「最初は『こっち(アニメ)に来んな』と言う人もいたけど、2次元だろうが3次元だろうが、想いを込めて作るものに隔たりなんてない」(西川貴教)
音楽の最深部に光を当てることで、気づかなかった魅力が輝きだす。音楽を嗜好品のように味わう、最深音楽コンテンツ『FUKA/BORI』。谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)がホストを担当し、音楽が生まれた裏側にあった物語、その音楽を生んだミュージシャンを作った音楽を、ゲストアーティスト自身が掘り下げていく、この番組。
DIG 9となる1月17日公開の『FUKA/BORI』に登場したアーティストは、西川貴教。SIDE Aでは、自身のターニングポイントとなった曲であるT,M.Revolution「INVOKE-インヴォーク-」、西川貴教「一番光れ!-ブッチギレ-」を深掘り。
■西川貴教のターニングポイントになった曲「INVOKE-インヴォーク-」
「この曲はT.M.Revolutionでデビューして7年、2002年あたりのリリースだと思うんですけど。T.M.Revolutionの海の上で薄着になって歌うってイメージとか、冬場に風に吹かれて歌うイメージから、もうひとフェーズ上のエリアで活動出来たキッカケがこの曲でした」と、「INVOKE-インヴォーク-」について話し始めた西川。
「所属レーベルの体制とか色々な変化がある中で、「今後、どう活動していこう?」とか、自分の中で色々な迷いが出てきた時期だったんですが。『機動戦士ガンダムSEED』の監督から、「(OPテーマを)やって欲しい」という話をいただいて作った曲だったので、それが非常に嬉しくて。そこからゲームだったりアニメだったり、そういった作品に楽曲提供することが増えるんですけど。監督や周りの方々の想いをきちんと形にして、昇華していくという流れをこの曲から作れるようになったので。やっぱり、すごいキッカケになった曲かなと思います」と、この曲をターニングポイントに選んだ理由について明かす。
■『ガンダムSEED』との出会い
『ガンダムSEED』との出会いについては、「ちょうどその作品の準備をする直前だったんですけど、夏に大きい野外イベントを切って。そこに監督もわざわざ来ていただいて、『このたびはありがとうございます』ってご挨拶から、大きめの封筒を差し出されて。開けたらキャラクターのイラストと短い台本が何枚か入ってて、『せっかくなんで、キャストでも出てください』と言われて」と、同作に声優としても出演することになった経緯を語り、「きちんと役をいただいて、ガッツリ何話も出るなんて初めてですし、スタジオで他のキャストの方と一緒にアフレコするというのが初めてで。音響監督さんとかにご教示いただいて、一個ずつ勉強して。現在に繋がる、『よく分かんないですけど、やってみます』と言えるの大事さを最初に経験出来たという意味でも、『ガンダムSEED』は大きかったかも知れないですね」と当時を振り返った。
■作品とのシンクロ
「作品とのシンクロ」というテーマでは、「T.M.Revolutionって、それぞれの分担作業みたいな、ひとつのチームみたいになっていて。いつもだと狙い撃ちで、『この曲でどうですか』みたいに一曲を推していくんですけど。この時は複数曲用意して、自分内コンペみたいな形で監督にプレゼンをかけていく形だったので。みんなで一緒に作る感じでした」と楽曲制作秘話を語ると、「歌詞で特に気持ちの入る部分は?」と谷中に聞かれ、「良い意味で日本の歌謡の趣を引っ張ってる部分って、Bメロだと思ってて。“繋がる瞬間 目覚める永遠 待ち焦がれる”とか、“愛が好きなのか 壊すのが先か 惑わされる”とか。Bメロのパートには、日本の歌謡の風情が込められてる気がするんです」と返答。
さらに、「ガンダムの主題歌は1年、50何話続くお話のスタートになってくると、この作品全体を総括するものを俯瞰で見ながら、普遍的なものを届けられたらみたいなところがあったので。最初に頂いた3~4話の設定から、何を伝えようとしてるのかを読み取ることが大切だと思って。自分で膨らまして、“つまり、こういうことを言おうとしてるんじゃないか”という僕なりの答えを形にしていくという、作品とのシンクロ、お互いの読み合いが大事なのかな?と思います」と、歌詞を練っていくときの心境を明かした西川。
