FUKA/BORI
【DIG / 05】yama
SIDE B
曲やアーティスト自身について深く掘って語る、“最深”音楽トークコンテンツ『FUKA/BORI』(フカボリ)第5回にyamaが登場。
SIDE Aでは命を削って作り上げた楽曲「春を告げる」を深掘りしたが、影響を受けた音楽について語るSIDE Bでは、yama自身を深掘り。
誰からも影響を受けずに音楽活動を続けてきたyamaが尊敬するボーカリストとは?
■0:00 ようこそ、最深の音楽へ
谷中:いや〜、だんだんと楽しくなってきました。
yama:そうですね。自分も楽しいです、本当に。
谷中:(笑)。もっともっとたくさんお話し聞かせてください。根掘り葉掘り聞いちゃうかもしれないです。
yama:ぜひぜひ(笑)。お話しします。
谷中:よろしくお願いします。
yama:お願いします。
谷中:どうぞ!
■0:55 yama 音楽の原点
yama:もう本当に単純に歌を歌えば家族に褒められるっていうことがあって、そこから歌を歌うようになりましたね。なんか自分の中で、どこかコンプレックスを抱きながら小さいころ生きてたので。兄がいて…兄がすごい頭もよくてスポーツもできて自分にとってはちょっとまぶしいように見えてて。家族にすごく認められているなって。なんかどこか自分も認められたいっていう思いがあったので、唯一歌を歌えば家族が注目してくれるのでそこから続けていくようになりましたね。
谷中:そのとき歌っていた曲とかはどういう…?
yama:当時流行ってる楽曲を。童謡かもしれないし、コマーシャルかもしれないし、流行ってるドラマの曲とかそういうのを歌っていたと思います。
谷中:結構褒めてもらってたんですか?
yama:うん。褒めてもらってましたね。だからこそ、まあちょっと過信しちゃって…小さいころは歌手になりたいとか言ってたので、公言していたので。そこで「あなたは特別じゃないよ」っていうふうに言われてしまったのでいろいろなんかターニングポイントもありましたけど。でも最初の原体験っていうのは歌を歌うと褒めてもらえる、認めてもらえるっていうのが元でしたね。
谷中:そのコミュニケーションの手段っていう部分もありますね。じゃあね。
yama:あります。すごくあります。音楽が好きでっていうよりかは、その歌うことに意味があるって思っていたので、ひとつの表現方法…言葉と同じだと思ってましたね。
谷中:そうやって歌うことによってコミュニケーションして注目も得て歌うの楽しいなっていうところから楽しいだけでは仕事にはできないんだなっていうことを知るところに至るわけですね。
yama:そうです、そうです。そうですね。ちょっと早かったですね。そこが。
谷中:でも、やっぱりそこからの努力がかなり半端なかったでしょうね。
yama:まぁちょっと意地とかもあったと思いますね。
谷中:自分の部屋で録音されたり? Audacity(音楽ソフト)で?
yama:そうです。Audacityを使ってました。
谷中:Audacityを使って。
yama:なんかフリーのAudacityっていうソフトと、あとUSBマイクですね。インターフェースすら使ってなくて。で、やりながら家族がいないときを狙ってレコーディングしていましたね。
谷中:もうやっぱりいると突っ込まれるからっていうか?
