■約半年ぶりとなる新曲「蛍」
秋山黄色から、「SKETCH」(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期EDテーマ)から約半年ぶりとなる新曲「蛍」が届けられた。
昨年11月以降、年内に予定していたイベントへの出演を辞退した秋山黄色。「逃げずに、必ず戻ってきます」というコメントが示す通り、自分と向き合う時間を過ごしてきた彼は、レギュラーラジオ番組『秋山黄色のROOM311』(RADIO BERRY FM栃木)の2月2日の放送の中で、帰る場所を残しておいてくれたことへの感謝、ファンを悲しませ、心配をさせてしまったことに対する後悔、そして、信頼を取り戻すべく行動していく決意を語った。
今年3月末にはZEPP弾き語りツアー『MY COLOR』を開催。アコギ、エレキギター、キーボード、ラップトップなどを駆使して行ったライブは、まさに秋山黄色の原点。おそらく彼の中には“また最初から始める”という強い思いがあったはずだ。
さらに『VIVA LA ROCK 2023』『TOKYO ISLAND 2023』などのイベントにも出演し、オーディエンスと対峙。深い内省の時期、活動再開を経てリリースされる新曲「蛍」には、彼自身の生々しい感情と、未来にかける思いがリアルに反映されている。
一瞬のブレス、“このまま凍っていようかと 閉じた一重瞼には”というラインから始まる「蛍」。楽曲の基調を担っているのは、ギターとボーカル。ギターの弾き語りでも十分に成立する楽曲なのだが、緻密に構築されたビート、しなやかなベースライン、重層的なシンセが重なり合い、独創的な音像へと導いている。ギターロックとしての佇まい、ダイナミックに展開していくメロディライン、爆発的な音量で挿入されるギターソロを含め、秋山黄色本来の個性と進化した音楽性が共存する、ハイブリッドなポップミュージックだ。
■特筆すべきはやはり歌詞。強い自己嫌悪と自分に対する不信感。長く、深い自省の時間。そのなかで気づいた周囲の人たちの存在
特筆すべきはやはり歌詞だろう。強い自己嫌悪と自分に対する不信感。長く、深い自省の時間。そのなかで気づいた周囲の人たちの存在と“ごめんね”という率直な言葉。そして、この先のビジョン。特に“なんだか前を向けそうだよ/自分の力じゃなさそうだよ/明々としたあなたたち”というフレーズには、これまでの活動を支えてきた人たち、何よりも彼の音楽を愛してきたリスナーに向けられた感謝がはっきりと表れていると思う。
秋山黄色はこれまでのインタビューなどで、「曲を作っているときが一番楽しい」と、自分の中にある曲のイメージを形にすることの楽しさを語ってきた。それは創作の根源的な喜びだと思うが、今の彼には多くのリスナーがいて、ライブや新作を心待ちにしている。今回の出来事、そして「蛍」を作り上げたことで彼は、自分の音楽を受け取ってくれる存在の意味を改めて実感したはず。コメントではなく、音楽を通して自分の意志を提示する姿勢も素晴らしい。
■秋山黄色の存在をまったく知らない状態でこの楽曲を耳にしたとしても、聴き手の心を瞬時に惹きつける力
明らかに彼自身の体験がもとになっている「蛍」だが、この半年間のことを全く知らなくても──もっと言えば、秋山黄色の存在をまったく知らない状態でこの楽曲を耳にしたとしても、聴き手の心を瞬時に惹きつける力がしっかりと宿っている。常に周囲の目や評価を気にして、できるだけ失敗や損を避けたいというプレッシャーが強い現在。もし思う通りにいかないことがあったとしても(もちろん、思い通りに事が運ぶことのほうが少ないのが人生だ)、それは決して終わりではなく、何度でもやり直せばいい。「蛍」を通し、そんなポジティブな光を見出すリスナーも多いのではないだろうか。
この夏、ライジングサンロックフェス(8月11日)、ロックインジャパン(8月12日)、BEAT PHOENIX(9月24日)に出演。さらに和ぬかとの対バン(8月20日 大阪BIG CAT)、TOOBOEとの対バン(9 月1日 渋谷WWWX)も行われる。新たな名曲「蛍」から始まる秋山黄色の未来を、多くの音楽ファンと一緒に共有したいと心から願う。
TEXT BY 森朋之
楽曲リンク
リリース情報
2023.7.26 ON SALE
SINGLE「蛍」
秋山黄色 OFFICIAL SITE
https://www.akiyamakiro.com/