TEXT BY レジー(音楽ブロガー/ライター)
■Ado旋風に何か言い添えるとすれば…
あまりにもAdoの曲ばかりが上位を占めていて特に言うこともないので、今月の当連載は休載とさせていただきます。来月のチャートをお楽しみに!
なんて冗談から始めたくなるくらい、見渡す限りのAdo、Ado、Ado…となった8月の10代トレンドチャート。映画『ONE PIECE FILM RED』と連動した作品『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』に収録されている「新時代」「逆光」「私は最強」が1位から3位までを独占し、8曲の収録曲が全て20位以内にランクインするというとんでもない状況になりました。
これまでも(そして現在も)このチャートにはSaucy Dogや優里、Tani Yuukiの楽曲が多数ランクインしたり、他のプラットフォームでも大物アーティストのストリーミング解禁に伴いその楽曲がトップ50に多数と並んだりと、ある種の“勝者総取り”は今の音楽シーンでよく見られる光景ではあります。しかし、同タイミングでリリースされた新曲がこういった形で上位を独占するというケースは、ストリーミングサービスが音楽ファンの間で定着したここ数年においてほとんどなかったのではないでしょうか。
今回のAdoのヒットは、映画の内容との連動、リリースのタイミング(MVの発表時期の妙)、そしてもちろん楽曲とボーカルの力など、様々な要素が絡み合ったがゆえのものです。今後同様の形でのヒットが頻繁に起こることも早々ないでしょう。「うっせえわ」に続いて規格外の社会現象を引き起こしたAdoのスター性は、後世に語り継がれるレベルのものかもしれません。
■Adoのヒットにより見えたJ-POPの“方程式”
その「うっせえわ」がボカロPのsyudoによるものだったのに対して、『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』に収録された楽曲群はJ-POPのメインストリームで活躍する作家・ミュージシャンたちによって作られたものが中心。そういった座組みによる間口の広さも今回のヒットに大きな影響を与えていると思いますが、ここでは今作の爆発以降のJ-POPシーンについて考えてみたいと思います。端的に言うと、Adoのヒットが当面のJ-POPにひとつの“正解”を与えるかもしれないということです。
例えば、Apple Musicのグローバルチャートでも1位をとるほどに聴かれている「新時代」。中田ヤスタカが手がけたこの楽曲のキラキラした音づかいは、The Weekndの楽曲にも通じるものがあります。
また、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴による「私は最強」はまさに“ミセス節”とでも言うべき趣で(今度彼らのセルフカバーバージョンが発表されるというのも納得です)、バンドサウンドとストリングスの組み合わせというJ-POP誕生からのフォーマットをより現代的に更新したものになっています。
これらの楽曲の雰囲気や手法は、今のところそこまで使い古されたものではないゆえに、“ヒットの方程式”的に多くのアーティストの参考にされていくのではないでしょうか。
ひとつの楽曲、ひとりのアーティストのブレイクを通じてスタンダードが書き換えられていく、というのがJ-POPの歴史の常です。Adoのヒットはそんな流れを生むきっかけになるのではないかと思います。
■その他の動きも軽く…とは言うものの
Adoの大量ランクイン以外では、先月からのヒット曲が比較的堅調な今回のチャート。7月の1位だったwacci「恋だろ」は14位、その上の13位にSEKAI NO OWARI「Habit」、16位にはOfficial髭男dism「ミックスナッツ」と並びます。
気になるところで言えば、22位のIVE「After LIKE」でしょうか。先進的なサウンドにディスコの雰囲気を混ぜ込んだ今回の楽曲は、さらなるファン層の拡大が期待できそうです。
以上、8月のLINE MUSIC『10代トレンドランキング』についてお届けしました。来月はAdoの楽曲がどんなチャートアクションを見せているのか、そして他にはどんな動きがあるのか、注目したいと思います。
【2022年8月 LINE MUSIC 10代トレンドランキング】
01.「新時代」Ado
02.「逆光」Ado
03.「私は最強」Ado
04.「W/X/Y」Tani Yuuki
05.「ウタカタララバイ」Ado
06.「風のゆくえ」Ado
07.「Tot Musica」Ado
08.「栄光の扉」平井 大
09.「ダンスホール」Mrs. GREEN APPLE
10.「左右盲」ヨルシカ
11.「世界のつづき」Ado
12.「愛とか恋とか」Novelbright
