■生前最後の不朽の名盤オリジナル・スタジオフルアルバム『EACH TIME』
1984年の発売から40周年を迎えた大滝詠一の不朽の名盤『EACH TIME』。その記念盤『EACH TIME 40th Anniversary Edition』が2024年3月21日にリリースされ、3月20日付の「オリコンデイリー・アルバムランキング」で40年ぶりに1位を獲得するなど、大きな話題となっている。『EACH TIME』は、1981年に発売され大ヒットを記録したアルバム『A LONG VACATION』の“次”のアルバムということで大きな注目を集め、本来は大滝の誕生日でもある1983年7月28日に発売予定だったが、様々な事情から発売延期となり、1984年3月21日に発表された。大滝のソロ名義としては6枚目、オリジナル・スタジオフルアルバムとしては生前最後の作品になった。
大滝はこのアルバムの発表以降、それまで以上に表に出なくなる。しかし、アーティストに提供した楽曲が大ヒットを記録するなど、音楽シーンの中で大滝の存在感はますます増していく。そしてその作品は今もCM曲として度々起用されるなど、そういう意味では常に最前線で活動していた音楽家ともいえる。そして『EACH TIME』発売から 13年後の1997年シングル「幸せな結末」が、ドラマ『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)の主題歌として発売され、大滝名義のシングルでは、初の2週連続で2位を記録。大ヒットとなり、健在ぶりを示した。
■5種類の選曲&曲順による『EACH TIME』が存在する、大滝のこだわり
『EACH TIME』が発売延期になった理由のひとつが、前作『A LONG VACATION』以上にその内容への大滝のこだわりだった。そのこだわりは発売後も続き、これまでに5種類の選曲&曲順による『EACH TIME』が存在する。これが“曲順未完”のアルバムと呼ばれる所以で、様々なエピソードと共に語り継がれている人気の高い作品だ。
「『A LONG VACATION』は聴きやすくて、どんな方が聴いても楽しめる作品ですが、『EACH TIME』は年齢を重ねていって本当の姿が見えてくるような作品だと思います。いつも曲先で松本さんに歌詞を書いていただくのですが、このアルバムは長い曲が多いんです。それは大滝さんが松本さんの歌詞をたっぷりと、ふんだんにその音の世界に入れたかったからです。改めて聴いてみると一曲一曲が短編小説のようで、まさに短編小説集のような作品になっています。例え曲順が入れ替わってどういう流れになっても、アルバムとして成立するということです。それはプレイリストを楽しむ今の時代にも合っていると思います」と関係者が語るように、盟友・松本隆の言葉と大滝が作ったメロディ、サウンドが色褪せない世界を紡ぎ、国内外のファンから支持されている。近年、リアルタイムでは聴いていなかった若い層のリスナーからも注目を集める大滝詠一の作品の中でも、内容はもちろん、物語性のあるこの作品が、発売40年を経た今大きな盛り上がりを見せている。
まず『EACH TIME 40th Anniversary Edition』のリリースを記念して、3月17日にニッポン放送で一夜限りの特別番組『大滝詠一 EACH TIME 深夜の試聴会』が放送され、大きな反響があった。『大滝詠一 乗合馬車 (Omnibus) 50th Anniversary Edition』にコメントを寄せるなど、大滝ファンを公言している23歳の島倉りか(BEYOOOOONDS)と、大滝と親交が深かった音楽評論家・萩原健太がこの作品について熱いトークを展開。Z世代の島倉が豊富な知識で大滝と『EACH TIME』の魅力を語り合った。島倉はSNSに「名盤『EACH TIME』発売から40周年記念。いつ聴いても音が新鮮なまま、体に入ってきます。萩原健太さんから、1個1個の曲に纏わるエピソードを詳しく教えていただきました。調べれば調べるほど沢山のエピソードがありました。大変な方を好きになってしまった〜と思います。笑」とラジオの感想を綴っている。
■Z世代も虜にするポップスの巨人の音楽性の素晴らしさが広がっている
大滝の楽曲はこれまでも様々なアーティストにカバーされていたが、2020年人気TVアニメ『かくしごと』のEDテーマに「君は天然色」が起用され、2021年3月には全楽曲のサブスク配信を解禁。同年7月には同アニメの劇場版が公開され再び「君は天然色」がEDテーマに起用されるなど、若い世代からの評価も年々高まってきており、Z世代も虜にするポップスの巨人の音楽性の素晴らしさが広がっている。
