TEXT BY 廿楽玲子
心が傷ついた時、気持ちを静めたい時、感傷に浸りたい時。心が揺らぐ様々な場面で、バラードはそっと寄り添ってくれる。時にひそやかに、時にドラマチックに、ポジティブな言葉や、ちょっと弱気な言葉も乗せて。
ここでは令和の話題曲から時代を超える定番曲まで、心に響くバラードを紹介する。
■恋をすると聴きたくなる切ないバラード
「シンデレラボーイ」Saucy Dog
「点描の唄(feat.井上苑子)」Mrs. GREEN APPLE
「First Love」宇多田ヒカル
「Lemon」米津玄師
「Pale Blue」米津玄師
「ドライフラワー」優里
「猫」DISH//
「カメレオン」King Gnu
「裸の心」あいみょん
「ハッピーエンド」back number
「シンデレラボーイ」Saucy Dog(サウシードッグ)
恋人のような関係になっておきながら、ちゃんと好きになってくれない男性へのいらだちを歌う複雑な恋の歌。ボーカル&ギターの石原慎也が初めて女性目線で書いた曲で、執着と見限りの間で揺れ動く女心を生々しい筆致で描く。
“シンデレラボーイ”というロマンチックな言葉の中に隠された毒に気づいた時、どうにもやるせない気分になる。
「点描の唄(feat.井上苑子)」Mrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル)
ひと夏だけの恋を描いた映画『青夏 きみに恋した30日』(2018年)の挿入歌。
恋するふたりが、このまま時が止まればいいのにと強く願いながら、終わりの時を見据えている。形あるものはいつか壊れるということを10代の頃から歌ってきた大森元貴(Vo、Gu)が、自身の人生観と映画のストーリーをリンクさせて書いた鮮烈な青春ソング。
「First Love」宇多田ヒカル(ウタダ ヒカル)
人生で一度だけの初恋、その終わりを描く喪失の歌。当時10代なかばの宇多田ヒカルが、英語と日本語をナチュラルに織り交ぜた新感覚のスタイルで、悲しみの中で立ちすくむ心を詩的に表現した。
この曲を収録した1999年発売の同名アルバム『First Love』は、日本国内のアルバムセールス歴代1位を記録している。
「Lemon」米津玄師(ヨネヅケンシ)
2018年放送のTBS系 金曜ドラマ『アンナチュラル』主題歌として描き下ろされた楽曲。
米津玄師はこの曲の制作中に祖父を亡くしたことを明かしており、生きている限り忘れられない“恋しい人”を思う気持ちに深く寄り添った言葉が並ぶ。
2018年を代表するヒット曲で、MVが7億再生を突破するなど数々の記録を打ち立てた。
「Pale Blue」米津玄師(ヨネヅケンシ)
離婚から始まる恋を描く、2021年放送のTBS系 金曜ドラマ『リコカツ』の主題歌。
“さよなら”のシーンから始まるものの、少しずつ前向きな言葉が増え、最後は不思議と開かれた未来を感じさせる。重厚なストリングスのアンサンブルや、終盤でリズムが切り替わる構成など、ドラマチックなアレンジも聴きどころ。
「ドライフラワー」優里(ユウリ)
SNSで“かくれんぼ現象”と言われるブームを巻き起こしたデビュー曲「かくれんぼ」のアフターストーリーを女性目線で描いた歌。別れた恋人への心残りを、枯れてもなお美しさを失わない花に重ねてエモーショナルに歌う。
『THE FIRST TAKE』でこの曲を披露したことから一気に火がつき、その再生回数は1億回を突破している。
「猫」DISH//(ディッシュ)
自分のもとを去った恋人に対して、気まぐれな猫のようにまたふらっと帰ってきてほしいと願う、切なくもいじらしい失恋ソング。
あいみょんが作詞作曲を手がけ、リリースから3年経った2020年に『THE FIRST TAKE』でアコースティックバージョンを披露したことで大きな注目を集めた。
少年と大人の狭間にいる北村匠海(Vo)の魅力が最大限に発揮された一曲。
「カメレオン」King Gnu(キングヌー)
気持ちの通じなくなった恋人を、まるで別人のように感じてしまう悲しさを“難解なミステリー”と表現した傷心のラブソング。
2022年のフジテレビ系 ドラマ『ミステリと言う勿れ』(ミステリというなかれ)の主題歌として書き下ろされ、哀愁溢れるメロディで物語を彩った。終盤の転調から一気に緊張感を高めるアレンジが、主人公の混乱を生々しく語っている。
「裸の心」あいみょん
2020年のTBS系 火曜ドラマ『家政夫のナギサさん』の主題歌に起用されたフォーキーなラブソング。
たくさんの経験とともに少しずつこわばっていった心が、あらたな出会いとともにほぐされていく様子をノスタルジックなメロディで描いている。
恋の始まりはもちろん、恋に迷ったときも自分の素直な気持ちを取り戻せる一曲。
「ハッピーエンド」back number(バックナンバー)
笑顔で別れを受け入れる女性の心を描いた失恋ソング。別れたくない、私を好きでいてと本気で願う気持ちを、“なんてね”なんて軽い言葉で打ち消す裏腹な態度が切ない。
“ハッピーエンド”という看板に偽りあり、失恋したらひとりの部屋で聴くのがおすすめ。2016年の映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の主題歌に起用された。
