でSNSにも熱心。ある日路上ライブで見かけた山田リョウに憧れ、ギターが弾けないことを隠したまま結束バンドの初期メンバー募集にボーカル兼ギタリストとして応募する。密かに練習するも弾けるようにならず初ライブを目前にバンドから逃亡してしまう。後にひとりを通じて虹夏、リョウと再会し、改めてバンドに加入する。その後はひとりにギターを習い、当初は不安視されていたギターの腕前も着実に上達。メインボーカルとして多くの楽曲で歌唱を担当している。
■『THE FIRST TAKE』で披露した「ギターと孤独と蒼い惑星」とは?
▼結束バンド – ギターと孤独と蒼い惑星 / THE FIRST TAKE
「ギターと孤独と蒼い惑星」は『ぼっち・ざ・ろっく!』のTVアニメ第5話、また、劇場総集編前編Re:にて劇中曲として初めて披露した結束バンドの楽曲。ライブハウス『STARRY』でのライブに出演するためのオーディションで披露され、劇中では後藤ひとりが作詞を、山田リョウが作曲を手掛けたという設定になっている。
実際には作詞をZAQ、作曲を音羽-otoha-、編曲をakkinが担当。楽曲の聴きどころはアグレッシヴで攻撃的なギターロックのサウンドと、喜多郁代を演じる長谷川育美の迫力ある歌声だ。2本のギターのフレーズが絡み合うイントロから、AメロからBメロにかけて徐々にテンションをあげていく曲調、エモーショナルに叫ぶサビまで、畳み掛けるような曲調が魅力だ。『THE FIRST TAKE』で披露されているバージョンもライブハウスでの熱量をそのまま伝えるようなダイレクトなものになっている。
■「ギターと孤独と蒼い惑星」の意味は?歌詞考察
▼【LyricVideo】結束バンド「ギターと孤独と蒼い惑星」/ TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」第5話劇中曲
ギターと孤独と蒼い惑星
作詞:ZAQ
作曲:音羽-otoha-
編曲:akkin突然降る夕立 あぁ傘もないや嫌
空のご機嫌なんか知らない
季節の変わり目の服は 何着りゃいいんだろ
春と秋 どこいっちゃったんだよ息も出来ない 情報の圧力
めまいの螺旋だ わたしはどこにいる
こんなに こんなに 息の音がするのに
変だね 世界の音がしない足りない 足りない 誰にも気づかれない
殴り書きみたいな音 出せない状態で叫んだよ
「ありのまま」なんて 誰に見せるんだ
馬鹿なわたしは歌うだけ
ぶちまけちゃおうか 星にエリクサーに張り替える作業もなんとなくなんだ
欠けた爪を少し触る
半径300mmの体で 必死に鳴いてる
音楽にとっちゃ ココが地球だな空気を握って 空を殴るよ
なんにも起きない わたしは無力さ
だけどさ その手で この鉄を弾いたら
何かが変わって見えた ような眩しい 眩しい そんなに光るなよ
わたしのダサい影が より色濃くなってしまうだろ
なんでこんな熱くなっちゃってんだ 止まんない
馬鹿なわたしは歌うだけ
うるさいんだって 心臓蒼い惑星 ひとりぼっち
いっぱいの音を聞いてきた
回り続けて 幾億年
一瞬でもいいから ああ
聞いて
聴けよわたし わたし わたしはここにいる
殴り書きみたいな音 出せない状態で叫んだよ
なんかになりたい なりたい 何者かでいい
馬鹿なわたしは歌うだけ
ぶちまけちゃおうか 星に
劇中では後藤ひとりが必死で作詞に挑み、山田リョウから「暗い。でも、ぼっちらしい」と評されたこの曲。居場所のなさ、理解されない不満や苛立ち、それを吐き出す音楽への衝動という、真っ直ぐなエネルギーが歌詞に表れている。
突然降る夕立 あぁ傘もないや嫌
空のご機嫌なんか知らない
季節の変わり目の服は何着りゃいいんだろ
春と秋 どこいっちゃったんだよ
冒頭で歌われるのは雨に降られる情景。“空のご機嫌”というのは天気のことでもあり、世間一般の価値観の象徴でもある。“季節の変わり目”にも気付かない、世の中の流行や趨勢に取り残されがちな主人公の姿が浮かび上がる。
息も出来ない 情報の圧力
めまいの螺旋だ わたしはどこにいる
こんなに こんなに 息の音がするのに
変だね 世界の音がしない
沢山の情報が押し寄せて窒息寸前になり、めまいの中で“わたしはどこにいる”という悩みを抱える主人公。自分の息の音がする、つまり自意識ばかりが肥大して周りが見えなくなってしまっている。
足りない 足りない 誰にも気づかれない
殴り書きみたいな音 出せない状態で叫んだよ
「ありのまま」なんて 誰に見せるんだ
馬鹿なわたしは歌うだけ
ぶちまけちゃおうか 星に