yama:そうです。もう(歌うことを)やめたと思われてたので。
谷中:あっそうなんですか! もうそこまで1回。
yama:そうですよ。公務員になるとまで言っていましたからね。なんかもう歌は歌いません。ちゃんと大学に行って公務員になりますっていうふうに当時は言っていたので。
谷中: じゃもう隠れて研鑽するしかない感じだったんですね。自分自身をね。
yama:だからこの形になったというか。自分自身として歌うと怖さもあるし…誰でもない自分で歌いたかったっていうのがありますね。知られずにこっそり歌ってやるぞっていう気持ちでした。
■4:41 影響を受けた楽曲「無し」
yama:無しです。本当に申し訳なくてこの「無しです」っていうのが。まぁ普通企画的にですね、挙げてくださいっていう企画じゃないですか。
谷中:そうですよね。まあね。
yama:でも素直に無いと言ったほうがいいかなと思って。今回無しにさせていただきました。
谷中: お話を聞かせてもらっていると、誰かが歌っているのにすごく憧れてそれになりたいために歌を歌うっていう形と全く違いますもんね。
yama:違いますね。ミュージシャンになる多くの人が憧れる存在がいると思うんですよ。この人に憧れてとか、あの人のようになりたくて音楽を作りたくてっていうふうな経験をされてると思うんですけど。
谷中:そうですね。
yama:自分の中でたぶん音楽の感覚が違っていて。先ほども言いましたけど、ひとつの表現方法だと思って手段として歌を歌ってきたので。重要視しているのは自分自身を表現するっていうことだったので、より誰かを参考にしてしまうと個性を伸ばせないというか、出せない気がしてたので。だから、あえて特定の人はあんまり聴いていないし、参考にもしてないですね。だから、ボーカロイドをカバーするっていうことを選んだのにはつながっていきますね。生身の人間には出せない機械らしさというか…そういうものがあるので。人間らしさをプラスしてこちら側で表現できるっていうのが楽しくてカバーしていましたね。
谷中:あのボーカロイドの曲をカバーするとかっていうことをやられていたわけですけど、その難しい点とかもないんですか? なんか息継ぎだったりとかそういうものは。
yama:難しいですよね。そもそも人間が歌ってないので。
谷中:そうですよね。
yama:人間的にこれは不可能だろうっていう旋律もあったりして、でもそこがなんか面白くて。難しいとやっぱりより挑戦したくなる気持ちが沸いてきて。だから1個1個レコーディングを終えるたびにちゃんと得られるものがあったので。あっ少しだけこれが得意になったなとか、新しい表現方法を習得できたかもというふうに得られるものがありましたね。その成長できる段階が楽しくてどんどん挑戦していましたね。
谷中:楽曲ごとに自分のキャラクターもいろいろ出せるようなってことがあるのかなぁっていうのがなんか…「春を告げる」と「麻痺」とあと「クリーム」のなんかもう本当その3曲だけ取っても3曲とも全然違う表情で。でもyamaさんで。しっかり表現されているなぁっていうのはすごく印象的で。
yama:まさにそこを気にしながら曲をリリースしているところもあって。「春を告げる」がヒットしたときに、いわゆる夜系というアーティストが流行っていて夜をテーマにしたネット発のアーティストさんがたくさんいらっしゃって。そのジャンルにくくられてしまったところがあって。自分としては「麻痺」のようなロックも歌えるし、バラードも歌えるし何でもやります、できますっていうのを振り幅として皆さんに知ってほしいなというふうにも感じてたので、あえてジャンルを統一せずにいろんな楽曲をと思って今も挑戦していますね。なので、そう思っていただけたなら「ああ、ちゃんと意図してやってきて良かったな」って思います。
■8:49 仮面をつける理由
谷中:今日は新しい仮面を着けていただいたということで。
yama:そうなんですよ。今年からリニューアルいたしまして。ちょっとよく見ないと分からないんですけど、視界が良好になりまして。
谷中:それ大事ですよね。
yama:そうなんです(笑)。なかなか見えづらかったので、まばたきが出来るようになりました。
谷中:まばたき出来なかったんですか! 前のは。
yama:出来なかったですね。ちょっと目が終始開いてる状態でした。
谷中:まつげが当たっちゃうっていうことですね。
yama:そうです。当たっちゃうってことですね。
谷中:大変ですね。そのマスクはオーダーで形に合わせるんですかね? 顔の形に。
yama:そうです。型を石膏を流して取って。
谷中:あんまりぴったりに作り過ぎると。まばたき出来ないってことなんですもんね。
yama:そうです。
谷中:もうこれは散々聞かれていると思うんですけど、仮面を付けられているのはなぜなんでしょうという。
yama:やっぱり容姿が出ている、自分の要素・属性が出ている時点でちょっと先入観を持って音楽を聴いてしまうと思うんですよ。それはもうそう思わないようにと思っても仕方のないことだと思っていて。だから、なるべくそうならないようにクリーンなままで自分の音楽を楽しんでいただけるように、そうあってほしいと思って、今このような形で活動していますね。
谷中:いつごろ仮面をつけようっていう気持ちになったんでしょうね。
yama:正直に言ってしまえば、自分はライブを全くしたくなかったんですけど…「春を告げる」がヒットしたことで担当のほうから「ライブをしませんか?」とお誘いがあって。ずっと拒否し続けていて。っていうのも本当に今の技術自分の技術では生歌を披露したときに確実に精神が参るなっていうふうに思ってたので、すごく抵抗してたんですよ。容姿も出したくなかったし、本当に歌だけを聴いてくれと思っていたので。でも配信ライブでもいいから1回挑戦してみませんかっていうふうになったときにじゃあどういうふうにこう…ね、画面に映るっていう話になってその会議をしている段階で、ではじゃあちょっと仮面を付けてやってみましょうかっていうふうになりましたね。
谷中:仮面に対するこだわりもあったんですか?