■誰かを想う気持ちにグッとくる!感動バラード
「虹」菅田将暉
「Wherever you are」ONE OK ROCK
「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」MISIA
「糸」中島みゆき
「雪の華」中島美嘉
「魔法の絨毯」川崎鷹也
「ひまわりの約束」秦 基博
「栄光の架橋」ゆず
「奏(かなで)」スキマスイッチ
「愛をこめて花束を」Superfly
「虹」菅田将暉(スダ マサキ)
石崎ひゅーいが作詞作曲を手がけ、2020年の映画『STAND BY ME ドラえもん 2』主題歌に起用されたプロポーズソング。
優しくおだやかな曲調でありながら、サビで“一生”という重めの言葉を重ね、一緒に人生を送る覚悟や責任を伝える。
照れを取り払ってまっすぐに愛を表現した姿勢に、菅田将暉と石崎ひゅーいの“ドラえもん愛”も感じる。
「Wherever you are」ONE OK ROCK(ワンオクロック)
2010年のアルバム『Nicheシンドローム』収録曲で、2016年にドコモのCMソングに起用されて広く親しまれたロックバラード。
壮大なメロディでストレートに愛を伝えるロマンチックな歌で、結婚式の定番曲となった。日本語ではちょっと気恥ずかしい愛の言葉も、英語メインで歌うことによって自然に聴かせている。
「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」MISIA(ミーシャ)
2018年のTBS系 火曜ドラマ『義母と娘のブルース』の主題歌となったMISIAとGReeeeNの初コラボ楽曲。
壮大なバラードを歌ってきたMISIAが、“あのね 大好きだよ”と小さな子どもが口にするような愛の言葉を歌うのが新鮮だ。恋人、家族、友人など関係性を問わず大切な人に贈りたい普遍的なラブソング。
「糸」中島みゆき(ナカジマ ミユキ)
中島みゆきが1998年に発表し、bank bandや菅田将暉×石崎ひゅーいほか多くのアーティストが歌い継いでいる名曲であり、ウエディングソングとしても定着。
人と人の関係を織物の糸に見立てた表現が、時代を超えて人々の心をとらえている。2020年にはこの曲をもとにした同名映画が制作され、共演した菅田将暉と小松菜奈がのちに結婚した。
「雪の華」中島美嘉(ナカシマ ミカ)
日が早く落ち、空気が冷たくなり、白い雪が舞い始める…そんな冬の情景をふたりの関係を深めるものとしてロマンチックにとらえた冬の定番ソング。
国内外の多くのアーティストにカバーされ、2019年にはこの曲をモチーフにした同名映画が制作された。Reggae Disco Rockersによるミックスバージョンも絶品。
「魔法の絨毯」川崎鷹也(カワサキ タカヤ)
リリースから2年経った2020年にTikTokで人気に火がつき、川崎鷹也の名を広めたラブソング。
アコースティックギター1本で“君”に対する思いと未来への約束を告げる歌で、単なる告白というよりプロポーズを思わせる。実際に川崎鷹也が当時の恋人(今は家族)に向けて書いた曲であり、その親密な空気感がSNSで支持された。
「ひまわりの約束」秦 基博(ハタ モトヒロ)
2014年の映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌として書き下ろされ、子どもから大人まで幅広く愛される歌。
ドラえもんとのび太の友情ソングであり、恋人や家族など互いを思い合うすべての関係性に当てはまる愛情深いメッセージが込められている。高校の音楽の教科書にも採用された。
「栄光の架橋」ゆず
2004年アテネ五輪のNHK公式テーマソングに使用されたエールソング。ピアノ1本で歌い始め、サビでふたりの歌声が重なり、終盤には力強いコーラスと壮大なオーケストラサウンド、エモーショナルなギターが重なり、クライマックスへと向かう。
静から動へと盛り上がる構成で、合唱曲としても広く親しまれている。
「奏(かなで)」スキマスイッチ
愛する人が成長し、守るべき存在からともに歩んでいく存在へと変わる時の思いを描く歌。デビュー翌年の2004年に発表し、スキマスイッチがブレイクするきっかけとなった。
遠距離恋愛の始まりとも、子どもの巣立ちとも受け取れる内容で、成長とは喜びと寂しさを同時にもたらすものであることを教えてくれる。多くのアーティストがカバーし、卒業ソングとしても人気。
「愛をこめて花束を」Superfly(スーパーフライ)
2008年のTBS系 金曜ドラマ『エジソンの母』の主題歌に起用され、越智志帆(Vo)の豊かな表現力を広く知らしめた楽曲。自分を支え続けてくれた人への感謝を伸びやかな歌声で伝えている。
人生の節目を彩る歌で、越智志帆が1年間の休養明けに『第68回NHK紅白歌合戦』で披露した際はとりわけ感動的だった。
■定番の曲から最新曲まで心を掴まれるバラードを
バラードを聴く静かな時間は、心が落ち着き、自分と向き合うきっかけになることもある。
めまぐるしく過ぎていく日常の中で、そんな時間も時には大切。今の自分が共感できる歌を探してみよう。