2022年に引き続き実施する、“MY FAVE=私の推し”アーティストを語ってもらう『MY FAVE 2023』。
2023年は、筧 真帆(日韓音楽コミュニケーター)、柴 那典(音楽ジャーナリスト)、新谷洋子、高木“JET”晋一郎、永堀アツオ、ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)、まつもとたくお、森 朋之、吉田可奈、レジー(音楽ブロガー/ライター)の10名に各2組を紹介してもらうことに。
趣味趣向が見えるセレクトもさることながら、推しアーティストへの熱い思いも必見だ。
※ライター名は五十音順。
TREASURE(トレジャー)
すでにK-POPファンには知られた存在だが、BIGBANGやBLACKPINKらを擁するYGエンターテインメント発の10人組ボーイズグループ。韓国で2020年8月にデビュー後、2022年秋に本格的に日本上陸。YG仕込みのキャッチーなヒップホップに、パワフルでやんちゃな自由度の高いパフォーマンスは実にハイクオリティ。また、関西率の高い3人の日本人メンバーらの影響か、全メンバーに関西ノリが広がり親近感も。若手ボーイズグループの中で頭ひとつ抜けた存在だ。
推薦者:筧 真帆(日韓音楽コミュニケーター)
Mori Calliope(モリ カリオペ)
トップクラスのVTuberであるMori Calliopeを“期待のニューカマー”枠で紹介するかどうか悩んだけど、1stアルバムも素晴らしかったし、音楽活動の可能性がさらに花開くのはこの先という予感がする。単にラップのスキルが抜群なだけじゃなく、ボカロやネットラップも、日本のヒップホップシーンも、そして英語圏のポップカルチャーも含めて、いろんな文化をつなぐハブ的な存在になりそうで期待している。
推薦者:柴 那典(音楽ジャーナリスト)
Gabriels(ガブリエルズ)
トリ肌もののファルセットを授けられたゴスペルシンガー、映像作家兼プロデューサー、映画音楽コンポーザーからなる、LA出身のトリオは、2022年デビューフルアルバム『Angels & Queen Part 1』を発表。そこでは絢爛なアレンジを施したファンク、ディスコ、ソウルのミクスチャーに乗せて歓喜と絶望が渦巻き、心の柔らかい部分に突き刺さって、今の世界に必要な癒しを提供する。春に控える続編『Angels &Queen Part2』に期待するなと言われても無理な話だ。
推薦者:新谷洋子
柊人(しゅうと)
日本武道館公演を成功させたAwich、アルバムで凱旋を果たしたCHICO CARLITOなど話題の尽きなかった沖縄勢。柊人もソウルフルなセンスの光る「今はまだ」をリリースし、その一角であることを証明した。他にも1MCでは、リリカルセンスの光るWATSON、ハードライフの描写力が凄まじいRK Bene Baby、音像と作品構成にひねりを利かせたjoecupertino、完全に正体不明なsafmusic…数多くの才能が登場している。
推薦者:高木“JET”晋一郎
ももすももす
独特の言語感覚を有し、“あるある”の共感性ではなく、オリジナルの物語性を求める、一筋縄ではいかないシンガーソングライター。萩原朔太郎の詩集を愛読する文学少女のようで、高校時代はソフトボール部のピッチャーとして活躍。猫アレルギーだが猫を飼っており、「犬飼いたい」とも歌う。ゆるふわ空想系かと思いきや、絶対に売れたいという反骨精神がある。ギャップ萌えというか、アンビバレントな魅力というか、とにかく応援したくなる奇才。
推薦者:永堀アツオ
ナツノセ
ボカロP出身、夏に感じるノスタルジックで美しい情景や感情を表現する気鋭の音楽家。すでに作品スタイルは幅広く、2022年はヒューマンな歌い手をフィーチャリングした作品で魅了した、令和時代を牽引する新しい才能。楽曲のせつなポップな世界観など、一撃必殺TikTokとも相性ぴったりで、2023年はより快楽ポイントの高い濃密なメロディ、没入感高いトラックメイクによって幅広く開花していくのではないだろうか。
推薦者:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
