*高地優吾の「高」ははしごだかが正式表記
■YouTube限定パフォーマンス企画「PLAYLIST」シリーズで初めての生配信
バリトンサックスにテナーサックス、トランペット、トロンボーンとホーンセクションの鮮やかな音色が響くフロア。後ろの大きな扉が開くと、“6つの音色”、SixTONESによる生配信が始まった──。
6月9日22時、SixTONESがYouTubeチャンネルで生配信を行い、6月14日リリースの10thシングル「こっから」をバンド演奏とともに生パフォーマンスした。今回は、SixTONESのYouTube限定パフォーマンス企画「PLAYLIST」シリーズとして行われ、同企画で生配信を行ったのは今回が初。
金曜の夜にも関わらず約18万人が同時視聴し、コメント欄には動体視力が鍛えられるほどの速さでコメントが寄せられたほか、Twitterでも「LIVE感たっぷりでこれぞSixTONES」、「生配信でこの動きは驚いた」とバンド演奏とともに繰り広げた生配信に反響が寄せられた。熱くて濃いパフォーマンスを届けた約15分。金曜の夜にSixTONESの音楽が響いた。
「PLAYLIST」とは、「この企画のためだけに組まれたスタジオセットにて撮影された、完全撮り下ろしの楽曲パフォーマンス」と説明があるように、YouTubeだけで観られるパフォーマンス企画で、今回が“Day.8”。記念すべき“Day.1”は2021年8月の5thシングル「マスカラ」から始まる。2022年3月配信のDay.4では、6thシングル「共鳴」を、ソニーPCLの「清澄白河BASE」にて、最新映像技術「バーチャルプロダクション」とのコラボレーションが実現するなど、MVや音楽番組とも違う、SixTONESの音楽をじっくりと堪能できるプレミアムなコンテンツ。公式サイトでは開催の度にフェス入場パス風リストバンドが配布(ダウンロード)され、フェス気分を味わえるのも特徴だ。
■1カメで届ける「こっから」の凄さ
当日は21時15分ごろにInstagramのストーリーズにて、メンバー全員が揃って告知。22時、その扉が開いた。田中樹がリスナーを出迎えるように歌い、遠くには椅子に座る松村北斗の姿が。カメラの左側からカットインする京本大我。どんどん近づきアップになったところで、右側からジェシー。今度は少しずつカメラと距離を置くと、後方のドアのくぼみからひょっこり森本慎太郎が登場。そしてカメラ前には高地優吾と続く。メンバーが重なり合うようにして歌声を重ね、混沌とした状況から道を切り拓くように、この楽曲のキーパーソンとも言える森本慎太郎へとつなぐ。“これだけじゃやれねぇってわかってる/でもこれしかねぇからこれにかかってる/間違ってる未来でも俺には光ってる”と心の叫びをぶつけるよう歌い、ジェシーが“Let it fire!”と戦いの火蓋を切るかのようにサビへ。
一見するとそれぞれ自由なスタイルで歌っているように見えるが、導線やカメラの動きを意識しながら、表情と動き、時折アドリブを交えながら、感情を歌声に乗せた1カメパフォーマンス。それぞれの動きがありながらも田中が“楽観し簡単にゃ済まぬまさに難関”に、息を合わせるのがSixTONESらしい。そしてメンバーが花道を作るようにして“タリラリラリラッタ♪”と陽気に進むジェシーもユニーク。
楽曲は6thシングル「共鳴」、「人人人」(3rdアルバム『声』収録)を手がけたSAEKI youthKこと佐伯ユウスケ。今作も森本がW主演を務めるドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)のストーリーとリンクさせた世界観で、主題歌としての役目をきっちりと果たしながらも、SixTONESの個性や軌跡にもリンクしている。キレのある韻と、ファンがピンとくる過去作品のフレーズやワードを盛り込んだ作品に仕上げられている。
特に2番のBメロでは、メンバーカラーを鮮やかに盛り込んだパートが登場する。高地が歌う“黄色信号でずっと進行”にはじまり、ジェシーの赤は“レッドカーペット”、森本の緑は“よりどりミドリ”に。京本大我のピンクは“心の仇桜”と和歌を彷彿とさせる桜に例えれば、田中の青は“青天の霹靂”、黒の松村は“黒く燃える腹ん中”と、メンバーカラーと意味を込めた歌詞、パフォーマンスも各メンバーが担当するなど、ひとつの見せ場になっている。
一発勝負の緊張感、メンバーの動きとカメラワークが生み出す流れの中に、空間を錯覚させるようなトリックで視線を釘付けにする。今作の見どころのひとつであるマイクリレーを存分に活かす構成で、ライブさながらの熱気と没入感が生まれている。
1カット撮影といえば、2021年5月に公開の「Strawberry Breakfast」がある。もっと遡ればデビュー前に出演した『映画 少年たち』の劇中にも登場する。同じ楽曲でも細かくコマ割りを設けながら丁寧に作り込んだ映像や音楽番組での歌唱とも異なる空気感で、ステージ経験と、メンバーの阿吽の呼吸がモノをいうパフォーマンスといえよう。
