TEXT BY もりひでゆき
■EPらしいコンセプチュアルな仕上がり
今年2月にアルバム『Sparkle』をリリースして以降、東名阪ツアー『miwa concert tour 2022 “Sparkle”』の開催や、デジタルシングルの配信など精力的な活動を展開しているmiwaから、キャリア初となるEP『君に恋したときから』が届けられる。タイトルが示すように、本作は“恋”と“愛”をテーマに紡がれた4編(+ボーナストラック1編)のラブソングを収録する、EPらしいコンセプチュアルな仕上がりとなっている。
EPの幕開けを飾る「Bloom」は、咲坂伊緒の人気マンガ「サクラ、サク。」のコミックス4巻発売に合わせて書き下ろされたコラボソング。風を感じさせる爽やかなサウンドスケープの中、恋心の芽生えを瑞々しく綴ったストーリーが展開していく。ワクワクとした感情の中にある不安や迷いといった感情までをも繊細に掬い取るように、miwaがピュアな歌声を響かせているのが印象的だ。
2曲目には、ABEMAオリジナルシリーズ恋愛番組『私たち結婚しました 3』の主題歌となっていた「君が好きです」を収録。愛を交し合った人との思い出を振り返りながら、あらためて“君が好きです”とストレートな思いを告げる歌詞──それはまるで大切な相手への手紙のよう。日常を感じさせるアコースティックな雰囲気のサウンドに、miwaのナチュラルな歌声がよく似合っているし、柔らかなコーラスやフェイクもいい雰囲気だ。
3曲目の「シンクロ」は初めてJazzin’parkと手掛けたナンバー。作曲にはmiwaと共にJazzin’parkの久保田真悟と栗原暁が参加、アレンジは久保田が手がけている。太いビートがグルーブを牽引し、その上で軽快に跳ねるメロディが心地いい。ウィスパーボイスでラップ風なボーカルを聴かせる大サビはmiwaの新たな表情を感じさせるニュアンスだ。“当たり前にそばにいる”関係となったふたりの不思議なシンクロを綴った歌詞からは、愛を深め合ったかけがえのない絆が浮かび上がっている。
4曲目には8月1日に本作から先行配信されたばかりの「あたりまえに」が。木村文乃が主演を務めたドラマ「ちょこっと京都に住んでみた。」の主題歌として書き下ろされたこのミディアムバラードでは、“あたりまえのこと”の大事さをあらためて噛みしめながら、大切な人への愛を再認識する。ラブソングではあるものの、そこで描かれているのは恋愛を超越した大きな愛と言えるものだ。miwaの生々しい息遣いさえも感じられる柔らかで情感に満ちたボーカリゼーションに胸打たれることだろう。
■miwaがこだわりを注いだ曲順の妙
と、ここでmiwa自身が7月1日にInstagramへ投稿した一文を引用したい。
「1曲目~4曲目までまるでひとつの物語のような“恋”から“愛”になるまでの移り変わりを感じられる、夏の終わりにピッタリの作品になりました」
そう。恋の始まりを描いた「サクラ、サク。」から始まったEPは、曲が進むごとに恋が愛へと変化し、その愛を大切に育んでいきながら「あたりまえに」でその思いを未来へと繋げていく流れになっているのだ。miwaがこだわりを注いだ曲順の妙。その大きな物語性をぜひ堪能してほしい。
そして、本作にはもう1曲、急遽ボーナストラックとして「Dive Into Summer」が収録されることとなったのもうれしいトピックだ。her0ismとともに2019年に作られた楽曲を、今回のタイミングにロサンゼルスでレコーディングしたのだという。熱帯夜を想起させる情熱的なトラックの上に載せられるのは、ロスへ向かう飛行機の中で紡がれたというリリック。燃え上がる恋心を夏の情景に重ね合わせた内容は、本作で紡がれる物語においてはあくまでボーナストラックとしての役割ながらも、深まり行く夏をさらに暑く盛り上げるアンセムとして機能する一曲となるはずだ。
■音源、写真、映像と多彩な角度からmiwaの魅力を存分に堪能
また、本作の初回生産限定盤には、各楽曲をイメージした写真などを満載したPhoto Bookが付属。さらに今年3月19日に開催されたライブを余すことなく全編収録した『miwa concert tour 2022 “Sparkle” LIVE at TOKYO DOME CITY HALL』のBlu-rayが同梱される豪華仕様になっている。音源、写真、映像と多彩な角度からmiwaの魅力を存分に堪能できるのはフィジカルのCD作品ならではと言えるだろう。
リリース情報
2022.08.24 ON SALE
EP『君に恋したときから』
ライブ情報
miwa special concert 2022
9/25(日) 東京国際フォーラム ホールC
miwa OFFICIAL SITE
https://www.miwa-web.com/