映画『ONE PIECE FILM RED』に登場するキャラクター、世界の歌姫・ウタの歌唱を担当し、主題歌「新時代」は全世界1位を記録するなど大ヒットしたAdo。「うっせぇわ」の大ヒットをきっかけに注目を集めるAdoの音楽キャリア、人気楽曲等、その魅力を追う。
■歌い手・Adoの輝かしい軌跡
Ado(読み:あど)
・生年月日:2002年10月24日
・好きな食べ物:寿司
・ファンサイト名称:Adoのドキドキ秘密基地
・OFFICIAL SITE https://www.universal-music.co.jp/ado/
・Twitter https://twitter.com/ado1024imokenp
・TikTok https://www.tiktok.com/@ado1024osenbei
・YouTube https://www.youtube.com/@Ado1024
・FUNCLUB SITE https://ado-dokidokihimitsukichi-daigakuimo.com/
「地味で内気で根暗でクラスの端っこで絵を描いているような人間だったと思います」
そう語る、小学生時代。当時の夢は、漫画家かイラストレーター。
ニンテンドー3DSでニコニコ動画を視聴できるソフト『ニコニコ』の配信が始まったことをきっかけに、当時3DSをプレイしていたAdoは『ニコニコ』にのめり込み、顔を出さずとも歌声や音楽を発信できるボーカロイド楽曲や、歌い手の文化に惹かれていった。
この文化との出会いをきっかけに、Adoの心に変化が起こる。元々歌うことは好きで、自分自身に自信はなくとも、歌には自信が持てたAdoは、想いを発信できるようになりたい、存在を知ってほしいと思うようになり、14歳の頃から歌ってみた動画の投稿を開始。
録音場所は自宅のクローゼット。マイクなどの機材を揃え、壁には吸音材などを貼るなど、すべて自分で用意。そして、2017年1月10日、Adoとしてニコニコ動画にクワガタPの「君の体温」を投稿した。
▼【初投稿】君の体温 歌ってみた【Adovance】
“Ado”という名前の由来は、小学校の国語の授業で出会った、狂言(または能)の世界にもちいられる“シテ”と“アド”から。最初は、この言葉の持つ響きのカッコ良さに惹かれて名乗っていたが、後に主役のシテを支えるのが脇役のアドだという言葉の意味を知ると、“歌を通して、聴いてくれる人を支える存在になりたい”という強い思いが備わった。
2018年3月2日に投稿した、和田たけあきの「キライ・キライ・ジガヒダイ!」は本人が知らぬところでTikTok経由で浸透。
▼キライ・キライ・ジガヒダイ!歌ってみた【Adoballoon】
また、2019年12月16日にフィーチャリングとして参加した、くじらの「金木犀」をきっかけに様々なクリエイターの耳を射止めることに。
▼金木犀 feat.Ado (Official Video)
jon-YAKITORY「シカバネーゼ」へのフィーチャリング参加、syudou「邪魔」の歌ってみた動画などが拡散され、知名度を上げたAdoは、2020年10月23日に配信シングル「うっせぇわ」でメジャーデビュー。
▼シカバネーゼ / jon-YAKITORY feat. Ado (Official Video)
▼【オリジナルMV】邪魔 歌いました【Ado】
ボカロPのsyudouが手がけた「うっせぇわ」が発表されると、激しいロックサウンドと攻撃的な歌詞、そして、感情をむき出しにしたボーカルが話題を集め、幅広いメディアで拡散。ストリーミングの総再生回数3億回以上、YouTubeにアップされたMVは2.5億回再生(※2022年12月時点)を記録中だ。
▼【Ado】うっせぇわ
鮮烈なデビュー以降、「レディメイド」「ギラギラ」「踊」といった歌い手としてレンジの広さを見せる多種多様な楽曲を発表し、2022年1月に1stフルアルバム『狂言』をリリース。各チャートで1位を獲得。
同年4月4日には1stライブ『喜劇』を開催。会場は、歌い手のライブを観てかねてより憧れの場所で17歳の時から目指していた場所、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて行われた。
そして、2022年の夏、盛り上がりを見せたのが、原作・総合プロデューサー尾田栄一郎による映画『ONE PIECE FILM RED』だろう。
Adoは、同作品内において、世界の歌姫“ウタ”の歌唱を担当。中田ヤスタカが手がけた主題歌「新時代」が、日本の楽曲として初めて世界で最も再生されている曲のApple Musicデイリーチャート『トップ100:グローバル』1位を獲得。主題歌、劇中歌を収めたアルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』も大ヒットし、全8曲が『トップ100:グローバル』にランクイン。かつ、「新時代」「私は最強」「逆光」「ウタカタララバイ」においてはトップ10入りを果たす。なお、先日発表された2022年の年間チャートにおいても好成績を記録し、アーティストチャート『Billboard JAPAN Artist 100』では首位を飾っている。
