■yamaを知らなかったリスナー層からも着実に支持を集める「色彩」
yama「色彩」がロングヒットの兆しを見せている。
10月2日に配信リリース、11月9日にCDリリースされたこの曲は、テレビアニメ『SPY×FAMILY』第2クールエンディング主題歌。男女問わず幅広い世代に広がるアニメの人気と共に、これまでyamaを知らなかったリスナー層からも着実に支持を集めている。
この「色彩」という曲の成り立ちについて、yamaというアーティストの現在地について、改めて解説したい。
「色彩」を聴いて、まず誰もが惹かれるのはyamaの透明感ある歌声だろう。リズミカルで軽快なメロディに乗せて、巧みなヴォーカルを聴かせる。“実は奇跡のような毎日を 当たり前に手を差し伸べあって過ごしている”という歌詞のフレーズも心に残る。
父のロイドはスパイ、娘のアーニャは他人の心を読める超能力者、母のヨルは暗殺者という、お互いの素性を知らないまま任務のために“仮初めの家族”として暮らすフォージャー家の姿を描くホームコメディの『SPY×FAMILY』。第2クールのストーリーは、不思議な能力を持った白い大きな犬・ボンドがフォージャー家の一員となるところから始まる。
■主人公たちのチャーミングなキャラクターを優しく包み込むような一曲
エンディング主題歌として流れる「色彩」は、『SPY×FAMILY』の心温まるストーリー、日々奮闘する主人公たちのチャーミングなキャラクターを優しく包み込むような一曲になっている。“きっと大人はそれらしくするのでかかりきりにするんだ”という歌詞も印象的。テロや国同士の対立といったスリリングな社会情勢を背景にしつつ、アーニャの視点から家庭や学校を舞台に描かれるコミカルなシーンも魅力の『SPY×FAMILY』にピッタリだ。
■「色彩」の作詞・作曲・編曲を手掛けたのはクリエイターのくじら
この「色彩」の作詞・作曲・編曲を手掛けたのはクリエイターのくじら。2020年4月にリリースしyamaが一躍その名を世に知らしめるきっかけとなった初のオリジナル曲「春を告げる」の作り手だ。
その後も「a.m.3:21」などいくつかの楽曲を手掛け抜群の相性の良さを見せていたが、ふたりがタッグを組むのは「あるいは映画のような」以来、約2年ぶりとなる。その間にyamaは『the meaning of life』『Versus the night』という2枚のアルバムをリリース、くじらは初めて全曲を自身で歌唱したアルバム『生活を愛せるようになるまで』をリリースするなど、それぞれアーティストとして着実にキャリアを重ねてきた。
■『SPY×FAMILY』原作者の遠藤達哉などアニメ制作サイドからのオファーがきっかけ
「色彩」の制作にあたってyamaとくじらの久々のタッグが実現したのは、『SPY×FAMILY』原作者の遠藤達哉などアニメ制作サイドからのオファーがきっかけだったという。「春を告げる」に通じるテイストもありつつ、明るく華やかな曲調が特徴のこの曲。1分40秒頃の“間違ってる涙なんてない”という歌詞に応えるように「ワン!」という犬の吠え声が入っているのもポイントだ。
曲の聴きどころはなんと言っても歌声の表現力だろう。メロディの上下の跳躍も激しく、言葉数も多く、ラップに近いリズミカルなところもある、とても難易度の高いメロディを歌いこなしている。筆者は10月8日にZepp DiverCityで開催された全国ツアー『“the meaning of life“ TOUR 2022』のファイナル公演でこの曲が初披露されたときも目撃しているのだが、思うようなライブができず苦い後悔の残った前年のZepp DiverCityでのライブでのリベンジを果たすべく強い思いを持って立ったステージで、晴れやかな様子でこの曲を歌っていた姿が印象に残っている。パフォーマンスも圧巻だった。
11月11日には『THE FIRST TAKE』に登場し、この「色彩」を披露。ストリングスを交えた華やかなアレンジと共に表現力豊かな歌声を響かせている。
以前に筆者のインタビューでもyama自身が「大きなターニングポイントだった」と語っていたが、2022年はyamaにとって、挫折の体験と内面の葛藤を乗り越える大きな変化を果たした一年だった。
■自らの思いを、自らの声で届ける覚悟が宿ってきていた
顔を明かさず、謎めいた存在としてシーンに登場したyama。しかし、ライブの場でオーディエンスと向き合う中で、そのアーティストとしてのマインドは目覚ましく変わっていった。自らの思いを、自らの声で届ける覚悟が宿ってきていた。
11月25日には最新ライブ映像『yama 2022 Live / Life is Beautiful』と、その制作風景に迫るドキュメンタリー『yama 2022 Documentary / Life is Beautiful』のPrime Videoでの独占配信がスタートした。こちらもyamaのアーティストとしての実像を包み隠さず伝えるような映像作品だ。
■2ndアルバム『Versus the night』にはyama自身が初めて作詞・作曲を手掛けた「それでも僕は」を収録
こうした経験の中で、yamaは、シンガーソングライターとしても新たな一歩を踏み出している。2ndアルバム『Versus the night』にはyama自身が初めて作詞・作曲を手掛けた「それでも僕は」を収録。さらに「色彩」のカップリングには、やはりyamaの作詞・作曲による「愛を解く」が収録。この曲のMVは「春を告げる」のミュージックビデオのイラストも担当している“ともわか”が手掛けている。
真摯に音楽に向き合い、アーティストとして着実な成長を遂げてきたyama。「色彩」はそのキャリアにとっても大切な一曲になりそうだ。
TEXT BY 柴那典
楽曲リンク
リリース情報
2022.11.09 ON SALE
SINGLE「色彩」
yama OFFICIAL SITE
https://www.sonymusic.co.jp/artist/yama/