想いを伝えられずに散ってしまった恋。交際していたのに、別れなければならなくなってしまった恋。誰もが一度は、切ない失恋を経験したことがあるのではないだろうか。
そんなときに、寄り添ってくれるのが“失恋ソング”。とことん泣きたいときにはじわっと胸に染みる楽曲を、明るく前を向きたい時には背中を押してくれる楽曲を聴くと良いだろう。
そこで今回はおすすめの失恋ソング20曲を紹介。あなたの胸に刺さる楽曲は見つかるだろうか。
■泣ける、歌詞が染みる、心に刺さる失恋ソング20選
01.「猫」DISH//
02.「愛の賞味期限」tuki.
03.「メトロノーム」米津玄師
04.「楓」スピッツ
05.「ハッピーエンド」back number
06.「Film out」BTS
07.「雪の華」中島美嘉
08.「サウダージ」ポルノグラフィティ
09.「恋人ごっこ」マカロニえんぴつ
10.「First Love」宇多田ヒカル
11.「ドライフラワー」優里
12.「別の人の彼女になったよ」wacci
13.「10月無口な君を忘れる」あたらよ
14.「FOREVER」ちゃんみな
15.「Pretender」Official髭男dism
16.「私じゃなかったんだね。」りりあ。
17.「いつか」Saucy Dog
18.「勿忘」Awesome City Club
19.「ランデヴー」シャイトープ
20.「たぶん」YOASOBI
「猫」DISH//(ディッシュ)
あいみょんが作詞作曲したことでも知られるDISH//の「猫」。
あいみょんは後に、浜辺美波と北村匠海(DISH//のVo、Gu)がW主演をつとめた2017年公開の映画『君の膵臓をたべたい』にインスピレーションを受けて制作したと明かしている。ちなみに、同作で北村が演じたのは大切な人を亡くしてしまう高校生。
別れた恋人を“猫”にたとえることで、少し現実逃避をしようとする男性の歌だと思っていたが…。この制作エピソードを知ると、人間じゃなくていい“猫”でもいいからまた会いたいと願わずにはいられない大切な人を亡くした喪失と悲しみに感じられ、また違った解釈ができる。切ないなかにも温かみを感じられる一曲だ。
「愛の賞味期限」tuki.(ツキ)
tuki.が2024年に発表した「愛の賞味期限」。デビュー曲「晩餐歌」のアンサーソングとして制作された。“TikTokばっか見てんじゃないよ”という歌詞にドキッとした人もいるはず。目の前の相手ではなくスマホばかり見ているうちに、愛の賞味期限は切れてしまうかもしれない。
韻を踏んだリリックや流れるようなメロディなど、ソングライターとしての急速な成長ぶりも感じさせる。
「メトロノーム」米津玄師(よねづ けんし)
2015年リリースの3rdアルバム『Bremen』に収録されている「メトロノーム」。筆者は、長年交際した恋人たちの“別れ”を描いた楽曲だと解釈している。
同じテンポで歩き始めたふたりの間に、いつしかズレが生じていく。しかし、お互いの存在が当たり前になっているため、別れを決断できずにいた。別れ方がわからない、という気持ちもあったのではないだろうか。
だが、見て見ぬふりをしてきたズレが、次第に取り戻せないほどの大きなズレになってしまう。仕方がない別れだったと心では思いながらも、未練を捨てきれない複雑な心情を丁寧に綴っている。
「楓」スピッツ
1998年発表の8thアルバム『フェイクファー』からシングルカットされたナンバー。BPM80ほどのゆったりとしたテンポは、“さよなら”を告げた君から離れてゆく主人公の足取りを思わせる。
曲名である“楓”は歌詞に登場せず、君と僕の背景も詳しくは語られない。けれど、いくつもの季節を共に過ごしてきたでだろう、ふたりの深い絆が思い浮かぶ。そして君を失った僕が、計り知れないほどの悲しみを抱いていることも。
2022年にTVドラマ『silent』の挿入歌として強い印象を残した他、多くのドラマで使用されている。
「ハッピーエンド」back number(バック ナンバー)
福士蒼汰と小松菜奈が出演した映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の主題歌として書き下ろされた「ハッピーエンド」。
