千葉雄喜がリリースした「チーム友達」が大きな話題を呼んでいる。海外からも注目を集めるオリジナル楽曲だけではなく、数々のアーティストが手掛けるリミックスやカバー、ダンスオマージュなど、大きなムーブメントとなっている「チーム友達」を考えたい。
■「チーム友達」とは?楽曲情報
▼千葉雄喜 – チーム友達 (Official Music Video)
・歌唱アーティスト:千葉雄喜
・リリース日:2024年2月13日
・作詞:千葉雄喜
・作曲:Koshy,Young Coco
BAD HOPの東京ドーム公演や、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の世界的ヒットなど、話題が尽きない日本のヒップホップ/ラップシーン。千葉雄喜が2月13日に配信リリース/MV公開した「チーム友達」も、オリジナル楽曲を中心に、同時多発的なリミックスの発表やネットでのミーム化など、強い遠心力をもって拡散を続け、一つの社会現象を巻き起こしている楽曲だ。
この楽曲が注目を集めた第一の理由は、とりもなおさず“千葉雄喜≒KOHH.”の作品だったからであろう。ラップ/ヒップホップのトップランナーとして10年代の音楽シーンに確固たる地位を築き、人気を博していたKOHHが突如活動停止、引退したのが2021年。その意味でも、復活が熱望されていた彼が、突如として千葉雄喜名義でリリースしたのが本楽曲。
Koshy,Young Cocoの手掛けるミニマルなビートに、千葉雄喜の聴感への刺激が強いラップの結合によって、シンプルかつ中毒性の高い楽曲として完成した「チーム友達」は、当然の如くブレイク。Spotifyの週間バイラルチャートジャパンでも首位を獲得し、リリース前より既に様々なアーティストによるリミックスバージョンが各所で披露され、SNSやライブで話題は呼んでいたものの、リリース後はさらに増幅、TikTokなどではダンス動画も含めて拡散。星野源はラジオでプレイし、青山テルマのInstagramで渡辺直美が歌った動画が話題になるなど、更にその射程距離を伸ばしている。そして4月19日には『THE FIRST TAKE』にてメディア初パフォーマンスが披露され、その勢いは更に増していく。
▼千葉雄喜 – チーム友達 / THE FIRST TAKE
5月2日には「チーム友達」を千葉雄喜と国内外のアーティストたちが手がけたリミックスをコンパイルした 13曲入りのアルバム『チーム友達 The Remixes』が、配信された。
■「チーム友達」の歌詞は?リミックスとの比較など楽曲考察
チーム友達
作詞:千葉雄喜
作曲:Koshy,Young Cocoチーム友達 チーム友達
俺たち何?え?チーム友達
関西関東 西東、北南
チーム友達 チーム友達
チーム友達 チーム友達
チーム友達 チーム チーム
チーム友達 俺たち何?え?チーム友達お好み焼き 食う鶴橋
腹いっぱい 飯は美味い
一人じゃ寂しいし電話きたり
かけ直した後すぐ行く会いに
T E A M T O M O D A C H I
T E A M T O M O D A C H I
T E A M T O M O D A C H I
チーム友達混ざり合い
契り交わし飲んでる酒
契り 契り 契り 契り
契ろう 契ろう 契ろう 契ろう
契り 契り 契り 契り
契ろう 契ろう 契ろう 契ろうチーム友達 チーム友達
俺たち何?え?チーム友達
関西関東 西東、北南
チーム友達 チーム友達
チーム友達 チーム友達
チーム友達 チーム チーム
チーム友達 俺たち何?え?チーム友達
「チーム友達」は決して長い曲ではない。そしてリリックとしても“チーム友達”“契り/契ろう”という短くシンプルな、しかし印象的なキーワードが連呼される構成になっており、その内容自体は非常に分かりやすい。また“T E A M T O M O D A C H I”というアルファベットを一文字ずつ発声するくだりのキャッチーさなど、“多層的な含意”を持つ作品というよりも、より聴感的な、体幹で聴くような作品と言えるだろうし、“考察を拒否”するような感覚さえ覚える。
しかし、その“プレーンさ”こそが、この楽曲の肝であり、様々なリミックスやミーム化といった遠心力を誇る理由だと思える。MVに登場する王子の風景も含め、この曲はヒップホップ的に言えば“フッド”を強調した内容であり、そういった地元の仲間を“チーム友達”と呼ぶ結束力に加えて、それを“関西関東 西東、北南”と範囲を広げ、それらと“契り/契ろう”とオープンな姿勢を見せ、“ビーフ”との対極的な姿勢が印象に残る。
もともと地元王子を強くレペゼンしていた彼だが、その“友達”の枠組みを地元から全国に広げるのは、ある意味では“孤高の存在”であった(もちろん、それはパブリックイメージなのだが)彼のスタンスの変化を感じさせる。更にダンスも視覚を刺激する。
