今、ドラマや映画など立て続けに話題作に出演し、俳優として最前線で活躍している松下洸平だが、演技同様にその歌の表現力で高く評価を受けている。今回はそんな松下の音楽活動を軸に、これまで発表した楽曲の魅力を取り上げつつ、最新アルバム『R&ME』についてたっぷりと紹介していく。
■俳優として注目を集める、松下洸平の音楽活動
松下洸平(まつした こうへい)
・生年月日:1987年3月6日
・身長:175cm
・血液型:A型
・出身地:東京都
・趣味:料理
・影響を受けた作品:映画『天使にラブ・ソングを2』
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多部未華子、今田美桜、神尾楓珠と“クアトロ主演”をつとめるフジテレビ系木曜劇場『いちばんすきな花』をはじめ、「おつかれ生です」のフレーズでお馴染みのアサヒ生ビールやユニクロのCMなど、今やその活躍を見ない日はない松下洸平。
彼が音楽活動をスタートさせたのは、実は俳優活動よりも前のこと。
2008年、洸平名義で自作曲に合わせて絵を描きながら歌うという“ペインティング・シンガーソングライター”として、同年11月にシングル「STAND UP!」でCDデビューを果たす。
2009年にはブロードウェイミュージカル『Glory Days(グローリー・デイズ)』の日本初演メンバーとして舞台に立ったのをきっかけに、演劇に魅力を感じた松下は俳優としての活動を本格化。
2019年、NHK朝の連続テレビ小説『スカーレット』でヒロインの夫・八郎役で人気を博すと、TBS系 金曜ドラマ『最愛』(2021年)、TBS系 日曜劇場『アトムの童(こ)』(2022年)、カンテレ・フジテレビ系 月10ドラマ『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~』や映画『燃えよ剣』、舞台『カメレオンズ・リップ』『夜来香(イエライシャン)ラプソディ』などに出演し、様々な役柄に挑戦。
演技と向き合っていく中でも、楽曲制作を行うなど、自分自身のうちなる想いを形にしたいという創作意欲だけは松下の中から消えることはなかった。そんな松下に再デビューの機会が訪れ、再び本格的な音楽活動が叶うこととなる。
2021年8月25日にシングル「つよがり」で再デビューを果たし、同年12月にはミニアルバム『あなた』をリリース。表題曲はデビュー曲同様に、松尾潔がプロデュースを担当したことでも話題を集めた。
2022年1月には全国ツアー『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022 ~CANVAS~』を開催し、同年8月に松下が作詞に加わり、UTAがサウンドを手がけた夏に相応しいポップチューンの2ndシングル「Way You Are」をリリース。
2022年11月には、ひとつの集大成として1stアルバム『POINT TO POINT』を発表。松下自らが考えた“POINT TO POINT”というアルバムタイトルには、“俳優”と“アーティスト”というふたつの点を結ぶということ、そしてこれらふたつが繋がっているという意味が込められている。
その後、『POINT TO POINT』を提げた全国ツアー『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022 〜POINT TO POINT〜』を開催。2023 年はシングル「ノンフィクション」をリリースし、昨年に引き続き 2 年連続となるフルアルバム『R&ME』を 12 月 13 日にリリースし、快進撃を続けている。
■アーティスト・松下洸平の魅力
◎“表現”への飽くなき探求心、創作意欲
松下洸平は画家だった母の影響で、幼い頃から芸術に触れる機会が多く、よく母の画材道具を借りては油絵を描いていたのだとか。
ちなみに自身のInstagramに投稿した、中学2年生の時に描いたSF映画『スター・ウォーズ』のヨーダの絵は、たしかにプロ顔負けのうまさである。
