KANA-BOONが国境を越えて支持を得る理由。ロックバンドとしての独創性、アニメとの親和性を紐解く

■「ソングオブザデッド」には、“KANA-BOONが手がけるアニメソングの魅力”がしっかりと息づいている

KANA-BOONの新曲「ソングオブザデッド」が7月9日に配信リリースされた。

TVアニメ『ゾン100～ゾンビになるまでにしたい100のこと～』OPテーマに起用されたこの曲は“人生謳歌”をテーマにしたアッパーチューンだ。

主人公はブラック企業で働く24歳の天道輝。身も心も削られる日々のなか、突然、街にゾンビが大量発生！ゾンビに襲われそうになりながらも“会社行かなくてもいいんじゃね？”と気付いた天童は、“ゾンビになるまでにしたい100のこと”をはじめる──というのが“ゾン100”のストーリーだ。

「ソングオブザデッド」の制作にあたって谷口鮪（Vo,Gu）は、「ゾン100で描かれているテーマは、今の自分に通ずるところがありました。それは、いかに人生を遊ぶか、ということ。やらなきゃいけないこともあるけれど、一番大事なのはやりたいこと。それを遊ぶような気持ちでやること。」とコメントしている。アニメのストーリー、メッセージと自分自身（そして、その時期のバンドの現状）を重ねながら、強い説得力と広いポップネス、ロックバンドとしての存在感を兼ね備えた楽曲へと昇華する。「ソングオブザデッド」には、“KANA-BOONが手がけるアニメソングの魅力”がしっかりと息づいている。

■KANA-BOONの新たなライブアンセムになるはず

楽曲の始まりを告げるのは、ヘビィかつシャープなギターサウンドと“ディストピアtoソング・オブ・ザ・デッド”というコーラス。タイトな4つ打ちビート、ラップ的なスタイルを取り入れたボーカルを軸にしたAメロを経て、“ソング・オブ・ザ・デッド！”というシャウトをきっかけに開放的なサビへと突入する。さらに鋭利にしてメロディアスなギターソロ、“そのままの人生でいいのか？”という思いを込めた落ちサビを挟み、最後のサビで圧倒的なカタルシスを聴く者に与えてくる。軸になるのは“原点に立って　新しいことを／やりたいことをやろう”というライン。この言葉は、KANA-BOONの“らしさ”と遊び心と斬新さがせめぎ合って合致していると思う。オーディエンスがフロアで楽しそうに踊りまくり、歌いまくる姿がハッキリと浮かんでくるのも、この楽曲の素晴らしさ。「ソングオブザデッド」はまちがいなく、今年の夏のフェスシーズンからKANA-BOONの新たなライブアンセムになるはずだ。

今年メジャーデビュー10周年を迎えたKANA-BOON。高速の4つ打ちビートとキャッチ―なメロディを武器に一気に駆け上がった彼らは、キャリアを重ねるごとにロックバンドとしての強靭なパワーを向上させ、今や日本のバンドシーンを代表する存在になった。このバンドが幅広い層のリスナーから支持されている要因の一つがアニメ作品とのコラボレーションだ。

「シルエット」（TVアニメ「NARUTO -ナルト- 疾風伝」OP/2014年）を皮切りに、「Fighter」（TVアニメ「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」OP/2017年）、「まっさら」（TVアニメ「さらざんまい」OP/2019年）、「スターマーカー」（TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」OP/2020年）など数々のアニメ楽曲を発表。特にNARUTOシリーズとのつながりは強く、映画・ゲーム主題歌を含めてこれまでに5度のコラボレーションが実現している。（9月2日、3日に幕張メッセで行われるイベント『NARUTO THE LIVE』にも両日出演が決定）

■男女ツインボーカルのラブソングは、KANA-BOONにとっても新機軸だった

今年4月にリリースされた「ぐらでーしょんfeat.北澤ゆうほ」（TVアニメ『山田くんとLv999の恋をする』OP）は初のラブコメアニメのタイアップ曲。北澤ゆうほ（the peggies）をフィーチャーした男女ツインボーカルのラブソングは、KANA-BOONにとっても新機軸だったと言っていい。

■グローバルヒットを記録し続け、海外でのライブも増えている

KANA-BOONのアニメソングは国内だけではなく、海外にも波及。特に「シルエット」は2020年の「Spotify 海外で最も再生された国内アーティスト楽曲」の 3位にランクインするなどグローバルヒットを記録し続けている。また「スターマーカー」もアジア、南米を中心にSpotifyバイラルチャートを席巻。海外でのライブも増えており、今年1月にはサウジアラビア・リヤドで『Japan Anime Town in Riyadh Season 2022』に出演。「シルエット」では大合唱が巻き起こった。さらに7月29日にインドネシア・ジャカルタで開催される『Impactnation Japan Festival 2023』、8月12日にはカナダ・モントリオールで行われる『Otakuthon 2023』に出演することも決定している。

ロックバンドとしての独創性と存在意義、そして、アニメ作品の世界観をリンクさせ、国境を越えて評価と支持を得ているKANA-BOONのアニメソング。その魅力はここから世界中の音楽ユーザーに浸透することになるだろう。

TEXT BY 森朋之