yama:本来はフルフェイスぐらい…。
谷中:ほう(笑)。ダフト・パンクみたいになっちゃうんですか。
yama:本当そうですよ。本当ダフト・パンクさんみたいなぐらい本当にフルフェイスっていう希望だったんですけど、さすがにボーカルっていうことでここが開いていないと声がこもるし、息もしづらいからそれはやめましょうっていうふうになって、この口元だけはデザイン開けてくださいと。で、お願いしましたね、形を。
■11:59 ライブにおける劣等感
yama:今まで音楽を楽しむって一人でヘッドホンをして楽しむっていうのが音楽だったので。たくさんの方と一緒の空間で音楽を楽しむっていう体験をそもそもしてなかったので分からなくて、楽しさも。最初はだからジャッジされているような感覚でやっていましたね。本当は歌下手なんじゃんとか思われているんじゃないかとか失望されるんじゃないかとか…常にこう嫌な悲観的な感覚が…。
谷中:思いますよね。でもね。
yama:そうそう。ありながらやっていたのでしばらくは苦しかったですね。
谷中:ライブで歌うようになってから自分の歌についてまた発見とかあったりしました?
yama:ありますね。
谷中:自分の音源とか後から聴きます? ライブでやったものを。
yama:聴きます、聴きます。そのたび落ち込んでいますね。それが一番きついですね。映像に残ったりですとか…その生歌が。自分の理想100%で歌えていることはまあなかなか少なくて。当たり前ですが。なんでできないんだろうっていう苦しみが毎回ありますねライブ終わった後は。
で、なんかツアーのファイナルですかね。そのときのライブがいろいろな意味で忘れられなくて。その会場に自分が想像もしないぐらいたくさんの方が来てくださってて。しかも自分の声を聴きにたくさんの方が来てくれているという状況を目にしたときに少しだけ怯んじゃって、怖くなっちゃって。120%の力を出したいと思っていたんですが、それがかなわなくて。終わった後になんかこんなに皆さんは応援しに来てくれてて、スタッフもそうだけど、自分のことをこんなに支えてくれて応援してくれているのにちゃんと返せてないかもしれないと思って。かなりそのときは落ち込んでしまって。
よくあるんですけど…その落ち込む原因となるのってやっぱり歌を歌うことと、あと個性・才能だったりとか。それによる劣等感が原因でよく落ち込むんですけど、なんかそのときはすごくひどくてそれが。自分が這い上がれないかもしれないっていうぐらい落ち込んじゃって。でもそういう状況になったとき今までの経験では大抵その弱さを盾に自分は逃げてきたんですよね。だからあぁ良くない方向に行きそうだと思ってたんですけど。
冒頭で影響を受けたボーカリストとか曲はないと言いましたが、この活動をしはじめてからすごくすごく尊敬しているボーカリストに出会って。それがALIというバンドのボーカルであるLEOさんなんですけど。実は担当が一緒で、そのつながりで仲良くさせてもらってて、ずっと気にかけててくれてて。自分のことを。その配偶者である藤井萩花さんと一緒にその自分が落ち込んでいるのに気づいて、すごい激励の言葉を二人がかけてくれて。
谷中:あぁ。そんな話まで。
yama:そうなんです。そうなんです。「俺はライブをする前にこういうルーティンがあるから同じことをやってみたらどうだろう」というふうに一から教えてくれて。どんなに調子が悪い日でも基準点を下回ることが少なくなってきて、そのおかげで本当にライブがだんだんとだんだんと楽しくなってきて。こうすれば良かったのかってすごい「頑張れ」だけの言葉じゃなくて一緒にこう…手で救い上げてくれるような形ですごく助けられていて、いつも2人には。こんなに尊敬できるボーカリストと出会うなんてっていうふうに思いましたね。
ライブを見に行ったときに感動したんですよね。あっこんなに一生懸命歌っててこんなに心を打ってくると思って。自分はそういうライブをちゃんとしてきたかと思って自分の失敗ばかり考えて完璧を求めてるけど、ライブっていうのはそういう場じゃなくて、やっぱり自分の歌を聴きにね皆さん来てくれてるわけだから。その人たちを楽しませないと駄目じゃんっていうことにですね、遅いんですけど気付きまして。
谷中:いや、すごい。
yama:そうそうそう。またレコーディング・作品づくりとライブはまた別だなと思って。そこがやっと1年通して自分も分かりましたね。
