Reolが『THE FIRST TAKE』に初登場。歌ったのは2020年にリリースされたボートレースCMソング「第六感」だ。日本人女性ソロアーティストとして初めてYouTubeのチャンネル登録者数が100万人を突破したアーティストであり、国内外から注目されるReolに迫る。
■国内外から注目される気鋭のアーティスト
2012年、ネットシーンで“れをる”名義で圧倒的な歌唱力を持つ歌い手として存在を知られるようになったReol。2014年には初めて作詞作曲をしたオリジナル曲「No title」をドロップ。瞬く間に拡散され、現在YouTubeの再生回数は7000万回超え。
▼[MV] REOL – No title
2016年にはサウンドプロデューサーGigaと映像クリエイターお菊と共に3人組ユニット“REOL”を結成し、クリエイティブの幅を広げる。REOLの代表曲「ギミアブレスタッナウ/ Give me a break Stop now」はYouTubeの再生回数は現在2000万回を超えている。
▼[MV] REOL – ギミアブレスタッナウ/ Give me a break Stop now
2018年にミニアルバム『虚構集』でソロデビューを果たし、2019年にはYouTubeのチャンネル登録者数が日本人女性ソロアーティスト史上初の100万人を突破し、『YouTube FanFest Japan 2019』にてゴールド・クリエイター・アワードを受賞した。翌2020年には「HYPE MODE」がApp StoreのCMに起用され、一気にお茶の間に認知を広げた。
▼[MV] Reol – ‘HYPE MODE’ Music Video
YouTubeグローバルキャンペーン 『Artist on the Rise』に日本人女性アーティストとして初選出され、自身のルーツであるネットでもさらなる拡張を果たしたことも記憶に新しい。そしてこの頃、ボートレースCMソング「第六感」がストリーミング再生1億回超えを記録。
▼Reol – ‘第六感 / THE SIXTH SENSE’ Music Video
YouTube配信ライブのスーパーチャットの総額が音楽系チャンネルの世界記録を達成したこともあるReolのYouTubeチャンネルの登録者数は今では160万人を突破し、海外ユーザーからのコメントも多数目に入る。ストリーミングの全体リスナーの約4割が海外であり、国内外から人気を集めている気鋭のアーティストだ。
■唯一無二のクリエティビティを魅せるReol
◎中毒性のある歌声と歌唱⼒
歌の力がなければ支持を得ることができない歌い手のシーンでReolが強く支持されたのは、言うまでもなく歌唱力の高さゆえだ。当時から、その歌声の音域の広さと、透明感のあるハイトーンボイスと凄みのある低音ボイスを巧みに使い分けるスキルは群を抜いていた。近年では、切れ味の鋭いラップも多用し、より多彩で豊かなボーカリゼーションを聞かせる。燃え盛る闘争心と静謐な穏やかさが共存したような、唯一無二の歌声はとても中毒性があり、ちょっとやそっとじゃ崩れないであろう頼もしさをも宿す。
その類まれなる歌唱力が特に発揮されるのがライブだ。音源で聞ける編集された歌声とライブでの歌声に大差がないことに驚いたオーディエンスは多数いるだろう。
▼Reol – 第六感 / THE SIXTH SENSE [Live at ハーメルンの大号令 -接続編-]
◎作曲家・作詞家・⾳楽プロデューサーとしての才能
ボーカル・作詞・作曲のトータルプロデュースもしていることから“マルチクリエイター”と称されるReol。ソロデビュー当初は自らの音楽を“デジタル歌謡曲”と称しており、そのサウンドデザインは最先端のDTM(デスクトップミュージック)でありながら、影響を公言している椎名林檎の楽曲を思わせる歌謡曲テイストが色濃かった。
その後、どんどん進化していった楽曲からは、K-POP、ヒップホップ、テクノ、民族音楽等の要素も感じられ、曲をリリースするごとにその振れ幅と高いクオリティで多くのリスナーに刺激を与え続けている。
2021年に発表した2ndミニアルバム『第六感』はEDMやエレクトロ色が増し、全編を通じてフューチャリスティックなムードがあり、新たなReolサウンドの地平を開拓した。
◎ファッションやビジュアルもセルフプロデュース
身長は145cmと小柄ながら、強固な存在感を感じさせる佇まいのReolは、楽曲のみならず、ファッションやビジュアルもセルフプロデュースしている。アートワークやミュージックビデオをディレクションし、毎作パワフルでハイパーなビジュアルを提案。