「そこにめちゃくちゃ想いを込めてオープニングの89秒の映像を付けて下さった時、僕が投げた答えに対して、別のアンサーを返して下さった感じがして。この想いのやり取りこそが作品作りの面白さだと思ったし、“こういう解釈か!”とすごく感動しました」と、初めてOP映像を見た時の感動を振り返ると、「最初は『こっち(アニメ)に来んな』とか、『そうまでして売れたいのか』みたいなことを言う人もいましたが。僕自身は“2次元だろうが、3次元だろうが、想いを込めて作るものに隔たりなんてない”という信念でやってますし、結局、作ってるのは人間ですし。そのおかげで海外のみなさんとも交流させていただくことが出来た経験があったから、現在があると思ってます」と真摯に語った。
■西川貴教のターニングポイントになった曲「一番光れ-ブッチギレ-」
続いて、「一番光れ! -ブッチギレ-」について、「この曲を作ってくれた草野華余子ちゃんは、バラエティ番組でご一緒したことがあって。『ぜひ、曲を書かせて下さい』と言ってくれてお声がけをしたら、翌日とか、翌々日にデモが届いて。『どういうこと!?』と聞いたら、『学生の時から、勝手に“西川貴教に歌わせたい”と思って、デモを勝手に作ってた』って。あれは嬉しかったですね」と、制作秘話を話した西川。
「これぞ、続けてきたからこそのギフトというか。なにか新しいことや周りの状況に自分の気持ちが揺らぐこともあるし、“このままでいいのかな?”と思うこともあるんですが。やってたらそういうこともある」という西川に、「神様からプレゼントをもらったみたいな気持ちになる時がありますよね」と谷中も共感。
西川は「もしかしたら出会えたかもしれないキッカケを、自分から手放すようなことはしちゃいけないなと思って。いまも続けさせてもらえています」と、“続けること”の重要さをしみじみ語った。
■“T.M.Revolution”と”西川貴教”の違い
番組終盤、「“T.M.Revolution”と“西川貴教”の違い」というテーマでは、「作・演出・主演までを全部、自分でやるってやり方でずっとやってきて。自分の声に当てはめて、作っていくやり方は慣れてるんです。でも、自分の声を誰かの作品に当てはめていくってことは意外とやってなかったなと思って。ぶっちゃけ、自分の形に寄り添って作るやり方だったら、こんなキー選ばないですよ!? のっけから引きちぎれるみたいなキーで歌わないですよ!」と、「一番光れ! -ブッチギレ-」を例に話す西川。
「でも、この限界ギリギリの西川貴教の声を聴きたいってリクエストだと思ってます。『この球、取れるのか!?』って(笑)。だから、投げられた以上は全力で受け止めて、投げ返すしかないですし。(ライブでは)死ぬ気で歌いますよ。歌詞の詰まり方とBPMを取っただけでも、目も眩むような曲なんですよ。ブレスがないんです、本っ当に!」と訴え、「そのせめぎ合い新たな経験というか。この歳にて、“歌って何なのか?”ということと、もう一度向き合い直させてくれる機会になって。“これが西川貴教としての活動かな”と思いながら、楽しくやらせていただいてます」と充実した表情で語った。
自身のターニングポイントとなった楽曲「INVOKE-インヴォーク-」、「一番光れ!-ブッチギレ-」について深く語り、アーティストとしての葛藤や続けることの重要さ、自身の在り方について語ったSIDE A。1月31日公開のSIDE Bでは、西川貴教が影響を受けた楽曲について深掘り。詳しくはYouTubeのFUKA/BORIチャンネルをチェックして欲しい。
『FUKA/BORI』
DIG 9 西川貴教
SIDE A:「INVOKE-インヴォーク-」「一番光れ!-ブッチギレ-」
1/31(火) 22:00 公開予定
SIDE B:西川貴教が影響を受けた楽曲を深掘り
『FUKA/BORI』
https://www.youtube.com/playlist?list=PLi1F8vriz0_WL3yKBwFfP68Mkx7f8Y4KV
『THE FIRST TIMES』OFFICIAL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCmm95wqa5BDKdpiXHUL1W6Q
西川貴教 OFFICIAL SITE
https://www.takanorinishikawa.com/
谷中 敦 OFFICIAL Twitter
https://twitter.com/a_yanaka