TEXT BY 森朋之
■他にない怪しさ、煙たさ、違和感。だけどキャッチーなのがCreepy Nuts。一瞬で聴く者を惹きつけ、共感と熱狂を生む
YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』初の有観客ライブ『INSIDE THE FIRST TAKE supported by ahamo』。
一発撮りパフォーマンス&ドキュメンタリー映像の公開4組目として登場したのは、ヒップホップユニット・Creepy Nuts。映画『極主夫道 ザ・シネマ』の主題歌「2way nice guy」を披露し、オーディエンスをがっちりとロックした。
MCバトルの全国大会『UMB GRAND CHAMPIONSHIP』で3連覇を達成したR-指定、そして、DJの世界大会『DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP FINALS 2019』のバトル部門で優勝したDJ松永。最強の“1DJ×1MC”によるCreepy Nutsの音楽性の高さ、パフォーマンスの凄さは2013年の結成当初から大きな注目を集めていたが、2017年のメジャーデビュー以降、二人の魅力はさらに幅広い音楽ファンに浸透。
「かつて天才だった俺たちへ」(2020年)でブレイクを果たし、アリーナクラスのアーティストへと駆け上がった。木村拓哉への楽曲提供や、菅田将暉などとの楽曲コラボ、DJ松永が東京オリンピックの閉会式に出演するなど、活動フィールドも飛躍的に拡大。2021年のアルバム『Case』に収録された「のびしろ」がTikTokで3億回再生を越えるなど、SNSでも強烈な存在感を放っている。本格的なヒップホップを貫きながら、お茶の間レベルの知名度を得る——この現象は、RIP SLYMEやKICK THE CAN CREWなどがブレイクした2000年代前半以来、20年ぶりの快挙と言っていいだろう。
リアルで生々しい感情を、幅広い層のリスナーが共感できるヒップホップに昇華してきた彼ら。そのスタンスは、『INSIDE THE FIRST TAKE supported by ahamo』のインタビューからも伝わってきた。
最近の楽曲を振り返って、「テーマ的にもサウンド的にも重めなものが多い」というDJ松永。「2way nice guy」に関しては、「軽く聴けるテーマのものを作りたい」とR-指定に提案したという。R-指定は、「曲作りに悩んでいたときに梅田サイファーのKZから『ラッパーになって自分の使い道がやっと見つかった、みたいな感じはどう?』という言葉をもらった」とコメント。“バカとハサミは使いよう”というフレーズから曲作りがはじまったことを明かした。
さらに「自分たちの持ち味は他の人にない、怪しさ、煙たさ、違和感。けどキャッチーみたいなものが我々の武器だと思っている」(DJ松永)という言葉も。“こんなの聴いたことない”というインパクト、そして、一瞬で聴く者を惹きつけ、共感と熱狂を生み出すCreepy Nutsのプロダクションの一端を垣間見られる貴重なインタビュー映像となっている。
ライブパフォーマンスも圧巻だった。
ステージに置かれているのは、ターンテーブルとマイク。“ハサミと俺らみたい/2say nice guy”というラインとDJ松永が繰り出すビートが同時に放たれ、会場の空気が一瞬にして変わる。軽快なギターカッティング、ラテンのフレイバーを感じさせるビートにシタール(インド由来の楽器)の音色が混じったトラックはまさに唯一無二。抜群のグルーヴ力と言葉の意味を共存させたR-指定のラップ、楽曲にさらなる勢いとパワーを与えるDJ松永のプレイも最高だ。「2way nice guy」の軸にあるのは、“今はわからなくても、お前の個性が活きる場所は必ずある”というメッセージ。それは二人が通ってきた軌跡——周りの意見に左右されず、やりたいこと、好きなことを貫き、現在のポジションを手に入れた——と強く重なっている。映画の主題歌として制作された楽曲だが、アーティスト自身の人生や価値観が刻まれているからこそ、この曲には圧倒的な説得力とリアリティが宿っているのだ。
有観客ライブ『INSIDE THE FIRST TAKE supported by ahamo』に対する二人の感想は、「全部が張り詰めた空気感で3曲披露すると2時間ぐらいの体力消費になるんやなっていうのが分かりましたね」(R-指定)「今後は、それこそ今日のイベントみたいに1曲1曲を発明して曲が生み出せたら最高だと思いますね」(DJ松永)。今後のライブパフォーマンスにも作用する、貴重な機会となったようだ。
9月7日には、「2way nice guy」「堕天」「ばかまじめ(Creepy Nuts×Ayase×幾田りら)」「ロスタイム」「dawn」などを含むニューアルバム「アンサンブル・プレイ」をリリース。アルバムを引っ提げた全国ツアーも行われ、兵庫県・神戸ワールド記念ホール、埼玉県・さいたまスーパーアリーナでの公演も決定している。現在のポジションはまだまだ通過点。日本のヒップホップを背負いながらCreepy Nutsはここから、まだ誰も見たことがない風景を生み出してくれるはずだ。
リリース情報
2022.09.7 ON SALE
ALBUM「アンサンブル・プレイ」/SINGLE「堕天」
ライブ情報
Creepy Nuts ONE MAN TOUR アンサンブル・プレイ
09/26(月)神奈川 KT Zepp Yokohama
10/04(火)福岡 Zepp Fukuoka
10/05(水)福岡 Zepp Fukuoka
10/07(金)広島 BLUE LIVE 広島
10/08(土)広島 BLUE LIVE 広島
10/12(水)北海道 Zepp Sapporo
10/14(金)宮城 SENDAI GIGS
10/17(月)愛知 Zepp Nagoya
10/18(火)愛知 Zepp Nagoya
10/26(水)新潟 新潟LOTS
10/27(木)新潟 新潟LOTS
11/12(土)兵庫 神戸ワールド記念ホール
11/13(日)兵庫 神戸ワールド記念ホール
12/08(木)埼玉 さいたまスーパーアリーナ
『INSIDE THE FIRST TAKE』特設サイト
https://www.thefirsttake.jp/insidethefirsttake/
YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q
Creepy Nuts OFFICIAL SITE
https://creepynuts.com/