音楽活動開始わずか1年でTikTok に投稿したオリジナル曲の総再生回数が12億回を突破。世界各国のバイラルチャートにランクインするなど、話題沸騰中のアーティスト・imase。その魅力を楽曲、初のオンラインライブ『POP ROOM』を軸に解説する。
■TikTok発の次世代アーティスト・imase
imase(読み:いませ)
・生年月日:2000年11月9日
・出身地:岐阜県
・デビュー作:配信シングル「Have a nice day」(2021年12月19日発売)
・Twitter @imase_1109
・Instagram imase11_9
・TikTok imase119
・YouTube https://www.youtube.com/@imase_1109
目覚ましい活躍が続くimaseだが、活動歴はそれほど長くはない。2020年11月にギターを買って弾くようになり、歌っているうちに自ずと曲も作るようになったのがすべての始まり。DTMのスキルも少しずつ身につけ、2021年5月にはTikTokへの投稿を開始。着々とリスナー層を広げていった。
▼TikTok初投稿動画(この時DTM歴4カ月)
@imase119
TikTokに投稿した楽曲の他、テレビ東京系で放送された『~夢のオーディションバラエティー~DreamerZ』への出演でも注目を集めた後、2021年12月に配信シングル「Have a nice day」でメジャーデビュー。
▼【imase】Have a nice day(MV)
この曲はSpotify⽇本バイラル週間チャートで1位を獲得。それ以降も「逃避行」「NIGHT DANCER」などが立て続けに国内外のバイラルチャートにランクイン。オリジナル楽曲の総再生回数は、現時点ですでに12億回を突破している。
▼【imase】逃避行(MV)
▼【imase】NIGHT DANCER(MV)
大型タイアップに次々抜擢されている点も要注目。2022年春のポカリスエットCM主題歌「Pale Rain」(imase with PUNPEE & Toby Fox名義)、JT『ひといき習慣シリーズ』CMソング「でもね、たまには」、テレビ東京 木ドラ 24『チェイサーゲーム』エンディングテーマ「アナログライフ」、渋谷スクランブルスクエア Xmas キャンペーンソング「Holy Light」を聴いて、彼のことを知った人も多いはず。人気は最早若年層にとどまらない勢いだ。
▼【imase】Pale Rain(ONLINE LIVE『POP ROOM』)
▼【imase】でもね、たまには(MV)
▼【imase】アナログライフ(MV)
▼【imase】Holy Light(Official Audio)
22歳の彼は、現在も地元の岐阜在住。慣れ親しんだ環境で暮らしながら活動を重ねている姿も、「新世代アーティスト」であることを感じさせてくれる。
2022年11月9日に配信リリースされたEP『POP CUBE』は、フレッシュな感性、柔軟な発想力を武器にしながら急速な進化を続けていることを示す作品となった。2023年以降もJ-POPシーンを盛り上げてくれるに違いない。
■⾳楽活動を始めたばかりで、なぜ脚光を浴びたのか?
