TEXT BY 森朋之
■ダイナミズムを増していく旋律、揺れ動く感情のリンクする歌声、楽曲の世界観を増幅させる演奏も最高
YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』の第233回に登場したのは、にしな。
大切な人を真っ直ぐに思う女性を描いた代表曲「ヘビースモーク」に今回だけのオリジナルアレンジを施し、一発撮りのパフォーマンスで披露した。
壊れてしまいそうな思いから凛とした強さに貫かれた意思まで、多彩な感情を映し出す歌声。美しい情緒と鋭利なポップネスを共存させたメロディライン。そして、生々しい感情を映像的に表現したリリック。2021年4月に1stアルバム『odds and ends』をリリースした“にしな”は瞬く間に音楽ファンの注目を集め、新世代音楽シーンを象徴するアーティストとして存在感を強め続けている。
今年7月にはニューアルバム『1999』を発表。「東京マーブル」(ドラマ『お耳に合いましたら。』エンディングテーマ)、「debbie」(映画『ずっと独身でいるつもり?』主題歌)、彼女が音楽仲間と離れ、自分の道を進むことを決めた時の感情を歌った「青藍遊泳」、デビュー前から弾き語り動画が注目を集めていた「ワンルーム」の三船雅也(ROTH BART BARON)によるリアレンジ・バージョンなどを収録した本作は、にしなの音楽がさらに奥行きを増していることが実感できる充実作。2022年を代表する1枚になると断言していいだろう。
今回『THE FIRST TAKE』で披露された「ヘビースモーク」は、インディーズ時代の代表曲の一つ。ヘビースモーカーの“貴方”に対する、切なくも愛らしい感情を描いたラブソングだ。以前インタビューした際に彼女は、この曲に対して「実際に経験したことと想像で書いたところが混ざってますね。四角い部屋のなかに煙が充満していて、そのなかに人が一人いる。そこでグワングワン音が鳴っているようなイメージですね」と語っていた。生々しい体験と自由なイマジネーションを融合させた、彼女の独創的なソングライティングが体感できる楽曲というわけだ。
ヘッドフォンを付け、息を吐きだした後、「みなさん、どうですか? 大丈夫ですか?」と、ちょっとハスキーな声で話しかけるにしな。「よろしくお願いします」という言葉を合図に、ドラム、ストリングス、ベース、ギターが重なり、「銀色の灰皿に強く押し付け/新品のセブンスターまた手を伸ばして」というフレーズからパフォーマンスははじまった。
タバコが手放せず、“彼女が出来たらやめる”と笑う“貴方”への切なくも美しい思いを描いた歌に彼女は、驚くほどに生々しい息づかいを与え、聴く者を強く惹きつけていく。曲が進むにつれてダイナミズムを増していく旋律、揺れ動く感情のリンクする歌声、楽曲の世界観を増幅させる演奏も最高。曲が終わった瞬間、まるで1本の映画を観終わったような充実感を覚えたのは筆者だけではないだろう。
メディア初歌唱(!)となるこのパフォーマンスに際して彼女は、
「緊張しました。でも、一発だからこそバンドのみなさんの音を感じて楽しくできたと思います。この曲は、タバコばっかり吸ってる人に向けて書いた曲で、一人の人を想いながら歌いました。一生懸命歌ったので、気に入ってくれたら嬉しいです」とコメント。この映像が公開された直後から、視聴者からは「にしなをTHE FIRST TAKEで見れる日が来るなんてうれしすぎる。」「歌詞も天才的だし、歌声も1度聞いたら耳から離れないし! みんなに、にしなの魅力届け」「やっとファーストテイクが、にしなを見つけたか。」など歓喜と絶賛の言葉が数多く寄せられた。
メディア初パフォーマンスによって、アーティストとしての圧倒的なポテンシャルを見せつけたにしな。10月からはアルバム『1999』を携えた全国ホールツアーがスタート。「ヘビースモーク」の一発撮りパフォーマンスに魅了された方はぜひ、生の彼女の歌を堪能してほしいと思う。
リリース情報
2022.07.27 ON SALE
ALBUM「1999(読み:ナインティーンナインティナイン)」
ライブ情報
“にしなワンマンツアー「1999」”
10/28(金)大阪 NHK⼤阪ホール
11/03(木・祝)京都 京都劇場
11/05(土)愛知 名古屋市公会堂
11/06(日)東京 LINE CUBE SHIBUYA
11/17(木)東京 LINE CUBE SHIBUYA
『THE FIRST TAKE』OFFICIAL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q
『THE FIRST TAKE』OFFICIAL SITE
https://www.thefirsttake.jp/
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