TEXT BY 森朋之
■「こんにちは、ハロー、もしもし」から始まり、20年のキャリアで得た鮮烈さと深みを同時に感じさせる歌声で歌い上げる
00年代以降の世界の音楽シーンに今なお大きな影響を与え続けるロックシンガー、アヴリル・ラヴィーン。今年デビュー20周年を迎えた彼女がYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に初登場を果たした。パフォーマンスされたのは、「コンプリケイテッド」。20年経っても色褪せることのない名曲を、今回だけのアコースティック・アレンジで披露した。
アルバム・トータルセールス4000万枚。日本でもデビューアルバムから3作続けてミリオンセールスを達成するなど、圧倒的な人気を得てきたアヴリル・ラヴィーン。まずはそのキャリアを簡単に紹介しておきたい。
2002年、17歳のときにアルバム『レット・ゴー』でデビュー。シングル「コンプリケイテッド」「スケーター・ボーイ」を含む本作は全世界で1800万枚のセールスを記録し、彼女は瞬く間に“00年代を象徴するロック・プリンセス”の座を手に入れた。2004年にはさらにロックテイストを強めた2ndアルバム『アンダー・マイ・スキン』、そして2007年にヒットチューン「ガールフレンド」を収めた3rdアルバム『ベスト・ダム・シング』を発表し、世界的なアーティストへと成長を遂げた。
華やかでアグレッシブなポップ・パンクを軸に、オルタナティブロック、ポスト・グランジの要素をちりばめた音楽性、喜怒哀楽をリアルに表現したリリック、そして、生々しい感情をポップに昇華するボーカル。アヴリルが体現したスタイルは、世界中の音楽ファンを魅了し、00年代以降のロック・ボーカリスト/シンガーソングライターのロールモデルとなった。ビリー・アイリッシュ、オリヴィア・ロドリゴをはじめとする現代のポップアイコンの多くが、アヴリルに刺激を受けたことを公言。LiSA、Aimer、阿部真央など日本の女性アーティストも影響を受けていることを明らかにするなど、アヴリルの存在は今もなお強烈だ。
今回『THE FIRST TAKE』で披露された「コンプリケイテッド」は、アヴリルの原点と呼ぶべき楽曲だ。この曲で歌われているのは、人生の複雑さ、そして、周りの視線が気になり、自分らしくいられないことへの葛藤。特に“And promise me, I’m never gonna find you fake it”(私に約束して。偽物のあなたはもう見せないと)というメッセージは、今も世界中のリスナーを惹きつけ、励まし続けている。
マイクの前に立ち、ヘッドフォンを付けたアヴリルは、「こんにちは、ハロー、もしもし」と笑顔で挨拶。直後に男性ギタリストがアコギを響かせ、“Uh-huh,life‘s like this”(そう、人生ってそんな感じ)というラインが広がる。原曲よりもゆったりしたテンポで彼女は、美しくエモーショナルなメロディを紡いでいく。楽曲が進むにつれて感情の密度が上がり、“Why’d you have to go and make things so コンプリケイテッド? ”(どうしてあなたはそんなに物事を複雑にしてしまうの?)というサビのフレーズでボーカルのテンションは頂点へ。鮮烈さと深みを同時に感じさせる歌声からは、20年のキャリアで経験してきたこと——世界的スターとしての重圧、病気の克服——そのなかで得た圧倒的な表現力・人間力がはっきりと伝わってきた。楽曲に込めた思いをすべての視聴者に伝えようとする、研ぎ澄まされた集中力も素晴らしい。
このパフォーマンスに際して彼女は、「『コンプリケイテッド』は一緒に20年やってきた曲だから、ワンテイクはすごくやりやすかった。私が初めてリリースした曲で、ファースト・アルバムにも収録している曲だから、当時のいい思い出がよみがえってきたし、この曲が私にすべてをもたらしてくれたと思ってる。私はどちらかというと薄暗いキャンドルの光のほうが落ち着くタイプだけど、この曲を違うバージョンで歌えたのはすごく楽しかった」とコメント。『THE FIRST TAKE』への出演は、アヴリル自身にとっても原点回帰につながったようだ。
今年2月には、彼女のベーシックであるポップ・パンクを前面に押し出したニューアルバム『ラヴ・サックス』を発表。また6月には1stアルバム『レット・ゴー』にボーナス・トラックを加えた『レット・ゴー (20th アニバーサリー・エディション)』が配信リリースされ、11月2日には『レット・ゴー』の日本限定カラーによる2枚組アナログも発売。大きな話題を集めた。デビューから20年経ち、再び存在感を強めている彼女。アヴリルの音楽はここからさらなる高みに向かっていくはず。『THE FIRST TAKE』での素晴らしいパフォーマンスがそのことを証明している。
さらに同日の11月2日には、翌週からスタートするジャパン・ツアーへ向けた来日記念盤となる『ラヴ・サックス・ジャパン・ツアー・エディション』がリリースされることも決定した。こちらは2枚組のアルバムとなっており『ラヴ・サックス』の全曲に加え、Bite Meツアーで演奏されたセットリストの楽曲が網羅されている。その中には「コンプリケイテッド」をはじめ『スケーター・ボーイ』や『ガールフレンド』など、アヴリルのキャリアを代表する楽曲が網羅されたベスト盤とも言える選曲になっており、11月の来日公演へ向けてより期待が高まるだろう。
リリース情報
2022.11.02 ON SALE
ALBUM『レット・ゴー(20th アニバーサリー・エディション)』
2022.11.02 ON SALE
ALBUM『ラヴ・サックス・ジャパン・ツアー・エディション』
ライブ情報
“アヴリル・ラヴィーン来日ツアー”
11/07(月)神奈川 パシフィコ横浜 国立大ホール
11/09(水)東京 東京ガーデンシアター
11/10(木)東京 東京ガーデンシアター
11/12(土)愛知 Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場) Aホール
11/14(月)大阪 インテックス大阪6号館
『THE FIRST TAKE』OFFICIAL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q
『THE FIRST TAKE』OFFICIAL SITE
https://www.thefirsttake.jp/
アヴリル・ラヴィーン OFFICIAL SITE