TikTokで絶大な支持を集めた「ねぇ」のヒットをキッカケに、YouTubeやTwitterなどのSNSで大きな話題を集めるYOAKE。
なぜ、YOAKEはここまで支持を集めるのか、その理由を探りながら、人気曲「ねぇ」を考察していきたい。
■ダンス動画をきっかけに広まった「ねぇ」
・歌唱アーティスト:YOAKE
・発売日:2022年4月29日
・作詞:YOAKE
・作曲:YOAKE
2022年5月、高校生TikTokerが「ねぇ」を使ったダンス動画をアップしたところ、『#ねぇチャレンジ』のハッシュタグが付いたダンス動画が多く投稿され、この曲の振付動画が大流行。
同月、SpotifyのバイラルチャートやLINEのリアルタイムランキングなど、各配信サイトのチャートにランクインし、楽曲自体もティーンを中心に大ヒット。無名の新人アーティストだった、YOAKEの名も広く知らしめるキッカケとなった。
“ねぇ、聞いてよ”と呼びかける仕草で始まり、“とてもやるせない”“どれもつまらない”と、わかりやすい振付を合わせる『#ねぇチャレンジ』のダンス。楽曲の心地良いテンポ感や、耳に残るキャッチーなメロディも魅力で、ダンス動画でど頭だけを繰り返し聴いてると、続きが気になるのは当然のこと。
YOAKEの「ねぇ」は、2021年に発表された「なぁ」に続く、未練たっぷりの失恋ソング。同曲のMVには、元男の子として生まれ、女性として生きる人気YouTuberの青木歌音(あおきかのん)が出演しており、TikTokでの人気と同時に再生数が急上昇したMVのYouTubeでの再生数は、866万回再生(2023年3月17日時点)を記録している。
また、優里が自身のYouTubeチャンネル『優里ちゃんねる』で、「ねぇ」をギターの弾き語りでカバーしたのも、その人気に拍車をかけた理由のひとつ。
▼YOAKE【ねぇ】を歌ってみた【cover】
2022年9月には、アーティスト情報も明らかにされていないYOAKEを自身のチャンネルに招き、優里×YOAKEによる「ねぇ」のコラボレーション動画を発表。誰も想像しなかった奇跡のコラボに、楽曲や両者のファンは大いに驚き、歓喜した。
▼『ねぇ』 acoustic ver. 優里×YOAKE
アコギに鍵盤とカホンを加えたアコースティックアレンジに乗せて、背中合わせに立つ優里とYOAKEがツインボーカルで歌う「ねぇ」は、楽曲の良さを改めて知らしめると同時に、相性抜群のふたりの歌声が原曲と印象の異なるあらたな魅力を生み、129万回再生(2023年3月17日時点)を記録。
「ねぇ」でYOAKEを知った人を歌詞や曲の良さでしっかり惹きつけて、謎めいたアーティスト像や他楽曲の良さで、興味を奥深くへ誘うYOAKE。「ねぇ」で火がついた、YOAKEの人気や注目はまだまだ広がっていきそうだ。
■正体不明のアーティスト・YOAKEとは?
YOAKE
・OFFICIAL SITE https://yoake-japan.jp/
・YouTube https://www.youtube.com/@yoake_family
・TikTok https://www.tiktok.com/@yoake_family
・Twitter https://twitter.com/YOAKE_JAPAN
夜が明けるとき、僕らの声は歌になる。“楽曲ごとに異なるクリエイターやアーティストが、メンバーとして集まり、歌を作る”をコンセプトに、毎回、作家とボーカルが変わり、ボーカルと作家の正体は明かさないという、正体不明の楽曲特化型プロジェクトがYOAKEである。
2020年12月より活動を開始し、YouTubeとTikTokで60秒の短編バラード曲「Sunny」を公開。2021年1月、「Marry me」を公開すると、両楽曲ともにSNS等で大きな反響を受け、同年2月に両曲をデジタルリリース。
同年3月に「ふぁなれない」を発表すると、同年4月に優里が「優里ちゃんねる」で、『優里が思わず歌いたくなった楽曲紹介』として「ふぁなれない」を紹介&カバーした動画を公開。
▼優里が思わず歌いたくなった楽曲紹介『ふぁなれない』
