人気CMとして名高い“auの三太郎シリーズ”。その最新作、au三太郎「ココロ、オドルほうで。」篇CMソングを歌うのがmeiyo(メイヨー)だ。
TikTokに投稿した「なにやってもうまくいかない」が大きなバズを生み、かまいたち・濱家隆一と生田絵梨花によるユニット“ハマいく”の「ビートDEトーヒ」を作詞作曲、asmiに楽曲提供した「PAKU」がTikTokで30億回再生するなど、ヒット曲を連発。そんなmeiyo本人に話を聞きながら、現在に至るまでの道のりや各楽曲の魅力を紐解いていく。
■バズソングを生み出す、令和のポップマエストロ
meiyo(読み:メイヨー)
・生年月日:1991年1月7日
・デビュー作:配信シングル「なにやってもうまくいかない」(2021年9月26日発売)
・OFFICIAL SITE https://lit.link/meiyo
・Twitter @meiyo_music
・Instagram meiyo_music
・TikTok meiyo_music
・YouTube https://www.youtube.com/@meiyo_music
初めて音楽に興味を持ったのは小学2年生の頃。授業でリコーダーを吹いた時に、演奏する楽しさに目覚めたという。小学3年生になり、音楽ゲーム『pop’n music』にハマったことで「自分がいちばん好きなのは音楽だ」と確信に変わったそうだ。
中学2年生になると、BUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATIONといった邦ロックを好むようになる。なかでも、彼がいちばんハマったのがC-999で、自らもギターを手にした。
▼BUMP OF CHICKEN「天体観測」
▼ASIAN KUNG-FU GENERATION「リライト」
高校3年生で軽音楽部に入部、以前から興味があったドラムを始めて、同級生とバンド・シガテラを結成。ますます音楽にのめり込んでいったmeiyoは、大学進学を諦めてバンドマンとして生きていくことを決意。
シガテラは自身の好きなTHE BACK HORNとポストロック音楽をかけ合わせたような音楽性で、都内のライブハウスを中心に勢力的に活動していたものの、それほど注目を浴びることはなく、自主企画を開催してもお客さんが100人来るか来ないかの状況が5年ほど続いた。
▼シガテラ / コロニー 【MV】
その後、バンドは活動休止。これを機にドラムだけでなくボーカルも兼任するかたちで、ソロアーティスト・ワタナベタカシで再起を図ることに。当時のオリジナル曲「スーパースター」「街」「ゆったりと」は、2000年代のギターロックを感じさせ、周囲の反響も良く、順調な滑り出しを見せる。
▼ワタナベタカシ – 『スーパースター』
そのいっぽうで、2017年にはPOLLYANNAに加入したり、侍文化を結成したりと、ソロと並行してバンドにも力を入れていたが、どちらも音楽で生計を立てるほどには至らなかったという。
▼POLLYANNA「pantomime」Official Music Video
▼侍文化-『3番線ソング』(MV)
悶々とした日々が続くなか、当時制作していたアルバム『羊の皮をかぶった山羊』(2018年10月27日発売)のタイトルを思案中、“ワタナベタカシ”だと何か違うと感じたことから現在の“meiyo”という名前に改名。“meiyo”とは、中国語で“没有”と書き、「〜しない」という意味を持ち、懇意にしていたカメラマン案によるもの。
改名して2年間は、これまで通りバンドサウンドの曲を作り続けた。2019年、解散してしまった大好きなバンドを思って書いた「いつまであるか」を発表。手応えがあった曲にもかかわらず、大きな反響は起こらず、「今のやり方ではまずい。状況を変えなくては」と、売れている音楽を研究するようになり、2020年に打ち込みでの作曲を開始。