同じく母の影響で、小さい頃からスティーヴィー・ワンダーやボーイズIIメンなど、R&Bやソウルミュージックにも触れてきた松下は、高校3年生の時に映画『天使にラブ・ソングを2』を観て音楽の道を志したことは有名な話だ。
その後、初めて立った舞台で演技にのめり込んだように、彼はこと“表現”に対しての好奇心が旺盛で、積極的に飛び込んでいく。その行動力もさることながら、楽曲インタビューを通じて知った彼はとことん突き詰めていきたいという凝り性であること。それはより解像度高く自身の想いを伝えたい、楽曲を楽しんでほしい、(自身の曲が)聴き手それぞれの生活を豊かにするものであってほしいと、受け取り側のリスナーへの誠実さからくるものである。
経験すべてを糧に絵、歌、演技… “豊かな表現力”を磨いているのが松下洸平の魅力のひとつだろう。
◎クリエイターとのコラボ
松下洸平が自身で楽曲を制作することもあれば、クリエイターと一緒になって楽曲を生み出すことも多い。
例えば、デビュー曲「つよがり」とミニアルバムの表題曲「あなた」を作詞した松尾潔の歌詞について、“あなたが好き”をテーマに曲を作ろうとしたら、自分だとうまいことを言おうと思ってしまうが、松尾は普遍的でまっすぐなラブソングを書いてくれる。そこに刺激を感じたのだと語っている。
いっぽう、「ノンフィクション」は小倉しんこうの楽曲に合う歌詞を自ら作詞した。さらに編曲を担当したA.G.Oと相談しながら、サウンド作りをするなどして楽曲を完成させている。他にも面白いのが、「KISS」のリミックスをSam Ock(サム・オック)にお願いしたいとスタッフに打診して、「KISS (Sam Ock Remix)」を作るなど、時にはプレイヤーとして、時にはプロデューサー的な目線からコラボを次々と展開し、自由な表現活動を行っている。
◎聴き手の心を奮わす歌声
繊細な感情の動きに寄り添う、松下洸平の歌声は、その表現力の高さも魅力だ。
例えば、「MUSIC WONDER」のように明るい方面へリスナーの心を動かすこともあれば、「つよがり」のようにしっとりと感傷的な気持ちにさせることもある。これは声色を変えるというよりも、その曲中の登場人物になって歌う“演技力の高さ”とも言える。
その才能は自身のオリジナル曲だけでなく、カバー曲でも堪能することができる。
松下は2023年11月1日にリリースされた、武部聡志プロデュースによるスタジオジブリ音楽のトリビュートアルバム『ジブリをうたう』に参加し、映画『耳をすませば』の「カントリー・ロード」をカバーしている。
原曲は少女性を帯びた雰囲気なのに対し、松下は壮大で力強い歌声を披露。楽曲の新しい魅力を引き出している。
▼松下洸平がカバーした「カントリー・ロード」
■『THE FIRST TAKE』出演!役を投影した「恋だろ」
松下洸平の歌といえば、声の感情表現が非常に豊かである。
もちろんポップスも素晴らしいが、特にバラードを歌っている時の彼の歌声は、聴いている者を惹きつける求心力がある。その醍醐味が感じられたのが「恋だろ」ではないだろうか。
「恋だろ」は、松下洸平が出演したフジテレビ系 木曜劇場『やんごとなき一族』(2022年)の挿入歌であり、wacciが一途な片思いを歌った恋愛ソングだ。
『wacci Live House Tour 2022 ~Reboot!~』東京・EX THEATER ROPPONGIでは、同曲でwacciとともに松下洸平が「恋だろ」を歌唱し、大きな話題を集めた。
▼wacci × 松下洸平 『恋だろ』 Live at EX THEATER ROPPONGI 2022
松下のふつふつと想いがこみあげてくるような歌声に、さらに多くの人が魅了され、その後『THE FIRST TAKE』でも「恋だろ」のコラボが実現し、ピアノとギターによる特別な編成で披露している。
▼wacci × 松下洸平 – 恋だろ / THE FIRST TAKE
改めて、この曲のテーマは“恋をすることへの肯定”である。
“性別も年齢も 家柄も国籍も 外見も年収も 過去も何もかも全部/関係ないのが恋だろ”と歌っているように、恋というものをメタ的に捉えている。