その“地元”“印象的なセンテンス”“ダンス”は、“千葉雄喜の考える『チーム友達』というゲームのルール”なのでは無いだろうか。そして、そのルールはシンプル故に多くの“ゲーマー”が参加。
Jin Doggは“D I R T Y K A N S A I ”“O N L Y G U Y S”と言い換え、ZORNは“IIU/OOAI”という母音で固く踏み(“友達”に連なる“OOAI”のライミングは多くのラッパーが取り入れている)、多くのリミックス映像が“地元と仲間”を題材にし、TikTokなどではダンスカ動画が数多くアップ。
千葉雄喜の提示した“シンプルなルール”を基に“ゲーム”を拡大している。その意味でも“ルーラー”としての千葉雄喜の凄みが、オリジナル楽曲からは感じさせれる。
■広がる友達の輪!ムーブメントは何故起こったのか
国内だけではなく、海外からの注目も高い「チーム友達」。この曲の発信者は千葉雄喜であることは間違いない。同時に、高木完がパーソナリティを務めるラジオ『TOKYO M.A.A.D SPIN』に千葉雄喜が出演した際に「『チーム友達』はJin Doggが使っていた言葉」と大意で語る通り、Jin Dogg「壊 (DESTROY)」や「汚関西(DIRTY KANSAI)」、「How High feat. MonyHorse」などでそのキーワードは既に登場し(ちなみにMonyHorseと千葉雄喜は同郷王子出身である)、そもそも楽曲自体“お好み焼き/食う鶴橋”とJin Doggと縁の深い鶴橋という地名から始まる。
また、昨年末に行われた『Jin Dogg ONE MAN LIVE 2023』でも、既に「チーム友達」はプレイされ、「チーム友達(Dirty Kansai Remix) – 千葉雄喜, Young Coco & Jin Dogg 」がリリースされたのは必然と言えるだろう。同じくオフィシャルな形では「チーム友達 (東海 Remix) – 千葉雄喜, SOCKS, ¥ellow Bucks, MaRI & DJ RYOW」がリリースされている。
▼チーム友達(Dirty Kansai Remix) – 千葉雄喜, Young Coco & Jin Dogg
▼チーム友達 (東海 Remix) – 千葉雄喜, SOCKS, ¥ellow Bucks, MaRI & DJ RYOW
また5月2日には、それまで散発的にリリースされてきたSKY-HIやキングギドラ、Watsonなどの日本勢、そしてBun BやDuke Deuceなど海外勢が参加したリミックスがコンパイルされたパッケージが「チーム友達(The Remixes)」として配信された。ライブや非リリースの形では、PUNPEEと5lack、ZORNや、鎮座Dopenessなどが披露しているという。 Charlu、Reneé Couto、3li¥enによる「GALS Remix☆」や、Valkneeによるリミックスなど、ジャンダーを超えた広がりも特徴だ。インストが公開されていることから、追いきれないほどのビートジャックもSNSでは発信されているが、それは数多くのご当地リミックスが発表されたBUSTA RHYMES「New York Shit」やSHINGO☆西成「大阪UP」などの系譜も感じさせられ、そこからもこの曲が“ラップゲーム”として楽しまれている事がわかる。
▼Busta Rhymes – New York S*** (MTV Version) ft. Swizz Beatz
▼SHINGO★西成 / 大阪UP / OFFICIAL MUSIC CLIP (P)(C)2012 昭和レコード
またダンス動画も数多くアップされ、岩田剛典やNCT WISH、櫻坂46のメンバーなどもTikTokにダンス動画をアップしていた。
▼岩田剛典
@bemyguest_official チーム友達🤝 #岩田剛典 #BeMyguest #チーム友達 #teamtomodachi #dancechallenge
▼NCT WISH
@official_nct チームともだち 🎱 #チーム友達 #SION #RIKU #YUSHI #시온 #리쿠 #유우시 #シオン #リク #ユウシ #NCTWISH
▼櫻坂46
@sakurazaka46.officialtk TEAM TOMODACHI !!!! #SaitoFuyuka #TakemotoYui #MatsudaRina #YamasakiTen #チーム友達 #Friend #dance #Sakurazaka46 #櫻坂46 #sakurazaka46_TikTok
■千葉雄喜とはどんなアーティストなのか?