ここ数年、EPやアルバムのリリースタイミングで全収録曲の一部等を凝縮したXFDMovie(クロスフェードムービー)を公開することが恒例となっている。2ndミニアルバム『第六感』リリースの際には映像作家・中絲悠がアートワークと共通する“氷”をコンセプトにXFDMovieを制作。作品のイメージを鮮やかに広げた。
▼Reol 2nd mini album “第六感 / THE SIXTH SENSE” XFDMovie
Reolのトータルプロデューサーとしての視座の高さは、楽曲を含めて作品全体の説得力を増大させている。
■フィメールラッパーとしてのReol
初のオリジナル曲「No title」の時点から、言葉数や情報量が多い歌詞と呟くようなボーカリゼーションによりラッパーの兆しが感じ取れたReolだが、近年はラッパーとしての存在感がどんどん高まっている。それを象徴するのが、2022年10月にリリースされた「SCORPION」だろう。
▼Reol – ‘SCORPION’ Music Video [in Collaboration with Riot Games ONE // VALORANT]
挑発的に自らの名前を名乗った後、艶めかしいラップを披露するイントロに続いて、リズミカルにビートに乗りながら少女性を感じさせるラップへと繋ぐ。Bメロでは凄みを宿し、巻き舌も混ぜ、キッチュな魅力を振りまきながら、スピーディーにラップを展開。そして、サビに突入するという、一曲の中で何色ものラップのアプローチを見せる凄腕ぶりを開陳。ライムも巧みで、コケティッシュな声色によるセリフ調の“照準をセット クリティカルヒット!”という名パンチラインも飛び出す。
Reolの公式YouTubeチャンネルでは2023年1月に行われた『Live at Neo Nostalgia Tokyo』における「SCORPION」のライブ映像が公開されている。
▼Reol – SCORPION[Live at 新式浪漫 Neo Nostalgia Tokyo]
メタリックな光を放つボンテージ風の衣装に身を包んだReolがヘヴィーな音像の中で登場し、リリックが矢継ぎ早に映し出される巨大なビジョンをバックに、マシンガンのようなラップを、時にシャウトや笑い声も交えて叩きこんでいく様は痛快そのものだ。曲中にトイガンを取り出し、空を撃ち抜く場面もある。ラッパーにはいかにその場を掌握できるのかというカリスマ性も必要とされるわけだが、Reolはその資質も十二分に満たしていることが伝わる映像だ。
2023年8月18日に世界同時発売されるVtuber・Mori Calliopeのメジャー2ndEP『JIGOKU 6』収録曲「虚像のCarousel(Mori Calliope × Reol)」ではMori Calliopeとバチバチのラップバトルを展開。ヘヴィーでゴシックでオペラチック、未来的かつカオティックなトラックの中で、アメリカでも評価されているMori Calliopeの英語のラップに勝るとも劣らないシャープなラップを披露している。ちなみに、MVでReolはASSASSIN(暗殺者)に扮し、REAPER(死神)であるMori Calliopeと対峙。ビジュアルでもスリリングなバトルを繰り広げている。
▼【MV】虚像のCarousel / Mori Calliope × Reol
昨今の日本のヒップホップ/ラップシーンを盛り上げた立役者のひとつでもある音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク』に「Femma Fatale」を提供し、そのダークで迫力のあるヒップホップチューンで賞賛の声を集めたこともある。
▼ヒプノシスマイク 「Femme Fatale」Music Video
フィメールラッパーとしての才能を見せつけるReolから目が離せない。
■『THE FIRST TAKE』で披露した「第六感」
Reolにとって初めての『THE FIRST TAKE』でのパフォーマンスは再生1億回超えの代表曲「第六感」。サビで放たれる“六感、六感”というラインはキャッチーさ抜群。何かを求めるようなReolの歌声が、まさに第六感の扉を開くようなパワフルな楽曲である。
▼Reol – 第六巻 / THE FIRST TAKE
少し緊張した面持ちで『THE FIRST TAKE』の画面に現れたReolは「第六感」のことを「私のことをいろんな場所に連れてってくれた曲」と紹介した後、息遣いが聞こえるような臨場感を溢れさせながら、「第六感」を披露した。