■17:41 なぜ新アルバムに「Versus the night」と名付けたのか
yama:このタイトルいろいろな意味があるんですけど、日本語にすると「夜と対峙する」というか戦うという意味で。
谷中:そうですね。
yama:その夜っていうのはSIDE Aでも少しお話ししましたが、「春を告げる」でヒットしたいわゆる夜を象徴する曲でまあ夜系アーティストとしてくくられているわけなんですけれども。自分にしかない確立したジャンルに行きたいなっていうふうに思っているので。まずはそこと対峙するっていうことと、とても悲観的で孤独をどうしても抱えているところがあって。
その自分の弱さと対峙していかなきゃいけない…まあ「春を告げる」でヒットした以上それ以上の自分を代表する楽曲を出せないとまあ簡単に言ってしまえば一発屋で終わってしまうっていう思いがズーっと焦りがあって。「春を告げる」がヒットしてそのまま「春を告げる」の人で終わるのか、また自分を代表する別の楽曲が増えていくのかどうかっていうそのなんか瀬戸際に今年は立ってるなっていうふうに思ってて。まあ「夜と対峙する」本当にいろいろな意味がありますが、夜と今年戦わなければいけないと思ってこのタイトルを。
谷中:この今年の戦いは大きな戦いになりそうですね。
yama:今年しかこのタイトルを付けれないなと思って。自分の中でアルバムの認識なんですが、基本的には皆さんこうテーマがあってそれに向かって楽曲を書き下ろしたりとか作られる方が多いと思うんですが、割とそのときそのときで歌いたい曲をバラバラにリリースしているのでまとめるバングル的な意味合いでアルバムとして出していて。だから統一性はないんですよね、正直。どうやってアルバムタイトルを付けるかってなったときにその年達成したい目標をアルバムタイトルにしようっていうふうになってて。そうですね。夜と向き合うしかないんだなと思って付けました。はじめて作詞作曲にも挑戦しようと。
谷中:すごいですね、それね。楽しみですね。
yama:自分への課題というかまあ課せる…。
谷中:結構楽しみですね。それ。自分でも楽しみじゃないですか?
yama:何度も申し上げるんですけど、本当に音楽的才能ってあんまりないなって自分で思ってて。特に作詞作曲ってそこを試されるところなので。ボーカルって正直、根性論で自分みたいに努力をし続けたらある程度できるようになるなっていうふうに思っているんですけど、作詞作曲…あー難しいなあっていうふうに思ってて、挑戦してこなかったんですけど。やらずに逃げるのも結局夜と対峙してないなっていうふうに思うので挑戦してみようとは思ってますが。本当に平凡な自分が平凡なりにどれだけの曲を作れるだろうと模索しながらやってるのでかなりこう楽しいとは言えないですね。なんか悩みながら作っていますね。
谷中:今現代にいらっしゃるリスナーの方々が置かれてる状況と(yamaさんは)同じ状況にいてその上で努力して…。
yama:そうです。いや本当にそうです。あぁまさにそうですね。本当に皆さんと同じ状況に自分は立ってると思ってて。姿を明かさなかったりとか、自分のこともこういうふうに詳しく話すこともあんまりないので、だからどこか人間離れしてるように見られるというか。全然そんなことはないし、平凡だし。平凡なりに一発屋にならないように一生懸命…一生懸命今もがいてる最中で。もしかしたら知らない人からすれば、曲がヒットして幸せなんでしょ? っていうふうに映ってるかもしれないけど自分はそうですね。才能がある人たちの中で一生懸命平凡なりに頑張っていますということを伝えたいですね。
『FUKA/BORI』
https://www.youtube.com/playlist?list=PLi1F8vriz0_WL3yKBwFfP68Mkx7f8Y4KV
『THE FIRST TIMES』OFFICIAL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCmm95wqa5BDKdpiXHUL1W6Q
yama OFFICIAL Twitter
https://twitter.com/yama_official0
谷中 敦 OFFICIAL Twitter
https://twitter.com/a_yanaka