あなたを心から好きな私は、あなたを大切に思うからこそ笑顔で別れを告げる。声を振り絞るように“大丈夫”と繰り返し、思わず漏れた本音は“なんてね”という言葉で隠そうとする。
心の中だけに渦巻く激しい感情を写し取った言葉の一つひとつが悲しく響き、逆説的なタイトルが持つ意味をひしひしと感じさせる。
「Film out」BTS(ビーティーエス)
back numberがプロデュースしたBTSの日本オリジナル楽曲「Film out」。メンバーのJUNG KOOKが制作に加わり、『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』の主題歌となった。記憶のなかにだけ存在する愛しい人の姿を一人の部屋で思い浮かべる状況を、映写になぞらえて切なく歌う。
とある部屋でメンバーが過去の記憶をたどるような謎めいたMVは、ファンのなかで多様な解釈を生んだ。
「雪の華」中島美嘉(なかしま みか)
2003年10月1日にリリースされた中島美嘉の10thシングル。2019年には、登坂広臣と中条あやみのW主演で、同曲をモチーフとした実写映画も公開された。
まっすぐに“キミ”を想う“僕”の気持ちを描いた「雪の華」は、言わずと知れた冬の名曲。自分の幸せだけでなく、相手のために何かしたいと思えるほどの深い愛を知り、何気ない一瞬一瞬に幸せを噛み締める主人公。ストレートな“失恋ソング”ではないものの、失恋時にはいつだって「雪の華」で描かれているような美しい記憶ばかりが蘇るので、そういった意味で傷心には刺さるものがある。
▼失恋時に染みる曲として「ORION」も名高い
「サウダージ」ポルノグラフィティ
2000年9月にリリースされたポルノグラフィティの4枚目のシングルであり、数々の名曲を生み出すポルノ史上もっとも売り上げたシングルでもある。
タイトルの“サウダージ”とは、郷愁・思慕・切なさなどの意味を持つポルトガル語。自分自身を見失うほどの大恋愛から、卒業しなければならない苦しさ。しかし、“私”は前に進み続けなければならない。女性の精一杯の強がりを描いている。
切ない楽曲ながら、聴くと勇気をもらえるのはなぜだろう。
「恋人ごっこ」マカロニえんぴつ
マカロニえんぴつが、Hondaとのタイアップ企画のために書き下ろしたシングル曲。MVでは、はっとり(Vo&Gu)が俳優の秋田汐梨と恋人同士を演じている。もう恋人ではいられないと理屈ではわかっても、感情はままならない。そんな微妙な関係性を“恋人ごっこ”という曖昧な表現に落とし込む弱さが人間くさくて憎めない。
あえて軽やかさを出したサウンドが終盤で3連のリズムに切り替わり、溢れ出す感情を伝えている。
「ドライフラワー」優里(ゆうり)
優里が2019年にリリースしたデビュー曲「かくれんぼ」のシチュエーションを、女性サイドの目線で綴ったバラード。
消えない想いを花にたとえ、いつかこの想いもドライフラワーのように色褪せると自分に言い聞かせるように歌う。“顔も見たくないからさ”、“大嫌いだよ”など拒絶の言葉に、どうしても消し切れない恋心が滲んで切ない。
アフターストーリーを男性目線で描く「おにごっこ」もあわせて聴きたい。
「別の人の彼女になったよ」wacci(ワッチ)
2018年のリリース後、じわじわと注目を高めて今ではバンドの代表曲となった「別の人の彼女になったよ」。恋愛における複雑な感情と関係性をたった一文で表したタイトルが印象的。
ダメな元カレと大人の今カレ、ふたりのエピソードの対比から主人公の心がどちらに傾いているのかがわかってしまう。良し悪しでは計れない恋愛の機微を描くストーリーが多くの共感を集めた。
「10月無口な君を忘れる」あたらよ
あたらよ初のオリジナル曲として2020年に発表された「10月無口な君を忘れる」。
ひとみ(Vo)の「おはよ。」から始まるセリフに圧倒的なリアリティがあり、一気に歌の世界に引き込む。2番になると、まーしー(Gu)がところどころで歌声を重ね、“無口な君”の想いを伝える。
男女ボーカルの特性を活かした構成が、楽曲に奥深い情感をもたらしている。
