何気ない授業風景、部活に明け暮れることもあれば、大恋愛したことも…かけがえのない日々が詰まった場所からの旅立ちを彩る“卒業ソング”。長年愛されてきた名曲や新定番となりつつあるフレッシュなナンバーまで、全20曲をセレクト。門出を祝して、心に深く刺さるこの楽曲たちを聴いてほしい。
■思い出とともに胸に刻まれる、卒業ソング人気20曲
「さくら(二〇二〇合唱)」森山直太朗
「また逢う日まで」平井 大
「オレンジ」SPYAIR
「卒業写真だけが知ってる」日向坂46
「3月9日」レミオロメン
「カイト」嵐
「Chessboard」Official髭男dism
「ハルカ」YOASOBI
「サザンカ」SEKAI NO OWARI
「Memories」NiziU
「空も飛べるはず」スピッツ
「僕らまた (Us, again)」SG (ソギョン)
「春を告げる」yama
「正解」RADWIMPS
「サクラキミワタシ」tuki.
「ともに」WANIMA
「キセキ」GRe4N BOYZ
「YELL」いきものがかり
「道」EXILE
「僕のこと」Mrs. GREEN APPLE
「さくら」森山直太朗(もりやまなおたろう)
2003年3月にリリースされた「さくら(独唱)」。2020年に再アレンジして新レコーディングされ、『カロリーメイト』CMへの起用も話題となった。心置きなく歌うことが許されなくなったコロナ禍を踏まえて生まれたこの合唱曲には、つらい日々を乗り越えてきた学生や教師たちへのエールが込められている。卒業式シーズンを彩る力を強く帯びた仕上がりだ。“さらば友よ 旅立ちの刻 変わらないその想いを 今”など、素晴らしいフレーズの数々が改めて心に響く。
「また逢う日まで」平井 大(ひらいだい)
2015年にリリースされたアルバム『Slow & Easy』に収録。ウクレレ、ピアノ、アコースティックギター、波の音など、オーガニックな音色で満ちている。 温かな声で歌われる“ねえどうして涙が溢れる?”は、別れの当事者が抱くリアルな感覚なのだと思う。寂しさ、感謝、愛しさ、出会えた喜びなど、たくさんの想いが渦巻きながら溢れる涙の理由は、端的に語り尽くせるものではない。友人、恋人、家族、同僚など、大切な人と別の道に進む際にぜひ聴いてほしい。あなたの理解者、気持ちの代弁者となる曲だ。
「オレンジ」SPYAIR(スパイエアー)
『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』主題歌。テレビアニメシリーズのオープニングテーマも手掛けながら『ハイキュー!!』と向き合ってきたSPYAIRならではの要素も満載なので、様々なフレーズに着目して考察するのも楽しい。そして、青春時代の燃え上がるかのようなエネルギーを伝えてくれるのも、この曲の大きな魅力だ。スポーツの戦いの当事者たちは、勝敗が決したあともそれぞれの人生を歩むが、刺激し合ったライバル、支え合った仲間だからこその感情をずっと共有し続ける。そんな姿も反映された歌詞は、クラスメイトとの別れの風景にもよく似合う。
「卒業写真だけが知ってる」日向坂46(ひなたざかフォーティーシックス)
何年経っても胸の内にある“好きだ”という感情を歌っている「卒業写真だけが知ってる」。時が過ぎゆくのは誰にも止められないが、あの頃の風景がずっと封じ込められているのが卒業写真。写真を見つめるのは一種の時間旅行なのかもしれない。そんなことも思わせてくれる描写が満載の曲だ。様々な卒業ソングが毎年世に送り出されるのは、このテーマが無数のインスピレーションをアーティストに与え続けているからなのだと思う。日向坂46のメンバーたちの瑞々しさによって普遍的なテーマがフレッシュに輝いているのを、ぜひ感じてほしい。
「3月9日」レミオロメン
フジテレビ系ドラマ『1リットルの涙』挿入歌。もともとは、友人の結婚を祝福するために書いた曲であり、タイトルも結婚式の当日が由来。“新たな世界の入口に立ち/気づいたことは 1人じゃないってこと”が結婚をイメージさせつつも、歌詞の多くの部分は春の穏やかな風景、大切な人と過ごしてきた日々、これから迎える未来を描写している。様々な人生の門出のイメージと重なるからこそ、この曲は幅広い世代に愛され続けているのだろう。
「カイト」嵐(あらし)