NewJeans(ニュージーンズ)
K-POPファンのみならず、業界人をも虜にした女性5人組。2022年夏に4曲入りの初のミニアルバムを出したところ、記録的な大ヒットとなった。90年代のトレンドを意識したサウンドメイクだが、シティポップなど手垢がついた感じのある音は意図的に避け、さらに郷愁や切なさ、寂しさといった感情を取り込み、独自の音像を生み出した。同年12月に発表した「Ditto」は彼女たちの魅力がすべて詰まっているダンスポップで特におすすめしたい。
推薦者:まつもとたくお
Tele(テレ)
2022年11月に行われた初ワンマンライブ『東京宣言』で「僕は素晴らしいフィクションになることを決めました」と語ったTele(谷口喜多朗によるソロプロジェクト)。現実と地続きのフィクションを反映した楽曲、そして、ハイブリッドかつジャンルレスなサウンド、生々しい感情を込めたボーカルが響き合う彼の音楽性は、きわめて斬新でありながら、すでに普遍的な魅力を放っている。ブレイク確実の超逸材だと断言したい。
推薦者:森 朋之
THE SUPER FRUITS(ザ・スーパーフルーツ)
「チグハグ」がSNS上でバズり、10代を中心に大ブレイクした“スパフル”ことTHE SUPER FRUIT。これは偶然ではなく、毎日同時刻にメンバーがTikTokに動画を投稿したり、わかりやすいキュートな振りと中毒性の高いメロディ、深い多様性の歌詞という策略的な仕かけがあったからこそ。新曲「馬鹿ばっか』もボカロのメロディを踏襲し、共感する鋭利な歌詞という「チグハグ」とは対極的なもので同世代の心をキャッチ。しかし、そんな大人の作戦とは関係なく本人たちは無邪気に愛らしく、フレッシュにパフォーマンスしているところがたまらなく、良い。楽曲の良さと本人たちの愛らしさで一発屋は軽く回避できそうだ。
推薦者:吉田可奈
チョーキューメイ
“ザクっとしたバンドサウンド”“構築された覚えやすいメロディ”“フックのある女性ボーカル”の組み合わせは日本のゼロ年代以降のバンドシーンにおける大きな潮流のひとつですが、そのラインのまさにおいしいところを的確に鳴らしてくれるのが彼女たち。ポップの粋を極めた「心を照らせ!」から童謡っぽさもある「リンカーネーション」まで、ファッショナブルだけどどこか懐かしい振り幅の広さも魅力です。
推薦者:レジー(音楽ブロガー/ライター)
縫製人間(bongjeingan / ボンジェインガン)
韓国現地のミュージシャン界隈で噂の的のこのバンド、Sultan of The Discoのジ・ユネ(Vo、Ba)、HYUKOHのイム・ヒョンジェ(Gu)、元チャン・ギハと顔たちのチョン・イルジュン(Dr)というKインディーズ好きなら誰もが知るバンドのメンバーらで結成。2022年5月にライブ活動をスタート、夏は韓国最大級のロックフェスにも登場し、12月に初シングル「GAEKKUM/GOOD」をリリース。ひずんだ弦のリフと変則的リズムを放つサイケでハードな楽曲はヤミツキになる。
推薦者:筧 真帆(日韓音楽コミュニケーター)
RQNY(ロニー)
どのシーンにも属してないけど、とにかく抜群の才能。最小限のトラックと独特の色気を持つ歌声からなる楽曲は、世の中の潮流とか時代のムードからはまったく異質で、誰にも似ていない。でも、だからこそポップスとしての強度を持つ。マイケル・ジャクソンとXXXテンタシオンに触発された、孤高のダークポップ。初のワンマンライブも観たけれど不思議なカリスマ性も感じた。はやく見つかってほしい。
推薦者:柴 那典(音楽ジャーナリスト)
yunè pinku(ユーン・ピンク)
UKガラージやダブステップを始めとする90年代以降のUKレイヴ・ミュージックを、今の世代の感覚で切り刻んでアップデートするのは、マレーシアとアイルランドの血を引き、ロンドンで育った19歳のプロデューサー兼シンガーだ。オフ・フォーカスな囁きヴォーカルとビートが絡み合って醸す、ファジーなテンションがなんとも新鮮で、エレクトロニック音楽界のいびつなジェンダー比率を、こういう若手にどんどんひっくり返してもらいたい。
推薦者:新谷洋子