「FOREVER」ちゃんみな
怒りを伴う別れを描く「FOREVER」。趣里主演のドラマ『モンスター』の主題歌として書き下ろされた。
ちゃんみならしい痛烈なリリックが心にズバズバ刺さり、自分が主体となって決断を下すことに意味があると気づかせてくれる。
相手に言い訳の余地を与えず、潔く去る姿が見事。身勝手な相手とは、永遠にさよなら。
「Pretender」Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)
Official髭男dismの名を爆発的に広めた2019年リリースのシングル。映画『コンフィデンスマンJP ロマンス編』の主題歌となり、各チャートの記録を塗り替えるロングヒットを記録。どれほど恋い焦がれても届かない想い、諦めと情熱の間でもがく心の動きをエモーショナルに描く。“片思い”という普遍的なテーマを、ここまで新鮮でドラマチックに表現できるものかと人々に驚きと感動を与えた。
やるせない思いをなんとか飲み込もうとした末に出てくる短いフレーズ、“君は綺麗だ”の悲しさと美しさに圧倒される。
「私じゃなかったんだね。」りりあ。
りりあ。が「失恋したので曲にしました」という言葉とともに紹介した「私じゃなかったんだね。」。“思わせぶりがうまい”相手に振り回されてしまった女の子。歌い出しは独り言のように感情を抑えて表現しつつ、転調パートから徐々に本音があふれ出す。
そしてバックのサウンドが消えて歌だけになる瞬間、今にも泣き出しそうな声色が胸を締めつける。
「いつか」Saucy Dog(サウシー ドッグ)
Saucy Dogが2017年に発表した初ミニアルバム『カントリーロード』の収録曲。
歌詞には、島根県松江市出身の石原慎也(Vo&Gu)が学生時代に目にしていた景色が描かれている。その思い出が蘇るたび、同じ景色を共有した“君”の不在が、心に深く突き刺さる。
時の流れとともに、街も人も変わっていく。それを知って少しだけ大人になった“僕”の成長も感じられる。
「勿忘」Awesome City Club(オーサムシティクラブ)
春の訪れを知らせるという“勿忘草(わすれなぐさ)”をモチーフにした楽曲。菅田将暉と有村架純がダブル主演した映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソングとして制作された。
atagi(Vo&Gu)とPORIN(Vo&Synthesizer)がボーカルを取り、1番と2番でメインのポジションを入れ替える。これにより、別れたふたりが同じ時間に別々の場所で互いを想っているように感じられる。
勿忘草の花言葉は“真実の愛”、“私を忘れないで”。恋の記憶と小さな水色の花が交錯する描写が美しい。
「ランデヴー」シャイトープ
恋の終わりのむなしさを歌う「ランデヴー」。まだ、まどろみのなかにいるような歌い出しから、この主人公が忘れられない恋の記憶から逃げるように日々を過ごしていることがわかる。
時間が巻き戻ることなどないとわかっていながら、もしもの妄想を繰り返してしまう。そのままずっと夢を見たくても、目が醒めてしまう現実。恋人の残像は、やがて光に溶けて消えていく。終盤のエモーショナルな盛り上がりが甘く苦い余韻を残す。
「たぶん」YOASOBI(ヨアソビ)
YOASOBIが楽曲の原作小説を募集する『夜遊びコンテストvol. 1』の大賞作品、しなの著『たぶん』をもとに制作した楽曲。同棲を終えたカップルのエピソードを描く。
久々に訪れた元恋人に、ふと「おかえり」と声をかけてしまう主人公。その言葉は、もうふたりの関係にふさわしくない。
終始クールなトーンを貫くikura(Vo)の歌声は、淡々とした響きのなかに後悔や未練のニュアンスを繊細ににじませている。
■今回紹介した楽曲やアーティストのインタビュー記事も
失恋の苦しさを支えてくれる楽曲たち。思い切り泣きたい時に聴くのもいいだろう。この20曲のなかに、あなたの推し曲は見つかっただろうか。
今まさに恋に悩む人も、恋愛から遠ざかっている人も、失恋ソングを聴きながら自分の心と向き合ってみてほしい。
TEXT BY THE FIRST TIMES編集部