現在、12カ月連続配信リリース中のMY FIRST STORYが2021年に発表した「I’m a mess」がTikTokでバズを起こしている。元々はシングル「告白」の収録曲という位置づけだった同曲が時を経て注目を集める理由とは? 今回は、「I’m a mess」の歌詞を考察するとともに、MY FIRST STORYの魅力も紐解いていきたい。
■TikTokからバズった「I’m a mess」とは?楽曲情報
・歌唱アーティスト:MY FIRST STORY
・発売⽇:2021年7⽉14⽇発売(シングル「告⽩」収録曲)
・作詞:Hiro
・作曲:Sho
「I’m a mess」は、リリース当初はシングル「告白」のカップリング曲という立ち位置でありながら、時間をかけてTikTokをきっかけにバイラルヒットへと繋がった一曲だ。
▼MY FIRST STORY – I’m a mess (Audio)
2022年には、シンガーソングライターの優里が自身のYouTubeチャンネル『優里ちゃんねる』でアコースティックカバーを披露したことでも話題に。
▼『I’m a mess』- MY FIRST STORY acoustic covered by 優里
さらに今年5月13日には、『優里ちゃんねる』にて、本家MY FIRST STORYのボーカル・Hiroを迎えてコラボレーションを果たしている。
▼『I’m a mess』 acoustic ver. 優里×Hiro【MY FIRST STORY】
アコースティックギターと歌声から始まり、ダンサブルなビートが加わる。さらに、キラキラしたピアノやストリングスをバックに、歌謡性を感じるほどしっとりしたHiroの歌声を響かせつつ、エレキギターが根底のロック魂を垣間見せる。サビでは印象的な転調を見せながら、切々と言葉を畳みかけていく。
その後も、音色の変化など惜しげもなくアイデアを広げていき、泣きのギターソロで感情の頂点にたどり着き、グッとロックバンドらしくまとめ上げ、最後は歌い上げるコーラスを重ね合わせた、やはり歌が主役と思えるアレンジに展開したかと思いきや、再びキラキラしたピアノとビートが急にブツリと途切れるドラマチックなエンディングを迎える。
MY FIRST STORYは、ラウドロックという骨組みを持ちながら、Hiroの歌唱力とTeru(Gu)、Nob(Ba)、Kid’z(Dr)メンバーら各メンバーの幅広い趣向により、これまでも様々な音楽を取り込み、音楽的トライを続けているが、「I’m a mess」はそんな彼らの強みを凝縮した一曲だと言える。
■「I’m a mess」の意味は?歌詞考察
I’m a mess, I’m a mess
明けない夜に失いかけた声を上げて
I’m a mess, I’m a mess
振り返れない僕の心は何処へ行くの?閉ざされた世の中で
何が不要不急かも分からなくなってしまう
血塗られてるメッセージ
隠された口元じゃ何も言えないだろう?
満たされない日々に
囚われたくもないな
心の底から崩れかけたI’m a mess, I’m a mess
一人の夜は こんな想いが溢れていく
I’m a mess, I’m a mess
余裕の negative 同じように苦しめられて要らない 出れない 宣言だって
何度 繰り返せばいいの?
もう意味なんて無いよな
I’m a mess, I’m a mess
一人の夜も 乗り越えられたらいいのにな真っ暗な街中を
憂いを帯びた顔で バラバラに立ち去っていく
簡単に作られた
意図的なマニュアルに 全て奪われてる今の世界は先が見えずに
どこにも救いはなくて
また次の犠牲者が増えていくのI’m a mess, I’m a mess
聞こえる声を探し続けて辿り着いた
I’m a mess, I’m a mess
不安な medicine もっと近くで触れたいのに泣かない 会えない シンデレラ
まだ帰る時間じゃないのに
魔法が解けていくの
I’m a mess, I’m a mess
いつかは君と 朝まで踊り明かしたいな当たり前じゃないだろ?
辞めた訳じゃないよな?
だとしたら「答え」探して…I’m a mess, I’m a mess
あの日の僕は 夢は叶うと思ったけど
I’m a mess, I’m a mess
「諦めたくない」なんて言葉じゃ頼りなくてI’m a mess, I’m a mess
一人の夜は こんな想いが溢れていく
I’m a mess, I’m a mess
余裕の negative 同じように苦しめられて要らない 出れない 宣言だって
何度 繰り返せばいいの?