13.「Habit」SEKAI NO OWARI
14.「恋だろ」wacci
15.「青と夏」Mrs. GREEN APPLE
16.「ミックスナッツ」Official髭男dism
17.「ビンクスの酒」Ado
18.「DIE (feat. KZHI)」KOTA
19.「Crayon」ZOT on the WAVE & Fuji Taito
20.「エジソン」水曜日のカンパネラ
21.「POP!」NAYEON
22.「After LIKE」IVE
23.「melt bitter」さとうもか
24.「Hanabi」Louis Vision, Kaikun & 三浦ひな子
25.「韻波句徒」CHEHON
26.「死ぬのがいいわ」藤井 風
27.「魔法にかけられて」Saucy Dog
28.「カラノココロ (Matt Cab & MATZ Remix)」Anly
29.「結」Saucy Dog
30.「愛言葉」Tani Yuuki
31.「ねぇ」YOAKE
32.「Two as One」Kis-My-Ft2
33.「Pink Venom」BLACKPINK
34.「チグハグ」THE SUPER FRUIT
35.「ベルベットの詩」back number
36.「シンデレラボーイ」Saucy Dog
37.「Celebrate」TWICE
38.「バニラ」きゃない
39.「Start Over」THE BEAT GARDEN
40.「おかえり」Tani Yuuki
41.「チカラノカギリ」GENERATIONS from EXILE TRIBE
42.「それを愛と呼ぶなら」Uru
43.「雨燦々」King Gnu
44.「愛を伝えたいだとか」あいみょん
45.「ブルーアンビエンス (feat. asmi)」Mrs. GREEN APPLE
46.「君がいない世界」都識
47.「いつか」Saucy Dog
48.「Talking Box (Dirty Pop Remix)」WurtS
49.「3636」あいみょん
50.「泣きたい夜」AYANE
51.「Bad Decisions」benny blanco, BTS, Snoop Dogg
52.「Talk that Talk」TWICE
53.「なんでもないよ、」マカロニえんぴつ
54.「君の隣で。」りりあ。
55.「ベテルギウス」優里
56.「あぁ、もう。」Saucy Dog
57.「BANANA」CREAM
58.「未来図」マルシィ
59.「レオ」優里
60.「怪獣の花唄」Vaundy
61.「Hype Boy」NewJeans
62.「今更だって僕は言うかな」Saucy Dog
63.「YOKAZE」変態紳士クラブ
64.「BONBON GiRL」SARM
65.「888月 ~夏にも程がある~」リサイタルズ
66.「スパークル」幾田りら
67.「ただ声一つ」ロクデナシ
68.「napori」Vaundy
69.「花火」aiko
70.「Attention」NewJeans
71.「異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ)」星野 源
72.「花の塔」さユり
73.「ドライフラワー」優里
74.「グッドな音楽を」ねぐせ。
75.「NIGHT DANCER」imase
76.「優しさに溢れた世界で」Saucy Dog
77.「FOREVER 1」Girls’ Generation
78.「堕天」Creepy Nuts
79.「しわくちゃな雲を抱いて」DISH//
80.「Yet To Come」BTS
81.「どうして (feat. 野田愛実)」高瀬統也
82.「I’m a mess」MY FIRST STORY
83.「You」多部大
84.「水平線」back number
85.「喜劇」星野 源
86.「Wing Wing」Kep1er
87.「Cinema (feat. Memento Mori & 武蔵)」O.A.KLAY
88.「I’m not myself when I’m around you (Feat. 10CM)」DINDIN
89.「Y (Please Tell Me Why)」Freestyle
90.「恋人ごっこ」マカロニえんぴ
91.「Scream」BE:FIRST
92.「Wherever you are」ONE OK ROCK
93.「Never Grow Up」ちゃんみな
94.「FOREVER (feat. Minami)」MC TYSON
95.「Partner」有華
96.「World’s Smallest Violin」AJR
97.「魔法」さとうもか
98.「MASCARA」XG
99.「ブルーベリー・ナイツ」マカロニえんぴつ
100.「Stand by me, Stand by you.」平井 大