米津玄師が作詞・作曲・編曲を手掛けて2020年にリリースされた。穏やかなトーンでじっくりと展開したあと、オーケストラアレンジが華麗に開花するサビでドラマ性を一気に高める。5人各々の声の個性がありつつも、ユニゾンで“嵐の声”とでもいうべきひとつの響きが生まれているのも、ファンにとってたまらない聴きどころのはず。たくさんの人々の支え、受け止めた言葉、交わした想いが“自分”という存在を作り上げていると、この曲と向き合うと実感させられる。卒業を含む何かしらの門出を迎えたタイミングで聴くことをお勧めしたい。
「Chessboard」Official髭男dism(オフィシャルひげダンディズム)
『第90回NHK全国学校音楽コンクール』中学校の部課題曲。音源ではストリングス、ブラスで彩られながら壮大な展開を遂げるが、学生の合唱曲として表現される際にも大きな力を帯びる。チェスボードをモチーフとしながら、様々な出来事が起こる人生を描いている歌詞も素晴らしい。安易に明るい未来と希望を歌うのではなく、理不尽とも向き合わざるを得ない日々を丁寧に浮き彫りにしているのが味わい深い。離ればなれになったとしても、またどこかで再会できる未来に辿り着けたならば、それは大きな喜びへと繋がる。そんなことを思わせてくれる歌に耳を傾けると、人生の歩みを優しくあと押しされる感覚になる。
「ハルカ」YOASOBI(ヨアソビ)
放送作家・鈴木おさむの小説『月王子』を原作に書き下ろされた一曲で、タカラトミー『ぷにるんず』CMソング。売れ残っていたマグカップと持ち主の出会い、共に過ごした日々を描いたこの曲は、全編がとても温かい。つらい体験を乗り越えながら幸せを掴んでいくヒロイン“遥”の姿をマグカップの視点で捉えているが、大切な誰かを見守るすべての存在が抱く愛情が歌われている。人生の岐路を迎えた際、両親、教師など、支えてくれた人の気持ちを想像しながら耳を傾けることもできると思う。
「サザンカ」SEKAI NO OWARI(セカイノオワリ)
『ピョンチャンオリンピック・パラリンピック』NHK放送テーマソング。歌詞の1番をFukase、2番をSaoriが手がけた。スポーツに打ち込んだ体験がなかったFukaseは歌詞を書く際に悩んだそうだが、「夢を追う人を応援する気持ちは、あらゆる分野に共通するものがあるのでは?」という旨の助言を母から受けて、イメージを掴めたのだという。“ここで諦めたら今までの自分が可哀想だと/君は泣いた”は、真剣に何かを追い求めた体験がある人の心に強く響くだろう。
「Memories」NiziU(ニジュー)
二度と戻ってこない青春の日々を全力で謳歌する姿が、仲のいい友人に呼びかける言葉のようにまっすぐ迫って来る「Memories」。ラップパートも交えた歌のコンビネーションは、曲全体の極上グルーヴを生む大切な要素として機能している。ダンスパフォーマンスの動きや浮かべる表情の一つひとつが、歌詞の世界を豊かに描写している点も要注目。振り付けに込められている意味を考察すると、楽しさが倍増すると思う。NiziUのメンバーたちの高い歌唱力、ダンススキルをたっぷりと体感できる曲だ。
「空も飛べるはず」スピッツ
1994年にリリースされたスピッツの8枚目のシングル。1996年にテレビドラマ『白線流し』の主題歌となったことで、長年にわたって愛される大ヒット曲となった。高校生の群像劇だった同ドラマの印象的なシーンの数々を彩ったので、青春の風景を描いた曲としてイメージするリスナーが多いのだと思う。クリーントーンのギターのアルペジオ、オブリガードが透明感に溢れた歌を美しく浮き彫りにしている。スピッツのバンドアンサンブルの素晴らしさも存分に発揮されている永遠の名曲だ。
「僕らまた(Us, again)」SG (ソギョン)
YouTubeやTikTokを中心に活動する、韓国人の父と日本人の母を持つシンガーソングライター・SG(ソギョン)。2021年4月にリリースされたこの曲は、若いリスナー層を中心として、卒業ソングの新定番としてのポジションを確立しつつある。学生からの「卒業式で歌いたい!」というリクエストに応えて、混声4部とピアノ伴奏の合唱用楽譜が公式YouTubeに無料公開されている。再会を約束し合いながら仲間とこの曲を合唱するのは、学生生活の素敵な思い出のひとつになること間違いなし。
「春を告げる」yama(ヤマ)
yama名義での初のオリジナル曲。作詞・作曲をくじらが手掛けた。様々な解釈が成立するだろうが、おそらく多くのリスナーがイメージするのは、壊れゆく世界で過ごす真夜中の風景。この曲がリリースされたのは、コロナ禍により先の見えない日々が続いた2020年4月、この頃に抱いた想いと重ねながら聴いた人も多いはず。サウンドを含めた全体的な近未来感と生活感に溢れた“6畳半”“蛍光灯”といったワードのコントラストは、どこか寂し気なムードを醸し出すメロディをドラマチックに躍動させている。