「メロディがめちゃくちゃいい」「メロディアスでキャッチーで、しかもすごいポップ」「歌詞の言葉選びがすごい」と、優里が「ふぁなれない」を絶賛するこの動画の影響で、楽曲はもちろんYOAKEへの注目も高まった。
2022年は12月まで、毎月1曲をデジタルリリースするというハイペースぶりで、新曲を次々とリリース。2022年4月にはYOAKEの代表曲となった、「ねぇ」がデジタルリリースされ、YOAKEの名前をさらに大きく広める。
2022年9月には、夜に聴きたくなるようなサウンドイメージと、歌×ラップをベーシックに楽曲を展開していく、新プロジェクト・YOFUKEの始動を発表し、第一弾シングルとして「愛雨」をデジタルリリース。
そして、2023年3月。「ねぇ」を含む、これまで発表した楽曲14曲に加えて完全新曲も収録された、1stアルバム『YOAKE』をリリース。
YOAKEの音楽性はジャンルレスで、ポップスからバラード、ピアノロックなど、楽曲ごとにアプローチの異なる自由度の高い楽曲を制作。そのため固定メンバーは存在せず、ボーカルも演奏者もすべてが正体不明。
アルバムを聴くとよくわかるのだが、音楽ジャンルやボーカルが楽曲ごとに異なることで、リスナーの選択肢が増える。同じYOAKE楽曲の中でも、より自分好みの曲を見つけることができたり、より自分の気持ちにフィットする曲に出会えたりするというのは、他のアーティストにないYOAKEの強みである。
また、“恋愛”をテーマに失恋時の自分の弱い気持ちや片思い時のセンチな気持ちといった、誰にも言えない胸の奥の思いを隠さず吐露した歌詞が多いのが、YOAKE楽曲の特徴。アーティスト情報などを明かさないというコンセプトには、楽曲以外の情報をリスナーの頭に入れないことで、楽曲世界に没入してもらい、「これは私の曲だ!」とより深く共感してもらえるようにという狙いがあるのかも知れない。
■「ねぇ」の意味は? 歌詞考察
TikTokの『#ねぇチャレンジ』で火が着き、改めて楽曲を聴くことで歌詞の良さに気づいた人も多いであろう、この曲。ここからは「ねぇ」の歌詞に注目し、考察してみたい。
「ねぇ」
作詞/作曲:YOAKE Pねぇ、聞いてよ
くだらないことなんかでさ、
笑い合えた君がいなくなって
とてもやるせない
どれもつまらない
代わり映えのしない世界恋はしばらくちょっといいや、もうつらいや
空いた穴が寒すぎて
胸が苦しいや、まだムズイや
傷は癒えてはきたけどやっぱり寂しいな
ひとりは淋しいな
一緒に観てた映画も漫画も歌も
隣に君はいないねぇ、二度と恋なんてするもんか
あんなもん絶対するもんかって
強がってみたけど、けど、けど目を背けてみても、でも、でも
君のことを思い出して
涙なんて流してみちゃって
たまにはフラれるのも悪くない
って思ってるよ
あ~ぁ
なるべく早く君を忘れたい
って思ってるよねぇ、あの頃の他愛ない尽きない話
今でもふいに思い出しちゃって
何かが足りない
なんかぎこちない
胸のあたりが焦げ臭い
新しい出会いはちょっといいや、まだいいや
この痛みを乗り越えて
新しい僕になるんだ、そうなれるんだ
まだいじけてるけどやっぱりひどいや
ひみつはずるいや
好きな人できたなんて それならそれで
はやく言ってくれよねえ、それでも忘れられなくって
もう好きな気持ちは仕方ないかって
諦めてみたけど、けど、けど、
素直に認めても、でも、でも
それでも苦しくって
涙なんて流してみちゃって
いつか笑顔で会えると良いな
って思ってるよ
ねぇ
君が幸せでいればいいや
って思ってるよ未練タラリラしてらぁ、あらら
未練タラリラしてらぁ、あらら
来て見て手が素敵だよ(キテミテテガステキダヨ)
そんな取り留めもなくて
手抜き(テ抜き)の歌詞を
落書きしてみてるねえ、君のこと忘れちゃいたくて
もう、思い出す事もなくなったって
嘘ついてみたけど、けど、けど
平気なふりしても、でも、でも
好きなこと思い出して
涙なんて流してみちゃって
やっぱり忘れるまで好きでいよう
と思ってるよ
ねえ
さっぱり忘れるまで
好きでいたい
って思ってるよ
ただ、、、
きっぱり次の恋も見つけよう
と思ってるよ
“ねぇ、聞いてよ”と、誰かに呼びかけるように始まる同曲の歌詞で描かれるのは、大切な君がいなくなって、心にぽっかり穴が空いてしまった主人公の未練や喪失感。