そうして生まれた「KonichiwaTempraSushiNatto」「うろちょろ」がネット上で注目されるようになり、レコード会社の新人発掘担当から声がかかる。そこから拍車をかけるため、“TikTokでバズる曲”を意識して何度も曲を作るも結果は伴わなかった。
▼【meiyo】KonichiwaTempraSushiNatto
▼【meiyo】うろちょろ
何をやってもうまくいかない日々。そんな時に生まれたのが、meiyoの心情をそのまま表した「なにやってもうまくいかない」だ。
▼【meiyo】なにやってもうまくいかない【MV】
TikTok急上昇チャートで1位を獲得し、総再生数は1億回を超えた。そこからmeiyoは、asmiの「PAKU」、NHK総合『Venue101』にて結成された、かまいたち・濱家隆一と生田絵梨花のユニット・ハマいくの「ビートDEトーヒ」など提供曲が次々とヒットして一躍、彼の名前が音楽業界で知れ渡るようになっていったのだ。
▼PAKU – asmi (Official Music Video)
@hamaitachi #ビートdeトーヒ #ハマいく #venue101 #踊ってみた #踊ってみて #マジでマジで #いくちゃん #生田絵梨花 #かまいたち #濱家 #濱家隆一
■オファーが絶えない、人気の理由
今、meiyoは楽曲提供や書き下ろしのオファーが絶えないという。その人気の理由は3つのポイントが考えられる。
◎多岐に渡る音楽性
バンドサウンド、打ち込みなど豊富な作曲経験を持つ彼だからこそ、ジャンルを問わず様々な曲を作ることができる。例えば、asmiの「PAKU」では、同曲を通じて彼女の持つ声のポテンシャルやキャラクター性を最大限に引き上げている。YouTubeアニメ『混血のカレコレ』OPテーマとして書き下ろした「彼此のコレカラ」では、作品の持つ世界観やキャラクターの魅力を、見事に楽曲に落とし込んでいる。
▼【meiyo】彼此のコレカラ【MV】
◎抜群のリズム感
一度聴いただけで覚えてしまう、中毒性の高い曲が書けることもmeiyoの持ち味だ。元々ドラマーなだけあって、メロディに対していちばん心地よい歌詞を当てることに長けている。
「カラオケでガイドメロディが流れますけど、それでは表せないことをなるべくやっている自負があります。それと、ドラムボーカルだったのもあって、声で発した時にパーカッシブというか、ドラムのフィルみたいな歌詞の当て方ができるんだと思います」(meiyo)
とmeiyo自身も話している。面白いのがアカペラで歌っても、meiyoの楽曲の魅力は損なわれないし、心地よく耳に残る。それは言葉のアクセントを巧みに活かしているからこそ。
◎歌詞の表現方法
meiyo曰く「たくさんの人に知ってもらいたい反面、“自分の内面も見せたい”という思いがあって。そこのバランスをいつも考えていますね」という。
meiyoは楽曲ごとに人間性を映したパーソナルな書き方、音としての響きを重視したキャッチーな書き方を使い分けることができるし、時にはそれを共存させることもできる。このバランス感覚は、TikTokでバズる曲を研究して培った器用さだろう。
多くの人に知られるきっかけとなった「なにやってもうまくいかない」は、楽曲制作がうまくいかなった時のmeiyoの心情を歌った曲である。
▼【meiyo】なにやってもうまくいかない【MV】
一見ネガティブな内容でありながら、決して暗く伝えるのではなく、心の葛藤を吐き出すことで痛快さも与え、タイトルのワンフレーズを聴いただけで共感してしまう力がある。まさに彼のパーソナリティと、音の響きの良さを同時に堪能できる一曲だ。
しかも、ひとつの小節に言葉を詰め込むことで、リズム良く言葉が耳に入ってくる。小節の頭よりも前に“なーにやっても”と歌い始めることで、出だしからリスナーの心を掴む仕かけもある。サビ前の言葉を詰め込むことで、わずか2分半の尺とは思えないほどの情報量があり、何度も味わいたくなる“スルメ曲”として大きなバズを生んだのだ。