◎勘の良さ
音楽歴は長くないのに、なぜimaseは短期間の内にたくさんの人々を魅了するようになったのか? それはやはり“音楽に対する圧倒的な勘の良さの持ち主だから”ということに尽きる。
元々、何に対しても一定水準のスキルを身につけなければ気が済まない性分で、スケートボード、サッカー、野球などにも熱中してきたのだというimaseには、物事を入念に分析し、目標に到達する方法を見出す習慣が備わっていたのだろう。
楽曲制作を始めてからもTikTokなどでバズっている様々な音楽を聴きながら、「どうしたらリスナーの心を捉えるものを生み出せるのだろう?」と研究を重ねていたに違いない。培っていた鋭い分析力、音楽的勘に“歌うのが好き”という無邪気なエネルギーも加わり、彼は急速に頭角を現す存在となったのだ。
◎楽曲について
歌うのは好きだったものの、音楽に詳しかったわけではなく、周囲の友人の間で流行っている曲に触れていた程度だったimase。しかし、中学・高校時代に聴いていた音楽として米津玄師、GReeeeN、湘南乃風、星野源、SEKAI NO OWARIなどを挙げており、幅広いサウンドに触れていた様子がうかがわれる。
彼の世代が聴いてきたJ-POPやK-POPは、海外のR&Bやヒップホップといったブラックミュージックからの影響も大きく、ダンスボーカルユニットの楽曲などを通じて、最新のクラブミュージックの息吹にも触れていたはずだ。
リズム感の良さに裏打ちされた歌、リズムとメロディが互いを引き立て合う音の配置、耳にしたらすぐに口ずさみたくなるフレーズを満載しているimaseの楽曲からは、このような多彩な背景を感じることができる。
◎歌詞
imaseが書く歌詞の特徴を端的に言い表すならば、“空気感”が最も適切なように思う。例えば、「NIGHT DANCER」も、随所に散りばめられている“どうでもいいような 夜だけど”というフレーズが、この曲で描かれている夜のムードを感じさせてくれる。
風景やストーリーを事細かに説明するではなく、リスナーの想像を喚起する表現を主軸とした歌詞は、一見すると抽象的なのだろう。しかし、質感を生々しくイメージできる上にロマンチック極まりない。
また、「Have a nice day」が歌詞の“離れないで”とさりげなく韻を踏んでいることでもわかるように、言葉の響きに対して非常に敏感なのも、彼の歌詞の魅力だ。
■1st デジタルEP『POP CUBE』
2021年11月9日、imaseの誕生日に配信リリースされたEP『POP CUBE』の7曲は、彼の音楽性の様々な面を示している。これまでに配信された5曲の他、新曲「あべこべ」、渋谷スクランブルスクエア Xmas キャンペーンソング「Holy Light」も収録されていて、活動の軌跡を一気に辿ることができる作品だが、全体的にR&B的な香りが何処となく漂っている点が興味深い。
▼【imase】あべこべ(Lyric Video)
地声とファルセットを切り替える歌唱法はimaseのオリジナリティを決定づけているスタイルだが、これは海外のR&Bシンガーが用いる手法を彷彿とさせる。ビートを絶妙に乗りこなしながらメロディを際立させる様も、R&Bやヒップホップの色合いを示している要素だ。
そして、驚かされるのは、どの楽曲も印象的なメロディの宝庫だという点だ。ほんの少し触れただけでもリスナーの心に深く刻まれ、自ずと口ずさみたくなるフレーズを生み出すことに彼は圧倒的に長けている。この鋭いセンスは、TikTokへの投稿を重ねる中で培われていったのだろう。Spotifyバイラルチャートで首位を獲得した「Have a nice day」はもちろん、「逃避行」や「NIGHT DANCER」も、心地よいメロディが連鎖し続ける様がものすごい。海外のリスナーからの支持も得ている理由は、やはりこれが大きいのだろう。
メジャーデビュー以降、タイアップの機会を得ながら彼が作風を広げていったことも、本作を聴くとよくわかる。JT『ひといき習慣シリーズ』CM ソング「でもね、たまには」は、時にはひと休みすることを呼びかける温かな歌声が、CMのコンセプトを絶妙に捉えている。「アナログライフ」も、ゲーム業界を舞台としたドラマ『チェイサーゲーム』の世界とリンクしている曲だ。メッセージ、世界観、ストーリーを明確に浮き彫りにしている歌詞は、抽象的な描写でイメージを豊かに喚起する「Have a nice day」「逃避行」「NIGHT DANCER」などとは異なる作風を感じさせてくれる。