“やっぱり寂しいな/ひとりは淋しいな”といった本音や、“一緒に観てた映画も漫画も歌も/隣に君はいない”といった状況説明を含むフレーズから想像出来るのは、一緒に過ごした部屋でたったひとり、いなくなった君の幻影を見る主人公の姿。
そして、“ねぇ、二度と恋なんてするもんか”と再び呼びかけ、“あんなもん絶対するもんかって/強がってみたけど、けど、けど”と続くフレーズからは、「ねぇ」と語りかけている相手が“君”であることが想像でき、伝える相手のいない主人公の本音をいなくなった君に向けて話していたことが読み取れる。
いなくなった君に聞いてほしい、未練、強がり、本音。“君のことを思い出して/涙なんて流してみちゃって/たまにはフラレるのも悪くない/って思ってるよ”や“あ~ぁ/なるべく早く君を忘れたい/って思ってるよ”といったフレーズからは、主人公のいじらしさやかわいげが見え、人間味ある主人公のキャラは近しさを感じさせる。
ひとつの恋が終わったからといって、すぐ次の恋へと切り替えられる人なんて、ほぼいない。
“ねぇ、あの頃の他愛ない尽きない話/今でもふいに思い出しちゃって”といったフレーズに、「君も思い出してくれてたらいいな…」なんて、あらぬ期待をしてみたり。“この痛みを乗り越えて/新しい僕になるんだ、そうなれるんだ”と、気持ちを切り替える決意をしたと思ったら、“まだいじけてるけど”と弱音をこぼしてみたり。
曲を聴き進めていくうちに、未練タラタラな主人公へのわかるわかる! の共感は、“自分でも、そう思うかも知れない”という感情移入に変わり、“やっぱりひどいや/ひみつはずるいや/好きな人できたなんて/それならそれで/はやく言ってくれよ”と訴える主人公に強く同情。
そんな本音を綴った歌詞だからこそ、“ねぇ/君が幸せでいればいいや/って思ってるよ”という綺麗ごとにも取れるフレーズも、素直に受け止めることができてグッと来てしまうのが、この曲の歌詞のすごいところ。
また、その直後に来る“来て見て手が素敵だよ(キテミテテガステキダヨ)/そんな取り留めもなくて/手抜き(テ抜き)の歌詞を/落書きしてみる”という照れ隠しのような、言葉遊びフレーズも効果的。説明するのも野暮だけど、テを抜くと“キミガスキダヨ”となる謎解きに気付いたでしょうか…?
“さっぱり忘れるまで/好きで居たい/って思ってるよ”と、最後まで未練を残しながら、“ただ、、、/きっぱり次の恋も見つけようと/思ってるよ”と締めくくるこの曲。
君をさっぱり忘れて、きっぱり次の恋を見つけることは出来たのだろうか? と、あなたが主人公の今後を心配して、想像したならば、この曲にどっぷりとハマっている証拠です!
■『THE FIRST TAKE』に出演
ボーカリストの正体を明かしておらず、顔出しもしていないため、メディアにはほとんど出演したことのないYOAKEが、『THE FIRST TAKE』に登場。Rin音を迎え、「ねぇ feat.Rin音」の貴重なパフォーマンスを公開した。
▼YOAKE – ねぇ / THE FIRST TAKE
マイクに向かうふたりの背中越しの画から始まり、Rin音と向き合うYOAKEが真横に立つのでなく斜めに構えることで、顔がはっきり見えないという絶妙な立ち位置でスタンバイする2人。
ハットと目にかかる前髪でしっかり表情を確認することはできないが、カメラに映る口元からリラックスした笑顔が見えるYOAKEが「やっちゃいますか」とRin音に声をかけ、YOAKEの歌い出しでライブがスタート。“ねぇ、聞いてよ”と始まる、優しく温かみのある歌声が瞬時に楽曲世界へと惹き込む。
いなくなった彼女への未練タラタラな曲ではあるが、ポップな曲調とカラ元気を見せるようなYOAKEのハリのある歌声で、決して湿っぽさを感じさせないのが、「ねぇ」の特徴。実際に歌う姿を見ながら聴くと、音源やMVと比べた時に、主人公のキャラや心境がより立体的に見えてくる。
そして、YOAKEとは対照的な感情を抑えた歌い方、ラッパーならではの流れるようなフロウで「ねぇ」をクールに歌唱するのが、Rin音。タイプの異なるシンガーのマイクリレーが楽曲に深みと奥行きを与え、リスナーの胸にグッと迫るツインボーカル。後半、高ぶる感情をエモーショナルな歌声で表現する、YOAKEの心震わせるボーカルは必聴だ。