・誕生日:1990年4月22日
・出身:東京都北区王子
・YouTube https://www.youtube.com/@Yuki_chiba
・Instagram https://www.instagram.com/yukichiba_/
2012年『YELLOW T△PE』で、シーンに登場したKOHH。当時の流行と歩を合わせたこの作品では、実弟LIL KOHHとの「Young Forever」などでストリートを中心に話題を集め、続く『YELLOW T△PE2』に収録された「JUNJI TAKADA」でより広範なリスナーを獲得。ラップの巧みさは勿論、ある意味では“一筆書き”とも言えるような、そのシンプルでストレート、そしてドキリとするようなワードセンスはこの当時から光っていた。
▼LIL KOHH – Young Forever Official Video
▼KOHH “JUNJI TAKADA” Official Video
また洒脱なスタイルと、それを活写するEillyhustlehardの手掛ける映像も、その注目度に大きな役割を果たす。いっぽうで、2014年7月リリースの「Monochrome」では、これまでの“ノリ”から、よりシリアスなリリシズムを提示し、アーティストとしての立体感を形にした。
彼を世界的に有名にしたのは、2015年1月1日リリースのKeith Ape「잊지마 (It G Ma) feat. JayAllDay, Loota, Okasian & Kohh」だろう。
▼Keith Ape – 잊지마 (It G Ma) (feat. JayAllDay, Loota, Okasian & Kohh) [Official Video]
また2016年にはFrank Ocean「Nikes」、宇多田ヒカル「忘却 featuring KOHH」に参加。2018年には88rising主催の北米ツアー『88 DEGREES & RISING TOUR』に登場。
▼宇多田ヒカル – 忘却 featuring KOHH
他にも『FACETASM』のショーモデルとしてパリコレにも参加した。2020年にラストアルバム『worst』を発売し、2021年末にKOHHとしての活動を終了。
そして本名の千葉雄喜としてカムバック後は、文學界『千葉雄喜の雑談』の連載や衣類制作販売店『Dogs』のプロデュース、ABEMA 『千葉雄喜の勇気貸します』など、多面的な活動を展開している。
■リミックス解説
「チーム友達(Dirty Kansai Remix) – 千葉雄喜, Young Coco & Jin Dogg 」
前項で紹介した『TOKYO M.A.A.D SPIN』で、「『チーム友達』は大阪でJin DoggとYoung Cocoと一緒に作った(大意)」と千葉雄喜が話していた通り、必然的に生まれたこのリミックス。ハードコアな“Dirty Kansai”シーンを牽引し、現在の大阪を代表する存在であるJin Doggと、WILYWNKA(変態紳士クラブ)ともグループを組んでいたYoung Cocoが参加し、“ムーブメントとしてのチーム友達”を先導した。
「チーム友達 (東海 Remix) – 千葉雄喜, SOCKS, ¥ellow Bucks, MaRI & DJ RYOW」
DJ RYOW「Don’t Stop Remix feat. DJ TY-KOH, KOHH, DIZZLE & SOCKS)」や、「Bash feat.KOHH」と、KOHH時代より千葉雄喜と縁が深いSOCKSが冒頭を飾る本リミックス。ヤングトウカイテイオーとして名を馳せる¥ellow Bucks、Awich「Bad Bitch 美学 Remix feat. NENE, LANA, MaRI, AI & YURIYAN RETRIEVER」にも参加したMaRIが参加。
■「チーム友達」のムーブメント、千葉雄喜の今後の活動に注目
突如の復活劇と同時に新たなムーブメントを生んだ千葉雄喜。そのアーティストとしての魅力とカリスマ性には驚く他ないが、「チーム友達」と千葉雄喜によってどのような変化が音楽シーンに生まれるのか、これからも注視したい。
TEXT BY 高木 “JET” 晋一郎
PHOTO BY 岩澤高雄
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