2022年8月11日、2ndワンマンライブ『カムパネルラ』を埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催。10月にはアメリカの名門音楽レーベル“ゲフィン・レコード”とのパートナーシップを締結。メジャーデビューから2年という歳月を濃密なものとし、世界的な知名度を誇る歌い手へと成長しているのがAdoである。
■「うっせぇわ」で衝撃デビュー。観衆を虜にする“歌力”
◎幅広い曲を歌いこなす歌唱力
小学校低学年の頃からボカロ系の楽曲に親しんできたAdo。歌い手としてもボカロ特有の起伏に富んだメロディ、幅広い音域を使った曲を歌ってきたことで、いろいろなテイストの楽曲を歌いこなすスキルと表現力を身につけてきた。
代表曲「うっせぇわ」も、彼女の個性的なボーカルが存分に活かされた楽曲だ。
▼【Ado】うっせぇわ
“はぁ? うっせぇうっせぇうっせぇわ”という言葉そのものの強さ、それを“がなる”ような歌い方でいっそう印象深くなったサビ、あえて感情を抑えたAメロ、徐々に怒りや憤りが溢れてくるBメロなど、同曲内でもパートごとに多彩な歌声を聴かせており、ファルセットやシャウトを自在に取り入れられるテクニックの高さは脱帽もの。鬱屈した思いを解放し、多くのリスナーに“この曲を聴くとスッキリする”と感じさせた「うっせぇわ」は言うまでもなく、Adoの際立ったボーカリゼーションでしか成立しなかったはずだ。
また、ジャジーで大人っぽい雰囲気の「レディメイド」では、心地よいグルーヴと張りのある高音を響かせ、EDMのテイストを取り入れた「踊」ではドラマチックなメロディを描くと同時にラップも披露。
楽曲ごとに表現を変化させるAdoのボーカルは、経験を重ねるにつれて進化を続けている。
最近では、椎名林檎が提供した「行方知れず」(映画『カラダ探し』主題歌)で、エレクトロとグランジロックが融合した、椎名林檎の個性が色濃く感じられる楽曲をAdoは見事に自分のものにしている。
▼【Ado】行方知れず
彼女のボーカルに対して、椎名林檎は「『なんと理想的などら猫声なんだ』と慄きました」とコメントしている。
◎ライブでのパワフルなパフォーマンス
当初“どんなパフォーマンスを見せるのか?”と注目されたが、会場全体を一瞬で掌握するステージはまさに圧巻。
難易度の高い楽曲を完璧に歌いこなすだけではなく、ライブならではの感情表現も加わり、大きな感動を生み出して見せた。MCはほとんどなく、ひたすら歌い続ける構成だったのが、最初から最後までクオリティが変わらないノドの強さも印象的だった。
ひとりでステージに立ち、圧倒的な歌を響かせる彼女のライブは、歌に向き合うストイックな姿勢に支えられているのだと思う。
■『ONE PIECE FILM RED』関連楽曲でチャートを席巻
◎“世界の歌姫”ウタのキャラクターに説得力を持たせるAdoの歌声
2022年エンタメシーンを象徴するプロジェクトとなった“『ONE PIECE FILM RED』×Ado”のコラボレ―ション。興行収入185億円突破、観客動員数1300万人超。映画『ONE PIECE FILM RED』ヒットの理由のひとつは、間違いなくウタの歌唱パートを担ったAdoの歌声である。
主人公のルフィが憧れる“赤髪のシャンクス”の娘であるウタは、元気で前向きなイメージと、過去には苦しさや悲しさも味わっているキャラクター。様々な思いを抱えながらも、歌によって観客の心を解放するウタの存在は、Adoのこれまでのキャリアと重なるところも多い。
そのことをもっとも強く感じられるのは、主題歌「新時代」。
▼【Ado】新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)
躍動感に溢れたビート、ドラマチックな旋律、 “ここから新しい時代が始まる!”というメッセージを放つ歌詞がひとつになった同曲は、『ONE PIECE』の世界観とAdoの音楽性がかけ合わせることで誕生した。
◎ウタになりきった感情表現
素性を隠してきたウタが、初めて世間に姿を見せるライブを開催。会場にルフィたちを含めた海賊や海軍たちが集結し、ウタに関する衝撃な事実が発覚する──というストーリーから展開される本作。ウタが歌う楽曲が物語と重なり、作品に込めたメッセージやキャラクターたちの思いが増幅されるのも、この映画の魅力だ。
例えば、劇中で何度か披露される「風のゆくえ」(楽曲提供:秦 基博)。運命に翻弄されながら、時に絶望に包まれても“私が消え去っても 歌は響き続ける”という決意を歌い上げたこの曲は、ストーリーの展開によって印象が少しずつ変化する。それはもちろん、歌い手としての自分のエゴを抑え、“ウタ”として表現しきったAdoのボーカルの賜物だ。