■YOAKEの幅広さを体感できる、注目5曲
「なぁ」
2021年6月、デジタルリリース。温かいアコギサウンドに、男性ボーカルがエモーショナルで透明感ある歌声を聴かせるミディアムチューン。
“叶わぬ恋”をテーマに、“ダメなのわかってるけど/それでも君を”と、片思い、禁断の恋ながら、募る気持ちが抑えられない主人公の葛藤を描いた歌詞。“なぁ、、、。”の先にある、言葉にできない思いがなんとも切ない。
MVには、女優の今野杏南が出演。ペットショップで子犬とじゃれる彼女の無邪気な表情が、叶わぬ恋への切なさを倍増させる。
「ふぁなれない」
2021年3月、デジタルリリース。優里が自身のYouTubeチャンネルで楽曲紹介とカバーをしたことで、YOAKEの存在を一気に広めたこの曲。
ポップで力強いピアノ・ロックサウンドに乗せた繊細で伸びやかな歌声、思わず口ずさみたくなるキャッチーなメロディが印象的なこの曲で歌うのは、友達関係だったはずの彼女への、高ぶるばかりの恋心。
“ふぁなれない”“そばりたい”といった斬新な言葉遊びは、SNSなどで使用される現代語を意識させながら、頭の中がバグるほど恋心を募らせる主人公の心境を表してるようにも取れる。
「愛おかし」
2021年7月、デジタルリリース。アップテンポな曲調と、耳に残るメロディやラップパートが、「ふぁなれない」「なぁ」といった、それまでの楽曲のイメージを与え、自由度の高いYOAKEの振り幅を広げた。
“いくとせも/つきよに惑う 七色の”と古典的な言葉遣いで綴られる歌詞は、いつの世も変わることのない現し世の恋、叶わぬ恋心。
歌詞を縦読みすると、“いつのよもかわらぬ こいこころ”と、もうひとつの物語が生まれてくるという遊び心もニクい。
「ぎゅ」
2022年8月、デジタルリリース。アコギのサウンドに乗せた、語りかけるようなボーカルで始まるこの曲。平成のヒットソングのような懐かしさのあるゆったりした曲調に乗せて、優しく穏やかな歌声で歌うのは、両親への感謝の気持ちと家族愛。
普段はなかなか言えない、両親への愛や感謝を代弁してくれるような歌詞が心温まるこの曲。“この先もぎゅっとぎゅっとね”と、両親への愛を“ぎゅ”の言葉に凝縮したワードセンスも素晴らしい。
「サムネ」
2022年11月リリース、EPIC第一弾となる楽曲。“出口のない制限のある今の世の中にもきっと終わりがあり、どんな時の思い出もサムネイルのように切り取って、未来は続いていく”と、YOAKEには珍しく世相を反映した、未来への希望溢れる壮大な楽曲。
商業施設GINZA SIXのクリスマスプロモーションとのコラボムービーも話題となり、女優の白石聖とモデルのシエルが出演し、クリスマスデートのシーンはGINZASIXを舞台とした美しい映像となっている。
■言葉遊びが面白い。最新アルバムの新曲「で?」
2023年3月にリリースされた、YOAKEの1stアルバム『YOAKE』収録の最新曲。
シティポップ調のグルーヴ感あるおしゃれな曲調に乗せて歌うのは、一筋縄でいかない恋愛に混乱する頭の中をそのまま言葉にしたような、かなり感覚的な歌詞だが。縦読みすると、歌詞が50音の“あいうえお”の縦軸と“あかさたな”の横軸で並べた、言葉遊びになっていることに気づき、その遊び心に驚かされる。
また、歌詞を視覚的に表現した、増田彩乃と野島健矢が出演するMVも遊び心が満載。
男女の日常とすれ違いを、1画面内で同時に見せることで、実はリンクしている様子を表現。MVを見ることで、感覚的な歌詞への理解度もより深まるはず。
■自由度の高いYOAKEに注目
3月15日に1stアルバム『YOAKE』リリース、『THE FIRST TAKE』への出演と、精力的な活動を見せるYOAKE。自由度の高いYOAKEの最新情報をチェックしてほしい。
TEXT BY フジジュン
▼YOAKEの最新情報をチェック
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/3062/