そして2022年12月に配信リリースした「未完成レゾナナンス」は、meiyoにとって大きな挑戦でもあった。
▼【meiyo】未完成レゾナンス【MV】
「BUMP OF CHICKENなど中学生の頃に出会ったバンドとか、ワタナベタカシ時代のこと、そして今のmeiyo。これまでの音楽体験すべてをごちゃ混ぜにした曲を、このタイミングでみんなに聴いてもらって、meiyoの深い部分にアクセスするきっかけになってほしいと思って作りました。いわば自分が音楽を作ってる理由にフォーカスした内容になっています」(meiyo)
曲を通してどのような波及効果を生むか。そんなプレイヤー脳とプロデューサー脳を併せ持つmeiyoだから、各所から楽曲オファーが殺到しているのだろう。
■meiyoが手がける人気6曲
「クエスチョン」
「なにやってもうまくいかない」の大ヒットを受けて書いたのが「クエスチョン」。ボタンひとつで彼の人生が変わったことをそのまま歌詞に落とし込んでいる。有名になっていく戸惑いを歌っていながらも、メロディは底抜けに明るいというコントラストが絶妙だ。
「これまでライブを観て気に入ってくれた人が物販でCDを買ってくれて、僕を広めてくれた。それがTikTokでは、みんなが何気なく押した“いいね”によって、meiyoという存在が知られていった。そこに違和感があったんですよね」(meiyo)
「彼此のコレカラ」
YouTubeアニメ『混血のカレコレ』のOPテーマに書き下ろした楽曲。歌い出しの約15秒だけを最初に作り、そこからフルバージョンに仕上げるという、特殊な制作方法で生まれたのもあり、冒頭は特にメロディの強さが際立っている。
歌詞はアニメに登場するキャラクターたちの特徴を表しているだけでなく、チームの絆や喜び、meiyo自身が経験したバンドやライブハウスへの思いも詰まっている。また、今作はアレンジに前山田健一が関わっているのも大きなポイント。
「ねぇよな」
すとぷりのメンバー・るぅとに提供した楽曲。“冗談じゃねぇよな”という印象的なフレーズは、響きの面白さとmeiyo自身が実際にそう感じるシチュエーションが多かったことから思い浮かんだという。
怒りを感じる歌詞でありながら、跳ねるようなテンポやメロディによって、小気味よく痛快な印象に。ちなみにmeiyoはこの曲で初めてセルフカバーに挑戦。
そしてmeiyo版とるぅと版のMV(※監督・トキチアキ)を合わせることで、1本のストーリーになっているのも面白い。
「infinite feat. 空音, meiyo」
新進気鋭のアーティスト/クリエイターたちを入居者として見立て、楽曲ごとに歌い手と作り手が変わる音楽プロジェクト・MAISONdes(メゾン・デ)。当プロジェクトに参加する、空音と手を組んで制作したトヨタ自動車 新型カローラシリーズ のCMソング。
「限られた空間の中で、イメージだけでも無限に広げていく」というテーマのもと、お互いに歌詞を持ち寄り一曲に仕上げていったという。両者のコントラストがハッキリと出ていて、声のバランス感も絶妙だ。
「PAKU」
asmiに提供した曲で、TikTokで30億回再生、130万本以上の動画で使用されて「TikTok2022上半期トレンド チャレンジ部門賞」を受賞した。楽曲の打ち合わせをしていた際、「好きな人ができると、その人のことを食べちゃいたくなるんです」というasmiの話を聞いて曲のアイデアが生まれたという。女性的な甘いメロディと、asmiが持つ歌声のキャラクター性が相まって、楽曲の世界観が増幅されている。一度聴いたら、ハマってしまう中毒性が魅力。
「ラリー、ラリー feat. Pii, meiyo」
こちらもMAISONdes名義の曲で、フジテレビ系情報番組『めざまし8』の2021年11月度EDソングになっている。歌詞には、登場人物ふたりの心や想いが噛み合わない様子が描かれている。