相反する意味を持った言葉、異なる質感の歌声をスリリングに組み合わせている「あべこべ」、王道のクリスマスソング「Holy Light」といった新曲も存在感を放っているEP『POP CUBE』の内容は非常に濃い。imaseに興味を持った人が最初に手にする作品としても強力にお薦めできる。
■⼈⽣初のライブ『imase ONLINE LIVE「POP ROOM」』
imaseにとって初のライブが12月19日にオンライン上で開催された。
「どのようなものになるのだろう?」とたくさんのファンがドキドキしながら開演待ち構えていたはずだが、1曲目「逃避行」を歌い始めた姿に胸が熱くなったのではないだろうか。
彼の様々な投稿動画でお馴染みの2段ベッドの真下を模したスペースに座り、マイクに向かって歌っていた様は、DTMを駆使したベッドルームミュージックから音楽キャリアをスタートした彼の原点を感じさせてくれた。そして歌い終わった瞬間、それまではスマホサイズ風の縦長だった画面が横に広がり、バンドメンバーたちが映し出された中で、2曲目の「アナログライフ」がスタート。友人の影響でギターを購入して歌い始めて2年、メジャーデビューしてから1年という短期間で急速に音楽シーンの中で頭角を現しつつも、地元の岐阜を拠点としながら広い世界への発信を重ねている軌跡を、まざまざと体感させられるオープニングであった。
松本ジュン(Key, Manipulator)、モリシー(Awesome City Club / Gu)、林あぐり(Ba)、BOBO(Dr)──という強力なバンド編成によって、お馴染みの楽曲たちが熱く躍動していく様をimaseが楽しみながら歌っていた姿も、とても印象的だった。
▼【imase】ONLINE LIVE『POP ROOM』(Making Movie)
バンドサウンドの熱量を感じながら胸を高鳴らせている様が歌声にもはっきりと表れていた「あべこべ」。スタジオで構築した空間の穏やかな息吹が画面からも伝わってきた「でもね、たまには」。キャッチーなメロディがTikTokで既に大人気となっているが、フルバージョンでの披露は初となった「I say bye」。ひと足早いクリスマス気分を感じさせてくれた「Holy Light」…全身でサウンドを感じながら身体を揺らし、時には軽やかに飛び跳ねたりもしながら響かせていた歌声は、新しい試みであるライブを心から楽しんでいる様子を真っ直ぐに伝えてくれた。
ラップパートも完璧に自分のものにして歌いこなしていた「Pale Rain」でも感じたことだが、imaseは新しい要素を取り入れる能力が本当に高い。彼のこれまでの軌跡の中で遂げてきた進化を支えてきた最大の力は、まさしくこれなのだろう。その物凄さを再確認したと同時に、まだまだ様々なことを吸収していくはずの未来も想像することができた。
▼【imase】Pale Rain(ONLINE LIVE『POP ROOM』)
そして、「ライブ」という挑戦をする中でも、親しみやすいキャラクターが随所で発揮されていたのも実に彼らしかった。バンドメンバーの名前を紹介する度に各々から楽器の音で反応が返ってくるのを聴いてはしゃいでいた姿は、まるで無邪気な少年のようだった。また、「I say bye」の間奏に差しかかったところでスタジオの外の廊下に移動し、着替えを手早く済ます様子がカメラで捉えられていたのも、ファンにとって心温まる場面だったのではないだろうか。歌っている時だけでなく、さり気ない瞬間にも飾らないimaseの魅力が滲み出ていたのも、このオンラインライブの見どころだった。
音を感じながら踊る楽しさを全身で示していた「NIGHT DANCER」、彼の存在が幅広い人々の間に広がるきっかけとなった「Have a nice day」で締め括られた『imase ONLINE LIVE “POP ROOM”』。全曲を披露し終えた後には、2023年3月30日に渋谷WWWで初の有観客ライブ『POP OVER』を開催することが発表された。今回のライブでimaseが吸収したものは計り知れないはず。この経験を活かした有観客ライブとなること必至だ。
— imase (@imase_1109) December 20, 2022
▼【imase】NIGHT DANCER(ONLINE LIVE『POP ROOM』)
■2023年も活躍が期待されるimaseのこれから
高い音楽性とオリジナリティを確立していると同時に、広がり続ける可能性にも期待させてくれるアーティストがimaseだ。
進化し続ける姿を見逃さないためにも、最新情報をつねにチェックすることをお勧めする。
TEXT BY 田中 大
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