今回はこれまでになかった珍しいコラボレーションも注目を集めた。『EACH TIME』に収録されている「銀色のジェット」は、ジェットスターの銀色の機体を彷彿とさせることからコラボが実現。LCCを利用する20~30代の若い世代へアプローチした。空またはジェットスターの機体の写真、大滝詠一のCD・レコードのジャケット写真または大滝詠一の楽曲を視聴中のスマートフォン画面のスクリーンショットをハッシュタグ「#銀色のジェットに乗って」「#ジェットスター」とともに、応募者自身のXまたはInstagram(フィード)で投稿するとオリジナルポスターをプレゼントする企画や、旅の思い出動画を「銀色のジェット」の音源をつけてTikTokまたはInstagram(リール)で投稿すると、ジェットスター往復航空券やオリジナルのコラボグッズ当たるという企画で、盛り上がりを見せた(現在企画は終了)。また、キャンペーン期間中にはジェットスターの国内線に搭乗したお客さまへオリジナルステッカーを機内でプレゼントする企画も行った(現在企画は終了)。
さらに特設サイトでは「#私だけのEACH TIME」というSNSキャンペーンも行なった(~3月31日)。『EACH TIME』のレコードジャケットは、鮮やかなペパーミント・グリーンが印象的なデザインで、その真ん中にはイラストレーター河田久雄氏の手によるロサンゼルスを東西に走る大通り「ハリウッド・ブールバード」の1984年当時のイラストが使用されている。このアルバムジャケットを自由にデザインできるフォトフレームに、自分の好きな写真を使って『EACH TIME』のオリジナルジャケットを作ることができるという仕様。その写真を「#私だけのEACH TIME」のハッシュタグと共にSNSに投稿。投稿作品の一部が3月21日の新聞広告(東京近郊一部地域の朝日新聞朝刊)にも掲載された。この“曲順未完”のアルバムを、“私だけの作品”として楽しめる遊び心溢れるキャンペーンになった。
全国の主要CDショップでは、配布前から大きな話題になった特製フリーペーパー「Each Times vol.8」も配布され、多くのファンがCDショップを訪れるなど、大滝詠一と『EACH TIME』という作品が40年の時間を経て、社会的にも大きな話題になっている。
■未発表音源「SHUFFLE OFF」および、全曲初出となるミックス違いの音源が収録され、まさに“Alternative EACH TIME”といえる今回の記念盤
今回リリースされる『EACH TIME 40th Anniversary Edition』は、アルバム制作当時にレコーディングされ、リリース前にラジオ番組で一度だけ放送されたが最終的に収録されなかった未発表音源「SHUFFLE OFF」および、全曲初出となるミックス違いの音源が収録され、まさに“Alternative EACH TIME”といえるアルバムになっている。さらにBOXセット『EACH TIME VOX』(¥25,000)にはCD3枚、Blu-ray Audio1枚、12インチレコード2枚組、豪華ブックレット、歴代『EACH TIMES』A4冊子(24P)、A2サイズポスター2種、ステッカー2種が収録されている。また、12インチと7インチのレコードがセットになったアナログレコードも同時発売された。こちらは84年のOriginal Mixの12インチフルアルバムに、85年にリリースされた7インチシングル『フィヨルドの少女/バチェラー・ガール』が同梱され、2枚ともカラーヴァイナル仕様での完全生産限定盤だ。
また40周年の目玉ともいうべき5.1chサラウンドミックスには、大滝のこだわり、遊びがまさに多彩な音になってつまっている。アルバムの“全貌”が見えるその臨場感は、鳥肌ものだ。音を絵的に捉えて描く大滝のメロディとサウンド、松本の歌詞の肌触り、温度感が相まって心に深く浸透し、永遠に心を潤してくれる。
TEXT BY 田中久勝
写真提供 Ⓒ THE NIAGARA ENTERPRISES INC.
リリース情報
2024.3.21 ON SALE
ALBUM『EACH TIME 40th Anniversary Edition』
『EACH TIME 40th Anniversary Edition』特設サイト
https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/EACHTIME40th/
大滝詠一 OFFICIAL SITE
https://www.sonymusic.co.jp/artist/EiichiOhtaki/