ドラム、ギター、ベースといった気心知れたバンドメンバーの手元が時折映り、熱量を高めていく。トライバルなビートが貫くタイトなバンドアンサンブルに時折和の旋律が入り、EDM×和楽器サウンドというReolサウンドの独自色が際立ったようなアレンジだ。臆することなくパワフルなフェイクを入れるReolの歌はやはり圧倒的。
「第六感」はReolにとって最大のヒット曲でもあるが、歌唱前にReolが「どんなに年を重ねても人生を重ねても今が一番若くて、挑戦し続けることを忘れない気持ちを込めていきたい」と言った通り、Reolの原点でもある“挑戦性”が強く込められている。Reolにとって「第六感」は、歌う度に自らの軸を確認できる曲でもあるのだろう。そんな重要な曲が、『THE FIRST TAKE』という巨大な動画コンテンツに強烈に刻み込まれた瞬間だった。
■聴くべき⼈気曲5選
「No title」
2014年にリリースしたReol初のオリジナル曲。サウンドクリエイターのギガ、映像クリエイターのお菊との3人組サークル・あにょすぺにょすゃゃ名義でリリースされた。硬質な打ち込みによるトラックに、あどけなさを感じさせるReolの呟くようなボーカルが乗る。深い傷と痛みを感じながらも、“次は僕が君に歌を歌うから”という歌詞もあり、これからのReolの未来を予感させるはじまりの曲だ。高音の透明な美しさが白眉。
「宵々古今」
REOLの1st アルバム『Σ』収録曲。テーマは“変化と過渡”。ギガによる硬質なデジタルサウンドに、“それそれそれそれ!”という勇ましい掛け声や和太鼓が入り、古語が使われた歌詞も相まって、日本の伝統的なお祭りの世界観にどっぷり浸れる。Reolの歌声は勇猛で、日本の民謡チックな匂いを醸し出す。流行りすたりに左右されがちな世の中において、変化を恐れて足を止めず、前進することの大切さが唱えられた革新の一曲。
「SCORPION」
『VALORANT』を始めとするオンラインゲームを開発・運営するライアットゲームズによる公式イベント『Riot Games ONE』のオフィシャルテーマソング。たまに巻き舌になる不敵で挑発的なReolの歌声は、何度も“コンプレックス”というワードを繰り出し、コンプレックスを武器に上昇しようという思いが渦巻く。Masayoshi Iimoriによるトラックには多彩なゲーム音も注入。『Riot Games ONE』の世界観を高めることも忘れない。
「綺羅綺羅」
水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミがアルバム『金字塔』に収録された「ハーメルン」以来、Reolのトラックメイクを担当。2023年初リリース楽曲。テクノライクなトラックは間奏で煌びやかなEDM×ディスコに展開。奔放なトラックと呼応するようにReolは万華鏡のような歌/ラップの引き出しを見せる。歌詞ではReolの美学が綴られており、冒頭と締めには“美と才覚は夜に咲く”という痺れるラインが置かれている。
「煽げや尊し」
Reolが自身の幼少時代の夏の記憶にインスパイアを受けて制作され、2022年7月にリリースされた。サウンド・プロデューサーとしてSUNNY BOYとMONJOE(DATS)が参加。“それそれ”や“ええじゃないか”という日本の祭りを思わせる掛け声や拳を効かせた演歌風の歌唱といった和の要素と、ラッパー風の合いの手と、モダンなダンスミュージックが見事に融合し、まるで異種格闘技戦を見ているような感覚に陥る。
■注目の新曲「切っ先」
最新曲はTVアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』のエンディング・テーマである「切っ先」。時計の針を想起される音から始まり、Reolの美しく透明感のあるハイトーンボイスが轟く。電子音がメインだが、和楽器のような音をまぶしているのがReolならではであり、『るろ剣』へのリスペクトも感じさせる。歌詞でも“剣”や“秋”といった『るろ剣』を思わせるワードがちりばめられ、深い影を背負いながら、静かなる闘争心が燃え盛るようなエモーションがある。
■存在感を見せつけるReol
初めてのオリジナル曲「No title」を世に放ってからもうすぐ10周年。『THE FIRST TAKE』で圧倒的な歌唱力と存在感を見せつけ、フィメールラッパーとしても注目されるReolの唯一無二のクリエイティブを体験してほしい。
TEXT BY 小松香里
▼Reolの最新情報はこちら
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