▼【Ado】風のゆくえ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)
◎豪華な製作陣とのコラボであらたな一面も
「私は最強」(楽曲提供:Mrs. GREEN APPLE)、「逆光」(楽曲提供:Vaundy)、「ウタカタラライバイ」(楽曲提供:FAKE TYPE.)、「Tot Musica」(楽曲提供:澤野弘之)、「世界のつづき」(楽曲提供:折坂悠太)など、音楽シーンを代表するアーティストとのコラボが実現。
▼【Ado】私は最強 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)
▼【Ado】逆光(ウタ from ONE PIECE FILM RED)
▼【Ado】ウタカタララバイ(ウタ from ONE PIECE FILM RED)
▼【Ado】Tot Musica(ウタ from ONE PIECE FILM RED)
▼【Ado】世界のつづき(ウタ from ONE PIECE FILM RED)
これまではボカロPの提供曲がメインだったが、ロック、エレクトロ、バラードからヒップホップまで幅広いジャンルの楽曲を歌ったことでAdoは、自らのボーカル表現を大きく広げたはず。彼女のあらたな一面が感じられたと同時に、この先の音楽性にも良い効果を与えることになりそうだ。
■押さえておきたい、注目&人気5曲
「踊」
発売日:2021年4月27日
作詞:DECO*27
作曲:Giga、TeddyLoid
“半端ならK.O. ふわふわしたいならどうぞ”という官能的なフレーズからはじまるダンスチューン。エキゾチックな雰囲気のサウンド、ド派手に飛び回るビート、自由奔放なメロディが響き合う「踊」は、Adoにとっても新機軸だった。しなやかなグルーヴを描き出すフロウ、緻密に重ねられたコーラスなど、様々な歌の表現が反映され、聴くたびにあらたな発見があるのもこの曲の魅力だ。
「ギラギラ」
発売日:2021年2月14日
作詞・作曲:てにをは
言葉を丁寧に連ねながら、切実なメッセージへと結びつける。「ギラギラ」はAdoの歌心が真っ直ぐに伝わってくる楽曲だ。主人公は“己の醜悪さに惑う”と自分を卑下する女の子。自身のコンプレックスと向き合いながら、最後には“ギラついていこう”と決心するまでの感情の動きを描いた歌詞は、10代~20代の女性を中心に強い共感を生み出した。まさに聴く人の人生に寄り添う名曲と言えるだろう。
「レディメイド」
発売日:2020年12月24日
作詞・作曲:すりぃ
ビッグバンド・ジャズの要素を取り入れた華やかなサウンド、憂いとシックな佇まいを共存させたメロディが印象的なメジャー2作目の配信シングル。「うっせぇわ」とはまったく違うテイストの「レディメイド」によってAdoは、歌い手としてのポテンシャルの広さをしっかりと示した。“舌に乗った苦い感情ばかりが発火して”に象徴される、憤りや鬱屈を抱えながら生きる女性を描いた歌詞は、「うっせぇわ」のアフターストーリーとして解釈することもできそうだ。
「会いたくて」
発売日:2021年8月12日
作詞・作曲:みゆはん
編曲:みきとP
一瞬のブレスとアコギの響きに導かれるのは、“少しずつ分かり始めた/君の癖”というライン。映画『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~ファイナル』挿入歌に起用された「会いたくて」は、Adoにとっては初めての王道のバラードナンバーだ。好きな人に会いたいというピュアな思いを丁寧に紡ぎ、恋愛の切なさ、痛み、愛らしさを生々しく描き出している。壮大なストリングスも、歌に宿った感情をしっかりと際立たせている。
「心という名の不可解」
発売日:2022年1月17日
作詞 作編曲:まふまふ
樹林伸原作、浜辺美波主演で話題を集めた、月10ドラマ『ドクターホワイト』主題歌で “まふまふ”が提供した「心という名の不可解」は、繊細にして緻密なピアノと“君が瞬きをする音”というラインで始まるアッパーチューン。“判別不能な感情”をテーマにした歌詞とリンクし、楽曲が進むにつれて色合いを変えるバンドサウンドも絶品だ。中心にあるのはもちろんボーカル。心の揺れをリアルに体現する歌は、まさにAdoの真骨頂だ。
■初の全国ツアー開催!さらなる飛躍が期待される2023年
2022年12月から2023年1月にかけて『Ado LIVE TOUR 2022-2023「蜃気楼」』を開催、活動の幅を広げている。令和の歌姫の座に上り詰めた彼女は2023年以降も引き続き世界に向けてさらなる飛躍を果たすことになりそうだ。
TEXT BY 森 朋之
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