後にSixTONES公式Twitterで明かされたのだが、配信を行った場所はソニー・ミュージックのオフィスだという。洒落たしつらえもさることながら、どこでもライブ会場に変えてしまう、SixTONESのエンターテイナーっぷりを存分に発揮した配信だった。
■自分ごとの言葉を重ねるから心を揺さぶる。SixTONESが歌うエールソング
心の奥底に静かに溜まり続ける澱のような感情、何者かになりたい!けれど突破できるほどの力はまだ持ち合わせてない現状。それでも…という、どうしようもない感情を掬い上げ、叫ぶように訴えかける。“こっから、こっから始まんだ”と。
「共鳴」や「人人人」そして「こっから」と歌ってきたが、これらに通じるもののひとつが“決意”ではないだろうか。楽曲の雰囲気やリズムは違うけれど、どんな状況に置かれても、緊張しようが嘆こうが…。自分ごとの言葉を重ねるから心を揺さぶる。SixTONESのエールソングには、熱と説得力がある。
森本はラジオ番組『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送)に続いて、山里のラジオ番組『山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)にもゲスト出演し、役作りについて語った。森本はこれまで、山里の持つ妬み嫉みの感情が自分にはなかったと話し、芝居を通じて山里に“蝕まれる”と表現したほど。森本の熱量がほとばしる芝居や裏側で努力する姿に、メンバーも胸を打たれた様子で、様々な番組で披露したパフォーマンスにもただならぬ気迫が感じられた。
4月29日のラジオ『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』で「こっから」をラジオ初解禁した際に、高地は歌詞がドラマと重なるのに加えて、「俺らSixTONESにも通ずる」とコメント。田中も「これがね、ソニーがそこが天才なんだよ、俺らにもリンクさせてくるから」と語っていた。リスナーとしても、デビュー前から目にしてきた姿に、彼らが何度「こっから」と奮い立たせてきたのだろうかと、様々な場面を重ねては胸が少し痛み、そして熱くなる。
動画再生数2,400万回を突破した「こっから」。ダンスをメインとした「-Dance Performance Only ver.-」では華麗なステップダンスを披露。音を細かく拾ったスピード感ある足さばきで、定位置でありながらまるでフロアが動いているかのように錯覚する。歌詞にも描かれる、ジタバタとしたもがきを抱えながらも前へ、と奮い立たせる様子と重なるパフォーマンスにも注目したい。
「こっから [YouTube ver.]」では、レトロな下町を舞台に。学生時代からつるむ6人が相変わらず集まって…という6人の関係性やそれぞれのバックグラウンドが浮かぶようなストーリーが敷かれている。ボウリング場に集まり、このゲームで何かを決めるかのようにメンバーが見守る中、森本の投球で締めくくられる。結果はわからないが、ガターでもストライクでもきっと「こっから」と声をかけるのだろう。
■「FIREWORKS」をパフォーマンス。下から照らすピンク色のライティングが怪しげな雰囲気を醸し、艶っぽい世界観を演出
「こっから」にも感じる、じりじりとした感情はまた違った角度から──。今回の配信では通常盤に収録のカップリング曲「FIREWORKS」のパフォーマンスも披露した。夏の夜を彩る大輪の花のように、意中の人を特別な時間へと誘う。下から照らすピンク色のライティングが怪しげな雰囲気を醸し、艶っぽい世界観を演出。昨年8月に公開の「PARTY PEOPLE」から続くストーリーのようで、“この夏の 秘密”がまたひとつ増えそうだ。
さて、6月14日にリリースを控えた「こっから」には、通常盤に「FIREWORKS」「Tu-tu-lu」「ABARERO -Dark Electro Rock Remix-」、初回盤Aには「雨」。初回盤Bには「Medley from「慣声の法則」at 横浜アリーナ(S.I.X~Special Order~フィギュア~RAM-PAM-PAM~WHIP THAT~Outrageous)」が収録される。
音源を耳で聴いて楽しむのはもちろんのこと、彼らの魅力はライブパフォーマンスにも宿る。その日のコンディションや常設ではない環境で、歌唱にダンス、芝居を見ているかのような表情を見せ、歌声のわずかな揺れもライブの醍醐味。MVとも違う、歌唱だけにとどまらない彼らの持つ表現力、パフォーマンスを多くの人に触れてもらうのに「PLAYLIST」の存在は大きい。
6月16日には「PLAYLIST」Day.9として「Tu-tu-lu」のパフォーマンスの配信が予定されている。次なる音楽の扉を開けたらどんな世界が待っているのか──。
TEXT BY 柚月裕実
リリース情報
2023.6.14 ON SALE
SINGLE「こっから」
SixTONES OFFICIAL SITE
https://www.sixtones.jp