もう意味なんて無いよな
I’m a mess, I’m a mess
どんな世界も君と歩いて行けるのなら
“I’m a mess”の直訳は、“私はめちゃくちゃです”。この楽曲は、コロナ禍真っ只中にリリースされている。
“閉ざされた世の中で/何が不要不急かも分からなくなってしまう”という歌詞と結びつけて考えると、コロナ禍で混乱に陥る人の心を映し出しているのだろう。
歌い出しの“明けない夜に失いかけた声をあげて”“振り返れば僕の心はどこへ行くの”も、誰もが戸惑いを抱える日々、漠然とした不安で押しつぶされそうになる悲痛な心の叫びが感じられる。
さらに、サビでは“1人の夜は こんな想いが溢れていく”と、ひとりきりで苦悩している状況を示唆。“いらないやらない宣言なんて/何度繰り返せばいいの”という歌詞からも正解のないなかで手探りで進むしかなかった当時の心境が思い出される。
そして、“簡単に作られた/意図的なマニュアルに全て奪われてる”と畳みかけ、“今の世界は先が見えずに/どこにも救いはなくて/また次の犠牲者が増えていくの”という、決定的なフレーズへ。
しかし、この楽曲は絶望では終わらない。
次のサビでは、“聞こえる声を探してたどり着いた”“もっと近くで触れたいのに”と、一筋の望みや可能性を歌う。そして“泣かない会えないシンデレラ”“いつかは君と/朝まで踊り明かしたいんだ”と、“シンデレラ”というワードを盛り込みながら、ロマンチックに希望を覗かせる。
そして、“あの日の僕は 夢は叶うと思ったけど”“諦めたくない なんて言葉じゃ頼りなくて”と、マイファスらしいまっすぐさと正直さが混じり合った思いを吐露。最後は“当たり前じゃないだろう/やめたわけじゃないよな/だとしたら答え探して”“そんな世界を/君と歩いて行けるのなら”と、リスナーに問いかけ、ともに生きていこうと誘うようなエンディングを迎えるのだ。
「I’m a mess」が生まれたきっかけは世界的パンデミックだったかもしれないが、そのことだけでヒットに繋がったわけではない。そもそも懸命に今を生きる“私たち”に必要な力を持った楽曲だからここまで多くの人に支持されるようになったのだと感じる。
不安でいっぱいいっぱいになってしまうこと、心がすり減ってしまうこと、どうしても視野が狭まって閉塞感をおぼえてしまうこと…ふと目の前に“負の感情”があらわれることは誰にだってある。その感情と真っ向から向き合い、気持ちを軽くしてくれるのが、 「I’m a mess」であり、マイファスの叫びなのだ。
■『THE FIRST TAKE』での「I’m a mess」
▼MY FIRST STORY – I’m a mess
「I’m a mess」で『THE FIRST TAKE』初出演となったMY FIRST STORY。
4人が楽器の前にスタンバイすると、Hiroが「…すごいですね、この空気感」「若干の緊張感がありますが、頑張っていきたいと思います」と、マイクに向かう。
歌始まりなので、緊張がそのまま表れると思いきや、さすがは百戦錬磨のライブバンド。初めから、堂々たる歌を響かせる。音源ではピアノやストリングスが後押しする、豪華でポップな側面もあったが、『THE FIRST TAKE』のアレンジは、マイファスの真骨頂とも呼べる“歌とバンド、以上!”といった潔さ。
Hiroのハスキーな歌声の魅力や、ピタッと合ったビートが気持ちいいアンサンブルのスキルが映え、剝き出しのMY FIRST STORYが味わえる。
後半に向けて、身振り手振りも含めてエモーショナルな熱を帯びていくHiro。それでいて、言葉をギュッと詰め込んだ歌詞をさらさらと歌いこなしていくので、とても聴き心地がいい。
Teruのギターもグルーヴィにうなり、バンド感を高めながら、一気にエンディングへ。「I’m a mess」の歌詞とビート、すなわちいちばん大切なところがクリアに表れたパフォーマンスだった。
■MY FIRST STORYの歩み
・デビュー:2012年4⽉
・デビュー作品:1st フルアルバム『MY FIRST STORY』
・メンバー:Teru(Gu)、Nob(Ba) 、Kid’z(Dr) 、Hiro(Vo)
・OFFICIAL SITE https://myfirststory.net/