実際にmeiyoがPiiと楽曲制作の打ち合わせをした際、Piiの明るい雰囲気に圧倒されてしまい戸惑っていたら、それを見ていたMAISONdesの管理人が「噛み合っていない様子が面白い」と言ったのが作曲に繋がった。
ちなみに曲中の“ping pong”というフレーズと、サウンドにも卓球の音が鳴っているのは、ふたりとも学生時代に卓球部だったことから由来する。2022年1月に『THE FIRST TAKE』で同曲を披露している。
「本当に一発撮りなんだ、と驚きました。セッティングが終わると、スタッフの方々が室内からいなくなって…あ、本当に誰もいなくて、ふたりでやるんだなと(笑)。あんなに緊張したのは初めての経験でしたね」(meiyo)
▼MAISONdes – ラリー、ラリー feat. Pii, meiyo / THE FIRST TAKE
■au新CMソング「ココロ、オドルほうで。」
ここで新曲についても触れていきたい。
2023年元日から放映が始まった、auの人気CMシリーズ“三太郎”の最新作「ココロ、オドルほうで。」篇のCMソングとして流れているのがmeiyoの新曲「ココロ、オドルほうで。」だ。
▼「ココロ、オドルほうで。」
˗ˏˋ🎍あけましておめでとうございます🎍ˎˊ˗
今年のお正月CMのテーマは、
✨ 💃『ココロ、オドルほうで。』🕺✨人生は選択の連続。もしも迷ったら、
ココロ、オドルほうで選んでみませんか😊#ココロオドルほうで #三太郎#auのCM #謹賀新年— au (@au_official) December 31, 2022
作詞は桐谷健太の「海の声」、菅田将暉の「見たこともない景色」、WANIMA「やってみよう」などを手がけた篠原 誠。作曲編曲はAimerやYUKIの楽曲も手がける飛内将大という豪華なラインナップで、今回meiyoは初めて提供曲を歌っている。
「auさんのCMソングを歌わせていただくことが決定したタイミングで、すでに楽曲が完成していました。提供された楽曲を歌う経験は初めてでしたが、いざ歌ってみたら案外meiyoっぽい仕上がりになりましたね」(meiyo)
と、たしかな手ごたえを感じたという。歌い手としての表現力や歌唱力を味わえるので、これまでと違う新しい一面を感じられる楽曲だ。
「“ザ・ジャパニーズ・オショウガツ!”とでも言わんばかりの伝統的な楽器やかけ声、そこに現代的な打ち込みサウンドも合わさって、とことん景気がよく、それでいて少し切なくて、背中を押してくれるような感じ。まさに僕の大好きな多幸感溢れるタイプの楽曲です。どっちにしようか迷ったら、“ココロ、オドルほう”を選ぼう! というシンプルなメッセージには、ついついコスパやタイパなどで選択しがちな現代に一石を投じるような深みがあります」(meiyo)
歌詞には徳島が誇る伝統芸能「阿波踊り」の“オドラにゃ損損”というフレーズが使われており、誰しも心を躍らずにはいられない。跳ねるようなリズムに、コミカルに聴かせる歌声が楽曲全体の雰囲気を明るくしている。
「これまでは僕の音楽を好いてくれる人と、僕自身のことを考えて歌ってきましたが、今回はお正月を迎えた瞬間の皆さまを想像しながら歌いました。暗いニュースに溢れた2022年でしたが、2023年はたとえほんの少しでも、今より明るい未来が待ってるはず! といった期待を持ってもらえるような。そんな曲になったら良いなと思って、張り切りました」(meiyo)
新年早々活気の出る、未来を切り拓くメッセージにグッとくる。
■思い描く、この先の音楽人生
TikTokをきっかけに凄まじい勢いで認知度を広げた彼は今、新しいフェーズに進もうとしている。
「今後はmeiyoという人間をもっと浸透させていきたいです。誰に聞いても“meiyoって良いよね”と言ってもらえるようになれたらうれしいです」(meiyo)
meiyoの音楽人生“全盛期”はまだ始まったばかりだ。
INTERVIEW & TEXT BY 真貝 聡
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