面白いのは“恋なんだ”と誰かに教えるのではなく、“恋だろ”と訴えているところ。つまり、説得力よりも、共感性の高い歌が求められる。この曲で松下は、聴き手に訴えるように歌っている。それでいて泥臭い印象にならないのは、抜群の中音域とさり気ないビブラートが大きい。松下の歌声は、どの曲も一貫して品がある。紹介した2本の動画は、同じ曲でありながら違った表情を楽しめるので、ぜひご覧いただきたい。
■ルーツミュージックへの敬意をこめた2ndアルバム『R&ME』
ここからは松下洸平の最新作について触れていこう。
2023年12月13日リリースの2ndアルバムは、松下洸平のルーツでもあるR&Bへのリスペクトを込めて“R&ME”(読み:アール・アンド・ミー)と名付けられた一枚で、2023年7月リリースのシングル表題曲「ノンフィクション」を含む、全10曲を収録。
ひと言に“R&B”と言っても、彼の音楽性の幅は広い。王道でありストレートなR&Bを表現した「This is my love」。リズミカルなアコースティックギターを主軸に、心地いいグルーヴを味わえる「Wake」。80年代のシティポップを感じるような、アーバンな雰囲気を醸している「All Day Long」。空間的なサウンドからEDM調な顔ものぞかせる「漂流」など、松下の引き出しの多さを堪能できる。
なかでも、個人的におすすめしたいのが「たんぽぽ」だ。美しくも儚いピアノ旋律と、生命力と壮大さを感じるコーラス、そして松下の感情的な歌声で紡ぐ、素晴らしいバラードだ。ラストの“貴方が泣いてる横で 咲いてる花になりたい”の感情の乗せ方も見事で、それは歌唱力の高さというよりも人間としての心の豊かさからくるものなのかもしれない。
▼松下洸平「たんぽぽ」Lyric Video
今作は、初回限定盤A、初回限定盤B、通常盤の3形態でのリリース(※通常盤とミニジャケキーホルダーをセットにしたVICTOR ONLINE STORE 限定商品を含めると、4形態)。
初回限定盤Aには、同アルバムのレコーディング、アーティスト写真・ジャケット写真撮影、ミュージックビデオ撮影の裏側に迫ったメイキングムービーを収録した「“R&ME” Making Movie」と、2021年に「つよがり」で2度目のメジャーデビューを果たして以降、制作してきたMV+『R&ME』からの先行配信楽曲「君を想う」のMVの計8曲を収録したDVD「MUSIC VIDEO CLIPS 2021-2023」が付属。
▼松下洸平『R&ME』Making Movie ティザー映像
初回限定盤Bには、2ndシングル「Way You Are」、1stアルバム『POINT TO POINT』、LIVE Blu-ray/DVD『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022 ~POINT TO POINT~』、3rdシングル「ノンフィクション」の特典として実施してきたラジオムービー、オーディオコメンタリーなどの特典企画の第5弾として、「松下洸平のロケぼっち ~キャンプだヘイ~」を収録。
▼「松下洸平のロケぼっち ~キャンプだヘイ~」ティザー映像
松下が以前から挑戦したかったという、ソロキャンプの様子を楽しめる内容で、アーティストとしてはもちろんのこと、いち人間としての松下洸平の魅力が詰まっている。
■松下洸平の歌力を感じられる人気5曲
「君を想う」
2023年12月13日リリースの2ndアルバム『R&ME』収録曲。大切な人に好きな気持ちを打ち明けられないまま、友情と恋愛の狭間で苦しむ、繊細な心の機微が描かれたバラード。歌い出しの主人公が諦めにも似た感情を吐露する場面は、シンプルなピアノの旋律だからこそ、余計に儚く聴こえる。そこからサビへ向かって感情が溢れていくのに従って、ストリングスやドラムが重なり、歌詞だけでなくサウンドでも想いが爆発する様を表現している。見事に歌詞・歌声・サウンドの構成が三位一体となっている。
「ノンフィクション」