rice water Groove (ライス・ウォーター・グルーヴ)
アルバム『Discovery』をリリースし、今年も様々なフェスに登場したrice water Grooveは、盟友IKEや親交の深い梅田サイファーとの連携も含め、2023年もポップ層に訴求しそう。それぞれのキャリアは長いがユニットとしてアルバムリリースも果たしたOll Korrect、品川発のFlat Line Classics、平和島から登場したONENESS、ハードコアB-BOYイズム溢れるVENOMなど、ブーンバップだけでも数え切れないのだから、シーン全体では推して知るべし。
推薦者:高木“JET”晋一郎
ラフ×ラフ
テレビプロデューサー・佐久間宣行が総合プロデューサーを務める9人組のアイドルグループ。「青春高校3年C組」の女子アイドル部のメンバーからの相談を機にしたオーディションを経て、2022年9月にメンバーが決定。グループ名の発表は大喜利からのドッキリというバラエティの流れだが、佐久間Pが本気で挑んでいる熱が伝わってくる。専用劇場やテレビのレギュラー番組ではなく、YouTubeチャンネルをホームにどんな動きを見せるのか、注目したい。
推薦者:永堀アツオ
Billyrrom(ビリーロム)
2020年結成、現役大学生によるロックやシティポップを経由したソウルフルかつファンクネスな6人組。疾走感に溢れたギターカッティング、軽快なリズムで紡がれるビートセンス、シンセとスクラッチが織りなす構築美。そして、繊細かつ迫力あるボーカリゼーションに富んだハイトーンに伸びやかな歌声が痛快。すでに、2022年12月には東京・渋谷WWWワンマンをソールドアウト。今年2月に東京・渋谷WWW Xで追加公演を発表。絶対観るべき!!!
推薦者:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
Billlie(ビリー)
K-POPガールズグループの世界は常に競争率が高く、それぞれが独自性をアピールしてなんとか生き残ろうとしている。そんな中で楽曲派として注目を集めるのが、2021年11月に現れたこの7人組である。ユン・ジョンシンという実力派の歌手がメインの事務所に所属しているからか、サウンドカラーを重要視しているようで、ダンスポップをメインにジャズやロックなどにも挑戦。日本デビューの噂もあり、2023年は飛躍の年になりそうだ。
推薦者:まつもとたくお
ルサンチマン
オルタナティブ、マスロック、ジャズ、ハードコアパンクなどをぶち込みながら、熱気と勢いを加えて放出されるバンドサウンド。憤り、憎悪、嫉妬などを内面に抱えながら、それでも希望の光を求めてやまない歌。ロックバンド本来の性急さと乱暴さ、観る者を一瞬で惹きつけ、解放するポップネスを合わせ持ったルサンチマンは、間違いなく2023年のバンドシーンの最重要ニューカマー。ロック復権の象徴になってほしい。
推薦者:森 朋之
& TEAM(エンティーム)
『&AUDITION-The Howling-』をきっかけに結成された、HYBE LABELS JAPAN初の9人組グローバルグループ。ビジュアル、パフォーマンス、歌唱力とすべてがハイレベルの彼らが放つメッセージは、現状を打破しようと前向きに走り出すポジティブなもの。不穏なニュースが多い今、共感できるメッセージソングが世界中に響き渡るはずだ。バラエティで見せる彼らのほんわかとした姿はギャップに溢れ、さらなる魅力に。世界を軸に羽ばたきだした彼らの一歩は、良い意味での大きなハウリングを起こすことだろう。
推薦者:吉田可奈
the pullovers(ザ・プルオーバーズ)
「the pullovers、過去音源までバーっと聴いたけど、日本のギターロックの希望じゃん」自分が初めて彼らの楽曲を聴いたときにつぶやいたこのツイートに、言いたいこと全部詰まってます。シンプルイズベストなバンドアンサンブルから漂う王道感は何とも頼もしく、Cettiaのボーカルの醸し出す乾いた雰囲気との相性もばっちり。時代がどんなに移り変わってもロックは必要だな! と思わせてくれる存在です。
推薦者:レジー(音楽ブロガー/ライター)