TEXT BY 真野 彩
■スポーツ、食、紅葉、音楽…秋で思い浮かべるものは?
すべてが生き生きと見えた眩しい夏から、陽の光も柔らかくなり、夕暮れ時に聴こえる虫の音に寂しさや切なさを感じる秋へ。そんな季節の移り変わりと共に、音楽も少しスローなテンポだったり、じっくり聴き込むような曲を聴きたくなるのではないだろうか。
今回はそんな秋の気分にぴったりな、秋の歌、題して“秋うた”10曲を紹介する。
■秋に聴きたい“秋うた”10曲
01.「夏の終わり」森山直太朗
02.「夜空ノムコウ」スガシカオ
03.「セプテンバーさん」RADWIMPS
04.「楓」スピッツ
05.「三日月」絢香
06.「ハッピーエンド」back number
07.「灰色と青( +菅田将暉 )」米津玄師
08.「満月の夜なら」あいみょん
09.「夜永唄」神はサイコロを振らない
10.「月に吠える」ヨルシカ
「夏の終わり」森山直太朗
デビュー翌年、2003年に3rdシングルとしてリリースされた「夏の終わり」。一聴すると、離れたところにいる恋人へのラブソングに聴こえるが、実は反戦歌として書かれたという同曲。
2016年にはベストアルバムの発売に合わせて、再度レコーディングをするなど、森山直太朗にとっても思い入れ深い曲のようだ。
夏の終わりに、世界で戦火が上がる今、この曲を聴くと、改めて歌に込められた平和への祈りを強く願わずにはいられない。
「夜空ノムコウ」スガ シカオ
SMAPに歌詞提供した「夜空ノムコウ」を2001年発売のアルバム『Sugarless』にてセルフカバー。スガ シガオが予備校に通っていた当時の恋人とのこと、その頃抱えていた葛藤や不安感といった実体験が描いている。
元々の楽曲はMVの影響もあってか、冬のイメージが強いが、アコースティックギターにのせて、ハスキーさのある声で歌うセルフカバーは、黄色く紅葉した葉が地面を埋めつくす銀杏並木を歩いているような、秋の気配を感じさせる曲になっている。
「セプテンバーさん」RADWIMPS
RADWIMPSのメジャーデビューアルバム『RADWIMPS3 ~無人島に持っていき忘れた一枚~』収録曲。
彼らがメジャーデビューを発表した、神奈川・横浜BLITZでの初のワンマンライブの開催日“9月3日”にちなんでつけられた名前と言われており、ファンにとっても大切な一曲だ。
夏が終わり、秋へと繋がっていく入口の9月(セプテンバー)。カレンダーをめくり、この曲がトレンドに入ると、“いよいよ夏が終わるなぁ…”という気持ちになる。
「楓」スピッツ
1998年にリリースされたスピッツの19枚目、「スピカ」との両A面シングル曲。最近ではadieu(上白石萌歌)がカバーしたことでも話題に。発売から20年以上経ってもまったく色褪せることのない名曲だ。
ノスタルジックなサウンドと、少し不穏ささえ感じさせる草野マサムネのエモーショナルな歌声が、秋の少し肌寒い曇り空の日に聴くと、驚くほどぴったりくる。
「三日月」絢香
秋といえば、中秋の名月。月と聞いてすぐに思い出すのが、絢香のデビュー4作目のシングルにして代表曲のひとつ「三日月」だろう。
彼女が大阪から歌手デビューのために上京することになり、家族や友人たちと離れる淋しさを埋めるように書いたこの曲は、彼女の透明感と同時に力強さも持つ歌声が、歌詞にこめられた想いを引き立たせる。秋の持つ硬質な空気と呼応するようで、繰り返し聴きたくなる。
「ハッピーエンド」back number
映画『僕は明日、昨日のきみとデートする』の主題歌で、2016年11月リリースした秋に似合う切ないバラード。相手の“ハッピーエンド”のために、自分の気持ちを胸に閉じ込めて“さよなら”をする主人公に共感し、涙した人も多いのではないだろうか。
MVでは、半袖を着て楽しそうにしていた笑顔の主人公が、長袖に切り替わる頃から切ない表情を浮かべ始める。最後のシーンでは主人公の夏の場面で終わるのだが、そこが夏の終わりと共に幸せな時間も過ぎ去ってしまったことを感じさせ、歌の切なさを引き立てている。
「灰色と青( +菅田将暉 )」米津玄師
菅田将暉をゲストボーカルとして迎えたことでも注目を集めた「灰色と青」。幼少時代を共にした友人同士が、大人になりすれ違う日々の中で、離れていても奇跡的に重なる瞬間を描いたという。
MVでは、その瞬間が同じブランコに違う時間に座るふたりの姿で表現されている。米津玄師が「2017年夏から秋に移り変わる曖昧な時期。奇跡的なタイミングの、奇跡的に色んなものが重なった結晶みたいな曲になった」とラジオで語ったように、まさに夏から秋へと移り変わる空気感が曲からもMVの映像にも詰まっている。
「満月の夜なら」あいみょん
今回紹介する“秋うた”ではいちばんテンポが速く、キャッチーなのがあいみょんの「満月の夜なら」。ギターが際立つシンプルなサウンドに、歌詞の描く恋人と過ごす甘くて官能的なイメージが絡み合う、2018年リリースのシングル曲。
季節に触れている表現はないが、満月の輝く秋の長い夜、違いの暖かな体温に包まれて過ごす恋人たちの姿が映画のように浮かんでくる。MVのグレーがかった色味も、どことなく秋の深まった頃を想像させる。
「夜永唄」神はサイコロを振らない
秋の終わりに自分のもとを去っていった恋人への想いを歌った、2019年リリースのミニアルバム『ラムダに対する見解』収録曲。TikTokで多くの人がカバーして話題になり、彼らのブレイクのきっかけとなった曲でもある。
ボーカルで作詞・作曲を担当する柳田は、歌詞には自分の記憶を綴っていることが多いというが、彼の記憶の中の“その人”にむけて歌っていることが伝わる情感に満ちた声が印象的だ。
その声が、誰もが心のどこかに眠っている“切なさ”と結びつくのだろう。秋の静かな夜にひとりで味わいたい。
「月に吠える」ヨルシカ
“文学の要素を組み入れた音楽を作りたい“という構想から始まったというヨルシカの、「又三郎」「老人と海」に続く、“文学オマージュ”第三弾。
この曲を聴きながらモチーフとなっている荻原朔太郎の『月に吠える』を読み返すと、“リズムは以心伝心である。そのリズムを無言で感知できる人とのみ私は手を取り合って語り合ふことができる”という一節がある。
ヨルシカは言葉のリズムにより描かれたものを、音楽のリズムに乗せることで私たちによりわかりやすく伝えてくれているのだろう。音楽の秋、文学の秋のふたつを同時に味わうことができる曲。
■アーティストの本音がわかる、インタビューも
以上、秋に聴きたい曲10選、あなたにぴったりくる楽曲は見つかっただろうか? 夕暮れが早まり、吹く風も涼しく、なんとなくセンチメンタルに浸りたくなる、そんな季節。“読書の秋”…なんて言葉があるぐらいなので、アーティストのリアルな“心の声”に目を向け、より理解度を深めていくのも良い機会かもしれない。
『THE FIRST TIMES』ではアーティストのロングインタビューも公開中なので、この機会にあらたな音楽と出会うべく、まずは彼らの思いに触れてみてほしい。
THE FIRST TIMES インタビュー一覧
https://www.thefirsttimes.jp/interview/