SUPER BEAVERのニュー・シングル「儚くない」は、生命の賛歌を高らかに鳴らす珠玉のバラードに仕上がっている。掛値なしに新たな名曲が誕生した。同曲は6月30日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌となっており、大きな話題を呼ぶことは必至だろう。改めて紹介すると、映画自体は「週刊少年マガジン」で連載され、累計発行部数7000万部以上を誇る人気コミックスの実写映画化となっている。
■どんな困難に直面しようとも、常にファンとコミュニケーションを取り続けた経験も大きく影響しているように思える
では、本題に入る前に、前回のシングル「グラデーション」についておさらいしておく。この曲は4月30日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』の主題歌となり、これを機にビーバーの音楽に初めて触れた人も少なからずいるだろう。アレンジ面では徐々に楽器が折り重なるグラデーション感を踏まえ、歌詞においても人々の様々な心模様(=グラデーション)の中から“曖昧の中から 愛を見つけ出せたなら”の歌詞にもある通り、曖昧模糊とした感情に目を向けながらも、その中からプラスのものを導き出したいという前向きな姿勢が投影されている。それはコロナ禍でも歩みを止めず、メンバー4人それぞれの自宅から生配信番組を試みたり、無観客配信ライヴをやるなど、どんな困難に直面しようとも、常にファンとコミュニケーションを取り続けた経験も大きく影響しているように思える。そうした経験を通して、自分たちを支えてくれるファンやリスナーに対しても、よりいっそう想像力を張り巡らし、多くの人たちの心に寄り添う懐の深さが培われたように感じる。ちなみに今作のカップリングには「グラデーション -Acoustic ver.-」が収録され、ヒリヒリした緊張感が漂う原曲とはまた違う柔和なアレンジで迫り、こちらも聴き応え十分。
■近作では一段も二段も練り上げた上で“伝わる音楽”を追求している印象を受ける
そうした流れの中でドロップされる新曲「儚くない」は、「グラデーション」同様にピアノとストリングスを用いた曲調。その意味では延長線上に位置するサウンドだが、歌詞やメロディをより引き立てる自然体のアレンジを施している。伝えたいことをより明確に伝えるために何をするべきなのか。そこに向かって、バンドが一枚岩となった説得力を感じさせるのだ。これまでもビーバーは、シンプルかつストレートな音楽性を重要視してきたバンドであった。しかし、近作では一段も二段も練り上げた上で“伝わる音楽”を追求している印象を受ける。「儚くない」は、まさにその真骨頂を刻みつけたサウンドと言っていい。
最小にして最大の効果を発揮したアレンジにより、楽曲に込めたメッセージ性がまっすぐ聴き手に届くアプローチを取っている。ただし、曲名については一瞬立ち止まり、冷静に咀嚼したくなるネーミングだ。「儚い」とは一般的には“もろく、長続きしない”という意になる。例えば「人の命は儚い」、「儚い命」など。それに抗うように、あえて一般的ではない言い回しを曲名に付けている点がニクイ。“儚いから美しいなんて/命には当てはまらなくていい”と歌詞でも潔く言い切っている。命とは無条件に美しいものなのだ。そう語りかけてくれる強さをひしひしと感じる。
とはいえ、綺麗事だけを並べているわけではない。光の隣にある陰の部分にも歌詞で言及している。後悔する日もあれば、いつか会えなくなる日が訪れる、それが人生というもの。だからこそ、この瞬間を大事にして、これからどう生きていくべきなのか、という未来を見据えたメッセージまで提示しているのだ。自己と他者へ向けた祈りにも似た生命賛歌に、温かくも力強く背中を押されてしまう楽曲である。
■堰を切るように感情が溢れ出た渋谷の歌唱力に鳥肌を立つほど感動を覚えた
そして、ビーバーは一発撮りパフォーマンスを収録した人気YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にも出演。前シングル「グラデーション」はすでに公開(6月23日)され、ライヴさながらの熱のこもった歌声と演奏も記憶に新しい。
それに続き、「儚くない」も同チャンネルで7月5日に公開された。ピアノとストリングス・チームに加えて、柳沢亮太(Gu)がアコースティック・ギターで参加し、渋谷龍太(Vo)が歌唱する。バンド編成で挑んだ原曲からギターのソロパートにアレンジを加え、楽曲の骨格をさらに浮き彫りにしたアコースティック・バージョンで披露。ここでも繊細かつ大胆なタッチで曲を紡ぎ、特に後半では堰を切るように感情が溢れ出た渋谷の歌唱力に鳥肌を立つほど感動を覚えた。
今年もツアー三昧のビーバーだが、7月22、23日には自身最大キャパとなる初の野外ワンマン2デイズを富士急ハイランド・コニファーフォレストで行う。年々、知名度を高め、勢いに乗る彼らの一つの到達点であり、大きな通過点とも言えるパフォーマンスになるだろう。また、「儚くない」がライヴでどんな輝きを放ち、観客はどんな風に曲を受け入れるのか、それも非常に楽しみだ。
TEXT BY 荒金良介
楽曲リンク
リリース情報
2023.6.28 ON SALE
SINGLE「儚くない」
ライブ情報
SUPER BEAVER 都会のラクダ SP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~
7月22日(土) 富士急ハイランド・コニファーフォレスト
7月23日(日) 富士急ハイランド・コニファーフォレスト
SUPER BEAVER OFFICIAL SITE
https://super-beaver.com