・YouTube https://www.youtube.com/@myfirststoryofficialyoutub6386y
・Instagram https://www.instagram.com/myfirststoryofficial/
・Twitter https://twitter.com/MyFirstStory_of
MY FIRST STORYは、2011年夏、東京・渋谷で結成。名付け親は、Pay money To my PainのK(Vo)と言われている。2012年4月に1stフルアルバム『MY FIRST STORY』でデビュー以降、全国の大型フェス出演などライブを重ね、実力をつけていった。
2016年には、4thフルアルバム『ANTITHESE』をリリースし、日本全国47都道府県をまわるツアーを行い、その最終公演を日本武道館で開催した。
2017年には『MMA』ツアーを開催し、最終公演は幕張メッセ国際展示場9~11ホールで、全曲フルオーケストラコンサートを行う。2018年はライブハウスツアー、ホールツアー、横浜アリーナ2daysと、どんなキャパシティーでも似合うパフォーマンスができるバンドであることを見せつけた。
コロナ禍に突入してからも、前述の「告白」も含めた怒濤のリリースを続け、2022年にはデビュー10周年を記念したツアーを開催。最終公演の横浜アリーナでは、約3年ぶりの“声出し解禁”ライブを行った。
MY FIRST STORYは、メンバーそれぞれの活動も盛んに行われており、特にHiroは本名の森内寛樹名義でもデビューし、カバーアルバム『Sing;est』をリリース。父である森進一と親子初共演を果たした『まつもtoなかい~マッチングな夜~』など、地上波テレビ番組や、オフィシャルYouTubeチャンネル『森ちゃんねる』にも積極的に出演。そのトーク力でも、ロックファン以外にも知られる存在となっている。
■メンバー
Teru(読み:テル)
・ポジション:ギター
・⽣年⽉⽇:1992年5⽉28⽇
・Twitter https://twitter.com/TeruMFS
Nob(読み:ノブ)
・ポジション:ベース
・⽣年⽉⽇:1984年10⽉14⽇
・Instagram https://www.instagram.com/myfirststory.nob/
Kid’z(読み:キッド)
・ポジション:ドラムス
・⽣年⽉⽇:1992年7⽉27⽇
・Twitter https://twitter.com/kidz_mfs
・YouTube https://www.youtube.com/@kidz3762
Hiro(読み:ヒロ)
・ポジション:ボーカル
・⽣年⽉⽇:1994年1⽉25⽇
・⾎液型:A型
・OFFICIAL SITE (森内寛樹名義) https://sp.universal-music.co.jp/moriuchi-hiroki/singest/
・YouTube https://www.youtube.com/@user-gh5gi7ud3h
・Instagram https://www.instagram.com/hiro_
・Twitter https://twitter.com/hiro0125_mfs
■マイファスの魅力
◎ボーカルHiroの声と分厚いサウンド
持って生まれた才能としか言いようがないのだが、とにかくHiroの歌唱力はずば抜けている。それに加えて、少し掠れたようなハスキーボイスは、ざっくり言うと非常にロック的。本名の森内寛樹名義でリリースしたカバーアルバム『Sing;est』を聴いても明らかだが、どんなジャンルの楽曲も歌いこなせる実力はあるものの、やはり彼の肩書としてはいちばん“ロックボーカリスト”が似合う。さらに、そんなHiroに遠慮することなくNob、Teru、Kid’zも各々のプレイヤビリティを存分に発揮し、分厚いアンサンブルを繰り出している。時には歌を立たせるために引き、時にはバンド感を際立たせるように前に出る。そのバランスも秀逸だ。
◎熱いライブ