「正解」RADWIMPS(ラッドウィンプス)
RADWIMPSと1000 人の18 歳世代が共演したNHKの番組『18祭』のために書き下ろされた曲。アルバム『ANTI ANTI GENERATION』には、「正解(18FES ver.)」が収録されている。正解を導き出すことをひたすら求められる学生時代を経て、正解が明確ではないことばかりの世の中へと飛び出していく若者の心情が歌われている。公式サイトで「オリジナル」「女声三部」「混声三部」の楽譜が無料ダウンロードできるので、卒業式で歌うこともおすすめしたい。
「サクラキミワタシ」tuki.(ツキ)
ABEMAの恋愛番組『今日、好きになりました。卒業編2024』挿入歌。桜が咲く季節を舞台とした卒業の風景を描いている。ピアノを基調としたサウンドに包まれながら歌うtuki.の声は、切なくて寂し気でありながらも、ときには激しい。祝福、応援、希望といった前向きな感情と“このままでいたい”という気持ちが複雑に入り混じる胸中を、歌声がまざまざと伝えてくれる。“黒板とノート ペンが走る音”というような学校生活の描写も印象的。現役高校生のtuki.だからこそ生み出せたリアルな卒業ソングだ。
「ともに」WANIMA(ワニマ)
2016年にリリースされたシングル『JUICE UP!!』の1曲目。2017年にWANIMAが『紅白歌合戦』に出場した際に歌った曲として記憶している人も多いのでは? 疾走感に満ちたパンクロックサウンド、随所で発揮される爽やかなハーモニーが、精力的なライブによって確立された揺るぎないパフォーマンス力を示している。苦しい現実と向き合っている人々に対して全力で届けられるメッセージが力強くて優しい。“進め君らしく 心踊る方”は、未来への不安が大きいときに心に響くフレーズだ。
「キセキ」GRe4N BOYZ(グリーンボーイズ)
テレビドラマ『ROOKIES』の主題歌だった「キセキ」。2008年5月にリリースされたこの曲は学生の風景と重なるのはもちろんだが、特別な想いで繋がり合っているあらゆる人間模様にも寄り添える。“キセキ”が持つふたつの意味=“軌跡”と“奇跡”を軸としながら響く温かな歌声は、幅広い層の心を動かし続けてきた。心が通い合う者同士で共有した思い出は色褪せることなく、美しい軌跡を描き続ける。そして、出会えた奇跡は本当にかけがえない。そんなことを強く思わせてくれる曲だ。
「YELL」いきものがかり
『第76回NHK全国学校音楽コンクール』中学生の部・課題曲、NHK『みんなのうた』2009年8~9月のうた。年月を重ねる毎に卒業ソングのスタンダードとしての存在感を増している。“サヨナラは悲しい言葉じゃない それぞれの夢へと僕らを繋ぐ YELL”は、各々の道へと進むことになる卒業式の本質を見事に捉えた表現。この曲を噛み締めながら夢を追い求め、未来のどこかで友人たちと再会した際に称え合うことができたら、とても素敵な人生ではないだろうか。
「道」EXILE(エグザイル)
2007年2月リリース。穏やかなテンポで展開するメロディが、胸に温かく沁みてくる。“君”との出会いによって成長することができたことへの感謝を描写した歌詞は、幅広い人間関係に当てはめられるが、卒業式の風景を思い浮かべながら聴く人も多いはず。夢や希望を語り合い、互いに励まし合いながら同じ空間を過ごす学生生活は、人生のなかでも本当に特別な時間だ。そんな風景も鮮やかにイメージできるからこそ、この曲は長年にわたって支持され続けているのだと思う。
「僕のこと」Mrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)
2019年1月リリース。2022年11月からオンエアされたカロリーメイト受験生応援CM『狭い広い世界で』篇のために新レコーディングした「僕のこと(Orchestra ver.)」は、2023年1月9日に配信リリース。“努力も孤独も 報われないことがある だけどね それでもね 今日まで歩いてきた”という一節に代表されるように、毎日を精一杯に生きている人を心から祝福している。部活動などで苦楽を共にした友人との思い出をまとめた動画のBGMとしてもおすすめしたい。
■卒業ソングを胸に、次なる一歩を踏み出そう
今回紹介した20曲は、卒業式シーズンはもちろん、今後も人々に長く愛されていくはず。門出の思い出とともに胸に刻み、大切な人の踏み出す一歩を祝福できる曲たちだ。
一生大切にできる曲たちと、ぜひ出会ってほしい。
TEXT BY 田中大