2023年7月19日にリリースされた3rdシングル。先述した「君を想う」で作詞作曲をした小倉しんこうと初めてタッグを組んだ楽曲で、作詞は松下が担当。管楽器が印象的な明るく突き抜けたサウンドに、歌詞は人生讃歌とも呼べる生きることを肯定した内容となっている。とはいえ、「人生は素晴らしい」というスケールの大きなメッセージではなくて、“くだらない会話に救われたり/赤く染まってく空見上げる度に/飾りはないけどでも 悪くはないって頷いて”というフレーズがあるように、些細な日常に転がる“幸せの欠片”に気づかせてくれるような優しい楽曲となっている。
「Way You Are」
2022年8月17日にリリースされた2ndシングル。踊れるようなグルーヴ感があって、声高らかに歌う開放的なボーカルが印象的だ。歌詞は、本当の自分を出せないで苦しんでいる人の心を解くような、優しさが詰まっているのが松下らしい。彼の歌は決して上から「こうやって生きたほうがいい」と提示するのではなく、隣で肩を叩きながらリスナーと同じ目線で言葉を投げかけているように感じられる。だからこそスッと歌詞が入ってくるし、聴き終わった後には自然と前向きな気持ちになれる。
「MUSIC WONDER」
2022年11月23日リリースした1stアルバム『POINT TO POINT』収録曲。松下のルーツでもある、ゴスペルを軸にした多幸感溢れるナンバーだ。随所に入っているクラップにより、この曲の持つ明るい雰囲気が増幅している。MVでは、この曲のテンションを全身全霊で表すようなダンスパートがあり、松下や登場する街の人たち同様に、観ているだけで思わず笑みがこぼれてしまう。特に、ラストで松下を囲んでみんなが手を叩く様は、この曲が持つ風景を見事に映像化しているようにも感じる。
「つよがり」
2021年8月25日にリリースされた、記念すべき二度目のメジャーデビューシングル。作詞を松尾潔、作曲を豊島吉宏が手がけた。最後に別れのキスを交わして、恋の終止符を打つ恋人たちを描いている。“本気になれば傷つくだけ わかっていたはずなのに”というフレーズから、禁断の恋を歌っているようにも聴き手の想像力を掻き立てる。そんな大人の切ないバラードが松下の声と抜群に合っていて、芳醇なラブソングに仕上がっている。
■2024年1月からはライブツアーも!
渾身の2ndアルバム『R&ME』をリリース後、自身最大規模となる東京ガーデンシアターでの2デイズを含む、全国ツアー『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 ~R&ME~』を2024年1月よりスタートすることが決定。
松下洸平の歌は情景的であり、エモーショナルであり、優しさが詰まっている。それをいちばん味わえるのがライブだ。ぜひ一度、彼の歌声をその目と耳で体験してほしい。
TEXT BY 真貝聡
▼松下洸平の最新記事はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/543/
■ツアー情報
『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 ~R&ME~』
[2024年]
1/20(土)神奈川・相模女子大学グリーンホール
1/25(木)宮城・仙台サンプラザホール
1/27(土)新潟・新潟県民会館
2/03(土)愛媛・愛媛県県民文化会館
2/04(日)岡山・岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場
2/11(日)愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
2/12(月・祝)静岡・静岡市民文化会館大ホール
2/17(土)福岡・福岡市民会館
2/24(土)大阪・オリックス劇場
2/25(日)大阪・オリックス劇場
3/02(土)北海道・帯広市民文化ホール (大ホール)
3/03(日)北海道・カナモトホール (札幌市民ホール)
3/13(水)東京・東京ガーデンシアター
3/14(木)東京・東京ガーデンシアター