MY FIRST STORYは、ライブにこだわり、ライブで育ってきた。2016年には47都道府県をまわるツアーを行い、2023年も、7年ぶりとなる47都道府県ツアーを行っている。武者修行のように己を鍛え、オーディエンスと対峙することを何よりも大切にしているバンドであることがわかる。さらに、日本武道館や幕張メッセ、横浜アリーナやさいたまスーパーアリーナといった大きな会場や、ホール、ライブハウスなど、会場の規模に関わらずライブを行い、すべてのオーディエンスに熱を届けるパフォーマンスを繰り広げている。これも、様々なステージで様々なオーディエンスにライブを見せたいという彼らの意向の表れだろう。
◎海外アーティストとの競演も
MY FIRST STORYは、結成当初から海外アーティストと共演を数多く行ってきた。2013年には、アメリカのポストハードコア・バンドのSTORY OF THE YEARや、アメリカのポップパンクバンドのALL TIME LOWのジャパンツアーにサポートアクトとして帯同。さらに、『PUNKSPRING』『SUMMER SONIC』といった大型フェスにも出演。2018年には、アメリカのエモロックバンドのFALL OUT BOYの日本武道館公演のゲストに出演。MY FIRST STORYは、ジャンルを越えた対バンやイベント、フェス出演などを積極的に行っている印象があるが、それは国境というところに関しても同じなのだろう。
■聴くべき⼈気曲&注⽬曲5選
「REVIVER」
2017年にリリースされたミニアルバム『ALL LEAD TRACKS』収録。すべてがリード曲といえる作品で、この楽曲もスマートフォンゲーム『オルタンシア・サーガ -蒼の騎士団-』第三部主題歌などのタイアップがついている。とはいえ、世間に合わせるような甘さはなく、むしろ、いつでもどこでも己を貫くと意思が伝わってくる、エモーショナルな仕上がりだ。“必ず道の先にあるから諦めないと決めたよ/最後の夢を叶える日まで”という決意が響いている。
「Missing You」
2016年にリリースされたアルバム『ANTITHESE』収録。ほとんどが英詞ながら、“never”“take it”など同じワードを畳みかけて、口に出したくなるフレーズを作り上げており、キャッチーな楽曲に仕上げている。それでいて曲調はミドルテンポながら切なく、Hiroのボーカルをはじめとして感情豊か。“積み重ねてたモノが崩れて形がなくなる前に/寂しくないと気付けないから足跡を消してみるの”など、ピンポイントで使われた日本語詞が余韻を残す。
「不可逆リプレイス」
2014年にリリースされたシングル曲。テレビアニメ『信長協奏曲』主題歌となり、バンドの存在を広く知らしめた。その後もライブの人気曲となっている。激しさと静けさが行き来する、複雑にしてリアルな心情を映し出した展開。そして、“何年経っても待っても/失くさぬ様に抱きかかえた/ずっと哀しくて虚しくて/もう先なんてないから!”という、やりきれなさを歌い上げるHiroのボーカル。今も多くの共感を呼ぶ、キラーチューンである。
「レイメイ」
2018年にリリースされたシングルで、女性シンガーソングライター・さユりとのコラボレーションで制作された、テレビアニメ『ゴールデンカムイ』第二期オープニングテーマ。MY FIRST STORYはコラボレーションも多いバンドだが、その中でもこの楽曲は人気を誇る。それはやはり、逞しさと繊細さを併せ持つさユりとHiroの歌声の相性が抜群だったからだろう。アコギを激しくかき鳴らすさユりに触発されるようにエモーショナルな楽器陣の演奏にも注目。
「ALONE」
2015年にリリースされたシングル曲。ずっと抱えてきた孤独を爆発させたかのような激しい曲調が、心身を高ぶらせる。歌詞も秀逸で、“何回繰り返してどんな跡残ったって/最後並べた「僕」が全て「僕」になるのなら”という、生きる上での真理のようなものが描かれている。ハイライトはラスト、すべてを出し尽くすような演奏と共に、何度も“We are not alone”と叫ぶところ。この力強さに励まされた人は、少なくないはずだ。
■MY FIRST STORYの今後の活動に注⽬
現在、7年ぶりの47都道府県ツアー中、かつ12カ⽉連続で新曲をリリースするという、精力的な活動を見せているMY FIRST STORY。今後の動向も目を離さないでほしい。
TEXT BY 高橋美穂
▼MY FIRST STORY最新情報
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/548/