1サビで歌われるのは自分自身の思いを伝えたい、自己を表明したいけれど、その相手も見つけられないという鬱屈した思い。“ぶちまけちゃおうか 星に”という言葉に、誰かに届けるというよりも、行き場のない感情を夜空に向かって解き放つようなやりきれない気持ちが表れている。
エリクサーに張り替える作業もなんとなくなんだ
欠けた爪を少し触る
半径300mmの体で 必死に鳴いてる
音楽にとっちゃ ココが地球だな
空模様を通じて“世間”を歌った1番に対して、ギターや音楽を通して“自分”を歌う2番という歌詞の対称性がこの曲のポイント。エリクサーはギターの弦のこと。“半径300mmの体”はアンプのスピーカーの大きさなのか、ギターのストロークの半径なのか、解釈はいろいろあるけれど、音が鳴っている場所への愛おしい思いが綴られている。
わたし わたし わたしはここにいる
殴り書きみたいな音 出せない状態で叫んだよ
なんかになりたい なりたい 何者かでいい
馬鹿なわたしは歌うだけ
ぶちまけちゃおうか 星に
ギターを弾くことで何かが変わって見えたと歌う2番を経て、1サビで“誰にも気づかれない”と歌っていたフレーズは2サビで“わたしはここにいる”に変わる。“なんかになりたい”“何者かでいい”という真っ直ぐな承認欲求を叫ぶリリックも印象的だ。不器用で世間に合わせられないけれど、音楽があれば自分自身でいられる。歌詞からはそんな希望を読み取ることができる。
■聴くべき3曲解説
「星座になれたら」
アニメではひとりが通う秀華高校の文化祭ライブにて披露された楽曲。テクニカルなバンドアンサンブルと明るいメロディを持つ楽曲に仕上がっている。“君と集まって星座になれたら”というサビのフレーズが印象的なこの曲。“遥か彼方 僕らは出会ってしまった”という歌詞もポイントだ。大切な存在に出会ったことへの喜びや、未来への願いがストレートに託された曲になっている。“つないだ線 解かないよ”と、人と人との関係を星座のメタファで表現しているのがとてもロマンティック。
「忘れてやらない」
アニメでは「星座になれたら」と同じく秀華高校の文化祭ライブにて披露された楽曲。アップテンポな8ビートの疾走感あふれるパンキッシュなナンバーだ。ハイトーンでキラキラした歌声も聴きどころになっている。“嫌いな僕の劣等感と 他人と違う優越感と せめぎあう絶妙な感情”という歌詞がポイント。思春期の鬱屈やコンプレックスを吐き出すような他の曲と比べて、“青い春なんてもんは 僕には似合わないんだ”と歌いつつも、“なんとなくの一歩を 踏み出すだけさ”と前向きな思いがにじみ出るような曲になっている。
「あのバンド」
アニメではライブハウス『STARRY』での初ライブで披露された曲。“あのバンドの歌がわたしには 甲高く響く笑い声に聞こえる”という歌い出しが何より印象的だ。ヒリヒリするようなギターフレーズに乗せて、強い疎外感が歌われる。他のみんなに背を向け、自分が信じるものだけを貫く意志が歌われている。“ほかに何も聴きたくない わたしが放つ音以外”というサビのフレーズが、1番と違って2番のラストでは決意表明のように聴こえるのも味わい深い。
■待望の新曲と劇場総集編公開
そして、劇場総集編となる『劇場総集編 ぼっち・ざ・ろっく Re:/Re:Re:』の前編が6月7日、後編が8月9日に公開される。結束バンドの待望の新曲「月並みに輝け」は、前編のオープニングテーマ。作詞を樋口愛、作曲を音羽-otoha-、編曲を三井律郎という「青春コンプレックス」も手掛けた布陣が担当している。熱量たっぷりのギターストローク、衝動をそのまま注ぎ込んだような曲調はまさに結束バンドの、そして下北沢のライブハウスから連なる日本のロックシーンの魅力を詰め込んだようなもの。バンドにとっても新たな代表曲となるだろう。
■結束バンドの今後の活動に注目
結束バンドは今夏、国内最大級のロック・フェスティバル『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』への出演が決定。秋から冬にかけては全国ツアー『結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will”』も開催される。劇場総集編の盛り上がりに加えて、アニメを飛び出し活躍する結束バンドの今後からも目が離せない。
TEXT BY 柴 那典
▼結束バンド最新情報はこちら
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